- 『月の満ち欠け―not full moon―』 作者:カンダアレ / SF ファンタジー
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原稿用紙約7.75枚
夢の中でふしぎな時計と銃を貰った二人の少年と少女。そしてその時計と銃がほしいなら、ある条件をうけいれなくてはならない。 しれは。片方を殺す事だった。
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第一話【月の少女】
月島かぐやが中学校から帰ってきたのは、ついさきほどの午後八時だった。正確に言うと、中学校を出たのは午後四時だったが、その後、帰り道に友達とカラオケに行っていて現在の時間に帰ってきたのだ。
かぐやは別に遅いとも思っていなかった。まだ八時だ、小学生だってテレビを見ている時間である。中学生が遊びから帰ってくる時間でも遅くはないと考えていた。しかし、思いのほか両親はうるさかった。
家に帰ってきた途端に叱られた。こんな時間までどこ行っていたの! と怒鳴られたので素直に答えると、また怒鳴られた。質問に答えただけなのに怒鳴られると理不尽だな、などとかぐやは思う。両親の小言を聞きながしたかぐやは二階の自室に入って、鍵をしめた。
かぐやは中学三年生の女子で一人っ子で姉妹などはいない。なので両親も昔から可愛がってくれた、しかしその分厳しくもあった。勉強には特にうるさく、悪い成績を取ったら家庭教師を増やしたり、塾を増やしたりした。そしてかぐやも一応は両親のためと思い、一生懸命勉強をし、今は有名私立中学校に通っている。
しかし、一年程前にかぐやの中の何かが壊れた。いや、もしかしたら壊れたんじゃなくて、直ったのかもしれない。とにかく変わったのだ。
私は何でこんな事をしているんだろう――。そう思い始めた。そして遂に吹っ切れた。これからは自由に生きるから、と両親に宣言して、その通りにしている。
学校をサボる、早退をするは当たり前。夜遊び、親から金をとる、などの今までの自分からは考えられない行動を取りまくった。両親も呆れていて、もう自分の娘じゃない、というような感じである。だから今日、叱られたのは少し驚いた。
まあ確かにこんなご時世に十五の女の子が夜まで遊んでいたら危険かもしれない。しかしまだ八時だ。同じ年代の奴は塾で勉強してるんだ。
ベッドに勢いよく飛び乗った。少しバウンドするのが、気持ちいい。
天井を見ると白いだけ何も無い。寝る時はいつもこの何もない白い天井を見ながら寝るのだ。今度、天井に何かしてみよう、と思った。
電気はつけていないし、窓のカーテンも閉めているので部屋は真っ暗である。かぐやはこのまま寝てしまおうとしていた。来ている服は学校の制服だ。学校帰りにそのままカラオケに寄ったから着替える暇が無かった。
このまま寝ても風邪はひかないだろう。制服なので、明日の朝は着替えなくてすむ。などとのん気な考えをしたまま、目蓋を閉じた。
同じ夢を定期的に見る事があるらしいが、かぐやにはそんな事は無かった。夢を見る日さえ珍しいかぐやのとって、同じ夢を何度も見るという不思議な現象は理解しがたいものがあった。
かぐやはあまり夢は見れない体質で、夢を見る日というのが珍しかった。だから今日、夢を見れたのは珍しいにあたいする。
かぐやは夢の中で闇の中にいた。何も無い闇の中で一人だけポツンと立っていた。足元を見ると、少し驚いた。水だった。かぐやは闇の中で水の上に立っていた。例え夢でも少し感動するものがあった。
しゃがみこんで水の中に手を入れてみる。冷たくて、確かに水の感触がした。手を取り出してみると、水滴が手についていた。間違いなく水だった。
「ツキジマカグヤダナ?」
何か、不思議な声が空から聞こえてきた。ふと上を見上げると先ほどまで何も無かった闇の空に三日月があった。
「カクニンスル。オマエハ、ツキジマカグヤダナ?」
何の事かまったく分からない。かぐやは言った何がおきているのかと思ったが、すぐこれが夢である事を思い出した。
「ええ、そうよ」
かぐやは素直に答えた。別に嘘をついても仕方が無いし、と軽く考えていた。声はどこから出てきているのか、と疑問を思いキョロキョロと周りを見渡したが、やはり闇と三日月しかない。
「ツキジマカグヤ、オマエハトウセンシタ」
当選? いきなり言われても分からない。もう流石に夢と言えど混乱してきた。
「どういうことなのっ」
そう怒鳴った瞬間にかぐやの目の前に光る二つの物が現れた。一つは懐中時計のようなものと、もう一つは拳銃だった。光る時計と、光る銃が目の前に浮いている。
「ソノフタツヲキサマニアタエル」
また声がした。かぐやは恐る恐る、懐中時計のほうを手にしてみた。かぐやが触れた瞬間に、時計は光るのをやめた。
「マジッククロック――ソレガソノ時計ノ名ダ。ソノ時計ヲススメレバ、ソノブン実際ノ時間モススム。オナジヨウニソノ時計ヲモドセバ、ソノブン時間モモドル」
そんな馬鹿な話あるわけが無い。そう言おうとしたが、やめた。ここは夢の中だ。これもしょせんは夢だ。
「銃ヲテニシテミロ」
マジッククロックと言われた時計をポケットの中に入れて、今度は銃を手にしてみた。この銃も時計同様にかぐやが触れた瞬間に光るのをやめた。銃はそれほど重くなく、ああやはり夢だな、と実感した。
「シークレットガン――ソレガソノ銃ノ名ダ。ソノノ銃ハオマエトオマエト対峙スルヤツシカ見エナイ」
段々面白くなってきた。銃が自分と、自分と対峙する奴しか見えない……対峙するするやつ? 誰だそれは?
「マタ明日ノヨルニアイニクル。ヒトマズ一日、ソノ二ツノオモチャデ遊ンデミロ」
声の主がそういい終わった瞬間に、かぐやは水の中に落ちた。そして、そこで意識が途絶えた。段々と闇の中に沈んでいくように――。
目がさめるとベッドの上にいた。上半身を起こし、頭をかく。変な夢をみたな、と思いながらベッドから降りようとした。しかしポケットに何かが入っている事に気づいた。夢のことを思い出し、いそいでポケットの中に手をいて、中に入っていたものを取り出した。
手のひらの上にあるのは、間違いなく夢にでてきた懐中時計であった。
手が震えている。まさか、こんな事って……。
次にベッドの上を見渡すと、銃があった。今度は銃を手にしてみる。夢と同じでまるで重みが無い。すべて夢と同じだ。ということはもしかして…。
「かぐやー、あさごはんよ!」
下から母の声がした。はーい、と返事をしておいてかぐやは学校の鞄に銃と時計を入れた。そして興奮を抑えきれないまま、部屋の扉を勢いよく開けて、急ぎ足で階段を駆け下りる。
朝なのに眠気など一切なかった。
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2006/11/19(Sun)17:26:53 公開 / カンダアレ
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■作者からのメッセージ
初投稿です。上手い事文章がかけません。もしよかったら感想下さい。あと、アドバイスも下さい。
読んでくれた皆さん、時間を無駄にしてしまって申し訳ありません。