- 『祖先も、祖父も』 作者:甘木 / 時代・歴史 未分類
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全角14678文字
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原稿用紙約44.45枚
人々は男たちの帰還を待っていた。
大通に幾重もの人垣をつくり、みな城門に顔を向け静かに待っている。
私は人垣から離れ石壁にもたれた。幼い時にもたれたことのあるこの石壁に。石壁はあの日のように太陽の熱を吸収して温かい──背中に広がる熱を感じながら私も城門に顔を向ける。
色とりどりの煌びやかなタイルで装飾された城門の色を吸いこむように太陽が沈んでいく時、遙か先に男たちの姿が照らし出された。気怠くも哀調を帯びたズルナの即興演奏に続いて、打楽器のダウルの低音や管楽器のボルの目の覚める高い音が重なる。そして城門の中で待っていた軍楽隊〈フテルハーネ〉が厳かに行進曲を歌い出す。
還ってきた者たちを出迎えるために。
Ceddin deden、Neslin baban(祖先も 祖父も)
Ceddin deden、Neslin baban(祖先も 祖父も)
Hep kahraman…… (勇敢なる……)
地に没する直前の赤味を増した陽光を浴び──真っ黒に日焼けした男。髭だらけの顔に笑みを浮かべる男。包帯を巻かれた男。銃を天高く掲げ雄叫びを上げる男。ボロボロの軍服で胸を張る男。戦友の肩を借りる片足の男──誇らしげな顔の兵士たちが出迎えの人々の前を過ぎ去っていく。
朗々と響く歌声は天に昇り夕暮れの大気を震わせる。
兵士たちの帰還を祝って。いつまでも、いつまでも。
Ceddin deden、Neslin baban
Ceddin deden、Neslin baban
Hep kahraman……
今でもこの歌を聞くと泣けてくる。
* * *
ジェヴデトがこの歌を初めて聞いたのは十一歳の時だった。
ある年、北の隣国と大きな戦いがあった。戦端が開かれた理由は国境の川沿いにたつ城の領有を巡ってのことだという。くだん城はとても小さく、周囲は灌木に覆われた荒れ地しかない。いや、城とさえ言えないのかもしれない。大昔の戦で城は崩れ廃城となり、近隣の村々も戦火に包まれた。それ以来誰も住むこともなく時間だけが流れ、いまは草に埋もれた土壁がかつてここに人が住んでいたことを記すだけ。そこは人間にも神にも見捨てられた場所として時たま思い出される場所なのに──戦いがあった。
隣国との戦いは三年にも及び、多くの男たちが国境に送られた。広い国土の南からも東からも西からも、幾十の兵士の列が北の国境に向け延々と伸び続ける。多くの人間は戦争とは縁遠い普通の人にもかかわらず、徴兵され初めて手にする銃を肩にかけ黙々と北の戦地に送られていった。
隣国と講和条約が結ばれる三ヶ月前、ジェヴデトが住む村からも二十人の男が徴兵され、一人の男が志願した。
志願した一人はジェヴデトの父トゥルグットだった。
出征の前日、村は異様なほどの喧噪に包まれていた。徴兵された二十人の家々には親族や友人がひっきりなしに訪れ、男たちは武運を祈り、女たちは身体を労るようケガなどせぬよう祈りを捧げる。見慣れぬ軍服姿を見て興奮する子供に笑顔を見せる父親、絶対に手柄を立ててやるぞと意気ごむ青年とそれを応援する友達、恋人との別れをするため人の輪から離れていく二人。
いつもは日が落ちれば静まる村も今日ばかりは違っている。村の中央には大きなかがり火が焚かれ、家々の窓からはランプの黄色い明かりがもれている。何頭もの羊が屠られ豪勢な料理がテーブルに上がる。まるで収穫祭のような賑やかさなのだが、それぞれが言葉では言い表せない不安を押し殺していた。
その中でもジェヴデトの家はひときわ賑やかだった。代々村長を務めるチルレル家の当主トゥルグットが戦に志願したのだ。村役や村人をはじめ隣村の村長までが挨拶に訪れ、玄関の扉が閉まる暇もないほどだった。
一族の女が総出で調理した料理。来客に茶を勧める母や祖母。ランプの煙とタバコの煙が混ざり合い大広間の空気を白濁させていく。
ジェヴデトは妹のタンスと大広間の隅で人々が父親に挨拶する姿を眺めていた。普段は物静かで柔らかい笑みを絶やさないトゥルグットが、今日は見慣れぬカーキ色の軍服を着て厳めしい表情で応対する姿が珍しかった。と同時に軍服が醸し出す近寄りがたい雰囲気も感じていた。いつもならトゥルグットにまとわりついて甘えているタンスも、今日ばかりは独特の空気を感じたのかジェヴデトの服の裾を掴んだまま近寄ろうとはしない。
午後九時を過ぎても来客はやまなかった。
今日はずっとトゥルグットのそばにいると言っていたタンスだが、四歳の彼女にとってはもう真夜中に等しい時間。小さな頭をジェヴデトにあずけるようにしてウトウトしはじめる。ジェヴデトにしてもいつもは寝る時間だ。頭の中に霞がかかったようで、なんとなくしゃっきりしない。でもタンスの言葉ではないが今日だけは父親のそばにいたかった。
しかし幼いタンスを付き合わせる必要はない。
「こんなところで寝ちゃダメだよ。ベッドで寝ようね」
ジェヴデトに促されたタンスは「うん」とも「むー」ともつかぬ返事をすると、顔を上げ目をしばしばさせる。
「さあ立って」
タンスは催眠術にかかったようにふらり立ち上がったが、すぐにジェヴデトに身体をあずけ立ったまま小さな寝息をたてはじめる。
「しょうがないなぁ」
ジェヴデトはタンスを抱えると、大広間から抜け出し二階の寝室に向かう。
タンスをベッドに入れ階段を下りた時、廊下の奥、裏口に向かうトゥルグットの後ろ姿を見た。いつのまにか軍服からいつもの青色のシャツに着替えている。さっきまでの軍服姿にはなんだか知らない人を見ているような違和感があったけど、この姿はいつのも父親だ。同じ人間なのに服装ひとつで、こうも雰囲気が変わることに対しちょっと驚いてしまった。
でも、いまの父親ならば気軽に声をかけられる。
「お父さん」
「まだ起きていたのかジェヴデト。もう寝る時間だろう。早く寝なきゃダメじゃないか」
言葉とは裏腹にいつもの優しい笑みを浮かべている。咎めるようなそぶりはない。
「お父さんこそ、お客さんの相手をしなくていいの?」
「ははは。痛いところをつかれたなぁ」
トゥルグットは目を細めて頭をかく。
「いまはお客さんが途切れたからちょっと息抜きだよ」
「わざわざ着替えて?」
「軍服なんて肩が凝るだけだからね」
「そうなんだ」
脱いで清々といった顔で答えるトゥルグットを見て、ジェヴデトは軍服姿は格好良かったよという言葉を飲みこむ。
「ところで、お父さんはどこに行くの?」
「父さんの秘密の場所だよ。ジェヴデトも一緒に行くかい?」
トゥルグットは悪戯っぽく笑う。
「えっ、いいの?」
「いいとも。じゃあ、行こうか」
トゥルグットが向かった先は西の丘だった。
西の丘はなだらかな傾斜が続き、背の低い草が一面を覆っている草地だ。草原を貫くように道が走っている。その道を鏡のような満月に照らされて二つの影がゆっくりと登っていく。
「こっちだよ」
中腹まで登るとトゥルグットは道から離れ草地に入っていく。湿り気を帯びた草々が足を濡らすのを感じながらジェヴデトはトゥルグットの背中を追う。硬い地面と草の柔らかい反発を靴の下に感じながら歩き続ける。
「さあ、ここが父さんの秘密の場所だ」
トゥルグットが振り返り、弾んだ声で草地の一画を指差す。
そこは小さな畑だった。納屋ほどの面積の土地が耕され、幾つもの葱坊主が蝋細工のような小さな花を咲かせている。
「タマネギ? ここが秘密の場所?」
「そうだとも」
トゥルグットは葱坊主を愛おしげな目で見る。
が、ジェヴデトにはここが特別の場所には思えなかった。タマネギなら裏庭の畑にも植わっている。とりたてて珍しい農作物じゃない。秘密の場所なんて言うから凄い場所を想像していただけに肩すかしを食らった気分だった。
「おや、拍子抜けしたような顔をしてるね」
トゥルグットは畦に座り畑の土をすくい上げる。
「この丘は昔、草も生えない荒れ地だったことは聞いたことがあるだろう。父さんはこの村に戻ってきた時から大学で学んだ農学の知識を使って何年もかけて土を変えていったんだよ。その甲斐があっておまえが生まれた頃には草が生えるようになったんだ。それでもまだ農作物を植えるには適していなかった。色々なものを植えてみたけど育たない年が何年も続いたよ。そのたびに土を変える方法を変えてみて、やっと今年このタマネギが枯れることなく育ったんだ。これがどんなに嬉しかったか分かるかい?」
ジェヴデトは嬉しげに語る父親になんとか答えたかったが、それがどんなに大変なことか分からずトゥルグットの横に座って無言で葱坊主を見つめた。
トゥルグットはすくい上げた土をジェヴデトに差し出し、
「父さんは本当は農学者になりたかったんだ」
静かに語り出す。
「父さんには兄さんがいたのは知っているだろう」
ジェヴデトはうなずく。
トゥルグットの兄、つまりジェヴデトにとっては叔父のアッバスはジェヴデトが生まれる五年前に死んでいる。
「本当ならチルレル家はアッバス兄さんが継ぐはずだったんだよ。だからアッバス兄さんは村に残り村長になるための修行をし、父さんは首都の大学で農業を学んでいたんだ。でも……」
大学での勉強が本格化してきた年の冬、村では腸チフスが流行しアッバスが死んでしまったのだ。長子が死んだ以上、次子が家を継ぐのは村の掟。トゥルグットは志半ばで大学を辞め、村に戻ることになったのだ。
「お父さんはどうして大学に行ったの? 農業なら村でもできるでしょう」
「父さんは新しい知識を勉強して、それをこの村の農業に生かしたかったんだ。飢饉や不作を無くして収穫量を増やす生きた農学を目指していたんだよ。だから村長になっても昔の夢を忘れられずに、本を買って勉強は続けているけど独学というものはなかなか難しいんだ。それに実験する場所もないしね」
「だったら村のみんなにも手伝ってもらえばいいじゃない」
「そうもいかないさ。父さんがやっていることは新しい試みなんだよ。どんな結果になるかなんて父さんにも分からない。そんなことに村の人たちを巻きこむわけにはいかないよ。いまさらだけど、もう少し大学で勉強する時間があればこんなに苦労はしなかったかもな」
トゥルグットは自嘲気味に笑ったと思ったら、それを打ち消すように首を振る。
「でも、父さんは諦めてないぞ。今年はなんとかこの丘でタマネギを造ることに成功したんだ。時間をかければきっと色んなことができるはずだ」
「僕も手伝うよ」
「本当かい。嬉しいなぁ」
トゥルグットが目を細める。
「そうだ。いいことを思いついた。なぁジェヴデト、大きくなったら首都の大学に行って、父さんができなかった農業の勉強をしてみないか」
唐突な言葉にジェヴデトは呆けたようにトゥルグットを見つめる。
「うん、我ながらいい考えだな。ジェヴデトは頭もいいし、きっと大学に入れるぞ」
何かを納得したようにトゥルグットはしきりにうなずく。
「でも、僕は長男だよ。長男なんだから村長を継がないといけないんでしょう」
「そうだな。いずれはチルレル家を継いでもらわなきゃいけない。でも幸い父さんはまだ若い。おまえが大学に行く頃にはまだまだ現役だよ。それともおまえは早く父さんに引退して欲しいと思っているのかい」
笑いながらトゥルグットは怖い顔をしてみせる。
「そんなことないよ。でも……」
はっきり言って大学というもののイメージがまったく浮かばない。勉強は父親から教えてもらっていたし、ジェヴデトも本を読んだり勉強するのは嫌いじゃなかった。でも、勉強も読書もこの村でしていることだ。ジェヴデトにとって一番遠くは昨年行った山向こうのクサンの村まで。馬車に乗っても何日もかかる首都なんて外国にも等しい。そんなところで勉強する自分をイメージすることすらできない。
「なに、まだ時間はたくさんある。ゆっくり考えればいいよ。それにおまえが別にやりたいことがあればそれをやればいいんだ。いま父さんが言ったことは命令じゃないよ、あくまで父さんの希望さ」
トゥルグットはジェヴデトの肩を抱いて優しく言う。
ジェヴデトはトゥルグットの体温を感じながら、父親の言葉を考え続けるうちに心の中にひとつの想いが形をなしてきた。
「決めた。大きくなったら大学に行く。大学で農業を学ぶよ」
ジェヴデトの言葉は父親を喜ばせたいという思いからでたのかもしれない。でも、父親のようになりたい、父親と同じ学問を学びたいという気持ちがあったのも確かだ。
「そうかい」
トゥルグットは嬉しげな色を瞳に浮かべ、
「将来、おまえが大学で学んで村に帰ってきたときは、こんどは父さんが教えてもらわないとなぁ。いまはお父さんが先生だけど、いずれはジェヴデトが先生か」
弾んだ声で「ジェヴデト先生」と何度もつぶやく。
「僕の授業は厳しいよ。お父さん、覚悟しておいてね」
「お手柔らかにしてくれよぉ」
トゥルグットは情けそうな顔で懇願するマネをする。
「そんなこと言ってもダメ……あはははは」
ジェヴデトの笑い声につられるようにトゥルグットも笑い出す。
「せっかくここまで来たんだ。丘の上まで登ってみないか。上から見たらきっと村が綺麗に見えるぞ」
笑いすぎたのか涙を拭きながらトゥルグットが立ち上がった。
丘の上にはテーブルのような平らな石がある。村に向かって少しばかり張り出していてまるでイスのようだ。この石に座ると村が一望できる。
二人は並んで座り色々なことを話した。いや、話したというよりも、ジェヴデトが一方的に話し続けたといったほうが正しい。トゥルグットは昼間は村長としての仕事や農作業で忙しく、夜は自室に籠もって農業書を読みふけることが多い。めったに二人っきりで話すことができない。だがいま二人っきり。それが嬉しくって話し続けた。自分が何を話したか分からないほど。そのひとつひとつにトゥルグットは丁寧に答えていた。
どれだけの時間が過ぎたか、
「お父さん……村……綺麗だね」
ぽつりとつぶやき、ジェヴデトは言葉を止めた。前屈みになり村の光景に見入っていた。
ここから見下ろす村はまるで揺れているみたい……揺れながらも出征の準備が続いている。幾人もの男女が家々を行き交っている姿がかがり火に照らし出され、収穫祭の時に見た旅芸人の影絵劇みたいだ。現れては消える人の影、ちろりちろり瞬くかがり火……だんだん視界が揺らいできて、かがり火の周りしか見えなくなってきた……ジェヴデトは自分の意識が何処とも知れぬ深い穴に落ちこんでいくことを感じていた。
「戻ろうか。もう眠いんだろう」
トゥルグットに肩を叩かれてジェヴデトは自分が寝そうになっていたことに気がついた。
「眠くないよ。夜の村が面白くって見入っていただけだよ」
ぶるんっと頭を振ったジェヴデトは、これ以上面白いものはないとばかりより前屈みになって村を眺める。
「そうかい。せっかくのところを邪魔して済まなかったね」
「ううん。気にしなくていいよ」
「でももう戻ろう。母さんにお客さんお相手を任せてきたから、そろそろ母さんが頭から湯気を立てている頃だ。それに風も冷たくなってきた。こんなところで風邪なんかひいたら困るからね」
よっ、というかけ声と共にトゥルグットが立ち上がる。
けれどジェヴデトは、
「お父さんはどうして志願したの? お父さんは村長なんだから戦争に行かなくてもいいんでしょう?」
座ったまま真っ直ぐ前を向いたまま尋ねる。志願を知った日からずっと聞きたかったのだが、トゥルグットの迷いのない顔を見るにつれいままで言い出せずに溜めこんでいた想いを。
「いいや。村長だからこそ徴兵されなくても戦争に行くんだよ」
「だって隣村の村長さんだって、村長は兵役を免除されるのにわざわざ志願するなんて珍しいって言ってたじゃない」
「それはな、この村を治めるチルレル家の義務だからなんだ」
「義務?」
振り返り見上げるジェヴデトの視線を受け、トゥルグットは重々しくうなずく。
トゥルグットの整った顔は、月の光を浴びまるで彫像のような美しさがあった。
「ああ、そうだとも。父さんのお祖父さんも、ご先祖様も、この村を、この国を守るために戦ったんだよ。村長とは村を、ひいては村が属するこの国を守らなきゃいけない義務があるんだ」
トゥルグットは村の長として侵入してきた敵と戦い左手を失った曾祖父のことや、遠くウシュケルトの地で死んだご先祖様たちのことを静かに語り出す。
ある者は勇敢に戦い敵を破り、ある者は戦いのさなかに傷つき命を落とした物語を。
「だけど隣の国が攻めてきたのはずっと北の遠くの場所なんでしょ。こんな遠くのこの村まで敵は来ないんじゃないの? もし村まで攻めてきたら、その時に戦えばいいじゃない。お父さんが戦いに遠くまで行く必要なんてないでしょう」
「誰だって人を傷つけ合う戦いなんてしたくないし、喜んで戦に行く者なんていないさ。でもご先祖様たちはみんな村の平和を、村人の幸せを願っていたから戦ったんだよ。誰かが平和を守らなきゃいけないんだ。たとえ理不尽な理由で始まった戦としても、この国が侵されればいずれ累はこの村にも及んでくるんだ」
「どうして……そんなの分からないじゃない……」
戦争に行って欲しくないということを、トゥルグットに納得させられる言葉が出てこないことにじれったさを覚え声が小さくなってしまう。
「まだジェヴデトには難しかったかな。でも、おまえが大きくなったらきっと分かるよ。それに父さんには村人だけ戦争に行かせて、自分だけ安全なこの村にいるなんてことはできないよ」
トゥルグットは言葉を切ると腰をかがめてジェヴデトに顔を寄せ、
「でも本当は父さんも少し不安なんだよ。ほら、父さんは身体が小さいだろう。重い背嚢や銃を持って歩いたら、足が遅くてみんなに置いて行かれちゃうんじゃないかってね」
秘密を打ち明ける友達のように耳元で囁いて恥ずかしそうに横を向く。
思いがけない告白にジェヴデトは吹き出してしまった。
「こ、こら、親を笑うもんじゃないぞ」
「でも……あははは」
戦という禍々しい行為を前に、父親が些細なことを悩んでいるのがおかしくて、それを打ち明けてくれたことが嬉しくて。ジェヴデトの笑い声は西の丘をしばらく漂い続けた。
「いまの話しは、母さんや、村の人たちには内緒だぞ」
「うん」
「男と男の約束だからな」
笑いをこらえるジェヴデトの目をしっかり見てトゥルグットは言い切る。
「分かった。絶対に言わないよ」
「じゃあ帰ろうか」
うなずくジェヴデトの手を引いて立ち上がらせると、トゥルグットは村を指差す。
「見てごらんジェヴデト。この村はもっと豊かにできるぞ。この丘だっていまはまだタマネギが少しかつくれないけど、いつかきっと小麦や大麦を植えられる日が来るはずだ。そうなれば豊かになる。豊かになればみんなが笑って暮らせるんだ。父さんはその顔が見たいんだよ。だから父さんは戦争なんかでは絶対に死なないよ」
トゥルグットはジェヴデトの肩を優しく叩くと、村へ続く道に向かって歩き出した。
* * *
『戦争が終わった』
この言葉は瞬く間に国土を駆けめぐった。まるで風が言葉を運んだかのように──東の農村にも、西の海辺の街にも、南の峨々たる山肌に張りつくように点在する家々にも──兵士を送り出した人が住む場所すべてに。人々は出征した子供を、夫を、兄弟を、恋人を、友人を出迎えるため首都を目指した。戦地での苦労を労るため抱えられるだけの食料品を持って。ある者は徒歩で、ある者は馬車で、ある者は舟で。ジェヴデトも終戦の報を伝えられるや村人と共に馬車を連ねて首都を目指した。食べきれない程の食料品を積んだ馬車の後ろに座ったジェヴデトはポケットから紙片を取り出し広げる。それは三日前に届いたトゥルグットからの手紙だった。
そこには、トゥルグットや村人は元気であること。村人はみんな同じ部隊に配属され、トゥルグットが小隊長になったこと。戦地に来てから一度も敵を見たことがなく、のんびりと日々を過ごしていること。近くの川でよく釣りをしていること。釣り競争でマスを十三匹釣り上げて勝ったこと。母親を手伝うこと。タンスの面倒を見ること。チルレル家の一人息子として恥ずかしくないようしっかり勉強することなどが、トゥルグットらしいきっちりとした文字で書かれている。封筒の表に『軍事郵便』の朱色のスタンプがなければ戦時とは思えなかったろう。
ジェヴデトはもう何度この手紙を読み返したか分からない。それは、手紙の最後に書かれた『素晴らしいお土産があるから楽しみにしていなさい』の一文がジェヴデトの想像力をかきたてた。どんなお土産なんだろう。それを考えるだけで何時間でも時間を潰せる。それがついに分かるのだ。
お父さんは何を持ってきてくれるのだろう? 軍で支給されるチョコレートというお菓子かもしれない。本好きのお父さんのことだから外国の珍しい本かもしれない。
ジェヴデトは西の山裾に沈み行く大きな太陽を見ながらトゥルグットからの手紙を胸のポケットにしまい背伸びをした。
早く首都に着かないかな。早くお父さんに会いたいな。
ジェヴデトの住む村から首都までは馬車でも丸三日かかる。村を出てから夜通し馬車を走らせ三日目の太陽が中天に上る頃、周りの風景が変わってきた。村では日干し煉瓦でつくった平屋がほとんどなのだが、首都が近付くにつれ石造りの大きな建物が増え、見たこともない色とりどりの商品を扱う店も増えてきた。
初めて見る首都の賑わいは村の中で大きな変化のない生活を送ってきたジェヴデトの度肝を抜くには十分だった。岩壁のように林立する建物。兵士たちの帰還を祝って幾十もの窓に飾られた国旗や花々。ジェヴデトは自分の首がどこまで曲がるかも忘れて見上げすぎて、馬車が止まった時、荷物の上に転げてしまった。
「ぼっちゃん、これ以上は馬車では行けませんですだ。ここからは歩いていくしかねぇです」
御者のグリ爺さんの声で我に返ったジェヴデトは、荷馬車から飛び降り、同じように馬車を止めた人々と一緒に人の流れに乗った。愛する人に会える歓びに満ちた顔、不安に歪んだ顔。数え切れない表情の人に押されるようにして大通りへ向かう。
城門から続く大通りはジェヴデトがいままで見てきた人間の量を遙かに超える人で幾重にも人垣ができていた。ジェヴデトは人垣に身体を割りこませなんとか最前列に躍り出た。帰還してくる兵士たちがくぐる城門を見つめる人たちに混ざって、ジェヴデトも精いっぱい背筋を伸ばして見つめる。
ジリジリとした時間が続く。熱した太陽の光の圧力と人いきれに膝が小刻みに震え地面に座ってしまおうかと思った時、どよめきが人垣をゆらしフテルハーネが演奏を始める。
Ceddin deden、Neslin baban
Ceddin deden、Neslin baban
Hep kahraman……
歌声に合わすように兵士たちが城門から現れる。
さっきまでの静寂が幻だったとしか思えないほどの歓声。その中を近衛兵が、騎兵が、歩兵が、砲兵が列をつくって進む。懐かしい顔を見つけるたび群衆から飛び出し抱きつく者、喜色の笑みを浮かべ人垣の中に入っていく兵士。何百、何千もの兵士たちが流れていく川の中に、チルレル家で小作人として働いているバヤルの顔があった。バヤルだけじゃない。村から徴兵された二十人の姿もある。皆重そうな背嚢と鈍色の銃を持って歩いてくる。
だが、そこにトゥルグットの姿だけ無かった。
お父さんは遅れているのかな……足が遅いもんなぁ。
グリ爺さんの声にジェヴデトたちの出迎えに気付いた村人は一斉に駆け寄る。抱きあい、笑いあい、嬉し涙を流す二十人の中から、バヤルが陰鬱な表情を張り付かせたままジェヴデトの前に進み出る。
「ぼっちゃん、とっても大切な話しがありますだ。わしについてきてくだせぇ」
バヤルはジェヴデトの肩を抱くようにして人垣を抜け、大通りの端にある石壁の方へと進む。バヤルは銃を石壁に立てかけ背嚢を下ろし石畳の街路に座りこむと、背嚢の上に座るようジェヴデトに勧める。ジェヴデトは勧められるままに背嚢に腰を下ろした。背中が石壁に当たり、陽に焼けた石壁の熱が伝わってくる。
「しっかり聞いてくだせぇ。トゥルグットの旦那はお亡くなりになりましただ……」
あまりにも簡素な言葉。なににジェヴデトがこれまで聞いてきたどんな言葉よりも重く苦い言葉だった。
「お父さんが……死んだ…………嘘でしょう」
「嘘じゃねぇです。旦那が死ぬところは村の衆みんなが見てましただ」
「本当に……死んだ…………」
どれだけの時間が過ぎたのかジェヴデトには分からない。気がついた時、憐憫と謝意が混ざったようなバヤルの視線が目の前にあった。
「お父さんはいつ、どうして……死んだの? 教えてよ」
絞るように出したジェヴデトの言葉に、バヤルはうなずきゆっくりと語り出す。
「旦那が亡くなられたのは戦いのせいではねぇです。旦那は戦争が終わる六日前……」
口べたのバヤルの説明は要領を得ず何度も話しが前後しやたらと時間がかかるものだったが、ジェヴデトは一言たりとも聞き逃すまいと身体をバヤルにくっつけんばかり近付ける。
バヤルが語ったトゥルグットの最期は実にあっけなく、実にトゥルグットらしいものだった。
トゥルグットたちが駐留したのは、国境の城から西に五〇キロほどはなれた川沿いの場所だった。人家も畑もない土地だが、隣国に通じる脇街道が通っており、国境線となっている川には百年前に造られたという石橋が架かっていた。本隊は脇街道を八キロほど南に下がったところに駐屯し、川沿いには幾つもの小隊が前哨基地として配置されていた。
停戦命令が発令される八日前のことだ。後方に移動する本隊が敵に追撃されぬよう、最前線となっていた川に架かる橋の爆破がトゥルグットの小隊に命令された。翌日には石で造られた頑丈な橋を破壊するに見合う量の爆薬と工兵士官が到着し作業は進められた。
前線に出てから一度も敵を見たこともなかったトゥルグットたちは工兵士官の指揮の下、見たこともない敵軍の追撃に備え橋桁や橋脚に爆薬を仕掛ける。
なれない作業に少々手間取ったものの昼前には作業は無事終わった。
バヤルはトゥルグットの死を語る前に言葉を切ると、水筒を取り出し大きく喉を鳴らして水を飲む。バヤルにとっては一年分の声を出したにも等しいのだろう。髭についた滴を汚れた軍服の袖でぬぐい、疲れたように重い息を吐き出す。
「それでお父さんは、お父さんはどうして死んだの?」
話しの続きを急かすジェヴデトの顔を一瞥し、もう一度、重い息を吐き出す。
これからトゥルグットの死を伝えなければならない重圧だろうか、バヤルの口はさっきよりも重い。一言二言口の中でつぶやくばかりで、なかなか言葉が出てこなかった。
「立派な軍服を着た工兵士官は命令するばかりで何も手伝ってくれなかったですだ。さっさと橋を爆破して昼食を用意をしろと命令するばかりでしただ……」
爆薬を仕掛け終わり、小隊のみんなは爆風でケガをしないように街道脇の溝に隠れる。石橋から溝までは導火線を伸ばし、溝の一番奥に陣取った工兵士官がそれに火をつけた。
その時だった。一匹の子狐が石橋を渡ってトゥルグットたちの方へとやってきた。仕掛けた爆薬が珍しいのか、橋の中程で立ち止まりしきりに火薬の臭いを嗅いでいる。
いつの頃からだろうか、トゥルグットたちの駐屯地の周りに二匹の狐の親子を見かけるようになった。どうやら川向こうの森の中に巣があるらしく、石橋を渡って来る姿を小隊員たちは何度も見ている。初めは警戒して人の姿を見かけると逃げていたが、娯楽の少ない小隊員が手慰み半分で食べ物を置いて餌付けをしているうちに二匹とも懐き、人がそばに寄っても逃げることはなくなった。狐の親子は小隊のマスコットとして可愛がられ、狐も小隊員の姿を見ると駆け寄ってくるようになった。一ヶ月もすると狐たちは昼食と夕方の晩ご飯時には必ず顔を見せ、小隊員たちからいっぱいの餌を貰い満腹になっては、川向こうの森へ帰るという日課ができていた。特に懐かれていたのがトゥルグットだった。子狐は駐屯地に来るとトゥルグットの後をついて回り、小隊長としての仕事に支障をきたすほどに。
しかし、ある時からふっつりと親狐が姿を見せなくなった。来るのは子狐一匹だけ。何度か川向こうの森の方で銃声がしたから、ひょっとしたら親狐は殺されてしまったのかもしれない。もし親狐が死んだのなら、この子狐はどうなってしまうのか。まだ親離れするには小さすぎる。きっと一匹では死んでしまうだろう。だけど従軍中の身とあってはどうしょうもできないと皆が心痛めていた時、トゥルグットが『この戦争が終わったら、私がこの子狐を村に連れて行くよ。こいつは人懐こいし頭も良さそうだ。息子へのいいお土産になる。小隊長の私物としておけば何とかなるだろうし』と言ってこの問題は解決した。
そして戦地とは思えない平穏な日々が続いた。撤退の日まで。
「……トゥルグットの旦那は溝を飛び出しましただ。皆が戻れ危ないと止めるのも聞かず、旦那は橋まで走って行きましただ……わしはあんなに速く走る旦那をはじめて見ましただよ。旦那は子狐を抱え上げると一目散に溝に向かって戻ろうとしましただ……その時、橋が爆発しましただ。あんなにおかっねぇ光景は初めてですだ」
轟音と共に溝が崩れるかと思うほどの震動が地面をゆらす。石材が一斉に空に舞い上がり、水煙で一瞬真っ白になった。火薬が混ざった黒い水が地面を叩き視界が開けた時……路上に倒れ臥すトゥルグットの姿が。
トゥルグットの背中には幾つもの石片や木片が突き刺さり軍服は血と火薬が混ざった水でびっしょり濡れていた。バヤルたちが駆け寄った時は、もう虫の息で不規則な浅い息を繰り返すばかり。
「……血だらけの旦那は言いましただ。起こしてくれと。わしらは言われた通り身体を起こしましただ。わしらは驚きました。なんと旦那はまだ子狐を抱えていたんですだ。旦那は自分の身体で子狐を守ったんでさ……旦那に子狐は無事かと聞かれましただ。きっともう目が見えなくなっていたんでねぇべか。わしらが驚いているようだけどケガひとつしてねぇと言うと、『よかったなぁ……』と微笑んでこときれましただ」
バヤルは両手で顔を覆いうつむく。
「お父さんは…………そんなことで死んだ……」
ジェヴデトはまるで違う国の言葉を聞いているような気分だった。
必ず帰ると言っていた父親が帰ってこないなんて──トゥルグットはいままで約束を破ったことはない。だから生きて帰らないなんてことはないはず。いまここで聞いているのは別のトゥルグットの話しだ。きっとそうに違いない──ジェヴデトは目の前の光景もバヤルの言葉も急速に現実感を失っていくことを感じていた。
「ぼっちゃん、大丈夫ですだか?」
バヤルの言葉が頭の遠いところで響いている。
「う、うん。大丈夫。お父さんの遺骸はどうなったの?」
頭の中に違う自分がいて勝手に話しているよう。ジェヴデトは欠けた石畳を見つめたまま自分の声とは思えない平坦な声を聞いた。
「……旦那は軍の命令で橋のそばに埋葬されましただ。本当は連れて帰って来にゃいけなかっただのに軍は許してくれねぇかったですだ……ぼっちゃん、本当にすまねぇです」
バヤルは何度も頭を下げる。
「村の人みんなでお墓をつくってくれたんだね。ありがとう……お父さんが助けた子狐はどうなったの?」
本当ならトゥルグットのことを色々尋ねなきゃと頭では分かっているのだが言葉にならない。なのに口から出てきたのはこんな言葉だった。
「子狐は逃げて行きましただ。旦那の顔をひと舐めしたら野ウサギみたいに走ってどこか行ってしまっただ。わしらもすぐに後退命令がでたんでその後のことは分かりませんだ」
「お父さんが守ったから、本当にケガもなかったんだね…………」
そこから先の記憶はジェヴデトにはない。
気がついたら村に戻っていたのだ。どうやって帰ってきたのかも、途中で何があったのかも空白だ。ジェヴデトがトゥルグットの死をちゃんと認識できたのは、主のない棺桶を前に行われた葬式の時だった。
それからは、一家の主を、村の長を失って慌ただしいだけの日々が続いた。悲しみにくれる暇もないほどに……。
でも、どんなに忙しい日でも夕方になると水桶を担いで西の丘を登るジェヴデトの姿があった。
* * *
私は父の希望にそうことはできなかった。
チルレル家の唯一の男子として村長を継がねばならなかったのだ。親戚や長老の後見を受けながら立派な村長となるべく経験を積み、同時にチルレル家の家長として母やタンスを養わなければならない。父が望んだ大学への進学は諦めざるを得なかった。
幸いなことに家には父が読んでいた膨大な量の農学の本が残されていた。私は時間をつくっては貪るようにしてそれらを読み、実際の農業に応用することで父の遺志を継ごうとした。いや、いまになって思えば、本の行間から父の姿を見いだそうとしていたのかもしれない。
何年にも及ぶ試行と失敗の末、父が夢見た豊かな村づくりのほんの欠片は成し遂げられたと思う。隣村と協力しての灌漑、土地の再生、農作物の改良、新しい作物への挑戦。荒れ地といわれた西の丘は今や黄金色に輝く麦畑だし、人参やタマネギも安定して収穫できるようになった。
ここまで至るには長い時間がかかった。本当に長い時間だ。そして色々なこともあった。
タンスは十七歳で隣村の青年と結婚し幸せな家庭を築いている。私が父が死んだ歳になった年には母が流行病で死んだ。私はというと妻をめとり、四人の息子に恵まれ、気がついたら髪は白くなっていた。そう、私はもう父の二倍も生きてきたのだから。
けれども、この歳になっても父の『まだまだだな、ジェヴデト。この村はもっと豊かにできるぞ。豊かになればみんなが笑って暮らせるんだ。私はその顔が見たいんだよ』と言う声が聞こえてくる。
父が死んでから二度戦争があった。
一度は私も徴兵され、初めて海というものを見た──真っ赤に血塗られた海岸を。海岸線の陣地で幾人もの敵兵を見、幾人もの敵兵を殺した。戦友もたくさん死んだ。祖国のためという名目で、命を奪い合うだけの醜い行為。だが相手の命を奪わなければ、自分の命が奪われるのだ。私は死にたくない一心で引き金を引き続けた。
そしていま、老いた私は出征した四男や村人を迎えるため首都にいる。
フテルハーネが帰還してきた兵士たちを讃えるため演奏を始める。
Ceddin deden、Neslin baban
Ceddin deden、Neslin baban
Hep kahraman……
演奏に混ざって軍靴の音が響いた時、幾百もの人々の歓声が天に立ちのぼった。
人垣が大きくうねる。
金モールで縁取られた軍服を着た騎馬隊を先頭に、数え切れない数の男たちが口々に「勝利だ!」「敵を殲滅したぞ!」と歓声を上げながら、大通りの中央を誇らしげに凱旋行進する。
その時、私は男たちの中に父の姿を見た。昔のように若々しい姿の父を。その腕には小さな金茶色の塊を──子狐を──抱いて胸を張って歩いている。父は私に向かって顔を向けると、あの日一緒に登った西の丘で見せた優しげな笑みを浮かべ……行軍の中に紛れるように消えてしまった。
命を奪う戦場で、小さくちっぽけな命を救って死んだ父。
なんの価値もない行為で死んだ父。
人々の笑顔を夢見ながら、あっけなく死んだ父。
なのに……それがとても愛おしい。
Ceddin deden、Neslin baban
Ceddin deden、Neslin baban
Hep kahraman……
今でもこの歌を聞くと泣けてくる。
【おわり】
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2008/02/11(Mon)21:41:35 公開 /
甘木
■この作品の著作権は
甘木さんにあります。無断転載は禁止です。
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■作者からのメッセージ
お久しぶりです。もしくは初めまして。スランプ続きでご無沙汰していました甘木です。
この作品は「トルコ軍楽集」のCDを聞いている時に浮かんだものです。自分としてはオスマントルコ時代をイメージしながら書きましたが、物語としては架空の国の昔話といったところです。ですから時代や場所を特定できるような表現はあえて排除してみました。
いつもはコメディ系が多いのですが、今回は自分的に毛色の変わった作品を書いてみました。
自分としてはいままでの自分の作品になかった手法を試みたつもりです(たいした試みではありませんが…)。
それが成功しているのか失敗しているのか、他人様にとってこの作品は面白いのか面白くないのか、自分では判断がつきませんので、もしよろしければひとことでも結構ですから感想をいただけると嬉しいです。
*作中で使用している歌詞はアリ・ルザ・ベイ氏の『古い陸軍行進曲 Ceddin deden』から引用しています。なお、この歌は日本国及びトルコ共和国の「著作権法」、国際的著作権協定の「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約(ベルヌ条約)」の著作権保護期間に抵触しないものです。