- 『SURIRU』 作者:東西南北 / 未分類 未分類
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原稿用紙約4.3枚
「SURIRU−01 昔野村」
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「暑い」
俺、N大学 科学課 物理部門の教授である本町 隆 は呟くようにそういった。
室内の気温は、34度。それも、この研究室はいたって窓が少ないところにあるために風はなかなか入ってこない。
こんな蒸暑いサウナ状態の部屋にもかかわらず、電気代節約のために勤務時間内でのクーラーの使用は禁止されていた。
唯一、使用を許された大型扇風機もウッカリカップ麺の汁を零して(こぼして)しまい、遭えなく使用不可となっていた。
体中汗が、みなぎる。給料等もノートパソコンと、大型扇風機の修理代に使ってしまい財布の中身は5千円ほどしかない。最近発売された高性能MP3が欲しいのだが経済上、買うことは出来なかった。
「腹が減った」
何回も言った、その言いなれた言葉を俺は言う。恐らく、今、目の前に売れ残ったケーキが捨ててあったのならば迷いなく食べるであろう。
そんな時、研究室の扉が思いっきり開かれた。
「教授!お仕事、ご苦労様です!!」
研究所に入ってきたのは、俺の助手である斉藤 恵であった。歳は20代前半、このN大学に入ってきて1年になる。
「ふぅー。中は暑いですねー」
斉藤はそう俺に言う。
「それより、これを見てください」
斉藤は俺にそう言うと、米俵を俺に見せる。
コシヒカリ100パーセント。そこにはそう書いてある。
「また、何か大会に出たのか?」
俺はそう言うと、斉藤は顔いっぱいに笑顔で
「そうですよ。町内会 暑いの我慢大会で優勝したんですよ」
よく、そんな大会見つけてくるな。俺はいつも、そう思う。斉藤は、生活の3分の1を大会に出場して生計をたてている謎の多い人間だ。アームレスリング大会などジャンルは豊富で、いつもチャンピョンを勝ちほこっている。
それにしても、あの米が欲しかった。カップ麺は俺の教授の口には合わない。
どうすれば…。
「あげませんよ」
斉藤は、俺にそういう。俺より、何倍も給料が低いのにこの差はいったい何なんだ。
「す…こしだけで…」
俺はそう掠れた声でそういう。
「あれ?良く聞えない。私、耳が悪いのよ」
斉藤は、そう言うと自分の机に座る。
「お願いします!米をください」
俺はそう大声で言いながら、頭を下げる。
「はぁ?何、その態度。頭ぐらいで、私が米をあげれると思ってるの?」
斉藤は、そう偉そうに大声で言う。そして、笑顔で
「土下座、そのくらいかしら」
そう言った。
「く…」
俺はそう、言いながら地面に足を着く。
「お…ねがいします…」
俺はそう言った。土下座しながら、そして教授である俺が助手に。
そんな時だった。
またもや、研究所の扉が開く。
「N大学の教授、本町 隆さんでしょう…か」
身長の低い、40代前後の男は礼をしながらそう言う。
顔を上げると、しばらく唖然した。
そこに広がっていた風景は俺が助手の斉藤に土下座をしている姿。
この絶妙な光景の第一発見者であるこの男。
これから始まる、事件の引き金となる人物であった。
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2006/06/04(Sun)10:49:58 公開 / 東西南北
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少しずつですが、更新して行きます。