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『風の強い日には。』 作者:かえる / 恋愛小説 ファンタジー
全角1886.5文字
容量3773 bytes
原稿用紙約6.35枚
風がさわさわと音をたてて木々の緑を揺らしています。今日はとてもいい天気、屋外読書にはもってこいな日ですね。
わたしはいつものもみじの木の下に座り、読みかけの本を広げました。さぁ、今日はどんな展開が待ってるんでしょう?

ザァァァァァッ……強い風が吹き抜けます。
「今日は、風が強いですね…」


かなりの時間が流れたと思います。集中力がきれた私は、うーんと伸びをして今さっき読んだページを読み返しました。
「『お前が好きだ、死んでもはなさねぇ』か…そんなこと言われてみたいですね…」
私の読んでいる恋愛小説。ベタな展開が多いのですが、そこがクセになる。特にこの主人公、好きな男の子が自分のことをすごく大切に思ってもらっていて…羨ましいです。私なんて、地味だし暗いし、存在感薄いし。男の子はおろか同級生みんな、私のことなんて気にもとめてはくれませんからね。一度でいいから恋がしたいと思ったことは何度もありますが、それは単なる妄想にすぎません。私は一生、本と友達でいるのが宿命なのかもしれませ……

ドグォォォォォンッッ!!!!!

大きな衝撃が私の頭に走りました。すぐ後にじわじわと広がる痛み、遠のく意識……


………気が付くと、私はさっきと同じ場所に寝ていました。まぁ、仕方ありません。実際ここは生徒があまり立ち入らない場所ですし、きっとさっきの衝撃で、ボールは跳ね返って向こうへ跳んでいったんでしょう。
頭にあたったボールの痛みが、更に増していきました。でも、保健室に行かなくても平気です。誰もあたしの心配なんて------。

…………でも………。
………………………でもっ………。

「少しは……気にしてくださいっ……」
ツーっと涙がこぼれ落ちました。その時、
「おい。」
「!!な……」
「な、じゃねぇよ!さっきからずっとお前の隣にいたんだぞ!!さっさと気づけよニブチン!!!」
私は、なにがなんだかよくわかりませんでした。ただただ、隣であぐらをかいている少年を見るばかりでした。
「あの……あなたは……」
「なんでもいいだろうが!!通行人だ通行人!ったく、いいから涙拭けよ不細工だな〜」
そういうと、彼は私の涙をぬぐってくれました。
「ん。これでよし。」
「ありがとう…ございます…そして、すいません。変な所お見せしてしまって…」
ゴッ
「馬鹿野郎!あやまんなっ!!」
「うぅ…すみませ…」
「オラ!来い!!」
私は、こんなこと、小説の中でしか見た事ありませんでした。男の人が女の人を抱き寄せるシチュエーションなんて!!!
なんのためらいもなく、こんな恥ずかしいことができる彼に私は変に動揺してしまいました。
「な、ななな……なんなんですかっ!私達、初対面でこんな…」
「誰と誰が初対面だって!?いいから、しっかり掴んでろよ!!」
すると、彼の足元から風が吹出し…そして、

ビュォォォォォォォッッッ!!

私と彼は風に乗って、空に舞い上がりました。だんだん離れて行く地上。1m、2m、3m……
動きが止まると、私達はビルと同じくらいの高さにいました。私は頭がクラクラになりそうでした。
「だ、ダメです…恐いですぅ…」
「俺が掴んでるからぜってー落ちねぇ。心配すんな、未緒。」
温かい。私の恐怖を取り除く優しい声。聞いていると、どこか心地いい。でも、どうして…?
「あれ、見てみ。」
彼が指を指す。その先には、真っ赤な夕日にキラキラ光る海。こんな光景を私は見た事があったでしょうか。
「綺麗…」
思わずため息と一緒にでる言葉。
「未緒。ときには、泣いたっていい時があるんだ。けどな、誰もお前のこと気にとめてないなんて嘘だぜ?」
彼がじっと私を見つめて言う。
「現に、俺は…その…お前のこと、ずっと見てたし。」
「見てた…?私を…?」
「こ、これからだって、ずっとお前を見てるつもりだ!!」
「………」
「だから……もう、泣くな。……俺が……いる…から。」

ボロボロと溢れ出す、私の涙。もう、止まらなかった。
「お、おい!!泣くなって!」
「ううん、違う、違うの。私うれしくてうれしくて……家族以外にそんなこと…言われた事なくて……」
彼は泣いている私をそっと包んだ。そして言った。
「元気、でたか?」
うん、とうなずく私。
「じゃあ、俺はもう行くけど、俺はいつもお前の近くにいるから。」
その言葉を聞くと、ザァァァァァァァッッと強い風が吹きました。


目を開けると、私はもみじの木の下に立っていました。あれは、夢?でも、まだ涙は乾ききっていません。じゃあ、今のは-------。

サァァァァァァッッ……

静かに風が吹き抜けました。そして、なぜかその風は、彼の臭いと同じ臭いがしました。

2007/11/25(Sun)02:26:48 公開 / かえる
■この作品の著作権はかえるさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
えーと、お初にお目にかかります。かえるです。
めちゃめちゃ乱文で読みにくいと思いますが、最後まで読んでくれたら幸いです。
ここ、こうしろー!みたいなとこがあれば言ってやってください。
えー・・・では、夜分遅くにしつれいしましたっ
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