- 『坂の上で、キミを想ふ。』 作者:池田 / 未分類 未分類
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全角1201.5文字
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原稿用紙約4.95枚
風芽吹き愛は育まれる。そう、まるで枯れた落ち葉のように。
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私、山中 妙子。今日は私のとある一日を紹介するわね。
今朝のコーヒーには角砂糖を十個も入れた。急に糖分が摂りたくなったから。
コーンフレークは牛乳に浸してから十五分は待つ。へなへなにしおれたフレークが、歯に優しい。まあ、要は固いのが嫌いなだけなんだけどね。それに、チョコチップ入りのフレークだから、チョコが牛乳に溶けてココアみたいになるし。
これだけで十分お腹はふくれる。あとは、セブンイレブンで大好物のつくねおにぎりを買えば昼までもつ。絶対もつ。もたなかったら、主任が何かおごってくれるはず。私の美貌にひれ伏すがいい、あのバカ主任。いつも私の太ももばっかり見やがって。今度太ももに、『バカが見る!』とでも書いておいてやろうかしら。ふふふ。
「いけない、そろそろ行かないと」
私は家を飛び出した。鍵だけは忘れずに閉めておかないと。別に盗られて困るような物は一つも置いてないけどね。
あ、でもあれだけは別。
私の初恋の彼。武君からもらった、大切な大切なペンダント。一度もつけたことはないよ、どこかで失くしてしまいそうだったから。
愛しのあなたは、今どこにいるの?
明日、会う約束だよね――?
*
「おーい、妙子こっちこっち!」
「やだー、待ってよ武君!」
どこにでも居る、ラブラブなカップルだった私たち。ペアルックなんていうものは日常茶飯事で、いつも週四のペースで頻繁に会っていた。
大学四年のとき、合コンで知り合ってからもう三年の月日が流れていた。
互いに、結婚を前提とした真剣なお付き合いのはずだった。
彼が、消えるまでは。
「よーし妙子。この坂の上まで競争だ!」
「嫌よー、疲れるもの。男子が速いに決まってるじゃない」
「ははは、先に行ってるぞ。坂の上で待ってる」
そのとき、彼は小声でこう言った。
「……大事な話がある」
私はそのとき、初めて嫌な予感がしたの。
直感だったけど、彼が消えてしまいそうな、そんな途方もない闇に呑まれてしまいそうだった。
走った。彼に消えてほしくなくて。
でも消えたの。
何が起きたか分からなかった。
神隠し?
夢なら、覚めて。
本気で、そう思った。
「武君! どこにいるの?」
だが返事は来なかった。
私がその場で動けずにいると、風が勇ましく秋の音を奏でた。
「たーえーこ」
後ろで、声がした。
「た、武君!」
なんと彼は後ろにいた。
いつのまに? 私の前を走っていたはずなのに。
「武君、な、な、な、なんで私の後ろに?」
慌てふためく私をよそに、武君はこう言った。
「俺、実はエスパーなんだ。テレポーテーション覚えたばっかで、ちょっと使ってみたくってさー」
「あーなるほどね」
あれ? 何か目覚ましが聞こえるような?
「夢……」
さーて、セブンイレブンにつくねおにぎり買いに行こ!
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2007/02/11(Sun)00:11:36 公開 / 池田
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■作者からのメッセージ
初めまして。
ジャンルがよく分からなかったので、未分類にしておきました。
それでは失礼いたします。