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『暴走逃走対心論』 作者:泣村響市 / ショート*2 リアル・現代
全角3467文字
容量6934 bytes
原稿用紙約10.1枚
青春は闘争と逃走と競争と狂騒です。だけど私は逃走も闘争も狂騒も競争もしたくないです。平和主義者なので。
 お前は自分勝手だ、と良く言われる。
 其れは漫画なんかでよくある何でも自分で背負い込む主人公みたいな勝手さならばなんだか格好いいのに、自分の自分勝手はどうやらそんなんではないらしく、相手のことを考えずに独善的な行動を取るほうの自分勝手らしいというのに気付いたのは何時だったか覚えていない。幼馴染の友人にやたら静かな声音でそう諭された覚えだけが幼い記憶に残っている。
 まだ十代の扉さえくぐっていなかったはずのそいつの顔酷く醒めていて、両肩に置かれた手の冷たさがまだその肩からはがれない。どんな経緯でそんな事を言われたのか覚えていないし、その幼馴染もそんな事を言った覚えはないというからもしかしたら夢なのかも知れない。けれどその冷たい冷たい、氷の塊のようだった手は、酷く俺を責め立てているような気がしたのだ。
 まぁそんな懐かしの記憶を掘り出してみたところで、そんな昔に忠告されているにも関わらずそのまま成長してしまった事に気が付いた。相手のことを考えずに独善的な行動を取る。当時もしくは今の自分からしてみればそんな自覚は全く皆無で、流石にいつ何時も他人を思いやっているとかそんなことは無いが普通にそれなりに隣人の痛みを分かってやれる奴だと自分の事を誤解してしまっているから致命的だ。今気付けた自分に乾杯、というか今更では遅いのだろうか?
 まだ子供だからそんなことは赦されるだろう、という考えももうそろそろ通じなくなってきている歳なのだ。
 もう後数年で煙草も吸える。酒も飲める。車も運転できる。結婚も出来る。死刑にだってなれてしまう、そんな歳。残り少なき青春時代。後十年も残っちゃ居ない。そして後十年もこの無意識的自己中心的思考も赦されなくなる。
 そんな訳で、ちょっと大人しくしてみようと思う。
 思い立ったら吉日で、隣を歩いていた幼馴染に告げてみた。
 そいつは何時も通りのポーカーフェイス代わりの薄ら笑いで『そうか頑張れ』みたいな素っ気無い返答をした。何だよ何だよ冷たいな折角俺が壮大な誓いを立てたのに、と思ってそのまま口に出そうとしたけれど、いきなりその壮大な誓いを破ることになりそうな発言をするのはどうなんだと思って口を閉じる。
 いきなり押し黙った俺を見て幼馴染は訝しげに首をかしげ、『まぁ、応援をする気はないけど生暖かく見守る』とか何とか行って少しだけ笑った。口の端を歪めたデス笑顔。もうちょっと可愛げのある笑みは出来ないのかお前は。
 そうしてお試し期間的な俺の大人しめウィークが始まった。といってもこのウィーク、これから死ぬまで随分と長い一週間。早くも三日で嫌気が差す。こんなに苦痛でいいのか大人。
 少しだけ慣れてきたと思ったらすぐに調子に乗って自己嫌悪で壁に額をぶつける羽目になる。そうして後悔。
 やりたい事だけをやってるんじゃ駄目だ。
 やらなきゃならない事だってあるんだ。
 調子に乗ったら駄目だ。
 楽しいことだけを追いかけていては駄目だ。
 すぐに落ちるぞ。落ちたら死んでしまうぞ。
 けれどそうやって自己嫌悪している俺を幼馴染は不思議そうに薄ら笑いをして見ていた。何かイラつく。お前にはこの気持ち分かるか。
 そう問いかけるとそいつは薄ら笑ったまま目を逸らした。けれど俺は問い詰めなかった。こいつは我慢の塊みたいな人間なのだ。其れ位この長い付き合いになってくると分かる。
 小さな頃はあんなに泣き虫だったくせに、だとかそんな事を思う。けれど今現在の状態ではこいつの方が我慢強いという事実は覆らない。こいつは『小さな時に全部泣いた』んだ。道端でこけて自分の膝小僧から溢れた血を見て涙も溢れさせていた幼馴染とポーカーフェイスのように薄ら笑っている幼馴染を重ねる。うん、一致。こいつは変っていない。
 そんなそいつの微妙に単純で複雑な家庭事情を説明したいところだがこの語りは幼馴染についての物ではない。
 窮屈だ。
 生きている事が窮屈だ。
 世の中の大人の人はずっとずっとずっと、こうやって我慢してきたのだろうか。もしくは、隣を歩いている幼馴染は。
 だとしたら、辛すぎる。
 けれどそんな大勢の人が出来ないことを何故俺は出来ないのだろう。もしかしたら自分には我慢できない代わりに何か他の優れたものがあるんではないか。他の人には無い輝かしい何か、が。と考えてまた自己嫌悪。調子に乗るなと自分の思考に一喝する。そうしてまた何か都合の良い妄想を始める自分を説き伏せる。
 調子に乗ってはいけない。
 また後悔したいのか?
 自分が有触れた人間だということにまだ気付いていないのか?
 俺は選ばれた人間様様なんかではなくて、有触れて大量生産な人間なのだ。ヒューマン。英語で言っても有触れてる。特別なんかじゃない。また後悔してまで自由を選ぶのか、なんてそんな格好良い台詞じゃない。俺は自由じゃない、独善だ。自己中心的な駄目な奴だ。学習しろ。
 そう、学習だ。学ぶのだ。学んで学んだからもう同じ轍は踏まないんだ。俺は学んだ凄いだろ。
 其処まで考えてまた自己嫌悪。またやったと頭を壁に打ち付ける。
 幼馴染が怪訝そうに俺を薄ら笑いで見ている。
 そいつは口を開く『自由に笑ってるお前の方が好きだよ』有難う。でもちょっと待てお前はそんな事を言う奴だったか? 違うだろうそんなんじゃないだろ。もっともっと冷たい目で笑ってて、そんな暖かい顔で笑う奴じゃなかっただろ?
 そう言うとそいつはもっと温かい顔で笑う。お前誰だよ、と俺は呻く。『我慢して我慢して顔顰めてるよりも自信満々に自分の好きなものは好きって言ってるお前の方がお前らしい』うるせぇ馬鹿黙れ。
 耳を塞いで全く知らない奴の言葉から逃げる。確かに確かにそうやって恥ずかしげもなく自分の主張が出来る奴は格好いいように見えるかもしれないし俺はそっちの方が好きかもしれないし誰に嫌われても関係無いって思ってたけれど、けれどけれど、けれども。
 周りの誰かにうざい奴だって思われるのは嫌。
 友人達はそんなことよっぽどじゃなければ思わないだろうけれど世間はそんな奴ばっかじゃないって今頃気付いて、だから、お前とか他の奴とかにお前うざいとか言われたくないから、だから頑張ってるのに、ってまた自己嫌悪。
 耳を塞いでもそいつの声はするする耳にはいってきやがる『ほら、そんなに辛いんだったら勝手にしちまえばいい。世間に認められないとかどうでもいいよ』良くない良くない良くない。辛いけど、でも我慢なんだ。
 放課後の教室。漏れてくるクラスメートの声。あいつうざいよな。死ねばいいのに。ちょっと調子のってんじゃないの。『そんな奴等に認められなくたっていいじゃないか』五月蝿い五月蝿い五月蝿い。
 だって俺はもう誰にも嫌われたくない。
 頭を抱えてどすりと落下。あれ此処何処だと目をしばたたかせても痛いばかりの暗闇。
 阿呆みたいに口を開けて巻き込んだ毛布のふかふかな感触のしたの床が只管固い。
 そうだよなそうだよな、あいつはそんなこと言わないもんな。
 そう勝手に頷いて、俺はハッと気付く。じゃあアレは誰なんだ? 幼馴染の姿をしたあいつ。
 決まってる、俺だ。
 ああ最悪だ。
 やっぱり俺は我慢できない。自由だとか薄っぺらい言葉に頼ろうとしてる。最悪だ。
 誰に嫌われたって良いって思ってたのは随分前の話のはずなのに。だって一人は寂しい。人は一人じゃ生きれない。孤独は痛い。痛みは人を殺す。なぁ、俺は死にたくないよ。
 でもこんな日々は罅が入ったみたいに窮屈で。こんな後悔は口外できないぐらいにみっともなくて。こんなんだったら我慢したくなくなるんだ。ってなんだか日本語が可笑しい。眠いんだ。
 眠い。眠いから訳が分からなくて思考が暴走誰か止めろ。そうだ眠ってしまおう眠るんだ今何時だよ一体全体。
 そうして俺はベットに戻らないまま瞳を閉じる。
 我慢して我慢して明日も起きるのかと思うと吐き気がしたけれど独りぼっちになってる自分を想像してみても吐き気がした。一体全体俺はどっちがいいのだろう。我慢してでも誰かと一緒に居たいのか、我慢せずに独りで孤独になりたいのか。
 どうすればいいんだろうどうしたいんだろう。分からない分からない分からない分からない。つまりどうにもならないしどうしようもないってこと?
 じゃあどうすればいいどうしようってんだ?
 其れはつまるところそういう答えしか出なくて。
 嗚呼、なんだかとても頭が痛い。
2007/05/12(Sat)23:18:48 公開 / 泣村響市
■この作品の著作権は泣村響市さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
只管独白です。

学校で先生に「お前は自己中心的だ」とかなんとか言われている生徒が居ましたがそういう人って自分の事どう思っているんだろうとか考えて書きました。
自己中心的だと自覚している場合としてない場合とあるんでしょうが自覚してない場合だと「何で皆そんなこと言うんだろう」で終ってしまうので主人公(というか唯一人の登場人物)には悩んでもらいました。

在りがちな夢落ちです。


テーマは「自己中心的な人・二重鍵カッコ・頭痛」でした。

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