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『女狼』 作者:有 / アクション リアル・現代
全角4024.5文字
容量8049 bytes
原稿用紙約12.45枚
 少女は逃亡者だった…… 人間から逃げ、家庭から逃げ、学校から逃げ、現実から逃げ…… 追い詰められた少女は、とうとう自分からも逃げようと自殺を決意する。そんな少女の前に一人の女が―――
 少女は走り続けた。
 薄暗く、夜の不気味さを帯びたアスファルトではない野原道を……
 あたりには何もない。ビルも、コンビニも、人の住む家も、ただ草が生えただけのなんも変哲もない夜の野原道を少女は走り続けた。
 途中、何度も足をもつれそうになり、足の裏の豆がつぶれて足を踏むたびに激痛を感じるときもある。体内の酸素がそこをつき、肺が悲鳴を上げる苦痛も何度か味わいながらも少女は走り続けた。
 
「いたぞ!!」
「こっちだ!!」
 
 二人の男の荒々しい声が聞こえた。
少女は男達に追われていたのだ。
 少女は男達の声に気ずくと顔を青ざめた。
 そして、少女は男たちから逃げるようにさらに走ろうとする。
 しかし、長時間の逃亡のために少女の体力は限界にきていた。
 走足に限界を悟った少女は身を隠すしかないと辺りを見渡した。すると、何メートルか先に見渡す限りの竹やぶがあることに気がついた。
 少女は重い足取りでわが身を隠そうと深い竹やぶの入口に身を沈めていった。
 竹やぶの中は道らしき道は無く、途中地面から突出した竹の根っこに何度と足を掛けそうになりながらも、少女は竹と竹の隙間を身を縮めながらさらに奥へと進んでいった。
 しばらく歩くと少女は一軒の小屋に行き当たった。
 トタン屋根を石の重みで押さえつけて、その周りに板をただ貼り合わせただけの粗末なつくりのぼろ小屋である。
風と雨をしのぐこと意外に機能を持ってなさそうだ。
 なんで、こんな竹やぶの奥に小屋があるのか?
 少女は不思議に思ったが今はそれどころではない。なぜなら、自分はあの男達に追われている真っ最中なのだから。もし、やつらに見つかったらどんな目にあわされるか。

「見つけたぞ!!」
 と不意に男の声が聞こえた。
 少女が後ろを振り向くと、目の前に三人の男がそれぞれ鉄パイプ、木製バット、角材を手にして立っていた。
―――だめだ、もう逃げ切れない。
 少女の顔がみるみる青ざめていった。
「手間取らせやがって」
 鉄パイプを持った男が荒々しい険悪で、そう言い放つと少女のほほを思いっきりひっぱたいた。
「ぎゃっ!」
 ひ弱な悲鳴をあげ、少女の身軽な体は吹っ飛ぶようにして倒れこんでしまうと、地面に手をついた姿勢で泣き崩れてしまった。
「うるせえ! このガキ」
 鉄パイプを手にした男が泣き崩れた少女に苛立ち、当然のような顔をして、倒れこんだままでいる少女の体に蹴りを浴びせた。
 それでも泣き止まないと分かると、男はさらにけりを入れ、それでも少女が泣き止まないので、さらにる怒りを込めて蹴り続ける。
 少女は何度か蹴られ続けられていくうちに泣くことはやめたが、今度はそのままの姿勢での無言の抵抗を始めた。
 バットを持った男がこのやり取りに痺れを切らしたのか、
「面倒だ、この際だから犯っちまおうぜ」
 と言うと、今度は角材を持った男が、
「まずいんじゃねえか。傷がついたら値が下がるんだろ」
「なーに、“乙女”のままでいればいいわけだ。楽しみ方ならいくらでもある」
 とバットを手にした男が言うと、二人は「なるほど」とニヤニヤと汚らしい笑みを浮かべた。
「じゃあ。さっそくお口でやってもらおうかね。誰からいくかね?」
「おれは遠慮しおくぜ。ロリコンの趣味はないんでね」
「おじけずいたか」
「そんなんじゃねえ」
「でもまあ、性教育はこれから必要だろ」
「ぎゃははは」
 この男達のやり取りを聞いていた少女は。この状況から早く抜け出したいと必死に願うが、少女にはどうすることもできない。
 男達の汚らしい下品な視線が少女に集中するなか。
 我が身を汚される絶望と恐怖が頭をよぎり、不安が混乱を呼び、混乱が更なる絶望と恐怖を生む。“負の連鎖”が少女の心の中で沸き起こっていた。
 いっそのこと舌を噛み切って死んでしまおうか。これから先起こる地獄の苦しみを味わうのならそうした方がいいのかもしれない。
 少女が“死”という最終手段を考慮していると、先ほど目に付いたボロ小屋の入り口がガラガラとテンポの悪い音をたてて開いた。
 この出来事は少女だけでなく、3人の男達も気がつかずにはいられなかった。
―――人が住んでいたのか?
 全員がそう思ったに違いない。普通に考えてこんなへんぴなところで暮らす人間は考えられない。
 小屋の入り口から出てきた人間を見て全員はさらに驚いた。
 女だ。それも、若くて美しい。歳は20代前半であろう、大人びた顔立ちの中にも幼さがかすかに残っている。女の髪は長く腰まで届くロング・ヘア。まるで日本人形を思い出させるようなしなやかで美しいく癖ッ毛のない黒髪だった。  
服装はTシャツとジーパンというシンプルなものだったが人をひきつける容貌を兼ね備えていた。女の背丈は170cm から172cmくらいで足が長い。体系を見るとファッション・モデルのようにしなやかで、そのくせ大人の女であることを強調するかのように胸とお尻がふっくらと丸みを帯びていた。
 
 ここにいる全員がその女に『ほ〜〜』と見とれていた。こんなへんぴなところで住んでいる変わり者という視点もあったが、この女には見とれてしまうほどの人をひきつける不思議な磁力のような魅力があった。
 特に女の大きな瞳はものすごく強い意志のようなものを感じ、その瞳から発せられる視線を浴びると、ビリビリと電気ショックにも似た刺激が起こるのだ。

 しばらく、全員が小屋から出てきた女に見とれていると、いち早く我に帰った鉄パイプを持った男が女に向かって、
「ね、ねーちゃん。こんなところで何してるのかしらねえけど。今、お取り込み中なんだ。悪いこと言わねえから消えな」
 と、少々動揺しながらも脅しを交えた口調でいった。
「それともお仲間に加えてほしくなったのかい? ひひひひ」
 今度はバットを持った男の方が下品な口調でふざけるように言った。
「俺のは、他の奴のと違って“美味しいぜ”」
 と自前のバットを振り回しながら付け足した。
このバットを持った男が三人の中で一番品性がかけているようだ。
 どうしようもない下品なジョークに思わず、他の男たちも卑劣な笑いをこぼしていた。
 それを聞いた女は“フフッ”と鼻で笑うと。馬鹿にしたような口調で、
「そこのクズ3人の汚ならしい“ブツ”をなんで美しいこの私が面倒見なければならんのだ。どうせ、お前らのお粗末な●●●は幼稚園児のお弁当に入っているようなミニ・サイズの大きさなんだろ」
 女の口から、その美しい美貌からはとても想像できないくらいのアグレッシブな大人のジョークを交えた言葉が次々と飛び出てくる。

「…………」

 予想だにしなかったというか。
 思いがけないとでも言うべきなのか。
 女の口からの信じられない返答を男達はしばらく理解できずにいた。
 女は、ぼーぜんとしている男達を無視して、さらに、過激なトークを続けてゆく、

「誰がお前らの汚物の飼育をしたがるんだ。頼むからそんな雄失格な“ブツ”は自分達で舐めあっててくれ。お互いの傷を舐めあうようにね。っというか、そんな腐敗物を自慢げに誇っているなんて哀れにもほどがあるよ。いっそのことちょん切ってしまうことをお勧めする。もちろん、ちょん切った後のゴミは生ゴミの袋に入れてから、ちゃんと水曜日に出すんだ」
 男たちは頭の中で女の言った言葉を整頓して改めて理解すると。三人の男達は互いの顔を見合わせ、
「ふひゃははははは」
 と、三人いっせいに大笑いしだした。
「ふっざけんなよ、このアマ」
「てめーも犯っちまうぞ」
 女の下品な馬鹿にしたセリフは血の気の多い男達の怒りに十分すぎるほど触れていた。
 女は男性という生き物を怒らせるには、どうすればいいのか理解していた。
 男性という生き物は自分の股に生えてる所有物を誇る。
 それは、他の人より大きく、たくましく、硬く、優れていればそれだけで誇りになる。
 だが逆に、他より劣ると惨めになり侮辱の対象にもなるのだ。
 ちょうど、女性の場合が顔がブスというだけで存在全てが相殺されるほどの侮辱の対象となるのと同じように。
 だから女が男たちの“ブツ”を馬鹿にしたことは、女性に置き換えると「お前はブス」といわれるに等しい侮辱なのだ。
 男達も自分達のかわいい“ブツ”を馬鹿にされたことに関しては身に余る怒りを覚えたようだった。
 男達の顔を見ていると、あまりの怒りで目が釣りあがり、充血し、真っ赤に逆上しているのがはっきりすぎるほど分かるのだ。
 ところが、男達の怒りに満ちた迫力のある眼ににらまれても女は平気な顔をして、
「失せろ……カス」
 とそっけなくいった。
 この一言で完全にぶち切れたバットを手にしていた男が、
「てめーが失せろや!!」
 と言い放つと、手にしていた木製バットを女の腹に目掛けて横に振り放った。
 しかし、
「ナニ!!」
 皆おどろいた。
 女の胸の辺りまで浮かせた右ひざで男の振り放ったバットがブロックされたのだ。
「ま、まじかよ……」
 しかも、よく見ると木製バットの中間にヒビが生えていた。
 男は幾度もこのバットを喧嘩で使用していたため、このバットの硬さと破壊力を誰よりも熟知していた。
 それだけに今の出来事はショックだった。
―――よく分からんが、この女できる。
 男は理性的にではなく直感的にそう感じた。
ここは、本気でプロの喧嘩を教えなければいけないようだ。と男は決意すると、
「しゃらくせえ!! お前ら、この姉さんに喧嘩の相手をしてもらおうじゃねえか」
 バットの男が他の二人に命令すると三人は女を囲むように包囲した。
 女の正面にはバットを持った男、その後ろには鉄パイプ、右横には角材を持った男達が、武器を握り締めて身構えていた。
 地面に手を付けたまま動けない状態にいる少女はこの壮絶なやり取りをただ見届けるしかなかった。
2006/12/07(Thu)12:55:03 公開 /
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■作者からのメッセージ
 みなさんこんにちは。
 急にシリアスなアクション系が書きたくなったので投稿させていただきました。
 なお、作者は気軽に楽しく感想を伝えて、お互いの創作意欲をかきたてる創作仲間を募集しております。もしよろしければ本話を読んだ感想をお聞かせください。

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