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『タイトル未定』 作者:りんしゃん / ファンタジー サスペンス
全角1306文字
容量2612 bytes
原稿用紙約4.7枚
一人の『善霊』にあったことから慎太郎の人生は大きく変わります。『善霊』たちを体に乗り移らせた慎太郎は彼らが生前もっていた特技を駆使して、彼らの望みである人を救う仕事をはじめます。少しずつその仕事にやりがいを覚えた頃に、慎太郎の下に大変な事件がまいこんでくることになります。
 蒸し暑く、寝苦しい夜だった。
 ベッドに横になってかなりの時間がたっていた。
 一時間、いやもう三時間くらいたったのかもしれない。
 慎太郎は体を起こして壁にかけてある時計をみた。
 針は二時をさしていた。十時にベッドに入ったからもう四時間近く眠れていないことになる。
「……あっちい」
 慎太郎はぼそりとつぶやいた。
 何か冷たいものでも飲みに台所に行こうベッドからおりると、慎太郎は足元に違和感を感じた。
 床は板のはずなのに、それを踏んでる感じがしないのだ。綿をいっぱい積み重ねた上にたっている感じだった。
「あれ……?」
 足元を見てみてもおかしなところはない。
 足は確かに床についているし、床がへんになっているわけでもないのだ。
「あぁ?」
 慎太郎はとりあえず何か飲もうと考えた。
 足元の違和感を振り払い、部屋をでようとする。
 だが、慎太郎は一歩も前にすすめなかった。まるでランニングマシンの上を歩いているように。
「無駄よ、太郎さん」
 ――何?
 慎太郎は体を硬直させた。そして部屋の中を見渡した。が、部屋にはだれもいない。
「だ、だれかいるのか!?」
 たまらなくなり慎太郎は叫んだ。叫び声は虚しく消え去り、静寂が部屋の空気を包む。
「いるわ」
「ぎゃっ!」
 慎太郎は驚きのあまり腰を抜かした。目の前に白い服を着た色白の体の細い女性が現れたからだった。
「ゆ、幽霊!?」
「失礼ね、あんなのと一緒にするなんて」
 女は怒ったようにいったが、顔は笑っていた。
「『善霊』って聞いたことない?」
 『悪霊』なら聞いたことはあるが、『善霊』というのは初耳だった。
 慎太郎は首を横に振った。体の震えが止まらず、とてもじゃないが口を聞けるような状態ではなかった。
「私達は善の心を持った霊よ」
「善の……心?」
 声を絞り出してそういうと女は誇らしげにうなずいた。
 そして善霊とは何者なのかを慎太郎に言って聞かせた。

「……と。まぁこんなものね。何か聞きたいことはある?」
「いや、特に。」
 女の話を聞いて体の震えもおさまり、どうにか冷静に物事を考えられるようになっていた。
 慎太郎は台所から缶ビールを二本もってくると、フタを開け女に勧めた。
 だがすぐに後悔した。
 ――霊だから飲めないじゃん 
 慌ててビールをさげようと手を伸ばすとそれより早く
「あら、珍しい人ね。頂くわ」
 女は手を伸ばして缶を持ち上げ、音を立てて一気に飲み干した。
 女性らしからぬ豪快な飲みっぷりに慎太郎は唖然とした。
「霊なのに物を持ち上げたり飲んだりできるの?」
「そういうことができなきゃ人を助けたりできないでしょ?」
 女は満足げな顔をしながらいった。白い顔が少し赤みを帯びたように見えた。
「ごちそうさま。何年ぶりかしらね、お酒なんかのんだのは」
 女は缶を床に置いた。
 しかし、置き方が悪かったのか缶はコロコロと転がっていってしまった。
「あらごめんなさい」
「あのさ……さっきから気になってたんだけど、何であんたは此処にきたんだ?」
 女はアッといって口に手をあてた。
「つい話に夢中になっちゃって……目的を忘れてたわ」
「目的?」
 女はうなずいた。
「私達に貴方の体を使わせてほしいの」
2006/09/23(Sat)22:06:56 公開 / りんしゃん
■この作品の著作権はりんしゃんさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
初めて書いた小説です。
テンポ速いのかなと考えましたが、ドレくらいがちょうどいいのかがよく分かりません。
何か悪いところがあったら指摘してほしいです。お願いします
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