- 『五時を告げるチャイム』 作者:苺 / ミステリ 恋愛小説
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原稿用紙約10.65枚
お化けなど、そういうあいまいなモノを全く信じない、少年・悠太。 だが、そんな悠太に、学校に二十年前から伝わる噂が耳に入る。 午後五時を告げるチャイムが鳴ると同時に現れるという、男の子の噂である。 最初はばかばかしいと思っていた悠太だったが、悠太はたまたま、その条件がそろった学校に居残ってしまったのだ。 そして、その噂の男の子と遭遇。悠太は、五時に一度だけ起きる、不思議な出来事に巻き込まれていくのだった…。
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S県T市。
この市に存在する、ある小学校には、奇妙な噂がある。
その噂とは、午後五時のチャイムが鳴ると同時に、男の子が現れ、五時まで残っていた子を襲い、殺してしまうと言う、怖い噂である。
この噂は、約二十年前から伝わっている、古いとも新しいともいえない、そんな噂だ。
そして、時は巡って、現在・2007年にも、噂は語り継がれている……。
まだ、噂の巡る学校の生徒達に、静かにささやかれる位………。
「ねぇ、ねぇ。あの噂、知ってる?」
「知ってる、知ってる。怖いよねぇ〜。」
「うん、うん。五時以降の学校になんか、絶対残りたくないよねぇ。」
二時間目が終わって、20分休み。待ちわびていたかのように、女の子達は早速、噂話をし始めた。
そんな、彼女たちを少しあきれながら見ている少年がいた。
『まぁた、話てら。よーく、あきずにいつも話せるよな……。』
出席番号十七番。滝見 悠太である。
彼は、お化けとか、妖精とか、そんなあいまいなモノは信じない性格だ。
だから、女の子達が話してる噂なんてもちろん、心霊テレビなんてものは見たこともない。
「おぉーい!悠太!今日、放課後、学校で遊ばね?」
「んっ?おぉ!遊ぶ遊ぶ!」
「いつも通り、サッカーで良いよな?」
「もちろん!負けねぇかんな!」
「こっちだって!じゃなっ!放課後!」
「放課後ー!」
悠太にいきなり話しかけてきたのは、別クラスの友達だった。
お化けとかを全く信じない悠太だが、サッカーだけは大得意で、何より、一番大好きなスポーツなのである。
そんな感じで、悠太は、放課後、友達を遊ぶことになった。
時はながれ、放課後……。
「ごめっ!遅くなった!」
「別にいいって!やろうぜ!」
「おう!」
まだきていなかった友達がようやく来て、悠太達の遊びは始まった。
「悠太!手加減すんなよー!」
「そっちこそ!」
悠太達の勝負は、かなり長く続いた。
そして…。
「あっ!もーこんな時間だ!」
「えっ?まだ四時五十五分じゃん。もっと遊ぼうぜ。」
「だって、もうすぐ五時だろ?噂通りになったらやだもん!」
「悠太も早く帰れよ!」
「わかったぁ。」
どうやら、悠太以外の子達は、みんな、あの噂を信じているらしい。
友達の忠告に、生返事をした悠太は、一人でリフティングをしていた。
すると……。
きーん・こーん・かーん・こーん…。
午後五時ちょうどを告げるチャイムが学校中に鳴り響いた。
「ネェ。僕も一緒に遊んで良い?」
背後でいきなり声がした。
悠太と同じくらいの年齢の男の子が、いきなりそう他の背後に現れたのだ。
「どぅわぁ!」
いきなりだったので、悠太は思わず声を上げた。
「一緒に遊んでも良い?」
「えっ?あっ、あぁ…良いよ。」
悠太の後ろにいたのは、普通の子だった。が、「どこかおかしい」と悠太は思った。
「じゃぁ…何する?君が決めて良いよ。」
「んっ?じゃぁ…そうだな。サッカー、できるか?」
「サッカーか…良いよ。」
男の子の承諾を得ると、悠太は、校庭の真ん中にバッテンをかいて、そこにボールをおいた。
「よーし。先に、ゴールを決めた方が勝ち!それで良いよな?」
「うん。良いよ。」
男の子が静かに答えた。
そのあと、ジャンケンをして、悠太が勝ったので、悠太からのキックオフでゲームが始まることになった。
「おっしゃぁ…!いくぞっ!」
悠太がボールを蹴りだした。
だが、試合が始まって、十秒後に、ボールは男の子の足にあった。
「えぇ!?」
悠太が驚いた頃には、もうゴールは決まっていた。
男の子が勝利したのだ。
「僕の勝ちだね…。」
「すっげぇ。お前すげぇな!」
悠太は、男の子の肩をたたきながら言った。
「それほどでもないよ…。」
男の子も少し照れているようだった。
時計の針が、五時十分を指した。
「あっ。僕そろそろ、かえんないと。」
「おっ?あぁ、そうだな。俺も、もうかえんないと。」
たった、一度のゲームで二人はすっかり友達になっていた。
「じゃぁね。」
小走りをしながら、男の子は校門から出ていった…。
その、数秒後だった…。
ききぃいいいぃいいぃぃいぃぃぃぃいいいぃいいぃいいいぃいぃ!!!!!!!
トラックが急ブレーキするような音が、悠太の耳をつらぬいた。
「大丈夫か!?」
悠太が急いで、校門の外に走った。
だが、そこには何もなく、いつもどおり、車が走っているだけだった……。
「…………」
悠太は疑問を残しつつ、家へと帰っていった。
あの不思議な出来事がおこった、次の日、学校にまつわるあの噂を、悠太は先生に聞いてみた。
いつも、午後五時に現れるという、あの男の子は、二十年前のここの生徒で、少々ひかえめだが、スポーツ万能で、けっこう、人気のある子だったという。
だがある日。友達が帰った後も、サッカーの練習を五時十分までしていたその子は、あせって、車の通りの多い学校の前へ飛び出してしまったのだ。その結果、彼はひかれ、若くして死んでしまったという…。
悠太は何気なくいつも登校していたが、校門の前のすみには、悠太と同じくらいの身長(だいいたい、150p位)のかわいらしい、石像がある。その石像が、あの男の子の慰霊碑がわりの石像というわけだ。
手にはサッカーボールが持たれていて、その男の子は、石像なのでいつも無表情だ。
悠太は、先生から話を来た後、学校から下校するときに、男の子の石像を見てみた。
すると、いつも無表情な石像の顔が、悠太にはなぜか微笑んでいるように見えた。
「お前は、死んじゃったけど、俺、お前の分まで、精一杯生きるからな!」
悠太は、石像に言った。
石像は、何も言い返さないが、悠太には何か聞こえたようだった。
「また、遊ぼうな。」
ニッ、と悠太は笑った。
すると……。
「ありがとう。悠太。」
悠太の後ろで、あの男の子の声が聞こえた……。
−五時を告げるチャイム−
END
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2007/03/15(Thu)20:40:10 公開 / 苺
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■作者からのメッセージ
初めまして!苺です!
意味のわからない小説ですが、呼んでいただけると、うれしいです!
五時を告げるチャイム。いかがだったでしょうか?
感想お待ちしております!
これからも、がんばろうと思いますので、よろしくお願いします!