- 『真夜中のストーリー』 作者:修羅場 / 未分類 未分類
-
全角723文字
容量1446 bytes
原稿用紙約2.7枚
真夜中のおもちゃ工場、山積みのガラクタの上で動き出したブリキ男。
今日はいつもよりなぜかご機嫌。
ショベルカーは訊ねました。
「何かいいことでもあったの?」
男は笑って言いました。
「実はこれからデートなんだ」
プロペラと針金で出来た花束のプレゼントは3日がかりの自信作。
ディリリパッパ、ダリダラッタ
彼女が僕を待っている。
背中のネジ巻きなおして早くここを抜け出そう。
「そこのおまえ!」
と呼び止められたブリキ男。
声の主はブリキポリス、最新式ソーラーペット『お出かけワンコ』も一緒だ。
「こんな夜更けに何をしてる!?外出は禁止のはずだ!!」
急いでんのにネホリハホリ、長い取調べを受ける。
おまけにワンコに追いかけられて背中のネジ食べられた。
バリバリ!ムシャムシャ! 大ピンチ!
ディリリパッパ、ダリダラッタ
何とか奴等を巻いたけど、時間はもう巻き戻せない!
さぁ彼女の元へ急ごう!
*
どんどん意識がもうろうとしてきた。
その霧のむこうに愛しい君が待ってる、花束を君に手渡した。
そして僕はそっとキスした。
喜びに吹かれまわる心のプロペラ。
ディリリパッパ、ダリダラっ―……世界が止まったように思えた。
体がどうにも動かない。
ついにネジが切れたみたい……。
…心配は要らないさ、君のキスで僕は元どおり……。
トラブルも全部帳消し。はじめからまたやり直し!
ディリリパッパ、ダリダラッタ
おもちゃ工場を抜け出そう。
今度は遅れないように誰にも見つからないように。
そして君にたどり着いたなら一緒にワルツを踊るんだ。
あぁ、なんて素敵なんだ。
あぁ、なんて幸せなんだ。
……そうだったらいいのにと、眠りにつくブリキ男。
心だけ巻き戻して、彼女を想いつづける……。
-
2007/08/12(Sun)13:13:20 公開 / 修羅場
■この作品の著作権は修羅場さんにあります。無断転載は禁止です。
-
■作者からのメッセージ
作者からのメッセージはありません。