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『フランスパンとある女の子の話』 作者:トロサーモン / リアル・現代 時代・歴史
全角3984.5文字
容量7969 bytes
原稿用紙約14.4枚
歴史というのは意外と僕たちの生活にぴったりしてるもんです。フランスパンが武器になった歴史と、一人の女の子の春休みの話。
 パンと音がしてフランスパン武器非推奨派リーダーの男は雨に濡れたアスファルトに倒れ込んだ。
 フランスパン武器非推奨派リーダーの男はフランスパン武器推奨派によって送り込まれたまだ若いチンピラの男に殺された。
 フランスパン武器非推奨派リーダーの男が殺されたことによって、フランスパン武器推奨派の勢いは加速していく。
 巧みな世論操作により、国内でのフランスパン武器推奨の賛成の声も大きくなってきた。
 フランスパンが武器になる日も近かった。
 
 
 
 ミカコという名前の女の子がいた。ミカコは女子高生で、郊外のニュータウンに家族3人で住んでいた。
 ミカコは仏頂面をよくする女の子だったが、心は優しく、うち解ければとてもかわいらしい笑顔をする子であった。
 ミカコはこのニュータウンから電車を使って30分の距離にある女子校に通っていた。
 女子校の近くには公立高校があった。そこは有名な進学校であったが、ミカコの学校は特に進学校というわけではなく、普通の女子校だった。
 しかし、近くに進学校があるため、何かと比較されることが多く、ミカコはそれが嫌で嫌で仕方なかった。
 普通の毎日。何の変化もない普通の日々。ミカコは生活に何の変化も期待していなかった。だからこんな毎日でも、嫌とは思えなかった。
 「毎日変化無いよねー」
 うん。うん。と言っていたけど。変化があったら怖いなあとミカコはそう思っていた。
 ミカコは変化を何よりも恐れた。
 だから、新しい場所へ行くとミカコは必ずテンパっていた。
 変化が怖いというのは誰もが持っていると思うが、ミカコもその一人だった。
 高校1年生も終わりに近づいていた。
 マンガやドラマのように楽しい高校生活なんてないやあと言うことにミカコは気付いたり、段々1年が短いように感じることなど、ミカコなりの高校1年生ライフを満喫していた時であった。
 ミカコの生活に変化が訪れるようになったのは。


 フランスパンはもともと、中世の時代、武器に使える食べ物として発明されたモノであった。
 そのころのフランスパンは今よりもずっと固くて、そして食べるのにも幾分か苦労を強いるものだったとその当時の文献にも残っている。
 だからあながちフランスパンを武器として使おうと言う意見は間違いではなかったといえよう。
 
 
 ミカコは電車に乗って、学校に行き来している。
 春休みも入って1日目のことだった。
 ミカコはクラブには入っていなかったが、忘れ物をしたため、学校に取りに行くときのことだった。
 ミカコは気付いていないがこの時、ミカコは一目惚れされる。
 相手は隣の進学校の男子。相手の名前はカンジといい。カンジはその日、クラブのため、学校に行く途中だった。
 タイプの女の子だった。
 そして、その制服から、あの女子校の子だとわかったのだった。
 カンジは、そこそこ、顔がよく、コミュニケーション力にも長けていた。
 まだ、この時は言葉を交わさなかったが、カンジは交わしてやろうと思った。
 ミカコは一目惚れされたことに気付いてはおらず、ずっと忘れ物の事と次に読みたい本の事を考えていた。
 

 フランスパンを武器にしてもよいという法律が可決されたのはフランスパン武器非推奨派リーダーの男が死んでから5年のことだった。
 それからフランスパンは食べられる武器ということで普通のパン屋では売ることができなくなった。
 なんせ、武器なので、使い方さえ誤れば人が殺せたからだ。
 
 
 
 カンジの思いは強くなっていく。
 恋煩いと言うモノだ。
 カンジは喋りたいのだが、どうして喋ればいいか分からなかった。
 それはいつしか思春期特有の暴走につながっていく。
 
 
 フランスパンは戦争にも使われた。
 フランスパンは着実に売り上げを上げていった。
 パン屋の中にはフランスパン作りへ移行し大金持ちになった奴もいた。
 フランスパンバブルである。
  
 
 16年間。ミカコは私の家族はとても仲がいいと思っていた。
 春休み3日目。
 家に帰ると、父が泣いていた。
 父は普段、涙を見せないぶん、ミカコは驚いた。
 ミカコは聞く
 「おとうさんどうしたん?」
 「いや、何でもない。何でもないよ」
 ミカコの父はなるべく感情を排した声で言ったが声は震えていた。
 
 
 ある兵士の私記その1。

 おばあちゃん。僕はここに来て、一週間になるけど、もうここにいるのが嫌になりました。
 おばあちゃんの作ってくれたフランスパンはもう食べれそうにありません。
 フランスパンで今日は3人死にました。
 バーンズも死にました。
 おばあちゃん。いつか帰れる日を夢見て。
 愛するエメリッヒより。


 春休みが始まって4日目。
 ミカコは休暇が始まるといつも手紙を書いている。
 宛先は自分のおばあちゃん宛だ。
 ミカコは小さな頃はよくおばあちゃんの家に預けられていたから、とても彼女のことが好きだった。
 ミカコはいつものように丁寧に一文字一文字書いていった。
 ミカコは便せん一枚書くのに1時間をかけ自宅のテーブルで書いた。
 今日は家には誰もいない。
 ミカコは書き上げると、冷蔵庫に牛乳を取りに行って、それを飲み干した。
 その時、ふと昨日の父親の姿を思い出した。
 何で泣いていたんやろう。
 何で?と考えるけど、答えは出なかった。
 今まで、父の泣いた姿を見たこと無かったミカコはとても戸惑っていた。
 何で泣いているのか、何故泣かなければいけなかったか。
 ミカコの考える世界では想像のつかないことだった。
  

 戦争は長く続いた。
 世界中で何百万、何千万の人が死んだ。
 人々が死んでいく中、フランスパンの常識も変わっていった。
 フランスパンは着実に武器へと変わっていく。

 
 電車のドアが開いてミカコは電車に乗った。ミカコに続いてミヤコとミホも乗る。彼女らはミカコの高校のクラスメイトだ。今日はこれからミホの家でだらだらと映画でも見ながら遊ぶことになっている。ミヤコとミホはこの高校に入って一番最初にできた友達でそして親友だった。
 ミヤコは少々意地悪な性格で、ミホはのんびりとしているけど言いたいことはいいと全員バラバラの性格だが、それが逆に合ったりするのだ。
 秋頃に一度ミホとミヤコはケンカしてお互いバラバラになったけど、冬にはみんなまた元通りになっていた。前よりずっと仲がよくなったようにミカコは思えた。
 「一期一会いうやん」ミヤコが言った。会話の内容はミホが会ったとてもかっこいい男子の話だった。
 「えーっ。絶対信じたない」ミホは否定する。でも、本気で否定しているわけがなく、笑いながらだった。
 「ミカコはどうおもうん?」ミヤコはミカコに言う。
 「えー。なんやろー」
 「今、絶対聞いてなかったやろー」ミホはミカコに言う。
 「聞いてたってー」ミカコは首を横に振りながらそう言った。
 「でも、絶対そう思うもん。ぜったいミカコ聞いてなかったってー」ミホは言う。
 「今、絶対聞いてなかった」ミヤコは言う。
 「えー聞いてたってー」
 電車の中で騒ぐ。
 ミカコは笑う。
 ミカコは笑う。
 


 フランスパンは武器になった。
 それが当たり前の事実になった。
 あなたは銃が台所用品だと言われて信じられるか?
 それと同じように彼らの時代ではフランスパンは武器であった。
 フランスパンは食べ物としての力はほぼ無であった。
 このころのフランスパンは、手榴弾であり、打撃用の武器でもあり、兵士のための非常食でもあった。
 


 カンジにすれば、奇跡に等しかった。
 好きになった女の子にまた会えたのだから。
 そして、名前を聞くことができたから。
 それが聞いたと言うことになるならだ。性格にはたまたま、耳に入ったのだ。
 ミカコ。
 それが彼女の名前だ。
 ミカコさん。
 学校もわかっている。
 名前もわかっている。
 ふと、元カノの顔が浮かんだ。
 あの学校に行った元カノが。



 しげる君のはなし
 しげる君はミカコと同じ団地に住む、小学6年生だ。
 ミカコとは隣人であって、とてもよく遊んだりしている。
 ミカコ姉ちゃんとしげる君はそう言って慕っていた。
 しげる君は小学生っぽく、よく活発に動く子だった。
 今日も、この団地の友達と遊んでいて、そして6時になったから帰っている時だった。
 「しげるばいばーい!」
 「ばいばーい」
 歩いて一分くらいの距離だからどうせすぐ会えるのに、この頃の子供にしたらやっぱり別れる時はもの凄く寂しかった。その寂しさを紛らわそうと、しげる君は走って家に帰っていた。
 家は団地の15号棟の5階の503。ミカコ姉ちゃんの家は504だ。
 6時代の団地はカレーの匂いでいっぱいだった。しげる君はそれが好きだった。
 そして、今日カレーだったらいいなあと思いながら、階段を駆け上がっていく。
 5階。
 503号室。
 チャイムをならそうとした時だ。
 504号室から、何か大きな声が聞こえてきたのは。
 それはヒステリックに何か怒鳴っている女の声だった。
 そしてその声はしげる君を嫌な気分にさせた。
 しげる君は何だろうと思い、チャイムをまだ鳴らさなかった。
 ヒステリックな声は段々大きくなり、ドンドンドンと足跡がした。
 そして、バン!と大きな音をたてドアが開かれた。
 そこにはミカコ姉ちゃんのおかあさんが立っていた。その顔は泣いていてボロボロだった。
 そしてそのまま通路を走って何処か行ってしまった。
 しげる君はどうしたんだろうと思ったけど、何かこれ以上関わったらまずいやろなあと子供ながらに思ったので、追及することを止めた。
 そしてしげる君はやっとチャイムを鳴らす。
 
 
 
2007/04/06(Fri)03:25:42 公開 / トロサーモン
■この作品の著作権はトロサーモンさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
バイオレンスに飢えているそんな気がします。



自分は昔はもっと柔らかい文章を書いていたのですが気分的にもこんな文章しか書けませんでした。
今回こそ書ききるぞー。

とりあえず次回はフランスパンの武器になった歴史。
ミカコの周辺の話。

全三回で終わればいいなあ

ここから第二回更新のときのあとがき

全三回無理!

まだまだ続きそう

なんか、書いてると楽しいですね。


今日の一曲 world's end girlfriend /singing under rainbow
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