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『Stay by myside』 作者:渚 / 未分類 未分類
全角3423.5文字
容量6847 bytes
原稿用紙約12.5枚
 「自分」という存在は、私一人。そんな風に考えることは、間違っているのだろうか。
 それなら、「彼女」はなんだったんだろう。あれは確かに「私」だった。自分自身だった。






















Stay by myside















 ありえない出来事にぶつかったとき、人はそれを否定しようとする。しかし、それは時間と共に輪郭を持った現実になる。




第一話 First Contact





 幸せだ。そう思えることが、こんなにも暖かい感じだなんて知らなかった。
 満ち足りた気分で里緒は隣に眠る少年を見た。子供のようなあどけない寝顔で光喜は眠っている。彼の少しやせた胸に頬をうずめる。規則正しい寝息といっしょに胸が上下する。どくん、どくんと心臓が鼓動を打つ。里緒は目を閉じた。彼の体温と鼓動が心地よく眠気を誘う。母親の胎内のように、どこまでも安らかな場所。
 そう、信じたい。











「じゃあ、気をつけて帰れよ」
 あたしの髪に顔をうめて耳元にキスをしながら光喜がいう。彼は優しい。里緒を満たしてくれるのはいつだって彼だった。体はもちろん、心も。
 帰りたくない。いつもその思いではちきれそうになる。それでも、里緒は帰っていく。二人の関係は秘密だった。マンションの住人が起きるより早い早朝に帰らないと、詮索好きのお隣さんにばれ、そこから水が流れるようにいろんな場所に広がっていくだろう。あそこの男性はもう大の大人のくせに、まだ制服を着た女の子を連れ込んでいる。あんななのに、仕事は塾の講師らしい。嫌らしい、生徒と恋愛だなんて。そんな誹謗中傷は簡単に想像できる。だから里緒は帰るのだ。この関係を守るために。この幸せを壊さないように。













「ねぇ、里緒、今日一緒にカラオケ行かない?」
「…あ、ごめん、今日塾なんだ」
「今日も?昨日も行ってなかった?」
「日曜以外、毎日だから」
「ええっ、うそ!?すっごーい」
「そんなんじゃ来年まで持たないよぉ」
 甲高い笑い声を発するクラスメイトたちを、里緒は作り笑いを浮かべたままぼんやりと見ていた。一体、彼女たちのどこにこんなエネルギーがあるのだろう。触れてしまえば火傷しそうな位、彼女たちは力を放っている。その細い体のどこからそんな力が出てくるのだろう。里緒は、自分の体から力を感じられなかった。感じるのは、叫びだけ。光喜に会いたい、傍にいたい、触れたい……。
 里緒は思わず頭を抱えた。いつからこんな風になってしまったのだろう。近頃自分の中を占めるのは、光喜のことばかりだ。いや、光喜に関する恐れ、というべきだろうか。彼が怖いんじゃない。彼を失うことが、この幸せが崩れてしまうことが怖い。
 頭ではわかっているのだ。生徒と教師という関係の延長上の恋なんて、永遠に続くわけがない。社会的なこととか、周りの目とか、年の差とか、いろんなものが障害になってきっといつかは崩れてしまうだろう。
 それが怖かった。…死ぬほど怖かった。














 麻薬中毒者は麻薬がないと生きていけなくなる。
 それならこれは幸せ中毒、とでも言うべきだろうか。幸せがないと、今の幸せがないと生きていけない。里緒はそう感じていた。そして、そんな自分がたまらなく嫌だった。嫌で、嫌で、でもどうしようもなくて。
 ゆっくりと湯船につかりながら里緒はため息をついた。ため息をつくと老ける、なんて言うけれど、里緒にとってはすばらしい話だった。年をとれば、光喜に近づける。
 自分の体を見下ろす。お湯でゆらゆらと揺れている、自分の未熟な体。光喜はいつまで、この体を愛してくれるだろう。もし、自分に体がなかったら…心だけが存在するような生き物だったら、彼は自分を愛してくれたのだろうか。
 白い湯気に隠されて、答えは見えなかった。











「里緒、ちょっと話があるんだけど」
 風呂から上がると、母親が怖い顔をして台所から出てきた。タオルで頭をごしごしかきながら里緒は母親をじっと見た。この人は今の夫と結ばれて、どんな気持ちだったのだろう。他にもっと愛した相手がいたのだろうか。
「あんたね、毎日塾に行くのはいいことよ。でも、最近ちっとも成績が上がってないって塾から電話があってね」
 当たり前だ。毎日塾に行き始めたのは一秒でも長く光喜と一緒にいたいからだ。
「それどころか下がり気味だってね」
 里緒はうつむいて自分の手のひらを見つめた。光喜を付き合いだしてから、ほとんど何も手につかなくなった。勉強も、大好きだったピアノも。今欲しいのは光喜だけ。それ以外には興味がなくなってしまった。
「あのね、里緒。ただ時間を長くすればいいってモンじゃないのよ。集中力が続かないぐらい長く行ってどうするの。お金だってかかるのよ」
「わかってる」
「何がわかってるの?ちゃんとこっち見なさい」
「もう、うるさいなっ!!」
 勢いよく立ち上がった娘に母親は少しひるんだようだった。その隙を突くように里緒は一気にまくし立てる。
「普段は勉強勉強ってうるさいくせに、なんで多くやったら小言いわれなきゃいけないの!?」
「里緒、お母さんだって、あんたが努力してるのはわかって」
「わかってるんならっ……」
 そこで里緒ははっと言葉を呑んだ。危うく「光喜とあたしの間に割り込まないで」なんて言うところだった。気まずさを隠すように髪をかきあげ、母親を一睨みする。
「…とにかく、ほっといて」
 何か言いかけた母に背中を向け、ドアを思い切り閉める。そのまま振り返らずに里緒は階段を駆け上がり、自分の部屋に飛び込んで鍵をかけた。そうしたときには、もう頬は涙でびっしょり濡れていた。
 その場に座り込み、声を殺して里緒は泣いた。しゃくりあげるのを止められなくて、拳を口に当てる。声はそれで止まっても、涙は止まらなかった。瞬きしなくても、ぼろぼろと涙が出てくる。
 どうして彼との恋には、こんなにも障害が多いんだろう。誰にも祝福されない、禁断の恋。どうして自分はこんな辛い道を選んだんだろう。
 不安定になっているのが自分でもわかっていた。足が一本しかないように、いつでもぐらぐらふらふらしている。ちょっと押されただけでバランスを崩して、自分を制御できなくなる。
 いつの間に自分はこんなに…こんなにも、弱くなってしまったんだろう。そんな自分が嫌で、里緒は泣き続けた。











 目が覚めたのは、あまりの痛みだった。里緒は思わず声を上げ、頭を抱えた。目の前にはドアがある。痛みに朦朧としながらゆっくりと記憶を手繰り寄せる。確か、ここで泣いていて、そのまま眠り込んでしまったのだ。
 だが、この痛みはなんだろう?かたく目をつぶり、里緒は今度は自分の体を抱いた。いまや痛みは体中に広がっていた。心の痛みとか、そんなレベルじゃなかった。それだって相当辛いけど、これはそれとはまったく種類が違う。体を引きちぎられるような肉体的な痛み。里緒は爪の跡が残るくらい体を強く抱きしめた。
「あ、あぁっ、く……」
 呼吸までも苦しくなってくる。あまりの激痛に視界がかすむ。鍵をかけたドアが2重にも3重にも見えた。
 死ぬ。直感的にそう感じた。嫌、嫌、死にたくない…助けて…誰か…光喜…光喜…。
 突然、特大の激痛がきた。里緒は思わず叫んだ。今まで足したことがな様な、断末魔のような叫び。視界が暗くなる。
 死んだ……?いや、違った。少しずつ視界が明るくなってくる。里緒はまだ、さっきと同じ、自分の部屋に横たわっていた。痛みはなくなっていたが、岩を入れたように体中が痛い。それなのに、起き上がろうと床に腕をつくと水を詰めたようにぐにゃりと頼り無くまた床に倒れた。
 あの痛みは一体……そう思いながら何とか力を振り絞り体を起こし、特別重い頭を片手で支えた。目を開くことさえ辛く、目を閉じていた。
 と、もう片方の手に何かが触れた。生暖かい何か。里緒は思わず手を引っ込めた。鼓動が早くなるのを感じる。何……?今時分の隣にあるものは、一体何?
 覚悟を決めて、力を入れてまぶたを上げる。薄暗い部屋に、白い何かが浮き上がっている。目を細めて「それ」を見る。里緒はあんぐりと口をあけ、それを凝視した。
 それは、人だった。それも、ただの人ではない。それは…それは「自分」だった。自分とまったく同じ顔をした少女は一糸纏わぬ姿で里緒をじっと見つめていた。


 









2006/01/10(Tue)21:22:56 公開 /
■この作品の著作権は渚さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
お久しぶりです。はじめましての方も多いと思います。渚といいますm(__)m
何ヶ月ぶりかに小説を書きました。ワープロ打つのって肩こりますね^^;
相変わらずどこまで続けられるのかわかりませんが、ラストはもう決まってるっていうのもいつもといっしょです。がんばって完結させたいんですが・・・^^;
気まぐれ更新なんですが、もしよろしければ気長にお付き合いください。
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[簡易感想]続きも期待しています。
2013/08/29(Thu)04:54:300点Chidchai
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