- 『Street Childrenイーラの幸せ第2話』 作者:フレア / リアル・現代 未分類
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原稿用紙約18.8枚
ネタバレになるので2話までのあらすじストリートチルドレンとは、親に捨てられたり家出をしたりなどして路上で暮らす子供達の事である。ロシアのウラジオストクに住むイーラも路上で暮らしている女の子だ。同じストリートチルドレンのアンナと共に寒い路上で貧しくも楽しく生活していた。しかし、アンナの母がアンナを連れ戻しに来た事でイーラは一度自分の家へ戻る事を決意した。
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Street Children
第1話
イーラはロシアのウラジオストクに住むストリートチルドレンだ。
イーラの父はずっと昔に死んでしまった。
だが母と妹と一緒に暮らして貧しくも幸せな家庭だった。
しかし母に彼氏が出来てからイーラの生活は変わった。
母の彼氏はアル中でいつも家で暴れ、イーラや妹のナージャを殴った。昔は優しかった母も今となっては妹の面倒も見ないし働きもしなくなった。
ある日お金が底をつき、母の彼氏はイーラにお金を稼いで来いと言って来た。イーラはそんな事出来ないと言うと母の彼氏はイーラを殴った。
母に助けを求めると母までお金を稼いで来いと言ってきた。断ると母はイーラを家から追い出した。
そしてイーラは寒い路上で暮らす事になった。
1 イーラは14歳の女の子だ。金色の髪に青い帽子をかぶり、長袖の上にセータ、そしてコートを来ている。
そして下はスカートの下にタイツ。あまり暖かい格好とは言えない。
「イーラちゃん、お金あとどのくらいある?」
イーラと並んで歩いてる少女が話しかけた。アンナだ。
アンナはイーラより2つ年下で12歳。
親と喧嘩して家を出てからまだ1週間だった。
「あと55ペイカ(約2円)ぐらいだわ……」
ロシアでは55ペイカだとマッチぐらいしか買えない。
「お腹すいた……」
アンナは自分のお腹をさすって言った。
そういえば昨日から何も食べていない。
「お金稼ぎに行きましょう」
「うん!」
アンナは元気良く返事した。
2 初めてアンナと出会ったのはイーラがストリート
チルドレンになってから丁度3ヶ月の時。
夜、アパートが立ち並ぶ住宅地をブラブラ歩いていると誰かが勢い良く走ってきた。
そしてどんどんこちらの方へ向かってくる。
「え?」っと思うと軽い衝撃が体をよぎった。
「うわぁ!」と声がし、そして今度はお尻に激痛が走った。
どうやら走ってきた人とぶつかって転んでしまったようだ。
イーラはとりあえず「大丈夫……?」と声をかけた。
「あ、大丈夫です…」
その人はまだ子供で茶色い髪の色をしていた。
「よかったわ……」
「あの、ごめんなさい……」
その子はゆっくりと体を起こしながら言った。
イーラはその子の顔を見て驚いた。
「ナージャ!?」
なんとその子はイーラの妹のナージャにそっくりだった。
太い眉毛にクリクリとした青い目。
あたかもそこにナージャが居る様だった。
「え?私はアンナっていう名前ですけど…」
もちろんその人はナージャではなかった。
ナージャはイーラと同じ金髪のロングヘアーでこのアンナという子は茶髪で紙は短かった。
よくみるとアンナは泣いていた。
「ど、どうしたの?」
「思い出しちゃって……何でもないです……」
こんな時間に一人で外で泣いている
なんて何でもないはずなかった。
「よかったら話してくれないかしら?」
まだ幼いアンナをイーラはほっとけなかった。
イーラはアンナから親と喧嘩して家を出た事を聞き一緒に行動しようと提案した。
いままで一人でいたイーラは誰でもいいから一緒にいたいと思ったのだ。
これがアンナとの出会いだった。
3 イーラとアンナは繁華街へと来た。
大きなビルが立ち並び道路にはたくさんの車が走っている。
信号待ちしている車に物乞いをするのだ。
「二人手分けしてやる?」
「そっちの方が沢山貰えるけど、でもあんまり自身がないなぁ」
「大丈夫よ。アンナは可愛いから」
「そういう問題なの〜?」
アンナは顔を真っ赤にさせて言った。
イーラは妹のナージャに似ているアンナの顔が好きだった。
(今頃ナージャはどうしてるのかしら……)
そう思いながらイーラは信号が変わる
のを待っていた。
「どうだった?」
「えへへ」
「見せて………すごいじゃない!」
アンナの手は10ルーブル札(約40円)を握っていた。
「なんかすごく景気の良い人だったみたい」
「パンか何か買いに行きましょ」
「うん!」
アンナは再び元気よく返事した。
4 夜になってイーラとアンナは今日寝る所を探し始めた。
いつも違う所で寝ていた方が警察に見つかりにくいのだ。
アパートが沢山並ぶ住宅地。イーラ達は明かりが一番少ないアパートへ入った。
「ここで寝られるといいね!」
アンナははしゃいだ。
「しっ……!騒ぐと警察呼ばれるわ」
イーラとアンナは一回のごみ置き場から順に
調べることにした。
「ここはどうかしら」
イーラがごみ置き場の扉を開ける。
「うわっ……!」
アンナが鼻をつまむ。そこには生ゴミがちらばっていて臭くてとてもじゃないけど寝れそうになかった。
「しょうがないわ。次行きましょ」
今度は二回のゴミ捨て場のドアを開ける。
少しだけゴミがちらばるもののさっきの部屋と比べると断然綺麗だった。
「ここなら寝れるわ」
「もう眠いや……」
アンナは目を擦りながら言った。
毛布も何も掛けないでイーラとアンナは二人よりそって寝た。
少しでも暖かくなるように工夫しているのだ。
「アンナ、おやすみ」
「イーラちゃんおやすみ」
アンナとイーラはそれぞれ眠りについた。
第2話「幸福なアンナ」
1 雪が降っている。アンナとイーラは雪合戦して遊んでいた。
イーラははしゃぐには少し恥ずかしい年頃だったがアンナに付き合って遊んであげた。
「はぁ……はぁ……休憩しましょう」
「うん……」
息を切らしながら二人並んで座った。
アンナは靴の中に入ってしまった雪を取ってる。
イーラは無邪気なアンナを眺めていた。
顔立ちと幼く可愛らしい性格は
妹のナージャとそっくりだった。
まるでナージャがそこにいるような
気持ちになってくる。
ナージャは元気なのだろうか。
もしかしたらご飯もろくに食べさせられないで毎日殴られているのかもしれない…。
そしてもう……死んでいるのかもしれない……。
「どうしたの?」
アンナの声でイーラははっと我に返った。
「具合悪い?」
アンナは心配そうに私の目を見た。
「熱ある?」
そう言ってアンナはイーラのおでこに
自分のおでこをくっつけた。
「アンナ、なんともないわ」
こんなに人に傷かって貰ったの初めてかもしれない。
なんて愛しいのだろうとイーラは思った。
「イーラちゃん……泣いてる……」
「え?本当だ……」
イーラの涙はとまらなかった。
するとアンナはイーラの手を「ぎゅっ」と
握ってくれた。
「イーラちゃん、私がいるから…」
アンナの優しさがイーラにとても伝わった。
なんだか幸せな気持ちだった。
2 イーラとアンナは市場にいた。用事がある訳では
ないが暇つぶしに来たのだ。
今日は雪が降っていて特に気温が低かった。
「寒い……」
アンナがブルブルと体を振るわせる。
「何か暖かいもの食べたいわ……」
イーラも体を振るわせた。
お金は結構貯めてあるが、やはり先の事を考えると贅沢はできない。
「…………!」
突然アンナが立ち止まった。
顔を見るとすごく驚いていた。
「どうしたの?」
そうイーラが聞くとアンナはつぶやいた。
「お母さん……!?」
「お母さん?」
イーラは何事かと顔を顰めた。
「ほら、あの髪が紅くて写真もってる人……。何でこんな所まで……」
アンナは指を指した。
まさかと思いイーラは指差す方を見た。たしかに髪の紅い女の人が店の前で道行く人に写真を見せて何かたずねている。
「私の事探してるんだ……」
アンナは下を向いて言った。
この市場はアンナと始めて出会った所とは結構離れていた。
ちょっと探したぐらいじゃここまで突き止められない。
「お母さん馬鹿みたい……。必死に探しちゃって……」
「アンナ……」
イーラはなんだか少し羨ましい気持ちになった。
アンナには家を出ても探しに来てくれる家族がいる。でも自分には……。
「行って来たら? お母さんの所」
「でも行ったら……絶対帰って来いって言われる……」
アンナは今にも泣きそうな顔をしていた。
「いいのよ、それで。こんな生活、抜け出さなきゃだめよ!」
イーラは少し強い口調で言った。いつもと違うイーラにアンナは驚いてイーラの顔を見つめた。
「アンナ!」
女の人の声がした。アンナの母だ。
「お母さん……」
アンナの母はアンナに駆け寄り肩を抱いた。
「こんなところにいたのね……! 心配したのよ?」
「……ごめんなさい」
「あの時はお母さんが悪かったわ、まさか家を出て行くなんて思わなかったの」
「……」
「早く家に帰りましょう。 お父さんも待ってるわよ」
「……やだ」
「何を言っているの?」
ここでやっとアンナの母はイーラの存在に気づいた。
「この子は一体誰?」
アンナの母はイーラを睨みつけた。
「私はイーラです」
アンナではなくイーラが答えた。アンナはしゃっくりを上げて泣いていた。
「あなたのせいなのね!?アンナが帰りたくないなんて言うのは!」
アンナの母は少しヒステリックに叫んだ。周りの人々もチラチラとこちらを見ている。イーラは戸惑った。
「アンナ、早く帰るわよ!」
アンナの母がアンナの手を引っ張った。
しかしアンナはその手を振り払った。
「いやだ! 私イーラちゃんと一緒に居たいの!!」
アンナは大きな声で言って母の手を振り払った。そしてその場から走り出した。
イーラもアンナを追いかけた。アンナのお母さんも追いかけてはいるがアンナとイーラに追いつかない。
そのままイーラとアンナは裏路地まで全力失踪で走った。
どうやらお母さんは逃げられたようだ。
3 裏路地は狭くて人が誰も通らないようなところだった。
しばらく息が切れて黙っていたが落ち着いた頃に二人とも腰掛けイーラが聞いた。
「アンナ、一体どうするの?」
「帰りたくない……」
「さっきも言ったけどこのままこんな風に暮らしていても幸せになんかなれないわ」
「自分だけ幸せになれないよぉ……」
搾り出すような声だった。
「私の事はいいのよ、アンナは自分の事だけを考えれば」
イーラもアンナと別れるのはもちろん寂しい。だがイーラはなんとかアンナを説得させたかった。
「でも寂しい……イーラちゃんと一緒にいられないのが」
「なら私も家に帰ってみるわ。アンナの家は遠いし、しばらく会えなくてもいつか会えるから」
「いつか?」
アンナは顔を上げて聞いた。
「えぇ」
イーラは優しくアンナに微笑んだ。
「すぐには会えないの?」
「同じウラジオストクの町に住んでるとは言っても私は家に帰っても普通の人と同じ生活はできるとはわからないの。お母さんが出て行ってから学校も行ってないし……」
アンナはイーラの言ってる事を完全に理解はできていなかったが真剣に耳を傾けていた。
「だからアンナとは違って環境は悪いままだから私とは大人になるまで会わない方がいいわ」
「わからない……私とイーラちゃん何が違うの?」
イーラは「親が子供の事を愛していないのが」と言いたかったが口をつぐんだ。
「きっとアンナは学校に通って、普通に仕事をするようになるわ。でも、私みたいに学校にも行けないような人と関わったらアンナはまた道をそれてしまうから……」
「……」
アンナは自分なりに何か一生懸命考えていた。
「アンナが幸せになるためには大人になるまで私と関わらない方がいいのよ、わかる?」
「ちょっとだけわかった。でも私の幸せってなんなのかな……」
「……!!」
イーラは不意をつかれたようでびっくりした。まさかそんな事を聞かれるとは思っていなかったのだ。幸せというのはイーラにとって親が子を愛してくれて普通の生活をする事だと思っていた。真剣考えていたがアンナ「でも」と続けたのでただの独り言だったようだ。
「イーラちゃんが私に家に戻って欲しいのはよくわかったよ」
「それならよかった。もう一回聞くわ。これからどうする?」
「家に帰る。そんで普通の人と同じ生活をして大人になったらまたイーラちゃんに会いに行く」
「ありがとう。わかってくれたのね」
「うん。イーラちゃんが喜んでくれるなら」
「えぇ……」
しばらく沈黙が続いた。
「イーラちゃん……!!」
緊張の糸が切れたのかアンナはイーラに思いっきり抱きついた。イーラも優しくアンナの肩を抱いた。
「今までありがとう!絶対絶対に忘れないから!!」
「私もよ。アンナの事忘れない」
「絶対また会おうね!絶対だよぉ……!!!」
「えぇ、絶対……」
二人はしばらく抱き合って別れを惜しんだ。
―数時間後……
「じゃぁ、行ってくるね、いつか大人になったら絶対会おうね!」
「……うん」
アンナは立ち上がり走り去っていった。振り返ることはなかった。アンナは
これからまた平凡で幸せな生活に戻る事が出来るだろう。
イーラはその姿を人ごみに紛れ見えなくなるまで眺めていた。
「さようなら、アンナ」
そしてイーラは一人で建物に持たれかけて空を何時間もボーっと見ていた。そしてそのうちに、
(家に帰ろう)
そう考え立ち上がり歩き出したのだった。
(3話につづく)
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2006/03/20(Mon)00:20:03 公開 /
フレア
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■作者からのメッセージ
2年くらいに途中まで書いたのを書き直しました2年前のなら制約違反になりませんか?制約をよく読んでもわかりませんでした(汗)かなり長くなりそうです。感想などがあったらお願いします。