- 『ヒカリの勇者』 作者:鋏 / リアル・現代 異世界
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全角3315文字
容量6630 bytes
原稿用紙約10枚
俺――波野 自由は正直言って世の中に飽きていた。そんな俺が夢の中で見る夢は別世界の物だ。その夢は光の勇者。自分が勇者になる夢。子供時代の夢は今、叶えられた。
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〜題:ヒカリの勇者
序章:ヒカリ
0.
近くでどーんと花火が鳴り響く。快晴なのか、星がぽつぽつと見える。人が集まり、俺は一緒にいた人とはぐれてしまった。この花火大会は終業式の前の日の花火だ。一学期も終わりをつげようとしている。花火は上がり、水色の花火ははじめは小さく、後は大きく広がっていく。こんな花火を見ていると、ふと、俺は色んな事が頭に浮かぶ。
世の中は色んな事が起きている。道路の真ん中で酒を飲んで寝ている親父や。
内戦や強盗、放火、殺人。はっきりと言って、人を苦しめたり、殺してしまったり……。
自分の事しか考えてない奴の世の中だ。
話が変わるが、俺はカルピスが好きだ。そして、今いるのは喫茶店。はっきりと言ってヤクザとか最近の若者が集まる喫茶店でもある、普段は誰も入らず寂しい喫茶店。でも、夜になれば、人が集まってくる。
一応、俺の家でもあり、一応、俺の店でもある。ま、知り合いの店だが……。
そして、ここの店主――夏山さん。昔は不良をやっていたらしい、髪を金髪にしている兄さんだ。兄さんと言っても、男か女かわからない声色に顔。はっきりと言って俺にも本当に男だか女だか解らない。もしかしたら、女の人かもしれない。
俺は昔からこの夏山さんと遊んでいて、いまでもこう、ここに来ている。
店を手伝えと言われ、今、こうして、庭をほうきで綺麗にしている最中だ。
まったく、俺と言うプライドは何処にいったんだか……。あ、俺の名前。言い忘れてた、まぁ、独り言に近いが聞いてくれ。波野 自由。な、み、の、み、ゆ。
れっきとした男の名前だ、決して女性名じゃない。
みゆだぞ? みゆ? 俺は女じゃねぇーっつの。
両親を憎みたいが、俺の両親は火事で死んじまったらしい。まぁ、死んだ人に愚痴は言えないから……そして、今は一人暮らし。けっこうさびしいときもある。
両親の写真は昔に燃えてなくなり、今は夏山さんと一緒に暮らさせてもらっている。
まぁ、夏山さんは良く出かけているから好きに使えといってくれているからな。
俺の部屋は一応、上の屋根部屋小屋だ。
古いにおいは消え去ったが、最近はネズミが出る始末。この間、ネズミを一匹捕まえたが、まだいるみたいだ。こそこそと音をたてて、俺の眠りを邪魔しに来る。最近、色々と勉強が難しくなってきてる。
一応、中学三年。先生が高校の話を始めた。高校は出れないから行かないつもりだ。
だから、勉強をしなくてすむんだが、成績ははっきり言って最低ランク。
花火大会も終わり、俺は喫茶店に帰ってきた。夏山さんを探そうとするが、眠たくてそれどころではない。
暑くてモーフもかぶれない夜。今、俺はネズミの物音と暑さにやられて、眠れない。はっきりと言って寝不足だ。冷気も風も入ってこない夏の夜。俺はゆっくりと目を開ける。勉強机と水色の布団とモーフ、ベットしかない屋根裏部屋。下にはおもちゃや服が散乱している。
突然、ごぉっと音を立てて、風が吹きあふれる。涼しい風に目を覚まし、俺は辺りを見渡す。水色の光は雨が反射する水溜りのように部屋の中心から円を描くように光は広がっていく。
すさまじい音で下にいる夏山さんが起きてこっちに来ると思ったが、何故か夏山さんは起きてこなかった。夏の気温は冬の気温に変わり、俺は蹴っ飛ばしていたはずの水色モーフを手であわてて引き寄せる。
な、なんなんだ?
はっきりと言って夢だと思う。どうしてなら、こんな事があるはずがない。とても……怖い。
光はうねりを上げて、中心に光を寄せ集める。ぱぁんっと音をたて、光の帯はしだいに逆再生を始めるように真ん中に集まっていく。そして、光の帯は離れあっては引き付けあい、しだいに――ある形を作り出す。
最初はおもちゃかと思っていたが、次第に金属光沢のある物質へと変わり、俺は始めて感じる感情を胸にゆっくりと近づいていく。好奇心。それが俺を動かす理由。
光の帯はひとつの剣を完成させていた。まるで伝説に出てくる勇者の剣。俺は怖がりながらも剣に近寄っていく。幼い頃に夢見た勇者。思い出せば懐かしい。いまなら勇者なれる気がする。
しかし、突然、風が吹いたのか、カーテンが揺れ、朝日が差し込んだ。俺は窓を見た。もう、朝になっていたのか。
俺はカーテンを見ているうちに光は消えて、剣も日の光に消去されるように消えていく。
俺はゆっくりと剣のあった場所へと近づいていくが、そこには、もう、何も残されていなかった。
呆然とそこに立ち尽くし――そして……。
1.
俺は飛び起きるようにがばっと布団から起き上がる。そして、昨日あった現状の場をちらりと見るが、剣は消えていた。嘘のような出来事に再びごろんとベットに転がる。外では朝っぱらから祭りの音が響き渡る。俺はふーっとため息をついて、手を伸ばす。ふいに目が手にいき、じっと手を見つめる。もし、昨日、あの剣をつかんでいたら、俺はどうなっていたのだろう。そう思いながら目を瞑った。
そんな事を考えていると、でこに衝撃が走り、「ぎゃっ」と悲鳴を上げて、でこを抑える。
「いつまで寝てる、このタコ助」
目を開けて、身体を起こしてみると、肩まである髪を金髪に染め、女性のような顔つきの男性が声を上げていた。服装は下は黒いジーパンに上はがぼがぼとした長い黒色のドクロマークがが入ったTシャツを着込んでいた。はっきりと言って声も女っぽい。始めてみる人なら、女性と間違えるだろう。一瞬、誰だかわからなかったが、声でわかった。夏山さんだ。
「夏山さん、はたく事はないじゃないですか」
俺は口を尖らせながら言うと、夏山さんは笑って答える、「はたいていないよ、デコピンだから」とデコピンを空気中でやってみせる。俺は「はいはい」とあきれながら再び、ベットに倒れこむ。夏山さんは軽く微笑み、そっと俺のでこに手を載せた。
「熱はなくなったみたい」
「熱?」
俺は聞き返した。まったくと言って記憶が無い。夏山さんは「二日前に学校でなきながら保健室に運ばれただろう? しかも終業式の日に、「頭痛い、痛い」って言いながら」と俺のでこに人差し指をつんっと当てた。そんな事もあったっけ? 俺は二日前の事を思い出そうとしていると、夏山さんが突然、冷たいコーラを頬に押し付けてきた。
「ぎゃっ! 冷たい!」
夏山さんは俺の隣に座って、コーラを俺の手におさめさせ、もう一個のコーラを開けた。ぽんっと音と同時にきつめの炭酸のにおいが鼻に立ちこむ。そして、それを口に運んでいく。俺もコーラの缶を開けて、中身の液体を口に運ぶ。途中でむせかえり、げほげほとやっていると、夏山さんはもう飲み終わったのか、缶を持ちながら立ち上がった。
「今日、ちょっと出かけてくるから、店番、よろしく!」
夏山さんはそれだけをにっこりと白い歯を見せて笑った。俺は「ずっけぇ!」と言いながら怒る、が。肝心の夏山さんは階段を降りて行く。俺はわざと深いため息をついて、コーラを置いて、ベットに倒れこむ。そのときだった。テーブルの上からかんっとガラスが落ちる音が響く。良く見れてば、祭りのときにかったサイダーのビー球だ。確か机の上においたままだったか? 俺は身体を起こし机の上を見る。そこには小さな小人が立っている。なんだ小人か。俺はそのままベットに倒れこんだ。
ん? ちょっと待てよ? 小人?
俺はもう一度身体を起こす。そこには小さな白髪の少女が座ってこっちを見ていた。白いワンピースを身に纏い、耳近くには勿忘草のような小さな白色の花がついている。白色の髪は老人のような白い紙ではなく、こまかな綺麗にふさふさとしている。全部の髪を正面へと持ってきている。俺はそのまま意識、身体機能を全て停止し気絶しそうになったが、少女の声がそれをやめさせる。
「ま、あの! あなたが選ばれた方ですか!」
俺は大きく目を見開かし、目をぱちぱちとし、じっと少女を見つめる。
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■作者からのメッセージ
始めまして。
一応、まだまだ続くのであとがきではありませんが、
この話は現実と異世界を行き来する少年で抑えてくれるとうれしいです。
アドバイス等、いただけるなら幸いです。