- 『ネコちゃん』 作者:programdot / ショート*2 未分類
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原稿用紙約3.45枚
そこには一匹のネコが塀の上に居た。そのネコは道路を後ろにし、前にある家の庭を眺めている。
「カタン、コトン」
と竹の鳴る音が聞こえてきそうな和風の家だ。少し雑草が増えはじめていて手入れが届いてはいない。そこに住んでいるのは一人だけで、それは魔女だ。魔女がなぜこの家に住んでいるのかというと、野球をして遊んでいる子供達がボールをうっかり敷地内に入れた時、魔女がその子供達を喰ってしまうというのが、近所のもっぱらの噂である。ただし、悪ガキ共の間だけであるが……。
本当はやさしい腰の曲がったおばあさんなのだが、子供達は何故か標的にしたいらしく、「魔女」と呼んでいる。さらにはわざと野球の球を敷地内に飛ばして面白がっているのだ。これにはおばあさんも困り、仏壇で今は天国にいるおじいさんにつぶやいた。
「野球だまが飛んできて危ないわ。困ったもんですよおじいさん?」
すると、仏壇からおじいさんがスウッと現れてきた。手足が硬直していて顔が青ざめていて誰が見ても死人である。でも目は半開きであった。そして婆やに言った。
「婆や、安心しなさい婆や」
そう言い残すと子供達の遊んでいる空き地の方へ向かっていってしまったのだ。おばあさんは慌てふためき、卒倒して死んでしまった。
その頃おじいさんは空き地の子供達の前に現れていた。
「わしの婆やをいじめるでないぞー!」
すごい鬼気迫る迫力で子供達を叱りつけた。体の大きいブータンとあだ名を付けられていた子は泣き出してしまった。体の細いモヤシとあだ名を付けられていた子は口をパックリあけて呆然としていた。空き地で遊んでいた数人の悪ガキ共は皆散り散りに家に泣きかえった。その途中で数人は慌てすぎて、何回も転んで道路に突っ伏しては走った。
そこで話を聞いた家族達はすぐにそんな幽霊が居るのか空き地へ向かった後、心当たりのあるおばあさんの家へ確かめに行った。するとそこには本当に幽霊がいたのだ! しかもおじいさんとおばあさんの幽霊が居た。今にも安らかに天国へ召し上がる瞬間だった。二人はとても仲むつまじく手を持ちながらスウッと消えていった。
一瞬の間、我を忘れた大人達は残ったおばあさんの亡がらを見て、ビックリして逃げた。
今はその屋敷は取り壊され、ロープで進入禁止になって空き地になっている。そこには一匹のネコだけが居た。そのネコは黒ネコで目がクリッとしている。すると近くにネズミが近寄ってきた。しかしそのネコは動かない。なぜならネコではなく、実は死神だったのだ。この世の死神は皆ネコに化けて人々に擦り寄ってきている。そして自分が手を下そうか様子を見ていて、キッカケがあれば魔力を使って、生命の灯火を消してしまう。いとも簡単に……。
そんな恐ろしいネコも、今日は「ニャア」と声を出して人々に安らぎと、影の恐怖を与えているのかもしれない。
しかし、そのネコを蹴飛ばそうとする近所の親父さんが居て、知る人から見れば命知らずだ! と思われている。
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2006/11/01(Wed)22:49:24 公開 / programdot
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■作者からのメッセージ
感想を頂いたので修正してみました。次回作はもう少し長く頑張ります。