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『例えば?』 作者:円 / 恋愛小説 ショート*2
全角1156.5文字
容量2313 bytes
原稿用紙約3.7枚
恥ずかしがりやの男の子と例え話が好きな女の子の話です。
「ねぇ祐太、例えばだけどさ」
また始まった。例え話を初めたのは沙耶。祐太というのはボクの名前で、沙耶はボクの彼女だ。
「なに?」
 ボクは適当に聞き返した。
沙耶のたとえ話はいつものこと、しょっちゅう“もしも~”とか“例えば〜”とかいう話をしていて、真剣にとりあっていたらきりがない。
「例えばその本、あたしがかいたっていったらどうする?おどろく?」
沙耶はボクの読んでいる小説をゆびさして楽しそうにゆった。
「そりゃ驚くよ。尊敬するかな。」
 実際は沙耶が書いたなんてありえない話だ。
「そっかあ。ホントは書いたのはあたしじゃないけどね」
 うん。そうだよね。と、心の中で思った。
「じゃぁ…あたしがもうすぐいなくなるとしたら?悲しい?」
沙耶が言った。なんでこんな質問するんだろう。自分で言うのはなんだかおかしいけど、ボクは沙耶を溺愛している。沙耶がいなくなるなんて考えただけで悲しい。けど、沙耶のまえではそんな素振りをするのはなんだかはずかしいから小説を読みながらわざとそっけなく答えた。
「うん。そりゃ寂しいかな」
返事が返ってこないと思い沙耶の座っているほうに顔を向ける。一瞬暗い顔をしているように見えた。けど、ボクと目があうと、笑顔をつくりながらこっちにきた。
「やっとこっち向いた」
 沙耶が僕の斜め前に座って、ちょっとすねながら言う。
「あぁごめんごめん。」
 小説を置いて沙耶のほうを向く。
「祐太はいつも沙耶のことかまってくれない、ほんとは沙耶のことなんか好きじゃないんだ」
顔を下に向け、口をとがらせて言う。それがなんだかとても可愛らしく見える。ボクは沙耶のこの表情が好きだ。でも、この顔をしているってことは、ボクはまた沙耶に悲しい思いをさせてしまたってことにもなる。可愛いと思う反面ボクはすごく焦っていた。なんとか沙耶の機嫌をよくしようと
「そんなことないよ。」
そういって、沙耶の頬に両手をあてこっちを向かせた。
「俺は沙耶が本をかけなくたって好きだし、いなくなったら悲しいよ?だから一緒にいてよ」
 ボクにしては頑張った、自分でも以上なほど顔が熱くなっているのがわかる。きっと沙耶にもボクの顔が赤くなっているのがばれてしまっているだろう。どうも自分の気持ちを素直に言うのが苦手だ。でも、頑張った効果はあったらしく。沙耶の顔がくしゃっと笑顔になった。
 さっき言ったことなんて僕の沙耶への気持ちのほんの少しなのに、沙耶はそれをきいてしばらく満面の笑みだ。
ボクの気持ちを全部しったら沙耶はいったいどんな顔をするかな。

「ねぇ沙耶、例えばさボクが沙耶のことが大好きだって、心から愛してるっていったらどうする?」
 こんな風に沙耶に話せたらいいのに。僕が沙耶にこの例え話が出来るようになるのにはもうしばらくかかりそうだ。
2007/03/23(Fri)19:47:55 公開 /
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