- 『自立社会』 作者:奏瓏瑛 / ショート*2 リアル・現代
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原稿用紙約2枚
私は自分の全てを犠牲にしてきた。良かれと思って身を粉にして働いてきた。そのせいで、貴方にはついて行けない、と妻は子供を連れて家を出て行ってしまった。
失ったものは大きいが、決して後悔などしていない。なぜなら、私が築き上げた礎はそれくらいの価値があるからだ。
いや、それ以上かもしれない。何せ、私は多くの人々に貢献し、それなりの功績を世に残すことができたのだから。それ故、このぐらいの犠牲は仕方があるまい。
多くの者は、私を支持し賛同してくれた。無論、中には愚か者と悪辣な批判をする者もいた。だが、そういったものの全てが私の糧となった。だからどんなに辛くても、逆境に耐え忍び、日々努力をしてこれたのだ。そして、ようやく理想の社会を実現する事が出来た。障害者や老人、母子家庭の様な社会的に弱い立場の人間が、国の支援に依存する事のないような自立した社会に、私がしたのだ。
ついに重責を果たし、無事に任期を終える事が出来た。これからは自分の為に生き、残りの人生を有意義に過ごそうと考えている。働かずに退職金と年金だけでのんびり暮らすのが私の新たな夢だ。
だが、ここで予定外の問題が発生した。離婚にかかった費用と教育費が高くつき、しかも物価が高いときている。極めつけは、社会的な支援や保障が削減され、大人の責務の一環として、老人にも納税の義務が課せられていた。そのせいで出費がかさんで生活を圧迫しているのが現状だ。それもこれも自立した社会とやらのせいだ。おかげで私の夢は儚く消えてしまった。
何と嘆かわしい! 今まで散々苦労してきた見返りがこれか? 鏡に映る薄くなった頭を見ているとだんだん腹立たしくなってきた。
クソ、こんな住み難い社会にした忌々しい輩の顔が見てみたい。
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2007/05/24(Thu)13:22:10 公開 / 奏瓏瑛
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■作者からのメッセージ
ちょっとブラックなものを書いてみました。
すみません、ちょっと今の政治のあり方を自分なりの方法でぶった切ってみました。