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『ボクへの罰』 作者:円 / ショート*2 恋愛小説
全角1744.5文字
容量3489 bytes
原稿用紙約5.95枚
ボクがおかした罪。それに対する彼女からの罪でボクは大好きなものを二つ失った。
11月の寒い夜。ボクは美紅に呼ばれ美紅のマンションに会いに行った。玄関に入ると美紅の手料理、ボクがちっちゃいころから大好きなハヤシライスの匂いがした。






ボク、裕輔が美紅と出会ったのは大学の入学式、その冬に付き合いもう4年。
きっかけはボクの一目惚れだった。一目惚れなんて、こんなこと本当にありえるんだ。と、不思議に思っていたけど、ボクはその日から美紅のことで頭がいっぱいで、本当に好きで好きでしょうがなかった。
とにかく振り向いてもらおうと、食事にさそったり、映画に誘ったり、僕は必死だった。その頃のことを美紅に聞くといつも決まって、
「裕輔が毎日のように誘ってくるんだもん。いつも一緒にいたから、好きになるしかなかったわよ。」
 と、笑いながら答えていた。


大学一年生のときのクリスマス、ボクはアルバイトをして貯めたお金で美紅に指輪をプレゼントした。
サイズを間違えて、美紅の細い指には大きすぎた。それでも、美紅はチェーンに通してネックレスにして、毎日見に付けていた。その指輪が美紅の首元で光るたび、ボクは幸せになった。
その時美紅はボクにピアスをくれたけど、その夜美紅の耳にも同じピアスが付いているのに気がついて、なんだかますます嬉しくなって、ボクは笑顔になった。


それから四年も経ち、ボクの身の回りのものや部屋の家具は、どれも美紅との思い出があるものばかりになった。ボクの家に来るといつも美紅が座っているソファー、美紅をおそろいのコップ、一緒に買いに行ったテレビ…全部が全部、美紅とボクが付き合っているという証のようで幸せだった。


大学を卒業して、美紅とは別々の会社に就職したけど、休みの日は一緒に出かけたり、部屋でのんびりしていた。もう四年も経つとドキドキなんて感情はなくなったけど、ボクはそれでも美紅のことが大好きだった。それなのに、ボクは同じ職場の人に恋をした。恋というか、ただドキドキ感だけを求めての浮気、本当に愛しているのは美紅のほうだ。


浮気なんてことしてはいけないのはわかっているし、罪悪感もあった。けど“愛しているのは美紅”、だから大丈夫。なんて勝手に思い込んでいた。今思えば大丈夫なわけないのに。ボクは何に対して大丈夫だとおもったのだろう。こんなこと知ったら美紅は泣くだろうな。ボクのこと嫌いになるだろうな。そんなことはわかっていたのに。








 美紅のマンションにつき、玄関で美紅に言われた言葉。
「終わりにしよう。もう裕輔には他に好きな人がいるでしょう?」
 そういわれたのに、ボクは実感がわかず。ただハヤシライスのいい匂いがした。
ふっと見ると、美紅の首にはもうあのときの指輪はなかった。それをみてボクは何もいえなくなった。
浮気しているのは事実だ…美紅はそのことを知っているのか?僕は好きなのは美紅だ。でも、胸を張って否定なんて出来ない。僕は何もいえず、ただ下を向いて考えていた。気が付くと美紅に押され玄関の外にいた。


「じゃあね。」
ドアを閉められる瞬間、そう言う美紅の声が震えていた。顔を上げると一瞬だけ美紅の泣いている顔が見えた気がした。


それから、ボクは歩いて自分の家に帰った。
“きっとこの道を歩くことはもうないだろうな”そんなことを考えていると涙がでてきた。頬まで伝うころには涙が冷たくなっていた。

やっと家につき、電気をつけず、玄関に座り込んだ。電気をつけなければ、部屋にある美紅との思いでをみなくてすむ。



美紅を愛している。



浮気なんてしないで、美紅だけにすればよかったんだ。



そうすれば引き止められた。


今更後悔したって遅いのに、どうしようもないのに。なんであの時なにも言わなかったのだろう。

これだけをずっと考えていた。今頃美紅は何をしているんだろう。
電話したら美紅は出てくれるかな。いやがるだろうな。あんなに好きだったハヤシライスをもう食べられることはないだろうな。
あの匂いがすると美紅のことを思い出してしまう。でも、これはボクが美紅に対してした罪からしたら何倍も軽いだろうな。
ぼくはそのまま動くことが出来ず、玄関で眠ってしまった。



その日ボクは涙を流しながら、美紅が作ったハヤシライスを幸せそうに二人で食べている夢をみた。
2007/03/25(Sun)16:27:24 公開 /
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■作者からのメッセージ
二作品目です(^ω^)
前回より設定を分かりやすくしようと気をつけて書きました(・ω・;)
おかしなところがありましたら、アドバイスや感想おねがいします。
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