- 『〜トパーズの瞳と祝福された者たち〜』 作者:曖莉 凪 / ファンタジー アクション
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全角3639文字
容量7278 bytes
原稿用紙約12.5枚
まだまだ登場人物が出ます。(たぶん)シリアスになるかもですが、楽しく読んでほしいです。
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プロローグ
(な……に……ここ? )
長い白虎色の髪をした少女がまわりを見回した。
そこらじゅうに赤いペンキが散乱している。
その少女の胸の間にある透明な石が微かな光を帯びている。そしてその少女は左眼から血が滴り落ちる。トパーズの右眼が大きく見開いた。 自身の手にはべったりと鉄くさいペンキがついている。
焼きつくような声を思い出す。
『逃げなさい!あなたは……あなたはこの国の宝石であり、そして
第一の姫よ!!!なんとしてでも生き延びて……』
『皆の……分まで……』
天よ裂けろと言わんばかりの悲鳴が轟いた―――
―始まりを告げるユメ―
「あち――……」
大粒のトパーズ色を持った瞳が静かに眼を開ける。その美貌にはだれもが感嘆するほどだ。
活気がある町、エルタの道のど真ん中で少女は倒れていた。
その活発的な白虎色のショートヘヤーと荒い言葉使いのせいで少年に見えなくもない。
(ちっ、何が活気のある町だよ。人が倒れてるんだから水差し出すくらいしろよな。) その美貌とは裏腹に心の中では凄みのある響きでつぶやいていた。
だが、さっきからおかしいと少女は思っていた。いくら活気のある町だと言ってもこの騒ぎはなんだ? 密かに眉をひそめる。
少女一人倒れているのに誰一人として眼を少女に向けることはない。
遠くの方から走る音が聞こえる。
「ぐぇっっ!! 」
かえるが潰れたような声を出す。
だが、少女を潰した犯人は気にせず走っていく。
「おい、待てこら。 人踏み潰して謝りもしねぇのか! 」
さっきまでのぐったりさは何だと言うほどにがばっと立ち上がる。
「あ――…ゆっとくけどこの時間帯そこに寝て命乞いしても誰も助けてやんねぇぞ?水の一滴もな。 てかお前がそこで寝てんのが悪ぃだろ。」
振り向く少年は「美」まさにその顔だった。だが、少女と一緒で口が悪い。
「てめっ…」
反論しようとした少女の後ろで悲鳴が聞こえる。それに伴ない馬が駆ける音がする。
「ちっ。野郎どもがきやがった。くそっ、てめぇも来い!! 」
少年はその少女の手を取り、路地に駆け込んだ。その時、少女は目眩のようなものを感じたがあえて黙殺する。
「……なんだあいつらは? 」
少女が首を傾け聞く。
「この時間帯にやって来る盗賊だ。だから皆さっさと家に入るんだ。
外にいたら金取られるか殺されるかだからな。」
少年はなんでもないように言った。
路地から隠れて見ればさっき悲鳴をあげていた婦人が髪をつかまれ、涙がつ―…と流れている。
「……お前は助けないのか? 」
少女は真剣を帯びた瞳で少年を見つめる。
「…別に知らねぇ奴に情けかけるほど俺は優しくないんでね。」
沈黙の後に嫌味を吐き出す。
「……そうか。」
少女の体がゆらりと動く。
「いつまで逃げるつもりなんだ? 」
驚いたように少年が眼を向けた。
「つまりお前は人一人っ子守れねぇ度胸のねぇ奴ってことだろ? 」
淡々とした少女の口調だが、その体は怒りを帯びていることが一目でわかった。 だが、その怒りは少年に向けたものではなく盗賊に向けたものだ。
そして、少女は身にまとっていた黄褐色のマントを翻す。
一瞬、視界を奪われた少年が次に眼を向けた時にその少女はいなかった――……。
ふっ、と盗賊に向かって風のように駆けていた少女が微笑する。
(いつまで逃げる、か。 まるで自分自身にむけた言葉だな。俺はいつまで逃げるんだ? )
しかし、その考え事はすぐに消される。 集中するか、と言ってどんどん盗賊との距離を縮める。ざっ、と見でせいぜい30人から40人の盗賊がいる。 だが、その速い動きで誰も少女に気がつかない。
「なっ……。」
婦人を掴んでいた盗賊が少女に気がつく。
だが、もう遅かった。少女の体は低い姿勢でその盗賊の真正面から向かっている。
そのまま蹴り上げるだろう、と思われたが少女はいっきに空へ飛び上がる。
「はっ!!!!! 」
そして空中でまわし蹴りをくりだす。
―――一陣の風がフいた……。
周りからはカラン、カランと乾いた音が聞こえる。よく見ればそこらじゅうにナイフがちらばっている。
その間からして5分も経っていない。
「まさかっ、あいつっ……!! 」
音に気がつき少年は路地から道の方を見回す。
少女は柱の上に立っている。いたって危なそうだが少女は苦もなく立っている。
「ナイフの使い方の知らねぇ奴が振り回してんじゃねぇぞ。下種。」
そう言って、婦人を掴んでいた盗賊に一発技を披露する。その盗賊はいとも簡単に気絶する。
「早く家の中へ! 」
婦人に指示をする。婦人は泣きながらも近くの家へ飛び込んだ。
「さて、と後は俺とお前らだけだ。どうしようか? 」
疑問系に問うがそれは殺ス、と眼が告げている。 その少女の瞳は右眼がトパース、左眼が金色――魔物の眼だ。
すっ、と風がまた吹き上げる。余所見をしている間に10人ほど倒れている。気絶させただけだが首にはスっとあおじが浮かび上がる。
「なるべく血は見たくないんでね。」
少女が微笑する。その笑顔さえ、コワい。
「んの、貧乳バカ女!!! 」
倒れそうになる首を少年は手で額を押さえて支える。
「……でもあの力、あの速さもしかして。」
(ちっ、きりがねぇ。40人だと思っていたが、後から後から出てきやがる。雑魚でも多勢に無勢だな。)
そのとおりに、盗賊たちはまだまだ出てくる。だが、その力は少女にとって亀にもおよばないくらいだ。
腰に付いていた無数の小型ナイフを性格に盗賊の急所に投げてゆく。
ぶわっと隙を突かれた少女に盗賊の一人が切りかかる。
「うおぉぉぉぉぉぉっっっつ!! 」
間一髪で避けたが胸元の衣類が破れる。その、攻撃のせいで少女のテンポが崩れ、後ろから回ってきた盗賊のナイフが背中に突きつけられる――――…… はずだった。
「よそ見してんじゃねぇ!! 貧乳!! 」
少年が少女を抱き寄せる。
「……やっぱりな。」
少年は少女の胸元にある宝石を見て呟く。そして、少年は肩に巻きついていた布を引き剥がす。
「邪魔だぁぁぁぁっっ!!!! 」
その瞬間、少女は頬に灼熱の焔の熱さを感じた。 少女はトパーズとゴールドの瞳を見開く。 その道には焔の縄で縛りつけられている盗賊たちが気を失っている。だが、その縛りつけている焔は熱さを持たずに盗賊たちを縛り付けている。
「大丈夫か……? 」
少女は力なく頷き、自分の胸元にある宝石があらわになっていることに気が付き、急いで胸元を隠す。
「ぁ…ありがと。」
「……ってちょい待て。お前、さっきなんて言ったけ?? 」
「大丈夫か? か? 」
少年は首をかしげる。
「……その前の前の前。」
淡々と言葉が告げる。
「あー… 貧乳女? 」
「てめぇ……」
反論しようとした少女だが、少年の腕を掴んでいた指が二の腕のひやり、とした感触に気づく。
「これ……まさかっっ! 」
ばっ、と少年が再び布を腕に巻く。
「じゃあな。もう、会わねぇだろうし。もし、会ったとしても二度ととばっちり受けねぇかんな。」
「 貧 乳 女! 」
少女の眉間の皺がどんどん増える。
「っ……。」
少年が立ち去ろうとする。
だが、少女が再び少年の腕を掴む。
「ま…待って!! 俺にはお前が必要なんだ―――」
真剣なトパーズとゴールドの瞳で見られた少年は驚いた眼で自分より低い体を見る。
「あー…俺貧乳に興味ないから。 ごめんな。まァ、顔はいいけどなァ。」
残念そうな顔をする、少年。
「勘違いすんな!! 」
みるみるうちに少女の顔が赤くなる。
「……いい加減にしてくれ。お前の勝手で俺を巻き込むんじゃねぇ。」
そして、少年は自分の家であるところのドアを開け、中に入る。
「まっ…! 」
『待って。』そんなこと自分に言える資格があるのだろうか……。少女は下を向き下唇を噛む。
(せっかく見つけ出したのに……。)
ドぉぉおんっっ!!!!
少年は自分の家のドアが壊され、驚いて眼を剥く。
「頼むっ!! 話だけでも聞いてくれ! それでも俺の願いに協力したくないのならそれでいいから……。」
少女は床に足をつき、跪いている。
俺に……私にこんなこと言える資格はないのに。
それでも……!!!!
「……まず、てめぇの名前を名乗れ。」
少年が言う。
「……先に名乗らぬ者に教える名はない。」
少女は唸るように答える。
「……。」
「……。」
沈黙が流れる。
「リディーだ。」
少女が口を開く。
「俺はライ。」
少年も口を開く。
「楽しい話じゃないらしいな。俺の家に行くぞ。」
すると、リディーは驚いて眼を上げる。
「ここ、お前の家じゃないのか―? 」
「ただの空き家だ。」
たしかに、周りはくもの巣だらけだ。
「行くぞ――……。」
ライがリディーの腕を引く。
リディーは、その強引さに驚いたが、それでも痛くないよう優しく腕を掴む男を見上げ
嬉しそうに笑った。
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2007/02/12(Mon)19:08:39 公開 /
曖莉 凪
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■作者からのメッセージ
初めまして。曖莉 凪です。
色々、批評等お願いします。
皆様が読みやすいように変えていきたいと思います。
これからよろしくお願いします。