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『くろねこ』 作者:佐野 / ショート*2 未分類
全角465.5文字
容量931 bytes
原稿用紙約1.7枚
十年前にみたくろねこについての、ぼくの考察。

十年前。ぼくには、くろねこが見えた。
くろねこっていっても、それはただのくろねこじゃない。
例えば、ひとりきりの帰り道。暗い公園の遊具の上。
向かいの家に咲いているパンジーの後ろ。
くろねこは、そこにいた。

「にゃあ」
ぼくがネコの物まねをしても、くろねこは出てきてくれない。
ぼくの物まねがへただからとか、そんなわけじゃあなかった。
くろねこは、ぼくの心のすきまに気まぐれにやってきた。

十年。長いようで短い月日。くろねこは、いつの間にかぼくの目の前から姿を消した。
ひとりきりの帰り道。
暗い公園の遊具の上。
向かいの上に咲いているパンジーの後ろ。
いつも通っていた帰り道は、「大人の都合」っていうやつできれいに変身した。
ぼくも大きくなったから、公園にいくことはなくなった。
パンジーは、気付いた時には枯れていた。
「にゃあ」
ぼくは、ネコの物まねをする。ぼくの声は、すっかり大人の声に変わった。

(もう、あえないんだなあ。)
心の奥底でぼくはそう感じた。ひとは、かわっていくんだ。
塵1つ、砂利ひとつないきれいな道路を、ぼくは歩いていく。
2008/01/22(Tue)22:09:48 公開 / 佐野
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