- 『社会とは』 作者:kurai / リアル・現代 ショート*2
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社会に出る事ほど面倒な事はないだろう。毎日気を使ってばかりで、気が気ではない。
私は今日、家の自分の部屋にこもっていた。電気はつけない。私は起きたままの姿で、布団の中でうずくまっていた。
ふと見た窓の外にはさぞ気持ちよさそうに青空を飛ぶ小鳥や、無邪気に笑う小さな子供達が見えた。
鳥、か。私も鳥のようになってみたいものだ、子供に戻るのもいい。そう、布団の中で考えた。
仕事に出れば上司にヘコヘコ気を使って、取引相手に気を使って、部下を思いやり、家族サービスにまで追われる。楽しい事なんて思いつくはずもない生活だ。そんな生活は誰だってごめんなはずだろう、私だってそうだ。
だから、鳥のように自由に生きてみたいと願うのだ。青空の下、自由に生きる鳥のように。
しかし、社会はそれを許してはくれなかった。
ニート、と言う人種がある。
彼らは社会にさげすまれている。そう、私は感じていた。彼らは社会の呪縛から逃れているだけなのに。
働かざるもの食うべからず、と言う言葉がある。
食べたければ、生きたければ働けと言うことだろう。だが、働かなくとも食べていける人間もいるものだ。最近の子供なんかは良い例だろう。昔は、親に手伝え手伝えとよく言われたのに、最近の子供は親にまかせっきりな気がしてならない。
一人は皆のために皆は一人のために、と言う言葉がある。
なら、最近のニュースはなんだ。いじめ問題、殺人。やはりこんな言葉は理想であって、現実ではない。怒鳴り散らす上司もいる、我が侭な妻だっているかもしれない。どんな人にだって、誰かに迷惑をかけている。それで何が一人は皆のためにだ。笑えもしない。
社会は、矛盾が多い。そして、他人に流されるだけの人間など、本当に苦労するだけで真の幸福は得られない。人に気を使う事のない人間のみがのびのびと暮らす事ができて良いのだろうか、それが私の疑問だった。
人に気を使わない、だから負い目を感じない。
自分のことだけを考えている、だから他人がどうなろうと関係無しでいる。
なるほど、善人は早く死ぬと言うが、悪人が長生きなだけかもしれない。悪人とは言い過ぎかもしれないが、私には大差のない事だ。
しかし、酷い世の中になったものだ。何が社会を変えたのだろう、不思議なものだ。
そして布団の中にいる私を、誰が笑うのだろう。分からないほど多くの人間に違いない。くだらない世界だ。
私は疲れた。この世界で生きていく事に。
「あんた、いつまで寝てるの?」
ちょうど寝返りを打った時だ。一人の女性が私の部屋に入ってきた。
「もう十時よ。いい加減就職活動に出たら? もう二十八でしょうに」
「今日は体調が悪いんだ。母さん」
良い天気だと、私は思った。
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2007/09/21(Fri)19:11:29 公開 / kurai
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