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『空想世界』 作者:雛乃洸騎 / リアル・現代 未分類
全角2507文字
容量5014 bytes
原稿用紙約8.4枚
ごく一般の、少年、有大輔(たもつだいすけ)。彼は日々、小説を書き続ける。しかし、ある日、ある人物と出会いその才能を見出されることになる。これは、そんな文学少年の学園生活を書いた物語である。
 第一章 プロローグ 〜学園生活はドタバタと〜

 午後十二時三十分、学校のチャイムが鳴り響く。すると廊下はワイワイと五月蝿く、ドタドタと駆け抜ける音が聞こえる。僕は、窓際の隅っこの席で大あくびをしながら、窓の外を見た。
 先ほどの授業の教科書を、カバンの中にムリヤリ押し込むと、立ち上がって教室を出る。正面には、実習棟と学習棟を繋ぐ渡り廊下がある。その廊下を少しあるくと、左側に防音に徹した、少し大きめの扉が見えてくる。中からは、最近話題の時事ネタについて語りあっている声がかすかに聞こえてくる。
 その大きな扉を開ると、大きくて、長机等が設置されている、「視聴覚室」なる部屋に入る。そして、その部屋の後方にはさらに扉がある。その扉の先は、僕の所属する文学部になっている。
「おはようございまーす」
「おはよう」
 扉を開けると中央の部屋の両隣に部屋がある。その右側、通称「執筆室」からおっとりとした少女の声が聞こえてくる。
 中に入り、自分の定位置の机の上にカバンを置くと、声の主のもとへと寄る。
 同じ部活で同じ学年の朝雛早苗(あさひなさなえ)がニコニコしながら、僕をじっと見ている。
「どうかしましたか?」
 呆れたように言うと、彼女は、
「別に?」
 と鼻歌でも歌っているかのように僕をじっとみている。
「僕の顔に何かついてる?」
 と聞くと、
「貴方の目と鼻と口がついてる♪」
 と彼女は楽しげに答える。
「止めてくださいその答え方」 
 僕がムスっとしながら言うと、彼女は余計にニコニコしながら、
「カワイイなぁ、だいちゃんて」
 だい、とは僕のあだ名で、本名は有大輔(たもつだいすけ)。これでも、ごく一般の普通の高校生、なのだが、朝雛さん曰く、「文才の塊」だそうだ。僕自身、それほど才能はあるとは思えないのだけれども、彼女を含め、周りの皆がそうやって言う。
「だから、今の首相はだなぁ!」
 反対側の部屋には、大声で語り合う先輩の姿があった。片桐先輩と三輪先輩だ。
「おっす、おはよーだいちゃん」
「よーっす」
「おはようございます」
 顔をのぞかせると、先輩方が、弁当をつつきあいながら、新聞や雑誌等を広げている。先輩方がいるこの部屋は、通称「編集室」で、僕ら執筆専門部員が書き上げたものを、編集専門職の部員が編集する際に使用する部屋である。が、昼休みは、自由に利用できる。この部屋は、部活のときになると編集専門の部員と、執筆専門部員のリーダーしか出入りできない。それは、各個人が作業に集中できる環境を作るためなんだとか。
「だいちゃん、このニュースどう思う?」
 片桐先輩は、ため息を深くつきながら、先ほど議論していたのだとうと思われる雑誌を僕に突き出した。
「知事のくせに汚職、ですか」
「あぁ、そうなんだ。コラムニストのキミからしてどう思う?」
 いつ、コラムニストになったのだろう?僕は、小説しか書いたことがないのに。。。
 そう思いながらも、先輩の差し出す雑誌を読み出した。
「んー……その前にメシ食わせてください」
 僕は苦笑いしながら、片桐先輩に雑誌を返した。
「ははは、そうだな」
 先輩も苦笑しながら、雑誌を受け取る。僕は、先輩方の議論が始まったのを見届けながら、朝雛さんのいる部屋へと戻った。
 部屋へ戻ると、彼女はニコニコしながら僕の顔を見る。彼女の机の上には、ノートと積まれた辞書、そして資料があった。どうやら、作品を書いている最中らしい。
「お邪魔した?」
「ううん。 ねぇ、だいちゃんは次、どんな物語書くの?」
 彼女はニコニコしながら僕の顔を覘きこむ。
「出来上がるまでのお楽しみです。それまで待て」
 彼女の近づこうする頭を手で押さえながら、ピシャリと言った。
 すると、彼女は自分の長い髪をくるくると寂しそうに指に巻きつけた。
「むぅ……だいちゃんのケチ」
「ケチでどうもすみませんでした」
 僕が呆れたように言うと、彼女はまた、机のノートに集中しだす。
 そして、僕は止むことのない思考に頭を悩ませながらもノートに走り書きを始めた。


『メモ1』
 彼女は言った。
「もうすぐ春が来ると」
「夏なのに?」
 僕は聞き返した。
「えぇ、もうすぐ、とても楽しそうな春が来るの♪」
 彼女は楽しそうに答えた。
「僕にはわからないよ」
 僕がそう言っても、彼女は鼻歌を歌いながらピョンピョンと
はねるように、歩き出した。


 昼休みが終わると、次の授業のために視聴覚室を出て、教室へ向かう。次の授業は、朝雛さんと同じクラスになる。彼女はとても楽しそうに、僕の横を歩いてる。
 僕としては、少し恥ずかしい……。が彼女にとって僕の反応がおもしろいらしい。。。 全く、わけのわからない人だ。
「そういえば、今日ミニテストがあるの聞いてた?」
「はっ!?マジ!?」
 驚くと、彼女は楽しそうに「冗談♪」とニコニコしながら答えた。こういう具合でいつもいじられている。
「おもしろい♪」
「どこがですか」
 僕は、ため息をつくと、彼女の一言が冗談でよかったと思った。何故なら、次は、僕のニガテな数学だからだ。
「また、メモでも書きながら、授業受けようかな」
「わ〜楽しみ♪」
 何故か知らないが、彼女は部活中に勝手に僕のカバンから例のメモノートを取り出しては読みふけっている。言えば、僕の殴り書きの愛読者と言ったところだろうか。でも彼女が、僕のメモを「おもしろい」と言うのがさっぱり理解できない。くだらないことばかり書いているのに、愚痴や妄想ばっかり書いているのに。
「起立」
 ボーっとしながら窓の外を見ていると、突然、声がしたので思いっきりびっくりして立ち上がった。
「あははははは」
 椅子を勢い良く蹴飛ばし、引っかかり、挙句の果てに、尻餅をついてしまったのである。……全く情けないことこのうえない。
「有、ボーっとするのもいいが、切り替えは大切だぞー」
 年老いた、男の先生が、苦笑しながら僕を見た。
「では、礼」

 
『メモ2』
 授業中、僕は少しドジをした。
 もちろんみんなに笑われた。

 彼女にも−−

 でも、彼女が笑うと、何故かうれしかった。


2007/11/01(Thu)22:46:25 公開 / 雛乃洸騎
■この作品の著作権は雛乃洸騎さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めまして。
雛乃洸騎(ひなのこうき)です。

この度、僕は学園モノにチャレンジしてみました。
まだまだ力不足ですが、精一杯、
この物語を仕上げて行こうと思います。

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