- 『くま』 作者:満月欠ケル / ショート*2 未分類
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原稿用紙約4.45枚
ぼくはくま。
ぼくはみんなにあいされるためにうまれてきたの。
ねえみんな、ぼくとあそぼう。
さいしょにぼくはちいさなおんなのこにかってもらった。うれしかった。ただただぼくをひつようとしてくれたのがとってもとってもうれしかった。
「おかあさん、あたし、このくまさんほしい」
「いいの? 今日は誕生日なんだから欲しいもの何でも買ってあげるのに」
ぼくはそのこのおかあさんにひつようとはされてなかった。
「うん!」
でもおんなのこが。
おんなのこがひつようとしてくれたから。
ぼくは、うれしい。
ぼくは、そのこといつもいつもいっしょ。
ねるときも、ごはんのときも。ずっとずっと。
「そんなに気に入ったのかしら」
そのこのおかあさんはぼくをにらんだ。ぼくはなにもいえなかった。ぼくはくま。ぼくはくま。ぼくはくま。ぼくはくまぼくはくまぼくはくま
なんだかすごく嫌なきぶんになった。
「あたしはくまさんだいすきだよ。ねっ?」
そのこはぼくをなでてくれた。ぼくはなにもいえなかった。ぼくはくま。ぼくはくま。ぼくはくま。ぼくはくまぼくはくまぼくはくま
なんだかすごく嫌なきぶんになった。
ぼくにはこわいことがある。それは、おかあさんにせんたくされること。
くらいところ。こわいところ。ぼくはいきたくない、嫌だ。
「お洗濯するから、邪魔しないで」
「えーーっ」
ぼくはそのこにたすけてもらえない。ぼくはうごけなかった。ぼくはくま。ぼくはくま。ぼくはくま。ぼくはくま。ぼくはくま。ぼくはくまぼくはくまぼくはくまぼくはくまぼくはくまぼくはくまぼくはくま
なんだかとっても嫌なきぶん。
なにもいえない。
なにもできない。
嫌々々々々々。
うごきたい。しゃべりたい。
そうすればおはなしできる。
そうすればおあそびできる。
ぼくはくま。ぼくはじゆうにうごけるようになった。はなせるようになった。
だからおかあさんにこっそりいった。
「ぼくがきらい?」
おかあさんはうごかなかった。
「ぼくとあそぼう」
おかあさんはうごかなかった。
「ぼくをあいして」
おかあさんはうごかなかった。
くびをしめた。
「ぼくをあいして」
みんなにあいされたかった。
「ぼくをあいして」
おかあさんはきらいだった。
「ぼくをあいして」
だけどあいしてほしかった。
「ぼくをあいして」
おかあさんはしんじゃった。
嫌。
いたいいたいいたいいたいいたいいたい。
くるしい。
おんなのこがぼくをにぎってる。
あいして――――
「ぼくとあそぼう」
きしっ。
「ぼくとあそぼう」
みしっ。
「ぼくとあそぼう」
ぎしぎし。
ぼくとあそぼうぼくとあそぼうぼくとあそぼうぼくとあそぼうぼくとあそぼうぼくとあそぼうぼくとあそぼうぼくとあそぼうぼくと
ぼくはにぎりつぶされちゃった。
ごめんなさい。
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2008/02/29(Fri)12:04:24 公開 / 満月欠ケル
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■作者からのメッセージ
読んでいただきありがとうございます。
あまり考えずに勢いでやってしまいました。後悔はしてません。
感想や評価、待ってます。