- 『トランプゲーム』 作者:cooled / サスペンス ミステリ
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全角4647文字
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原稿用紙約14.1枚
警察に家族を奪われた少年、黒場一は警察に復讐するために同じ高校に通う羽藤や飯島や東宝とともに誘拐を演じ事にした。羽藤は親への復讐のために。飯島はゲーム感覚で。東宝は家族のために誘拐を演じる。 その誘拐事件の捜査員の刑事の富田は一人の知り合いの年老いた元警察の探偵を訪ねた、遠藤という探偵だ。 遠藤と黒場の過去の出来事から始まったゲーム、トランプゲームがスタートした。
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―プロローグ―
アスファルトの地面、夜の人通りの少ない道路の上。雨でアスファルトは変色しているが、そのアスファルトのうえに横たわる一人の女性が頭から流す血でアスファルトは赤くなっていた。
横たわる女性、三十代くらいでパートの作業服を着ている。頭から血を流しており、目は白目をむいているが、まだかすかに息をしている。
その女性の横で六歳くらいの男の子が女性をさすって泣き喚いている。
「お母さん! お母さん!」
男の子の泣き声が夜の道路に響き渡る、しかし誰もこない。雨が女性と男の子をぬらしていく、女性の体からでる大量の血が雨と混ざり少しだけ血の赤色が薄くなっている。女性はほとんど死んでいるが、まだ呼吸はしている。
道路の上には食べ物が詰まったスーパーの袋が転がっている、その袋からはりんごが何個か飛び出して道路に転がっている。
「お母さん! お母さん!」
夜の道路に男の子の泣き声が延々と続いている、それはまるで夜の道路のBGMのように。
雨が段々と女性の体温を奪っていく、そろそろ死んでしまう、と女性は覚悟した。女性は自分をさすっている男の子の頭を最後の力を振り絞って右手をのせて弱弱しくなでた。
男の子がまだ泣いている、女性はその光景を死にかけのかすんだ目で見ていた。男の子は、お母さん、と叫んでいる。
その時、道路のに転がる女性とその女性をさする男の子を車のライトが照らした。男の子がライトのほうを見ると、青い色の車が停止して男の子と女性をライトで照らしていた。
車から白衣を着た若い男が急いで運転席から降りてきた、男の顔には不安で顔色が悪い。
「大丈夫ですか!?」
男は女性のそばに駆け寄ると男の子と向き合うようにして女性の体をさすった、女性は男の存在に気づくと少しだけ微笑んだ。
男は女性の頭を見ると息を呑んだ、大量の血が出ていてアスファルトの色を黒から赤に変えている、まずい、と男は直感的に思った。
男の子は相変わらず、お母さん、と呼び続けて泣いている。
男は女性の上半身を起こすと同時に全てに絶望した、頭からで血が出ている地のほかにも、いくつか骨が折れているのに気づいた。何より、雨で体温がかなり下がっている、もう助からない、と男は感じた。
男の子が女性の腕にしがみついて泣いているのを男は哀れみのこもった目で見ていながら、女性の耳元に顔を近づけて男の子に聞こえないように言った。
「私は医者です。残念ながらあなたの助かる見込みは極めて少ない。最後に誰かに言っておきたいことがあれば、私が伝えます」
男が言うと女性は少しだけ微笑んだ。そして近くにいた男の子を指差して、男に伝言を残した。
「分かりました、必ず伝えます」
男が言うと女性はまた微笑んで、そして近くにいた男の子の頬を血で染められた手でなでた。男の子はその行動で全てを察したように、嫌だ! と泣き喚いたが、それでも女性は微笑んで男の子を見つめていた。
しばらくすると、男の子の頬をなでていた手がガクッと垂れ下がった。男はそれと同時に女性の上半身をアスファルトの地面に、そっと寝かせた。そして手首を手を当てて脈を確認した、脈は止まっていた。
男の子は男を見つめていた。男は男の子と目を合わせると小さく首を横に振った、同時に男の子が寝ている女性に抱きついて泣き喚き始めた。
男は立ち上がるとポケットから携帯を出して、自分の勤める病院に電話をかけた。
「……あっもしもし! 私ですが、すぐに救急車を呼んでください……はい、そうです、どうやら交通事故みたいで……いや、息はすでにありません、脈も止まっています……」
男は電話口で誰かと会話をした後、よろしくお願いします、と言って電話切った。そして再び電話をかける、今度は警察にだ。
「……あっもしもし、警察の方でしょうか? 実は交通事故が起きたみたいで、女性が一人倒れているんですよ」
男はその後も警察と話をした後、電話を切った。後数分でパトカーに乗った警官がこちらに向かってくるらしい。
男は電話を終えると、男の子に駆け寄った。男の子は寝ている女性にしがみついて泣いている。
男は男の子の隣に来ると、泣いている男の子の背中をさすった。男に気づいた男の子は男を見つめて、泣きながら聞き取りにくい声で言った。
「……パ……トカー……」
「えっ!?」
男の子は今、確かに『パトカー』と言った。しかし、パトカーがどうしたんだろうか? と男が思っていると男の子が言った。
「パトカーが……お母さん……ひいた……」
「えっ!」
男は男の子の気が狂ったのかと、と思ったがすぐにそれは違うと感じた。何故なら、男を見る男の子の目は、涙と雨でぬれているが、瞳の奥に恐ろしい憎悪を感じたからだ。
しばらくすると、パトカーと救急車が来て、救急車で女性は病院まで運ばれた後。病院で整式に、死亡が確認された。
第一章【誘拐】
学校の屋上のフェンスを乗り越えて、わずかなコンクリートが足場になっている。校内では自殺しやすい所、第一位になっている場所。そのわずかなコンクリートの足場に黒場一(くろば はじめ)はフェンスにもたれかかりながら立っていた。
少し足を滑らせれば、間違いなく地上に落ちて死んでしまう。しかし黒場の顔には恐怖などは感じられない。
黒場はさらさらの黒い髪の前髪を右側だけ伸ばして、前髪で右目を隠している。ファッションだ、と彼は言うが、ほとんどの人が、不気味な悪趣味なやつ、といって彼には近づかない。
学校の黒い制服を着て黒い靴をはいて黒い髪の毛、そして黒場という名前。彼はほとんどの物を黒くしている。
シャーペンも消しゴムも傘もネクタイも、すべ黒色だ。黒くないものは肌と目だけど、肌は日焼けもしていなくて白色だ、目は黒目の部分がすこしだけ赤くなっている。
彼は地面に視線を落とした、屋上から下を見下ろすと運動場が見える。今は昼休みという事もあって生徒はいない、白線でえがかれたトラックが運動場にあるだけだ。
その白線のトラックを彼はただ見つめていた。
高校二年になって半年が過ぎて、夏休みも終えて準備が整った。全ての準備が、復讐の準備が整った。
黒場はそう考えると自然に笑みを浮かべた。
屋上は何もない、フェンスと黒場以外は何もなし、誰もいない、コンクリートでできた地面だけが広がっている。
黒場は屋上が好きだった。誰もいないし、何もない、だからこそ気持ちがいい。何より、孤独感を味わえる、学校で唯一、孤独感を味わえる。
孤独はいい、全てを感じれない。つまり、傷つかない。
「傷つきたくない」
黒場は自然に呟いていた、しかしそれが素直な気持ちだった。
「……弱虫」
後ろから女性の声がした、黒場にとっては聞きなれた声で誰かもわかっていたが一応振り向いた。
「傷つきたくない、なんて弱虫ね」
女性は馬鹿にしたように言った。この高校の女子用の制服で着ていて、目がぱっちりとしてて髪の毛が超ロングヘアー、瞳の色はく黒色、名を羽藤蘭(はとう らん)という女子。
「人の独り言を勝手に聞くな」
黒場はフェンスの向こう側にいる羽藤に低い声で言った。怖がらせようとする声を出したが、羽藤がこれくらいで怖がるはずもなく、ただフェンス越しにいる黒場を見つめていた。
黒場は、まいった、というように頭をかいた。その様子を見て羽藤がすこしだけ笑った。彼女は決して大きな声ではわない、いつもクスッという感じで笑うのだ、それが不気味で仕方ない。
「ねぇ弱虫さん、明日の予定は?」
フェンス越しに羽藤が黒場に勝ち誇ったかのような笑顔で聞いた。
「俺は弱虫じゃない」
黒場は両手の指をフェンスの穴の部分に入れてフェンスを掴んみ、フェンス越しにいる羽藤に顔を近づけて、羽藤を睨んだ。それでも彼女は笑顔を崩さななかった。
「傷つきたくないって呟いていたのは誰かしら?」
相変わらずの笑顔で言ってきた、口元は笑っているが目は笑っていない笑顔、目は瞳が黒く光っているだけ。
彼女は心から笑えない、心から何かを愛せない、そういう体質なのだ。今の黒場とよく似ている。
「傷つきたくないっているのは寝言だ、忘れてくれ」
黒場はまるで言い訳をする子供ように言った。それを見ていた彼女から笑みが消えた、怒ったのではない、彼女は笑顔を長時間保てないだけだ。
「明日の予定は?」
笑顔をなくした無表情の彼女がフェンスの向こう側にいる無表情の黒場に聞いた。無表情の彼女を見て黒場は鼻で笑った。
「笑顔を保てない体質、人間として悲しくないかい?」
からかうように黒場が言うと、彼女が突然フェンスを思いっきり蹴った。彼女が蹴った勢いでフェンスが大きく揺れた、黒場は屋上から地面に落ちないためにフェンスを力強く握り締めた。
しばらくするとフェンスの揺れはおさまって黒場は安堵の息をついた。もしもフェンスを強く握っていなかったら今ごろは地面に叩き落されて、頭から血を流して死んでいるだろう、と黒場は思っていた。
「……人間として悲しいのはあなたよ」
フェンスを蹴った張本人の羽藤が憎しみのこもった声で言った。しかし黒場も命を危険にさらされたんだ、負けて入られない。
「俺のどこが人間として悲しいんだ? 笑顔を保てないわけでも、人を愛せないわけでもない、俺は普通の人間だ……君と一緒にするな」
黒場が言うと羽藤は悔しそうに唇をかみ締めた、それを見ていた黒場がまた鼻で笑ったが、今度は彼女は何もしなかった。
「……あなたは今生きていない人間からの愛情を求めている、私はくまで今生きている人間の愛情を求めているのよ。あなたは人間として悲しいわ、死んだ者は生き返らないの覚えておいて」
彼女は吐き捨てるように言った後、黒場とは目を合わせずに上空を見上げた、晴天よ、彼女は言ったが黒場は何も言わなかった。
しばらく沈黙が続いた、黒場も羽藤も何も言わずに空を見ていた。空には雲はない、昼という事もあって日差しが強く太陽が輝いている、風も弱弱しくしか吹いていない、そんな空を黒場と羽藤はただ見つめていた。
黒場がそろそろ、明日の予定、を話そうとしたときに屋上の扉が開いた。黒場と羽藤が同時に扉のほうを見ると、見慣れた二人の男子生徒がいた。
一人は少しばかり小太りだが角刈りの金髪をした目の細い男、東宝隼人(とうほう はやと)という高校一年生。
もう一人は寝癖ではねた髪の毛、今にも眠そうで目の下には大きなクマがあるやせた男、飯島真哉(いいじま しんや)とという高校二年生の男。
二人の姿を確認した羽藤と黒場は目を合わせて、頷いた。羽藤はフェンスから離れて二人の元に駆け寄った、黒場はフェンスを慣れたように軽軽しく乗り越えた。
そして羽藤と東宝と飯島のいるほうへゆっくりと歩いていく。
四人は円を作るように立って並んだ。皆は神妙な顔をしていて真剣そのものだった。
コホンッと黒場が咳払いをした、そしてそれを合図に皆が座った。黒場だけ立っている状態になった。
「……今から、明日の予定を説明視する。明日の……明日からの……誘拐作戦について説明する」
四人全員が息を飲んだ。少しだけきつい風が吹いて黒場の右目を隠している前髪がなびいて、隠れていた右目が見えた。その目の瞳の奥には憎悪のようなものが強く感じられた。
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2006/10/01(Sun)23:52:17 公開 / cooled
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■作者からのメッセージ
この作品は過去に何度か投稿していて、書き直して投稿したものです。何度も同じのを投稿するな、と怒っている方はすいません。
三人称の書き方は慣れていないので、どなたかアドバイスなど待っています。
では、これからよろしくお願いします。
それと、読んでくれた方、ありがとうございます。