オリジナル小説 投稿掲示板『登竜門』へようこそ! ... 創作小説投稿/小説掲示板

 誤動作・不具合に気付いた際には管理板『バグ報告スレッド』へご一報お願い致します。

 システム拡張変更予定(感想書き込みできませんが、作品探したり読むのは早いかと)。
 全作品から原稿枚数順表示や、 評価(ポイント)合計順コメント数順ができます。
 利用者の方々に支えられて開設から10年、これまでで5400件以上の作品。作品の為にもシステムメンテ等して参ります。

 縦書きビューワがNoto Serif JP対応になりました(Androidスマホ対応)。是非「[縦] 」から読んでください。by 運営者:紅堂幹人(@MikitoKudow) Facebook

-20031231 -20040229 -20040430 -20040530 -20040731
-20040930 -20041130 -20050115 -20050315 -20050430
-20050615 -20050731 -20050915 -20051115 -20060120
-20060331 -20060430 -20060630 -20061231 -20070615
-20071031 -20080130 -20080730 -20081130 -20091031
-20100301 -20100831 -20110331 -20120331 -girls_compilation
-completed_01 -completed_02 -completed_03 -completed_04 -incomp_01
-incomp_02 -現行ログ
メニュー
お知らせ・概要など
必読【利用規約】
クッキー環境設定
RSS 1.0 feed
Atom 1.0 feed
リレー小説板β
雑談掲示板
討論・管理掲示板
サポートツール

『これで終わりでいいんだ』 作者:風間新輝 / ショート*2 未分類
全角2524.5文字
容量5049 bytes
原稿用紙約7.3枚
ある男の語り。SS。なにを感じるかは貴方次第。
「わりぃ。別れよ」
 俺は無情にもついこの言葉を出してしまった。何度となく言いかけては言い出せなかったこの言葉。告げた先は初めての彼女。初めて俺を好きと言ってくれた子だ。俺は恋というものに焦がれて、彼女と付き合った。普通に付き合っていても別れることがあるのだから、当然破局を迎えるとはわかっていた。でも、言い出せなかった。
「なんでよ? 冗談でもやめてよ」
 悲痛そうな顔。そんな表情をするってわかってたから言い出せなかった。でも、恋も愛もないのに、付き合い続けるなんて、そっちの方が不純だ。でも、これは言い訳なのかもしれない。
「冗談なんかじゃないんだ。別れよう」
 一度しか言いたくなかった。それどころかできることなら、言わないですむように、向こうから言ってくれることすら願っていた言葉だ。
「なんで?」
 泣き出しそうになりながらも彼女は唇を噛み締めて絞りだした。もう後には戻れないのに、理由を聞いても無駄なのに、それでも彼女はきっと聞きたかった。
「君が好きじゃなかったから、本当にそれだけなんだ」
 最低な言葉を投げ掛ける。できるなら、蔑んで怨んで憎んでくれ。そんな願いが俺にはあった。優しく綺麗に別れるなんて俺にはできないし、全部俺が悪いんだから、怨まれた方が楽だった。綺麗に別れれば、きっと自分で自分を赦せないだろうから。
 彼女は俺を見た。泪を一杯に溜めて、瞳を潤ませて、泪が落ちないように我慢しながら、俺を見た。
「じゃあ、じゃあ、なんで付き合ったりなんてしたのよ」
「付き合うってことがどんなものかわからなかったから、知りたかった」
 彼女は肩を震わせて、何も言わず、立ち尽くした。唇が僅かに開こうかとした瞬間に彼女は逃げた。きっと俺という最低な人間から。そんなやつにふられたことから。
 俺も何もしなかった。とめることは勿論、謝ることもしなかった。ただただ最低な自分を心から蔑んで傷つけることで赦して貰おうと愚かな思考をし続けた。

 彼女と別れてから二日後のことだった。俺はぼんやりとしながら、コンビニへとむかっていた。辺りには誰も人通りはない。工場や倉庫街で、今日は休日なのだから、当たり前といえば当たり前のことだ。
 目的は単なる暇潰しだった。特にやることもなかったわけだ。コンビニへとむかう通りの延長上に彼女の家がある。何度か行ったことがある。女の子らしく小綺麗で可愛らしい部屋だった。俺を部屋に入れる時、凄く恥ずかしそうに、あんまり見ないでねと言ったのを覚えている。
 コンビニまでは歩いて五分程。そんな僅かな道のりなのに、適当にぶらっと外に出てきただけなのに、前方に、まだ遠いけど、彼女がいる。初めてデートした時とまったく同じ格好をしている。俺は気づいてしまった。彼女は気づいているのだろうか。逃げるべきか、隠れるべきか、そ知らぬ顔ですれ違うべきか。そんな一瞬の逡巡のためにもう選択肢はなくなってしまった。彼女は確実に俺に気づいた。逃げるわけにもいかない。そ知らぬ顔をするしかない。
 俺は足取りが重くなっている自分に気づきながら、進む。彼女も進む。
 あと五メートルですれ違うというところで俺は彼女の顔を見た。目が真っ赤で、瞼が腫れていて、頬は少し痩けている。最後に見た時よりも生気が確実にない。 
 驚いたことに彼女は俺に近づいてきた。通りの端と端で通り過ぎるだけだと思っていた分、予想外だった。俺は立ち止まってしまった。何をしたらいいのかわからなかった。彼女と僕の距離は腕を掴んで引き寄せればキスができるくらいの距離になっていた。
「さようなら……」
 彼女の声が俺の耳元で響く。彼女は俺に身を預けるようにひっついてきた。 
 ――ごめん。
 言ってはならない言葉を吐き出しそうになった瞬間に、腹部に鋭い痛みを感じた。燃え盛るかのように熱い。そこだけは自分のものじゃないかのような奇妙な感覚。生暖かいぬるま湯につかっているようだ。瞼が徐々に重くなっていく。泣きながら、赤い目を更に紅くして、俺を見ながら喉をひくひく言わせる。
 とても哀しい表情。俺の意識はその表情を捉えたまま、薄く、萎んでいった。



 全部が白い。真っ白だ。いや、微妙に黒ずんでいる? 直角だらけだ。十二個もある。眩しいから、そんな照らさないでくれよ。眩しい!? 生きているのか?
 俺は手足にそっと力をいれる。体は脳からの命令で末梢神経を経て、反応する。俺は上半身を起こした。
「急に起き上がらないでください。一歩間違えば死んでいたんですから」
 俺の隣の看護師が俺を止めようとする。そう言われたのと同時に腹部に激しい痛みを感じた。傷口付近を動かしたのだから、当然だ。そして、どうやらここは病院のようだ。
「そのまま、おとなしくしていてくださいね。今、先生を呼んできますから」
 俺はこくりと頷く。看護師は、ぱたぱたとスリッパに言わせ、出ていった。
 ――助かったのか。あんなとこで刺されたのにな。 
 そんなことを考えていると、看護師が医者を連れて入ってきた。でっぷりと太った医者は、ローラーのついた椅子に座ると口を開いた。
「君、なんであんなとこで倒れていたんだね? 通行人が来なかったら死んでいたんだよ」
「死にたかったから自分で刺したんです」
 医者はいぶかしむように眉根を寄せた。
「君、左利きかい?」
 俺は首を振る。医者は深く息を吐いた。
「君の刺された位置は左利きでないと滅多に刺さない位置だった。それに自分で刺したかどうかなんて直ぐわかるんだよ。凶器になった包丁は君を発見した人が触ってから、つい恐くなってしまってから指紋を拭いてしまったから指紋は残ってないがね」
「俺がやったんです。それが全てです」
 医者は俺を測るように覗き込む。
「ふぅ、わかった。君が自分で自分を刺したんだね。そう、警察にも伝えておこう」
 医者は溜め息をつき、出ていった。きっと医者は俺がやったのではないと気付いている。でも、関係ない。これで終りでいい。こんなことで赦されるなんて思ってはいない。
 なんで言わないのかって?
 それは言わない。贖罪なんてものではない。それだけは確かだ。

2006/04/20(Thu)22:50:31 公開 / 風間新輝
■この作品の著作権は風間新輝さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
SSです。ちょっとやってみたかった。そんなのりでやっちまいました。本当にSSだから短いです。読んでいただけるととてもうれしいです。感想いただけたら最高です。
誤字訂正、御指摘をいただければありがたいです。
誤字訂正です
 

本当はここで書くべきではないのかもしれませんが、便利屋の修正おわりました。20051115に入ってます。よろしければお読みください。ちゃんとお返しレスもいたします。
この作品に対する感想 - 昇順
感想記事の投稿は現在ありません。
名前 E-Mail 文章感想 簡易感想
簡易感想をラジオボタンで選択した場合、コメント欄の本文は無視され、選んだ定型文(0pt)が投稿されます。

この作品の投稿者 及び 運営スタッフ用編集口
スタッフ用:
投稿者用: 編集 削除