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『夜は眠らない[四夜]』 作者:トロヒモ / 未分類 未分類
全角1691文字
容量3382 bytes
原稿用紙約6.05枚
 この作品は2005年3月の続きにあたります。よかったら読んでいただけたら、光栄です。


[ 岸本 直春編 A]


 〜四夜〜


俺は、月徒って言う医者と、一人の男の心の闇…つまりマーブルから守る為、夜道を走っているんだけど…? なんども同じような道を走っているような気がする。
「なぁ、ここ、さっきも通ったよな? 」
「……」
月徒っていう医者は、急に立ち止まり、黒衣の内ポケットから携帯型の地図を取り出して、頭を押さえて、それを見ている。
「迷ったのか? 」
「おかしいな」
「ちょっと見せてくれない? 」
俺は、月徒から地図を取り、目的地を確認してみると、ここから真っ直ぐ進むだけで、着く事になっている。
「……」
俺は、月徒と、顔を見合わせた。そして、ゆっくりと微笑んだ。
「なんで、この道真っ直ぐなのに、さっきから右折ばかりなんですか? 」
「…スマン」
月徒は、極度の方向音痴だと、今、俺の頭は認識した。
気を取り直し、再び俺たちは走り出す。

俺は、月徒から取り上げた地図を、左手で持ちながら現在地を確認していると、月徒が急に話しかけてきた。
「すぐ近くにターゲット(岸本)がいるぞ。」
驚いた。俺が今、もう少しって言おうとしたのに、何で分かったんだ?勘?そんなはずはないだろうけど…。
月徒はそんな悩んでいる俺を見て、ウインクしてきた。その瞬間、俺はまるで、キツネに騙されている様な気持ちだになる。月徒の横に居るだけで、背筋が伸びている気分。
「ターゲット発見! 走るぞ」
月徒の大きな声に、俺は驚き、足を攣った。痛いが、我慢できるだろう。だって今の俺は、ターゲットに接触する為には、必死こいて走るしかない。もしもの時は、医者だっているわけだし。信用できないけど…。
 顔を上げると、月徒の体が薄く見える。前を走っていた月徒の体が。そして、消えてしまった。
 当然、目の前で起きた出来事が、理解不能すぎて、頭の中はメチャクチャだ。それでも、一人でも、ターゲットに接触しなければと、俺の頭が決断を下した。
「岸本直春さんですね」
明らかに異様な光景だ。岸本直春の服は汚れ、口と鼻からは出血。周りには、関わりをもちたくのない様な男達に囲まれている。異常だっただけに、一瞬で状況を把握できた。
「誰だお前は? このオッサンの仲間か? 」
マジで逃げたいと思った。けど、現実では、岸本の仲間と解釈されて、このままボコボコに殴られるだろう。
「そんな、若者の知り合いなんていない」
岸本は、見ず知らずの俺をかばって、他人と言ってくれた。だが、現実は、俺を見逃してくれる程甘くもないし、そんな奴がいるはずもない。
「知り合いかどうかは、関係のない話し。こっちは、金さえ入ればそれでいいんだよ」
その言葉の最後と同時に、俺は殴られた。全くついてないな。拳が顎に命中したせいで、俺の意識は、飛びかけて朦朧としている。もう何も分からない。

 どれくらいたったのだろうか、まるで1秒が1分に感じられる。長い間ここに倒れている気がする。
「大丈夫か? 」
なんだ?男の声…。俺の上半身を誰かが、起こしている。
「大丈夫か? 」
声の聞こえる方に顔を向けると、ターゲットの顔があった。その顔を見て、俺は、理性を取り戻した。
「気が付いたようだな」
岸本はそう言うと、コートの内ポケットから、潰れているタバコを一本取り出し、口に銜え、夜空を見上げている。
「何か様か? 」
しばらく間をおいた後で、俺に聞いてきた。俺は、今までの事を、岸本に話した。
岸本がターゲットである事を言わずに。
「それで? 何が知りたいんだ」
俺は、立ちくらみになりながら、立ち上がり、マーブルの取り外し方を岸本に聞いてみた。岸本は、相変わらず夜空を見上げ、一言呟く。
「星を探せ」
――星を探せ。 その言葉が何を秘めているのか?

 月徒は、どこに行ってしまったのか?


「出て行け〜! マーブル! 」
まだ俺は、月徒が何処にいるのかも、何に脅かされているのかも、知らずにいる。



















                             続く。
2006/01/09(Mon)00:52:10 公開 / トロヒモ
■この作品の著作権はトロヒモさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
久しぶりです。トロヒモといいます。今ははじめましてかな…。
続きを掲示するのが10ヶ月ぶりとなってしまいました。スミマセン。続きは書いていたのですが、来れるタイミングを完全に逃してしまいました。そんな作品ですが読んでもらえたら光栄です。
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