- 『ドール・ザ・ワルツ〜終わりのない追走曲(カノン)〜』 作者:沙良 / ミステリ アクション
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原稿用紙約4.9枚
人形の世界。それは戦いの世界である。人形にされて、戦いをする事になった桜。人間に戻るには、戦いで生き残るしかない。桜は人間に戻れるのか?一人の少女の戦いの物語が始まる。
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*イシキ*
私は水無月桜。ごく普通の中学二年生である。学校が終われば塾、その次は家の仕事、その次は勉強。すごく忙しい毎日を送っていた。私は成績トップの優等生。好きな事は勉強。好きな物は勉強道具。あともう一つ……。人形。だって人形ってかわいいし、すごくきれいな顔をして微笑んでる。何年立ってもきれいな顔のまま……。私は人形が羨ましくてたまらない。私も人形になりたい。……無理だけどね。でも私の夢は現実のものとなってしまう。それはいつものように良い天気で、いつものように学校へ行っている時だった。
「桜! おっはよう! 元気かー」
「おぉ! 亜里沙! おはよー。元気元気!」
亜里沙は私の親友。昔からの友達。……と言っても、亜里沙しか友達がいないんだけどね。私は昔、花崎道楽町からここ、花海道楽端前町に引っ越してきた。体の弱い私のために、お母さん達がお金をためて、空気の良いこの町に引っ越す事にしたのだ。私は友達が出来なかった。唯一の友達は人形のアレンだった。黄色の巻き毛、大きく開いた青色の瞳が特徴。学校にもかかさず持っていっていた。そんな時、
「桜ちゃんって、いつもその人形持っているんだね」
私が上を向くと、そこには亜里沙がいた。亜里沙は私を引っ張って、いろいろ教えてくれた。初めて出来た友達。アレン以外の人間の友達……。私は嬉しくてたまらなかった。……おっと。そんな事思っているうちにもう中学校についた。
「あ、亜里沙。先行ってて。私ちょっとトイレ行ってくる」
「うん。授業前に戻ってきなよ」
私はトイレに行った。といってもアレンの巻き毛を整えるためだけどね。
「アレン、いつもきれいだね。憧れちゃう……」
そう独り言を言いながらアレンの巻き毛を整える。……ピク。今アレンの目が動いたような……?よく見たら、アレンの大きな瞳がさらに大きくなっている。アレンの青い瞳がまっすぐに私を見つめている。私は怖くなってきた。
「見間違い……だよね。も、もういいや。教室に戻ろうっと」
私はアレンを鞄に入れ、トイレから出ようとした。その時……。何かに手をつかまれた。やわらかい、小さな手。まさか……。
『ねぇ、桜。どこに行くの? 早く整えてよぅ』
「あ、アレン!?」
それはアレンだった。にこにこしながら私を見つめている。何で!?人形なのに……。
「ね、ねぇアレン。あ、あなたどうして……」
『桜、驚いた? 私、意識あるんだよ。人形はみんな意識があるの。ただ動かないだけ』
「じゃ、じゃぁ何で今まで動かなかったの?」
私がそう言った途端、アレンはにやっと笑った。……気味が悪い。さすがの私もそう思った。
『それは……』
アレンはなおもにやにやと笑いながら話す。いくら人形がかわいくても、にやにやと笑う人形なんて気持ち悪い。それにアレンの瞳が破裂しそうなくらいに大きく開いている。アレンにつかまれている手が痛み出した。どうやらアレンが力をこめているらしい。
『時がこなかったからよ。そして今、時がきた!』
「と、時!? そんなの知らないよ! とにかく離して! 痛いよ!」
アレンはますます力を強め、私の手をつかんでくる。アレンの力が強まるほど、私の手が小さくなっていくのが分かった。いや、体全体が小さくなっていく!?
「な、何これ! アレン、何をしたの!」
『それはあとで説明してあげる。今はゆっくりおやすみなさい……人形の世界で』
「人形の世界!? やだ! 助けて! 誰か! 誰…か……」
私は意識が途切れ途切れになってきた。アレンが私を見つめて笑っている。それは冷たそうで、どこか優しい感じだった。なおも私の体は縮んでいく。私はだんだんと苦しくなってきて、いつの間にか意識がなくなった。
【続く】
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2007/01/13(Sat)20:21:06 公開 / 沙良
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