- 『〜リトライ〜 【上】 (仮)』 作者:††?†† / リアル・現代 未分類
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全角9209文字
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原稿用紙約33.2枚
ラストチャンス…慶太にとって、一年という時間 あの時の負け人生は変えることはできるのか!?喜怒哀楽バスケットストーリーが始まる。*多少のバスケット用語が含まれていますが、個人で調べていただけると 助かるのですが、もし知りたい方は申し出ても結構です。私の言語のできる限りで説明したいとおもいます。
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ほんの一瞬でも気を抜けば負ける。
妙に静まり返った会場には、彼らの足音と遠く響き渡るボールの音…
息を切らし、汗を流し、一時の休息はまさにコンマの値だった。
71対71…残り時間4分42秒…
聖工ボール。 24秒が15秒になった…
そのとき、会場の沈黙を破った男がいた。
聖工学園3年生 6番
プロ入り間違いなしといわれている男。
PG 静谷 武(しずたにたけし)
彼の放る3Pはまさに見本となるフォームで放たれ、美しく描く弧はゴールが吸い込んでるかのごとく
リングも触れずにはいる。また、一試合に10本以上を入れることから別名「神の左腕」とよばれている。
「俊介!!パス!!!!!」
その静谷の声に反応した4番は左にフェイントいれ右にするどいパスを飛ばした。
針穴を通すとはこのことで、静谷をマークしている選手と静谷の間でぎりぎり静谷がとれるパス…
しかし、すこしするどい音は…静谷の手前でなった…。
そう、わずか指の第一関節…いやもっと先…ボールは静谷のマークしていた選手が奪った。
そう、その人物こそがこの小説の主人公 霞ヶ丘高校 3年生18番 PG 双 慶太(そうけいた)である。
【1】
〜話は3年前にもどることにしよう〜
久住総合体育館午後1時30分
体育館の誰もが息を呑んだ瞬間である。
〔久住市中学バスケットボール総合大会ー決勝ー〕
久住第一中学校 対 石田中学校
4ピリ 残り30秒 54対 56
点差…2点。
久住第一中学校最後のタイムアウトをとる。
バスケットの監督において、タイムアウトは貴重な武器であり、また、選手にとって
唯一の60秒という休息がとれるときでもある。
しかし、この時のタイムアウトは、限りなく休息などというものではなかった。
「いいかおまえら!!!!のこり2点差!!逆転するにはスリーしかない!!!」
久住一中の監督のどなりごえは体育館中に響き渡るほどだった。
そんな声を聞く中にあの男がいた
…双慶太だ。この試合5本のシュートを決め、また、3本のカットと好成績で
また、慶太はチーム唯一の3Pシューターだった。
「慶太!!!」
「はい!」
慶太は今の出来る限りの声で返事を返した。
「よし、作戦は、スローインはマンツーで。その後相手は4番の一本柱だ。ボックスワンでいく!
相手は、24秒フルで使ってくる!!とにかくカットだ!!!ボールをもったらダブルプレスにいってもいい!
カットしたら、時間を見て慎重にパスをしていき、残り3秒ぎりぎりでもいい、
慶太にわたせ!!!!」
「はい!!!」
5人の声は意志の強さを感じられた。
それはそうだった。久住はもう何十年も決勝にもきていなかった。
そしてさらに、かれらは県大会にいかなければならなかった…
久住第一中学校は今年で男子バスケットボール部がなくなるのだ。
理由は、人数の減少化。3年生が5人のみ。今年終わってしまう。
断固たる決意とともに、ブザーがなる。
センターラインからのスローイン。久住一中は全力でマークにつく。
石田中は、13番にぎりぎりパスをつないだ…そんな中両選手なんとなくわかっていた…
(迷ったら、負ける!)
一瞬の迷いさえ、今この場面では致命傷だった。
13番から4番へ…
パスは絶好球だと思われた…しかし、久住一中4番 鈴木は、パスを予測にしていた。
いや、監督が予測していたのだ。
ブザーがなる少し前、鈴木は監督にいわれていた
「鈴木。おまえはわざと4番と少しはなれてろ。こんなときは4番に頼る心理的なものができる
いいな、誰かにパスが渡った瞬間、わずかだけ離れろ!!」
鈴木は、監督の命令どおり、13番に渡ったとき離れて一瞬を見逃さなかった…
久住一中のボールとなる、鈴木は監督命令を遂行して、落ち着き
時間を見た、18秒!!!
しかし、相手もすんなりとパスをさせてくれるわけがない。
オールコートのダブルプレスときた!
鈴木は、プレスに来ることを一瞬で判断し、ジャンプパスで9番にわたす。
「プレスだ!!!青木!!!」
鈴木の声は青木にしっかりと伝わった
ボールをキャッチした瞬間時間を確認&ドリブル突破、残り12秒!!!
フロントコートまでいき、青木は吉田にパス。
吉田は全体を見回す。(慶太君は…いた!)慶太は、吉田からみて右のコーナーに。
横目で、時間を確認残り8秒!!!
(やるしかない!!!!)
吉田は、右ドリブルでドライブ!!!!
吉田のマークマンはさらにきびしいディフェンスを…その時、吉田は
インサイド‐アウト途中からの右へのバウンドパス!!
その技は、県大会にいくためにと、吉田が磨き続けたもの…
練習は自信となり自信は実力となる。ある日本人監督がいった言葉だ。
そのパスは、一寸のずれもなく、慶太の手に渡った。
残り時間4秒!
誰もが、息を呑んだ。
慶太は、1つ1つのフォームに神経を研ぎ澄ました。
膝、腕、手首…あえて、慶太にキャッチフレーズを付けるとしたら…「異端なるシューター」とでもいっておこうか。
なぜそうなるかといえば、慶太は、男子ではそうそうお目にかかれないツーハンドだからだ。
しかし、9割のシュート率をもつという異端。
慶太には、迷いがなかった…そうでなければならなかった…
だが、慶太には一瞬ほんの一瞬…(はずしたら…
慶太の放ったボールは…無情にもリングにあたった…
ビーーーー。体育館に響き渡ったブザーは5人の涙を強くさせた
いや、それだけだったら、まだよかったかもしれない。
試合が終わり、みんなでうつむき加減で観客席にもどった。
その時、アナウンスがはいる…(選手の皆さん。閉会式を行いますので、Bコートにお集まりください)
聞こえていた…。しかし、みんな立つ気配はなかった。
その時鈴木が立ち上がった。
「さぁ、閉会式だ!…最後なんだ…最後だからこそ…胸張っておわろうじゃないか!!」
その言葉にみんな泣いた。しかし、みんな涙を拭き、こらえた
胸をはり、コートに向かった。しかし、この時すでに、異変がおこっていた。
そのことに気づくのは、閉会式が始まってからだった。
(結果発表、○○先生お願いします)
久住一中としては、我慢のときだった。その時
小声で鈴木にはなしかけた人物がいた。
(鈴木君)(ん?どうした?)(慶太君がいないんだ)(なに?いない?)
鈴木は、後ろをみたが確かに慶太はいなかった。
(吉田。どこいったのか知らないのか?)
(うん。)
(第三位…吉寺中学校)
(話はあとだ)
閉会式が、ようやく終わり、
「慶太がいない??」
青木が眉をよせた
「ああ。あいつ、最後のシュートはずしたからな…。」
「だからって…」
鈴木はうなずく
「そうだよな。でも…吉田。」
「うん?」
「慶太がいなくなったの気づいたのはいつだ?」
「閉会式のとき並ぶときだよ。」
「そうか…やっぱり、ショックだったのかな…」
青木が言う。
「吉田。帰りに慶太の家によってくれないか?」
「え?でも…会ってなんていったらいいか…」
「そうだよな。でも会っとかないとあいつ、いつまでも自分のせいだと思うだろうし」
「うん。わかった。いってみるよ」
吉田は慶太と幼馴染で、親友である。
またなによりの相談相手だ。
【2】
その後、吉田は慶太の家にいった…
ベルを押す…しかし、返事はなかった。
もしかしたら、と思いちょっと慶太の家の前で待ったが夕方6時をまわっても来る気配はなかった。
しかたがなく、吉田は家に帰った。
8時あたりに電話しよう。とそう思ったから。
でも、吉田が電話をかけてもだれもでなかった。
9時…10時と、しかし誰も出なかった。
だめだ…やっぱり、学校でいわないとだめかな…
次の日は休みで、一様、電話をかけたが誰も出なかった。
そして次の日、異変は驚きへとかわった。
学校の朝の会、慶太がいない…
「幸太、慶太は?」
クラスメイトに聞かれる
「うーん。僕にもわからないんだ」
「へえ。あいつが休むなんてめずらしいな。台風のときでも来そうなのに」
「うん。」
クラスメイトのいうとおりで、慶太が学校を休むことはまずなかった。
幼稚園から一緒で慶太が休んだ日を見たことがない。
しかし、この後その理由がいやでもわかることになる
(起立‐おはようございます[おはようございます]‐着席)
「えー実は今日は、少し、悲しいお知らせをしなければならない。」
生徒たちはちょっといやな感じがした…
「実は、気づいた人もいるだろうが、慶太がいない。実は昨日引越しの連絡があってな。
緊急の用事で東京にいった。」
その日、3年生たちは驚きを隠せなかった…
【3】
〜月日は流れ〜
慶太が引越しをして、半年が経ち、3年生皆が卒業し高校へ入学した。
吉田は、兄と同じく霞ヶ丘高校に入学した。しかし、久住市とは遠いため中学の時
知っている人は、数人しかいなかった。
入学式…個人氏名で次々と名前が呼ばれていく。
(吉田 幸太)
「はい」
吉田はこういうのは、好きでなかった。人前で大きな声を出すというのは。
また、式というのは眠くなるから嫌いだった。
早々にうとうととし始めた頃、
(双 慶太)
「はい!!」
吉田は耳を疑った。後ろを振り返り、目を凝らした。
しかし、あまりにも人がいるため、実際にそうかどうかわからなかった。
式が終了後、吉田は1−Eへいった、もちろん慶太かどうか確かめるためである
吉田は、半信半疑だった。なぜならば、うとうとしていたし、もう半年ちかくあってないからだ。
1−Eにつく…
――いた!!!!
吉田は、声を出しそうになった。しかし、呼んだからって…。
学校が終わってからにしよう。吉田は自分の教室にもどった。
学校がようやく終わり、玄関前に吉田はいた
心はどこか、早く会いたい気持ちと会ってもどんなこといったらいいのかという不安な気持ち。
そんな中、ふっと玄関に慶太がいた。
「あ…」
そのあまりにも突然の出現と声に吉田はあわてふためき顔をそらす。
「幸太じゃないか。久しぶり。」
「え…あ、久しぶり」
あまりにも、すんなりと相手から話しかけてきたので余計あわてる。
「はは。まさか、おなじ高校にはいるとはな。」
「う、うん」
「ま。ちょっとあるこうぜ」
校門まで、二人に会話はなかった。
しかし、校門を少しいくとこういう時にかぎって踏み切りにひっかかる。
二人の雰囲気はどこか重苦しかった。しかし、そう思っているのは吉田だけだったかもしれない。
だからこそ、吉田から声をかけた
「慶太君。」
「ん?」
思い悩んでどんなことを質問するかようやく決まった。
「部活…バスケにはいるんでしょ?」
その質問に慶太は言葉がつまったようだった。
電車が通過する…その時、「バスケはやめた。」
吉田には、かすかにいや、はっきりと聞こえた。しかし、内心的としては耳を疑いたかった。
「そう…なんだ。」
決してなぜ?と質問をしないのが吉田のいい所でもあり悪いところだった。
「ああ。」
それからまたしばらくの沈黙が続いた。
駅に着くと、慶太が切符を買う
「慶太君、紗江橋から来てるの?」
「ああ。お前は久住から変わってないのか?」
「うん。」
「そうか。」
二人に沈黙はいつまでもまとわりついた。
駅のホーム。
しかし、次に沈黙を破ったのは慶太のほうだった
「俺は、帰宅部にでもはいるよ」
「そうなんだ…。僕は、バスケ部にはいる」
「…そうか。」
(上り列車が参ります。危険ですので…)
紗江橋行きの列車だ。久住とは逆の列車となる。
ホームに電車が着き、慶太は乗り込んだ。
慶太は振り返り、
「今日は会えてよかったよ。みんな知らないやつばっかしだから」
半年振りに慶太の笑顔をみた吉田だった。
「うん。ぼくも会えてよかった」
それから、扉はしまり、電車はうごきだす。
その日以来、二人は自然と以前の関係を取り戻していった。
変わったことは、慶太がバスケットをやらなくなったこと。
吉田は、どこか、あの時のことが心のすみでもやもやとしたものに気づいていた。
【4】
〜さらに月日はながれる〜
吉田と慶太は高校3年生となっていた。
部活をきめる時期がやってきた、普通ならば
一年に決めた部をずっとやるのが当たり前。
吉田はもちろんバスケ部の願証をだした。
その日、慶太と一緒に帰ろうと思ったが
先に帰った、ということで、しかたがなく1人で帰った。
駅までいくにはシャッター商店街を通る。
歩いていると、
ダムッダムッバン
(あれ?ボールの音?)
その音は、吉田の左側にある狭い路地ちょうど横で通れるような
ところから響いていた。
吉田は、少ない好奇心をかりたて路地をすすんだ。
ボールの音は次第に大きくなっていく。
ふっと道を抜けると、まるで、隠されているかのように広い空き地がそこにあった。
よくみわたせば、バスケットゴールが2つあり、ラインも引いてある。
ライトもある。つまり、ここは隠されたストリートバスケコート。
そこにいたのは、必死にバスケをやる慶太だった。
「慶太君!!!」
吉田は思いがけず呼んでしまい、自分で呼んだのにあわてふためく。
その声におどろいた慶太は振り向いた
「幸太…!」
吉田は、顔を見れないので、下を見ると、慶太が持つボールが目に付いた。
「…バスケ…やってたんだね…」
「…ああ。」
吉田は、もやもやしてるものを思いっきり慶太にぶつけたかった。
今の関係を取り戻せなくても、真実を知りたい。そっちの気持ちが今まさに上回った。
親友として、そして、バスケの仲間として――。
「慶太君!」
「…ん?」
「ずっと、聞きたかったことがあるんだ」
その言葉を聞いて慶太は
「…中総体のことか?」
吉田は、言おうとしたことを先に言われてしまって、あわてる。――しかし
「う…うん。どうして何も言わないで帰ったの?引越しっちゃったの?」
「それは…」
慶太は口をにごらした。
吉田は、勇気を振り絞り慶太の顔を、目を見て…
「だって、おかしいじゃないか!慶太君があの時、スリーを外したからって
うちのチームには慶太君しかいなかった!」
吉田にとっていつもの2倍の声でいったつもりだった。
少しの沈黙の後、慶太は呼吸を大きくした。
「…確かに、俺はあの場から立ち去りたかった。最後にあの時に決めていれば…って
今でも、悩む時だってある。でも、それだけだったら、俺は胸を張って
決勝までいけたと言える。」
「それじゃ…なんで?どうしていきなり…」
吉田は、なぜ?を聞くことした。今聞かなければもう二度ときけないと思ったから…
「…俺の親父知ってるだろ?」
「え。うん。交通事故でなくなったんだよね。」
「ああ。それで、俺の家族は、俺と母さんだけになった。
あの時…中総体のときに、電話があったんだ。」
「電話?」
「ああ。
―――負けた。いや、ここまでこれたんだ。
その時、慶太の母の友人が慶太のもとへ走りこんできた。
「大変よ。由美子さん。倒れたんですって!!!」
「え!!母さんが!!」
「例の心臓病が悪化したんですって。早く、車出すから!」
「はい!」
二人は、いそいで駐車場にゆき、車に乗り込んだ。
「それでどうなんですか?母さんは?」
「どうっていわれても…」
重苦しい雰囲気は、車の速度を上げる元になる。
慶太の母は、昔からの心臓病があり、よく、悪化することがある。
しかし、いづれにせよ、今まで治ったものの、寿命を縮めてるのはたしかであった。
―紗江橋国立総合病院―
二人はあせる気持ちをおさえ、廊下を競歩で歩き、エレベーター乗り場まできた
こういうときに限って、エレベータはどこも来ないもので、
あせる、慶太はすべて、エレベーターのボタンの▲を押す。
ようやく、エレベーターが来た。
エレベーターでは止まってるような感じがする。
ようやく、つくと、ナースステーションに場所を聞いて
再び競歩でむかった。
手術中
その赤で点滅された告示はよりいっそうの不安を駆り立てるものである。
1時間…2時間と時間は過ぎた。
バスケで掻いた汗はべたりつくような妙な汗と変わっていた。
(母さん)
必死に手を合わせ願った。
30分後、手術中の点滅が消える。
この時に極限の不安がのしかかる。
医師がでてきた。友人は医師に駆け寄り
「由美子さんは?どうなったんですか!!」
「一命は取り留めました。ですが、危険な状態にあることは確かです。」
その言葉は、安心と不安を抱かせるものだった。
「後ほど、病室に、向かいますので」
「ありがとうございます。」
深く、友人は頭を下げ、慶太も下げた。
慶太の母が運ばれてくる。それに、友人と慶太が歩み寄り、一緒に歩く。
その時の妙な沈黙は独特な雰囲気がある。
その雰囲気は、いつまでも続くもの…
病室につき、友人と慶太は二人で慶太の母をみつめた
少し経つとさきほどの医師がやってきた
「失礼。ご家族の方ですか?」
「いえ。私は友人でそっちの子供が…」
「そうですか。」
「いいでしょう。お二人とも、お話があるので、ついてきてくださいませんか?」
「はい。」
こういう時の話は、今後の予定とか、そんなことだろう
慶太は幾度となくこういう時の話を聞いたことがあるので、そう思っていた。
しかし、現実とはいつも、悲惨なものだ。
「実は、由美子さんの、心臓は弱りはててしまっていて、今回はなんとかなりましたが
次に大きな発作がおこれば、確実に…死んでしまうでしょう。」
「そんな…」
言葉を失った。慶太の心、脳の中は真っ白になった。
慶太にとってその後の話はうっすらとしかおぼえていない。
「即急に、処置したいのですが、この病院では無理でしょう。」
「それじゃあ…どうしたら?」
「東京に、心臓専門の先生がいます。その方だったら、もしかしたら…」
「東京…!」
そう。これこそがすべての真実だった。
――それで、俺と母さんは、東京へ行ったんだ」
「それで、お母さんは?」
「ああ。医師からよくがんばったって言われたよ」
吉田のもやもやとしたものが晴れた気がした。
しかし、唯一気になることがあった。
「それじゃあ!なんでバスケをやらないの?あんなに好きでやってたのに
お母さんは治ったんでしょ!」
慶太はうつむいた
「ああ。確かに治った。でも、いつかまた発作を起こすかもしれない。って医師にいわれたんだ。
おれと2人ぐらしなんだ。おれがついてなきゃ母さんは死んじまうかも知れねえ…
俺は、母さんのためだったらバスケをすてる!」
「…でも…でもさ。慶太君前に言ったじゃないか。
バスケをやってる時が一番楽しいって。それに、いまだってやってたじゃないか!
自分にうそついてまでもお母さんを大事にしたって、お母さんは喜ぶはずがないよ!!!
一年だけだっていい!!!…だから…だから一緒にバスケやろうよ!!」
「…もうすぐ電車くる。じゃあな幸太。」
「慶太君!!…」
慶太は振り返ることなく、駅へと歩いていった。
吉田は、追いかけることは出来なかった。
「ただいま」
「おかえり」
慶太は、かばんをおろし、家事の手伝いをし始める。
「いつも、悪いね」
「それは、言わない約束だろ。」
「そうだったねえ」
洗濯、掃除、料理、慶太は自分でも出来ることは自分でするようになった。
しかし、それは、母親にとってどう思っているのだろう。
慶太は、キャベツを切りながら、吉田の言葉思い出していた。
(自分にうそついてまでもお母さんを大事にしたって、お母さんは喜ぶはずがないよ!!!)
…いや、仮にそうだとしても…。
「慶太、ちょっと上の棚から新しいラップとってちょうだい」
「ああ。うん」
そうだとしても…バスケより母親だ。
「はい。」
「…」
「母さん?」
「ああ。ありがとね。…ねえ、慶太」
「なんだい?」
「中総体負けたんだってねえ」
「はは。いつの話してんの。」
「何年前だい?」
「2年以上かな。うん。」
しばらくの沈黙があった。
慶太の包丁の音と、慶太の母のシチューの火の音が静かになっていた
顔が会うことはなく…
「そうかい。2年か。
…慶太。やっぱりお前にバスケをとるわけにはいかないよ。」
「え?」
慶太が母を向いた。
母は、和室に歩き始めた。
「お前は、バスケの練習がきらいだとかいってバスケ部にはいらなかったんだっていったけど
実際は、母さんを心配してはいらなかったんだろ?」
「…」
和室の前で母はとまり
「前々から言おうと思っていたんだ。お前には、バスケをやらなければならないんだよ。わかるかい?
確かに、母さんを心配してくれるのは本当にうれしい。でもね、やりたい事をやらせない親なんて
親じゃないんだよ。お前の手はバスケをやめてもいつまでもマメがあり続けた。
どこかでやってたんだろう?。バスケを。」
和室に母がはいってく。
「でも、俺がいなきゃ母さん…倒れるかもしれないじゃないか!
俺がいなきゃ…」
「ふん。まだ年寄り扱いするとしになったとは思ってないよ。
さっき、いっただろう。慶太。
お前は、バスケをやらなければならない。お前が、バスケをやらないかぎり
あの時から何もかわらないんだよ。負けた人生そのままでいいのかい?
自分の気持ちに正直なりなさい!!!慶太!!!
…一年くらい母さんだって意地があるさ。」
ポケットの中から、何かを取り出し、テーブルの上においた。
「さて、母さんはちょっと具合悪いから寝るかねえ。」
母は和室にもどっていった。
慶太は、テーブルに近づいた…ハンコ…
(自分の気持ち…)
カバンから、プリントを取り出し、筆箱からペンを手に取りなにかを書いた。
「母さん。一年だけ…一年だけバスケをしたい!!!!」
ハンコを力強くおした。
入願証
入願部 男子バスケットボール 部
氏名 双 慶太 印
慶太は、深く目をとじ、大きく呼吸をした。
押入れをあけ、黒い袋を取り出した。
「二度と使うことはないとおもってたのだけどな…」
袋を開けると、バッシュが入っていた。「一年だけ…」袋の中に手を入れ
リストバンドを取り出す。「一年だけ…」
次に、タンスをあけ、奥に手を入れて取り出したのはハーフパンツ。「一年だけ…」
「一年だけだ!!!」
「あ、慶太君だ。…」
吉田は声をかけにくかった。もちろんその理由は、昨日のことだ
ところが、慶太から話しかけてきた
「よ、幸太!!」
吉田は、さすが、親友ということあってか、直ぐに慶太の変化に気づいた。
「あ、その袋…」
「ん?…ああ。」
慶太は右腕を前に突き出し左手で服をまくる…
手首にリストバンド…右手を力強く握り締め…
「リトライだ!!!」
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2007/10/16(Tue)22:29:16 公開 / ††?††
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■作者からのメッセージ
読んだ下さりありがとうございます。
作品名は、まだ仮ですが、一様確認したものの
誤字があった場合教えていただけるとうれしくおもいます。
また、作品の書きなおしたほうがいい場所等が
あったら教えてほしいです。
感想、アドバイスお願いします。