- 『しっぽの無い犬。』 作者:ぽろろ / ショート*2 ホラー
-
全角1024.5文字
容量2049 bytes
原稿用紙約3.75枚
珍しい犬が居た。
しっぽの無い犬。
やさしそうなオジサンがその犬を散歩させていた。
「こんにちは」
犬が気になったので、思い切っておじさんに話しかけてみる。
「そのしっぽ、どうしたんですか?」
ボクは尋ねた。
「邪魔だったから切ってしまったんだ。しっぽがバシバシ足に当たることもないし、楽な
もんさ」「それはイイですね」
隣の家で飼われている犬が時折馴れ馴れしくボクをしっぽで叩くのを思い出しながら、言
う。
隣の犬もこうなら良いのに。
「ただ、糞をするからそれだけがすごく嫌なんだ」
それは確かに、嫌だ。
「じゃあ、また」
そう言うと、オジサンはボクに小さく会釈して行ってしまった。
今日もあの犬とオジサンを見かけた。
あの犬は尻が無かった。
「こんにちは」
ボクは昨日のように話しかけた。
「その尻どうしたんですか?」
ボクは尋ねた。
「邪魔だったから切ってしまったんだ。糞をすることが無いからね。楽なもんさ」
「それはイイですね」
隣の家で飼われている犬が時折ウチの前で糞をするのを思いだしながら、言う。
隣の犬もこうなら良いのに。
「ただ、わんわん吠えるから、それだけがすごく嫌なんだ」
それは確かに、嫌だ。
「じゃあ、また」
そう言うと、オジサンはボクに小さく会釈して行ってしまった。
今日もあの犬とオジサンを見かけた。
あの犬は首がなかった。「こんにちは」
ボクはいつものように話しかける。
「その首、どうしたんですか?」
ボクは尋ねた。
「邪魔だったから切ってしまったんだ。全く吠えないし、楽なもんさ」
「それはイイですね」
隣の家で飼われている犬が夜間いつも吠え続けているのを思い出しながら、言う。
隣の犬もこうなら良いのに。
「ただ、栄養を毎時間ごとに点滴したり、世話をするのが凄く嫌なんだ」
それは確かに嫌だ。
「じゃあ、また」
そう言うと、オジサンはボクに小さく会釈して行ってしまった。
今日はオジサンだけを見かけた。
あの犬はいなかった。
「こんにちは」
ボクはいつものように話しかける。
「あの犬、どうしたんですか?」
ボクは尋ねた。
「邪魔だったから切ってしまったんだ。全く世話をしなくていいし、楽なもんさ」
「それはイイですね」
隣の家で飼われている犬の世話を時折任されることを思い出しながら、言う。
隣の犬も居なければ良いのに。
「じゃあ、また」
そう言うと、オジサンはボクに小さく会釈して行ってしまった。
次の日からオジサンを見なくなった。
隣の犬も見なくなった。
-
-
■作者からのメッセージ
初めまして。
此れは、シュールな話が書きたくて電車の中で携帯にぷちぷち打ったモノです。
感想をいただけたら幸いですm(__)m