- 『俺、枝桜、卒業式。』 作者:かがみ / ショート*2 恋愛小説
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主人公説明。・二条 悠斗(にじょう ゆうと)2008年3月11日時点で中学3年。その日、卒業式を迎えた。・菜月 彩華(なつき あやか)悠斗の友達。彼と同じ高校に進学。
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2006年3月10日――。
俺、二条悠斗は中学1年で、2年先輩だった3年生の門出を祝い、見送った。
そのときは何が何だかまだ判らなくて、ただ世話になった先輩に礼を言うことしか出来なかった。
生徒会に所属していた為準備等に協力もしたが…
『卒業』のイメージが湧かなかった。
俺たちはまた明日、何時もの様に登校する。
しかし今日を境に二度と登校してはこない3年生の姿に、やり場の無い寂しさを覚えた…
そしてその背景には、開花も遠すぎる桜の木が映った…
2006年4月5日――。
進級式に、一月前とは別物のような満開の桜を確かに見た。
俺たちの進級を祝うように…
――そして春、夏、秋、冬、また春と季節は巡り。
2007年3月10日――。
俺は中学2年、1年先輩の3年生の門出を昨年のように祝った。
その頃には少し、卒業のことも意識した。
しかし何かまた寂しくて、俺は誰にも礼も言わず帰宅した。
俺の背中と別れを惜しむように写真などをとる3年生の背中に、また枝の桜はあった…
そしてまた巡ってきた2008年3月11日。
閏年だったから367日後。
俺は、この日をもって3年間の学び舎を飛立つ。
9年間居た義務教育という植木鉢を砕き壊し、大地に芽吹く。
そのための卒業式を済ませ、俺は別れを惜しむように友と話を交わす。
「じゃあまた宜しくな。」
そう同じ高校へ進学するクラスメイトの彩華に声をかけた。
「ねえ悠斗。」
「何だ?」
彩華からの質問に、俺は疑問系を返す。
「あれ…見て。」
彩華の指差す先、それは――。
開花も遠すぎる枝の桜。
しかし、芽の先は見て判るほど膨らみ、眼前の春を望んでいた。
想いの先に、彩華の声を聴く。
「あの桜はきっと卒業する私たち、だよね。」
俺はそれに言葉の返事は返さなかった…ただ、ココロでうなずいた。
…だよな。
硬く悴んだ掌を広げるように咲く。
その動きはあまりに微小で、誰の気にも止まらないし、見られることも無い。
しかし確実に動き、輝く花を咲かせる。
今はただ咲くのを待っているだけ。
新たな門出のように…
でも…
そして俺は彩華に言葉を返す。
「それはちょっと違うかな。桜は一瞬かもだけど…俺らは…ずっとだ。」
こくり、と彩華のうなずきが見えた。
「じゃあ、これからも宜しく!」
彩華はその言葉に言葉の返事を返さなかった…ただ、絡めてきた右腕が答えだった。
桜は何度散っても、やがてまた輝く。
俺も彩華も、いや誰もが皆絶望に締め付けられることはあるだろう。
でもそのたび、輝きを思い出そう。
そして改めて強くなろう。
何も無いようで、想いが詰まったある日のことだった――。
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2008/03/11(Tue)20:05:10 公開 / かがみ
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■作者からのメッセージ
こんにちは〜☆
ちょいと、うちの学校卒業式だったから書きました。
よかったら感想願います。
ではまた何時か!