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『美しきWaltz  〜魔法使いの戦い〜』 作者:銀杏 / アクション ファンタジー
全角6235.5文字
容量12471 bytes
原稿用紙約19.5枚
 王の娘・メラージュのわがままにより、十三名の魔法使い達が戦う事になった。一番最初に負けた者は、王によって殺され、残り寿命をとられてしまう。この戦いに参加する事になったグラミス、ミロルド、メリエーヌは、ひょんな一言で王に目をつけられてしまい、いたるところで魔界兵士に襲われてしまう! 三人は生き残れるのか? 殺されるのは誰なのか? 最後の意外な結末とは!?
 
 ∈†プロローグ†∋



 
 魔界と人間界……この二世界は昔、土地をめぐって争っていた。魔法使いは魔法で人間を殺し、人間は十字架で魔法使い達を弱らせ、矢等でとどめをさした。この醜い争いは、毎日毎日続いた。例え嵐の日だとしても、どちらも引こうとはしなかった。


 そんなある日、対決中に隕石が落ちてきた。魔法使いはなんとか魔法で重傷をまぬがれたが、人間はほぼ全滅だった。隕石が落ちた場所に開いた大きな穴がだんだん広がっていき、魔界と人間界は離れていった。


 それから数十年後……魔界の王、エクストラ・パネラが気まぐれで、魔界の位置をヴォルネリ島の下に移動した。そこはなんとも不思議な生物がいるところで、アルストムとクマーネという生物が合体し、悪魔が誕生した。そしていつしか魔界には、魔法使いよりも悪魔が増えていったのだ。


 そしていつしか魔界に住んでいる魔族は、約十八億匹を超えた。これでは多すぎると考えたエクストラは、悪魔を八億匹殺す事にした。仲間とはいえ、仕方のない事だったのだ。これから大きくなる子供は殺さず、年寄りの悪魔を次々に魔法で殺していった。そして、その悪魔の残っていた寿命を使って、魔界を新しく変えた。より静かに……より暗黒に……。


 だが、エクストラの娘のメラージュが、前の魔界に戻して、と言ってきた。さぁ、エクストラは困った。戻せ、といわれても、これ以上悪魔の数を減らす事はできない。かといって必要なのは誰かの残り寿命なのだ。そこでエクストラは、ある事を思いついた。
「メラージュ、魔法使いを殺すと、悪魔より何が多いか分かるか?」
「残り寿命でしょ? 魔法使いは寿命が長いわ。魔界記録では、最高一万年以上生きたって書いていたわ」
「……仕方ない。魔法使いを一人殺すか」
「やめて、お父様! 私、魔法使いに友達がたくさんいるんだから!」
 そして、またエクストラは困った。じゃぁどうすればいいのか分からなかった。迷っている時、メラージュが叫んだ。
「お父様、私の友達以外ならいいわ! 私の友達以外の魔法使いを人間界に送って、戦わせるのよ!」
「何言ってるんだ、戦いだったら魔界で……」
「嫌よ、私争いが嫌いなの。とにかく、一番弱かった者が死ぬ運命よ」

 
 結局親なのに娘に逆らえず、娘の友達以外の魔法使いを探した。……十三名。この十三名の誰かが死んでしまうのだ。ただのメラージュの不満だけで。メラージュにとってはこの十三名の命等どうでもいいのだ。
「……かわいそうな十三名達よ。あなた達が、一生懸命に戦ってくれる事を期待する。選ばれた者達よ、幸あれ……」
  

 エクストラはそう言い、静かに部屋を出た。バタン、という戸の閉まる音が城に響いた。まるで戦いの合図のように……。





 バトル  T    ウラミ





 いつもより暗黒色に染まっている魔界。ここ、魔界城魔法陣前では、十三名の泣いたり、不機嫌な顔をしている魔法使いがいた。そう、この者達こそ、戦いに選ばれた者達なのだ。……簡単に言えば、ただメラージュの友達じゃないだけなのだが。
「思いっきりついてないね、私達」
「てかさ、わがまますぎじゃん? 俺ら戦わないよな?」
「当たり前ですわ、グラミス。一人倒せば良いのだし、協力しましょう」
 この仲のいい魔法使い三人組は、メリエーヌ、グラミス、ミロルドだ。小さい頃からいつも一緒で、家族のようだった。だから三人は言葉に出さなくても、お互いの顔を見るだけで何を言おうとしているのか等も分かる。もちろん魔法は使っていない。
「なるべく早くやっちまおーぜ。こいつら弱そうだし」
「何言ってるの。強さは見た目で分からないんだよ」
 ちっとも緊張感を見せないグラミスに、メリエーヌは呆れ顔で答えた。三人の中で一番年上なのだが、全く年上には見えない。見た目では分からない、とはこの事である。ミロルドも苦笑いを浮かべている。
「でも、私魔法が下手なので、ちゃんと戦えるか心配ですわ……」
 ミロルドは生まれつき魔力が低いので、魔法があまり使えないかわりに勉強はできる。魔界で一、二の秀才だ。
「大丈夫だよ、ミロルドは頭いいもん。敵の攻撃の戦略とかすぐに分かるから、魔法よりもいいよ!」
「そーだぜ。自身持てよ」
「あ、ありがとうございます」
「えーー、十三名のみなさま。まもなく魔法陣からスプラウト・デーモンが現れます。そいつに乗って、人間界へ行きます。人間の前では変装するようにし、十字架、逆立て箒などにご注意ください。また、魔法使い同士が出会った場合、すぐに戦ってください。団結はありです。では、頑張ってください」
 始まりの挨拶が終わり、魔法陣が輝きだした。ぬっと、大きなスプラウト・デーモンが出てくる。例えるなら、トロールぐらいの大きさだろうか。選ばれた十三名は、スプラウト・デーモンに乗った。スプラウト・デーモンは皆が乗った事を確認し、ふわっと宙に浮いた。そして猛スピードで飛んでいった。バサバサと、スプラウト・デーモンが羽を羽ばたかせる。その羽ばたかせた後から来る風が心地よい。
「あーあ、人間界か。だるいな」
「それに、変装もしなくてはいけませんのよ? 私にはとても耐えられませんわ」
 グラミスとミロルドは楽しく喋っている。この二人が喋っている間、メリエーヌはすごく嫌な気持ちになる。というのは、自分だけ仲間はずれにされてるような感じがし、また、ほかの人から一人だけ暗い子がいる、と思われるからだ。
「ねぇねぇ、ミロルド。ほら、あの景色……」
「あ、グラミス! この景色すごく綺麗ですわ!」
「うわっ、マジで綺麗じゃん! メリエーヌも見ろよ!」
 それ、私が先に言ったのに……そういいたくても言えない。嫌われるかも知れないからだ。友情というのは難しい事もあるのだ。
「ぇ……あ……う……。あ、人間界だよ!」
 何とか自分で悲しい気持ちを持ちこたえた。なんだか自分がイジメられているような気がした。
「あ、本当ですわ! あれが人間界……小さいですわね」
 魔界と比べると、ずいぶん人間界は小さい。まぁ、それは昔の戦いのせいでもあるのだが。
「なぁ、メリエーヌ。後で人間界の飯食おーぜ! もち、ミロルドもな」
「うん! それと、グラミスのおごりでね!」
「そうですわよ! もちろんおごりですわよね?」
「えー! そういうのはダメなんだぞー!」
 さっきまでとは違い、三人はまた仲良しオーラを撒き散らした。その中で一番輝いていたのは、メリエーヌだった。三人できゃっきゃと言っている時、始まりの挨拶をした魔族が出てきた。辺りが静まり返った。
「今からあなた達十三名を、それぞれ別の場所へ飛ばします。なお、団体の人は固まって飛ばしますのでご安心を。では忘れ物はございませんか? それでは……」
 パシッという音がしたかと思うと、周りが暗くなり、上にダークホールが出た。十三名はダークホールに引き寄せられ、飲み込まれてしまった。ビリビリとする感覚。壁のようなものにぶつかって足がひりひりする。そしてようやく先に光が見えてきた。ぶわっと、外に乱暴に三人は投げ出された。
「いたた……なんだよ、人をゴミみたいに!」
「いくらなんでも乱暴すぎですわ……せっかくのお洋服が台無しですわ」
「うー! これもみんなメラージュ様のせいよ! 絶対うらんでやるんだからー!」
「……姫だぞ、やめとけ。もし戦いに勝っても、殺されちまうぞ」
 確かに、これはグラミスの言うとおりだった。王や姫に逆らった者は皆重い罰がある。だから決して皆はむかったりしないのだ。
「私が一人前になったら、いつか王と結婚して、あのメラージュ様にうらみを返してやるんだからぁ!」
「……無理でしょうね」
 最後にミロルドが激しいツッコミをいれた。そして笑った。だが、このメリエーヌの言葉を聞いていた者がいたという事は誰も気づかなかった……。





 バトル   U    ヌスミギキ





 さて、その頃魔界では、ある一つの情報が王に伝えられていた。
「王様、姫をうらむと言った愚か者がいるそうです」
「なぬ? そやつは誰だ? 詳しく教えろ」
 王の目つきは変わり、執事を冷たくにらんだ。王の変わりように執事は一歩後退りしたが、また元の位置に戻った。
「現在人間界にいるメリエーヌ、グラミス、ミロルドを監視している者からの情報です。このうちのメリエーヌという者が、姫をうらんでやる等の無礼な言葉を……うっ」
 王は執事の首をぎゅっとつかみ、持ち上げた。恐るべきパワーだ。執事はもがき苦しんでいる。
「お……さま……なに……を……」
「……送るのだ」
「な……を……」
「私の娘に無礼な言葉を発するなど許さん! 魔界一の魔力を持つあの怪物をそやつらのところへ送るのだ!」
「!?」
 魔界一の魔力の持つ怪物はオリに閉じ込められていて、オリから出す事は禁止されている。なぜなら何が起こるかわからないからだ。その怪物は十秒で魔界の半分を消し去る事も出来るのだ。だから長い間ある魔法使いの魔法で、ずっと眠ったままなのだ。……ドサッ。執事の体がやっと地についた。執事はぜぇぜぇと言っている。首にはくっきりと絞められた後が残っていた。
「王様……ですがあの怪物は……一度出したらあの魔法使いしか……」
「私の言う事が分からないのか? 早くしろ」
「は、はい! 今すぐ!」
 執事は怪物のいる地下へ走った。その後ろ姿を王はずっと見ていた。
「……人間界にいる愚か者よ。せいぜい罰を受けるが良い。お前達になどの愚か者には幸はこない」
 そう言い、大きな声で笑い出した。その声は不気味で、冷たい笑い声だった。


 そんな事態が起きているという事も知らず、三人はやっと人間界のフランスのシャンゼリゼ通りにいる事が分かった。どうやら今は魔法で時間が止められているらしい。きっとこの間に人間に変装しろ、という事なのだろう。
「さぁ、変身しましょう」
「どんな風に変身しよっかなー。やっぱイケメン?」
「じゃぁ私は美少女!」
 調子に乗ってメリエーヌは美少女と答えたが、メリエーヌは変身する呪文を一つしか知らなかった。美しい妖精を呼ぶのだ。そしてその妖精が変身の粉をくれる。これを飲めば変身できるのだ。だがどのようになるのかは飲んでみないと分からない。メリエーヌは覚悟を決め、杖を持った。
「fairy fair!」
 メリエーヌが大きな声で叫んだ。綺麗で、透明で、明るい光がすぅっとメリエーヌの前に現れる。そしてその中に、キラキラと光った小さな妖精が出てきた。
「妖精よ、私に変身の粉をください」
「…………」
 妖精の手から黄色の粉がわき出てきた。これが変身の粉であり、別名妖精の粉。妖精から粉を受け取ると、妖精はかすかに微笑み、光と一緒に消えていった。
「あーあ、あの妖精みたいに綺麗になれるかな?」
「早く飲んでみろよ。俺達はもう変身したぜ」
「どうでしょう? グラミスと私、似合ってるかしら?」
「うん、とってもいいよ! よおし、私だって!」
 メリエーヌは粉を飲み込んだ。甘い甘い味がする。でもどこか苦くて、微妙な味だ。そしてだんだんメリエーヌの顔等が変化していった。
「……! まぁ、メリエーヌ!」
「お前、メリエーヌなのか!?」
「ふぇ? どんな風になったの? 鏡かして」
 自分の姿を見て、メリエーヌは目が飛び出るほど驚いた。自分の願い通り、美少女だった。髪はロングヘアー。目は大きく、鼻は小さい。身長はどちらかと言えば低い。だが足が長い……。その時時間が動き出し、人の声が聞こえ出した。
「……だからあの時妖精笑ったのかな」
 メリエーヌはこの時、妖精が笑ったらいい粉という事を知った……。笑わなかったらどんな風になるのだろうか?
「まぁ、ほかの魔法使い達を探そうぜ」
「そうですわね。さぁ、メリエーヌ行きますわよ」
「イエッサー! ……ん?」
 ズゴゴゴゴゴゴゴ……いきなり地面が大きく揺れだした。三人は立っていられなくて、その場に座り込んで固まった。
「何なんだ? 地震?」
「……いいえ、違いますわ……」
 ミロルドが震えながら、渦のある方を指差した。そこには大きな怪物がいた。
「なんだあれ? あれ魔界の怪物だよね?」
「……まさか、何も知らないんですか? あの怪物の事……」
「ん? 何かあるのか?」
「とにかく、ここは危険です! 見つからないところへ!」
 何がなんだか分からない二人は首をかしげながら、とりあえずミロルドについていった。だがその時予想もしない事が起こった。なんと怪物が追いかけてくるのだ。怪物が足をつくたびに、どしどしと地震のように震える。人々があまりに叫ぶので、グラミスは時間を止めた。
「ミロルド! あいつ追いかけてくるよ!」
「!? おかしいですわ! 普通ネブラは人の多いところに行きますのに!」
「なぁ、そのネブラって怪物なんなんだ?」
「ネブラは皆に恐れられている魔界一の魔力を持つ怪物ですわ! 昔、ある魔法使いの手によって城の地下に封印され、眠っているはずなのになぜ!?」
「魔界一の魔力!? どうしよう、そんなのにかなうわけない! あいつのあの牙みた? あの爪、あの冷たい目……絶対ヤバイ!」
「眠らされるほどヤバイのか!? 俺らなんで怪物に敵視されてんだ?」
「知りませんわ! さっきまでグズグズしてたから、もうあんなに追いつかれているじゃないですか! 全く……私魔力が弱いですが、この際仕方ありませんわね」
 ミロルドが杖を構えた。ミロルドは変身等以外に魔法をあまり使わないので、二人はドキドキしながらミロルドを見つめた。ネブラはずんずん距離を縮めていく。叫んだりしている時、ちらちらするどい牙が見え隠れする。
「hydrangea!」
 三角形に杖を振りながらミロルドは言った。ネブラの前に、巨大な紫陽花が出てきた。ネブラは花が苦手なので、どうしても前に進めなくなってしまった。
「おお、ミロルドすげー」
「感心してないで逃げるのですわ! すぐにあの紫陽花も消えてしまいます!」
 確かに、紫陽花はだんだんと薄くなってきた。ネブラは少しずつ、また近づこうとしている。
「あぁ、あの怪物また動き出した! 早く行こう!」
 そうして三人は走り、人ごみにまぎれた。そしてまた時間を進めた。今頃もう紫陽花は消え、ネブラは三人を探している頃だろう。だが、なぜあの怪物が魔界から出てこんな遠くの人間界にきているのか、なぜ城から出れたのか、ミロルドはずっと不思議に思っていた。
「やっぱりおかしいですわ。誰かがネブラを人間界に送り込んだとしか思えませんわ」
「でもさ、万一誰かが送り込んだとして、なんで私達を狙うの?」
「それは……操られているとか、そんな感じの事と思いますわ」
「まぁいいじゃん。飯でも食おーぜ」
「そうだね! 食べよー!」
「…………」
 グラミスとメリエーヌがはしゃいでる中、ミロルドは一人考えていた。もしあの怪物が私達を狙っているとしたら……もし本当にあの怪物が何者かに操られているとしたら……。私達は魔界の城の中にいる何者かに目をつけられているとしか考えられない。
「……どうやらこの戦い、生き残るのが難しそうだわ」
 一人ミロルドは溜め息をついた。ポツ、ポツと、雨が降り出した。

続く
 
2007/04/15(Sun)16:55:26 公開 / 銀杏
■この作品の著作権は銀杏さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
え〜っと、こんにちは。バトルUはどうでしたか? ここでようやく魔法の言葉が出てきました。これからこの三人はどうなるのか、見所だと思います。感想お待ちしております!
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この作品の投稿者 及び 運営スタッフ用編集口
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