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『海中空庭園人魚姫(仮)』 作者:望月 / ファンタジー お笑い
全角8117文字
容量16234 bytes
原稿用紙約24.15枚
一)青い髪と青い瞳のケツの青い男シャン

 宇宙には果てがない。

 我々が住む地球では、こう言われていた。
 しかし、この物語の舞台は此処地球と物理学的数字で表せない程離れた……そう、いわゆる宇宙の果て―――の一歩手前にぷかぷかと浮いている星が舞台である。

 この星の大きさは地球の約三十二倍。地上、空中、海中の三階層に分かれている。地上の生活は我々とほぼ変わりはしない。空中は雲の上での生活。さらに……なんとこの星では空の上に海があるのだ。その事から、地上人は海中の事を『海中空庭園』と呼んでいた。海中で暮らしている者は地球でいう半魚人。良く言って人魚である。しかし、滅多に姿を現さない海中人達は……伝説に成りかけていた……。

「だーかーらー! さっきから言ってるでしょ?」
 地上グラウドン街にて。
 肩より少し上までの青いサラサラストレートヘアと、澄んだ瞳を青く染めた少年が、城下町で交渉をしているようだ。胸元がV字にバックリと空いた白いTシャツに、膝下辺りまでまくった黒いズボン。腰にはスカイブルーの大きいスカーフを巻きつけていた。
 彼の名前は、シャン。十八のそこそこ『いけめん』の男だ。
「こっちもさっきから言ってるだろっ! お前に魔術なんて教えてやらん!」
 シャンと話しているのは全身を真っ黒いスーツに身を包み、おろすと膝辺りまではくるであろう長い漆黒の髪を高い位置でポニーテールに結っている女だ。小顔で色白(髪が黒すぎるから白さが引き立っているのかも知れないが)、瞳も真っ黒で、唇はきれいに赤い。つまり、一言で言えばまるで絵に描いたような美人なのだ。しかし……
「そこをなんとか頼むって、ビスカ姉っ!」
「さっきっから……しつっけぇんだよ、こんの糞餓鬼がっ! だいたい、てめぇなんぞに行ける所じゃねぇんだよ、あそこは!」
 恐ろしいくらい言葉遣いが悪い、このビスカという女。まさに『美女の中に野獣』である。しかし一体、この二人は何について話しているのか?
「ビスカ姉。俺、本気なんだよ…。本当に海賊になりてぇんだ」
 どうやらシャンは海賊を目指しているようだ。しかし、この星に海と言ったら……そう、海中空庭園しかないのだ。
「……。シャン、いいかい、よく聞くんだ」
 ビスカは真剣な眼差しをシャンに向けた。
「私は確かに過去に一度だけ海中空庭園を訪れたことがある。地上人の私があそこに行くのには相当の苦労が必要だった。私はかれこれ二〇八七年程魔女をやっているが、あんなに魔力を使ったのは久々だったね…。だけど、苦労していったにも関わらず、海中空庭園はまさに最悪な場所だった」 
 ビスカは少し顔をうつむかせた。そして、コーヒーの入ったコップを手に取り、グビッと一口喉に流した。シャンもそれにつられ、ビスカに出されたコーヒーを口に持っていくが、にがい匂いに顔をしかめた。
「あのな、シャン。お前の冒険心を止める気はさらさらねぇよ。お前はガキの頃から海賊海賊言ってたから……。まぁ、まさか十八になっても海賊になろうとしてるなんて思わなかったがな」
 はっはっはと椅子のひじかけに肘をかけ、あごをあげて笑うビスカに、シャンは言った。
「いいだろ! 別に…! おっ…俺の親父も昔は海賊目指してたって言ってったぞ!」
 シャンはムキになって声を荒げた。
「では何故シャンの親父殿は夢を諦めた?」
 まるで悪い事をした子供を叱るように、ビスカは静かに聞いた。シャンは一度ビスカから視線をそらし口をにごらせたが、おどおどと口を開いた。
「そ…それは…! うちの親父が情けない奴だったからだよ! 俺は親父みてぇにはならねぇぞ! 俺は海賊になるんだ!」
「違うよ、シャン」 
 ビスカはシャンが立ち上がりそうなほどムキになっているにも関わらず冷静だった。
「親父殿は気づいたんだ。庭園の海を荒らして何になる? それに親父殿は気づいたんだろうよ。そりゃあ地上人にとっちゃ庭園の奴らなんか伝説かも知れない。だけど、これは海賊を目指すなんてほざく馬鹿なガキを止めるために、大人共が作った話だ。私はつい一〇三年前に現に庭園の奴らを見てきた」
「じゃあやっぱり海中人はいるんだろっ!? 俺は、地上人をクズだとしか思ってない庭園の奴らの金物全部奪い盗って地上人が強いって事を見せ付けてやんだ!」
 ビスカは鼻で笑った。
「ははっ。随分でかい夢だなシャンよ。お前、それ悪役だろボケカスがっ。いいか、だいたいお前一人で庭園に行ってもミンチにされて終わりだっつーの。ったく…」
 ボソボソと愚痴をこぼしながらシャンが残したコーヒーを飲み干し、カップを台所の水にひたしていたビスカに、シャンが目を輝かせていった。
「ビスカ姉! 一緒に行こう!」

一時の沈黙。

「はああぁあぁあぁぁぁ!? ふざけんな! 二度と行くもんか! あんな奴がいなければ天国なのに……!!」
 ここまで言って、ビスカは目を見開き、両手で口をおさえた。
「ビスカ姉……今『あんな奴がいなければ天国』って言った? ビスカ姉、庭園に誰か知り合いでもいるのか?」
 ビスカは目を泳がせ、ただひたすら黙っていた。
「俺、親をガキの頃に亡くしちまったから大人の知り合いってビスカ姉くらいしかいねぇんだ。だから、ビスカ姉の言う事は真実だと思ってずっと生きてきたんだ。だけど、俺のダチに聞くとみんな『魔術が使えれば今すぐにでも庭園に引っ越したいくらいだ』っていつも言うんだ。でもビスカ姉は庭園の奴は地上人や空中人をクズとしか思ってねぇとか、庭園は海の地獄だとか言うから俺は信じてた。だから海賊になって庭園の奴らをこらしめてやろうと思ったんだ。なのに……」
 シャンは机に手をかけた。
 ビスカは卓袱台返しされると思い、結局降参した。
「あーもーわーっかったよ! 話す! 全部話すっつーの!」
さて、シャンの冒険は始まるのだろうか?


二)海中空庭園

 ビスカは少し気にくわなそうな顔をしながら、深いため息をついた。
 そして、両手を組み、一瞬考えたが、シャンの瞳を見て諦めたように話し出した。
「あーなんだ……その……まず庭園の奴らが地上人をクズだと思ってるのは嘘だ。まあ私は、庭園の奴らの存在を半信半疑のまま庭園に行ったからな。少し警戒はしてたんだが、むしろ大歓迎されたよ」
 シャンは目を輝かせた。
 地上人が海中空庭園に行くにはとても強い魔女に頼まなければならないと言い伝えられていた。しかし、魔女はあくまで架空の人物。地上では、魔女と言う者は存在しない者として扱われていた。そのため、海中空庭園に半魚人がいる……事より以前に海中空庭園が本当にこの星に存在するのかさえ、地上人は信じていなかった。
 だが、シャンは子供の頃から一緒にいるビスカだけは、魔女だと知っていた。きっとこの星でただ一人の魔女。何故シャンがビスカが魔女だと知っているのかと言う事は、またしばらくたってから語ることにしよう。
 とにかく、唯一ビスカの正体を知っているシャンだけが、この星で海中空庭園にいける可能性のある『人間』なのだ。
「って事は、俺、何の気兼ねもなく海賊になれるってことっ!? 庭園に行ってもいいんだろ!?」
 シャンは机に手を置き、足をバタつかせた。
「話を最後まで聞け、この青ケツ小僧がっ!」
 自分の尻を少々きにしながら、シャンは肩の力を抜いた。
「あのな、そりゃあ庭園は言い伝え通り本当に良い所だった。だけどあそこは『人間』が住める所じゃねぇんだよ。酸素が薄いし、第一海しかねぇ。海中で生活できねぇ『人間』が行って幸せになれる所じゃねぇぞ」
 シャンはコクコクと深くうなずいていた。まるで分かってるから早くしてくれ、と言わんばかりの反応だ。
「大丈夫だよ! 俺は海賊になるために庭園に行くんだ! 海賊は船の上でしか生活しねぇんだ! だから海中で生活できなくても大丈……」
 そこまでシャンが言いかけた時、外から物凄い爆音が響き、それとともに立っていられないほどの地響きが襲ってきた。
 ビスカは咄嗟にシャンを抱えた。
「な……! なんだよこれ……!? ビスカ姉!」
 外から人々の叫び声が聞こえた。シャンはビスカの腕の中で震えていた。その振るえは怖さからでもあるが、止まらない地響きのせいでもあった。シャンは喋らないビスカを不思議に思い、顔を上げた。
「ビスカ……姉……?」
 ビスカはじっと目を閉じていた。シャンはその表情を見て、ハッと勘付いた。透視だ。ビスカは目を閉じ、透視をしていたのだ。今外に出る事は危険だと判断したビスカは冷静に家の中から透視をしていた。シャンの肩を抱くその手にかなりの力がかかっていて、シャンは少し肩が痛かったが、じっと我慢をした。
「シャン……」
 ビスカはやっと言葉を発した。しかし、開いた目はとても真剣で、シャンは自分から話しかける事が出来なかった。 
「シャン……よく聞きな。何だか知らねぇけど、空から何か落ちてきたみたいだね。隕石……のような…でも隕石じゃない。これは……きっと故意に落とされた物…。透視してみたところ、この地上階には本当に魔女が私しかいないみたいだね。まずは私が空中階へ行ってみる。もしかすると庭園まで行くことになるかも知れないな……。とにかく危険だ! だからお前は此処で待って……」

「嫌だっ!!!」

 シャンは、拳をぎゅっと握った。
「シャン……?」
 抱いているシャンの肩の震えが大きくなった。ビスカは心配そうにシャンをみた。
「だって……空中階だってそんな簡単に行って帰ってこれる所じゃねぇだろ。もし、外の隕石みてぇなのが本当に空中階とか庭園からだったらもっとやべぇじゃんか。帰ってこれねぇかも知れねぇじゃんか!」
 その時、もう一度爆音と地響きが響いた。もう一度隕石のようなものが落下したのだ。ビスカは咄嗟に構えたが、シャンはずっと下を向いたままだった。
「シャン! もう時間がないかもしれない! これは『海賊ごっこ』をしに行くのとはわけが違うんだ! 私はお前を危ないめに合わせるのは嫌だ! そうお前の親父殿にも頼まれて……」
 シャンは自分の肩を抱いていたビスカの手をはねのけた。
「俺は……! もう子供じゃねぇ! 俺だって、ビスカ姉が危険なめに遭うのは嫌だ!」
「シャン……?」
「でも……それ以上に……」
 シャンは自分の唇をぎゅっと噛んだ。

「もう俺は……独りになるのは……嫌なんだ……」

 シャンはそう言うと、また顔を下げた。ビスカは、しばらく黙っていたが、すぐに頭の中を整理し、じっとシャンを睨んだ。
「あーあ。全く。まだまだ餓鬼だなお前は! こーんな餓鬼じゃ此処に残しておくのも不安になっちまうよ」
 シャンは顔を上げた。

「立ちな、シャン。一緒に行くぞ」

 ビスカはシャンに手を差し出した。そして、優しくニッコリ笑った。
 シャンは涙を目に溜めて、ビスカの手を握った。手と手が触れ合うと同時にグイッとビスカはシャンを引っ張った。
「泣いてんじゃねぇーぞ、青ケツ小僧! しっかり掴まってな!」
 シャンはビスカのスーツをぎゅっと握った。ビスカは、人差し指と中指だけを額にあて、唇を噛んで血をだした。
「血の契約を交わし、我との契りを守りし玄武よ、今我の血をもって命令す。地上階に甲羅でベールを。落ちてくる悪きし物を大蛇よ食らえ!」
 ものすごい光と共に、地響きがおさまった。
 ビスカの呪文が地上階にバリアをはったのだ。
「じゃ、行くぞ、シャン!」

「血の契約を交わし、我との契りを守りし朱雀よ、今我の血をもって命令す。その熱く美しい羽に我を乗せ今飛びたたん! いざゆくは中階層、空中階へ!」
 けたたましい獣の鳴き声とともに、ビスカとシャンの足元は熱を感じない炎へと変わっていた。


三)空中階へ

 シャンは目を開けていられなかった。つき刺さる風が痛く感じていた。風圧のせいで目が開けない。
「ビ……ビス……」
 声を出す事もできない。ものすごい速さで上昇している。ただシャンは、ビスカが強く自分の肩を抱いていてくれる事だけは、しっかりと感じていた。
 それから何分か飛行しているうちに、速度が遅くなってきた。シャンはにぎやかな声と春のような温かさを感じた。
「おい、シャン。なんだよ目ぇ閉じてたのか。もうすぐつくぞ。自分の目で見てみろ」
 ビスカの声を聞き、シャンはゆっくりと目を開けた。
 シャンの目に飛び込んできた光景は、とてつもなく澄んだ水色。空だ。そして、下を見てみると、何処を見ても、もくもくとしている建物ばかり。そこにたくさんの人々がいた。こんなに心がワクワクしたのは久しぶりだ……シャンはそう感じていた。
「シャン、ここがこの星の第二層、空中階だ」
 朱雀は止まり、ビスカはシャンを抱えた。
「は?」
 シャンは嫌な予感を心配しながらビスカを見上げた。
「飛び降りるぞ」
 朱雀が止まったところは雲の上の雲だった。いくら地上(雲の上だが)が見えると行ってもそうとう高い位置だ。飛び降りたら死んでしまう。
「はっ!? 無理でしょ! 高すぎるよ! 死んじゃうよ!」
 シャンの声には耳も貸さず、ビスカは掛け声をかけた。
「三・二・一……それっ!!」
 ビスカはシャンを抱えたまま勢い良く朱雀の上から飛び降りた。
 シャンはしっかりとビスカにしがみつき、鼻水をたらし半泣き状態だ。上まぶたがプルプルと動き、心臓が口から出で来るような感覚が二〇秒ほど続いた。すると、いきなりガクッと速度が下がり、ゆっくりとふわふわ下りていくのがわかった。
「忘れてんなよ。私は魔女だよ。これくらい簡単だ」
 ニヤリとビスカは笑い、シャンを見た。シャンのだらしない顔に今度は声を上げて笑った。シャンもいつの間にか一緒に笑っていた。
 地面に足がついた。空中階の地面は雲。ふわふわと気持ちいい感覚が足を伝わって感じられた。
「す……すげえ……! 全部白い! 全部雲だ!」
 シャンは両手を広げ、そのまま倒れた。倒れたシャンの体を雲が優しく支えた。
「はは! これ転んでも痛くねえじゃん! 気持ちいいな!」
 ビスカに向かって言ったつもりが、ビスカの姿は見えなかった。シャンは起き上がり、辺りを見渡すと、ものすごい人が一部に群がっているのを発見した。
「な……ビスカ姉!?」
 その人だかりをグイグイと押し進んでいくと、真ん中にはビスカの姿があった。この人々はビスカに群がっていたのだ。
「本当久しぶりだなぁビスカ! 全然帰って来ないんだもんなぁ!」
「ビスカさん、お久しぶりです!」
「あービスカ久しぶり! 全然変わってないじゃーん!」
 全員知り合いらしく、ビスカは笑いながら話していた。
 シャンは何故か急にさみしくなり、また人々を押し進んで、人の群れから離れていった。とぼとぼと知らない世界をさまよい、ビスカを歓迎する声もだんだん聞こえなくなる位の場所まで歩いていた。後ろを振り返ると、人だかりが小さく見えた。シャンは、ボスっと地面に横になり、雲の感覚を味わった。
「なんか……ビスカ姉にも俺の知らない世界があるんだな。俺の事なんかすっかり忘れて何はしゃいでんだか」
 シャンは届かない空に手をググっと伸ばし、拳をにぎった。独りのシャンを雲は優しく包んでいた。
「情けないな」
 ふと声が聞こえた。シャンはバッと起き上がり、辺りを見渡した。
「上」
 その声の通り上を見上げると、巨大な炎の鳥がいた。さっきの朱雀だ。
「と……鳥……しゃべっ……しゃべった…」
 シャンは目を見開き、呆然としていた。
「乗せて来てやったのに何だその態度は。だいたい俺は鳥じゃねぇ。召喚獣だ」
「しょ…召喚……獣……?」
 朱雀が羽をばたつかせるたびに、炎が飛び散った。しかし、シャボン玉のようにその炎はすぐに消えてしまった。
「ビスカに呼ばれたから出て行ってみたがんな餓鬼まで一緒だとは…。お前だけ炎の熱で燃やしてやっても良かったんだが、ビスカと同じ血の匂いがしたからやめといた。ビスカに怒られるのも嫌だったしな」
 シャンは否定した。
「違うよ。同じ血じゃあない。俺とビスカ姉は血がつながってないんだ。ただ……俺がビスカ姉を勝手に姉だと思ってるだけで……」
 朱雀は大きく羽を動かした。
「……。そうかい。ビスカもかわいそうなもんだな。じゃあ俺はもう行く。ビスカが向こうで探してんぞ」
「あちっ!」
 一瞬熱風がシャンに降りかかり、目を閉じたが、目を開けたときにはもう朱雀の姿はなかった。シャンはため息をつき、さみしそうに肩を落とした。
「おい、くそ餓鬼。そこどきな」
 また新しい声。シャンは立ち上がり、声がしたほうを向いた。
「誰?」
 そこに立っていたのは、きれいな紺色の髪をした女だった。左の髪はあご程までしかないが、右の髪は随分と長かった。シャンと同じ……青い瞳をしていた。その女は、地球でいう『浴衣』を着ていて、すそを太ももできっちりと結んでいた。中には黒い足首まであるスパッツを履いていて、足には下駄だった。なんともおかしな格好をしている、とシャンは思ったが、さっきの朱雀とは違い、人間だったので、シャンは声をかけようとした。
「……!!」
 だが、その女の後ろには自分の背丈より少し大きめの巨大な刀が装備されていた。シャンは一瞬戸惑った。自分のいた地上階では武器の装備など考えもつかない事だったからだ。
「誰……だと? そっちこそ誰だ。普通自分から名乗るもんだろ」
 シャンは、この言葉遣いの悪さは誰かに似てるな、と思いながらも名前を述べた。
「俺は…シャン……シャン=オーグビ。十八歳。夢は海賊。好きな食べ物はドワッフ。メープルシロップかけて食べるのがすき。嫌いな食べ物はエーシャ。あの食べた時にょろって出てくるゼリーみたいなのが気持ち悪くて嫌い」
 なんとも緊張感のない自己紹介だ。しかし、相手はかなり食いついてきた。
「エーシャが嫌い!? 信じられん! エーシャを嫌いな人間がこの世に存在するなんて……! あの食べた時ににょろっと出てくるゼリーみたいなものが気持ちよくてうまいんじゃい! それにいいか!? ドワッフはメープルなんかで食べるな! ドワッフにはマヨネーズと卵の白身をかけて食べるのが最高にうまいんだ! そんな常識的味覚もわからんのか!」  
 その女は一気に早口でしゃべったため、かなり息が切れている。シャンはあっけにとられて話を聞いていた。エーシャとは地球でいうマシュマロが大きくなったようなもの。ドワッフとは地球でいうパンが固くなったようなものだ。
「マヨネーズ……って何?」
 シャンは恐る恐る聞いた。
「マヨネーズはな! ここからとんでもなく離れた『地球』という星で食卓にはかかせない…むしろ私生活に欠かせないほど愛されているクリームだ!」
「『地球』…?」
「見ろ! この俺の服を! これはその地球の中の『ジャポン』と呼ばれる国で古くから着られているという伝統ある服なのだ! もう少し勉強したまえ!」
 いろいろと間違っているところがあるが、シャンはもちろん気づかない。グググと何かを抑えていたと思ったら、かなり目を輝かせて話に食いついた。
「あんたすげえな! 物知りだ! すげえよ! 尊敬! あんたの名前教えてくれよ! 俺と友達になろうぜ!」
 その女は今にも泣きそうなくらい感動したらしく、シャンがさしだした手をグッと掴み、上下に激しく振った。
「俺の名前はヨーシャ=バレッタ! ヨーシャって呼べ! 心の友よ!」
 二人は強く抱き合った。そしてここにわけのわからない深い友情が結ばれた。
 しかし、シャンはふと思った。
「『俺…?』」
 シャンはじーっとヨーシャの事を見つめていたが、はっ!とひらめいた。
「お……男?」
 ヨーシャは不思議そうな顔をした。
「何だと思ってたんだよ?」
 シャンは複雑な気持ちを覚えたが、苦笑いしながら友情をはぐくんだ。
2006/01/14(Sat)17:14:41 公開 / 望月
■この作品の著作権は望月さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
こんにちは望月です。
すみません!また意味不明っぽいです…。でも頑張って続けていこうと思います!ヽ(oдoヽ)面白くなるように頑張ります!
あ、あと!アドバイスありがとうございました!これから直していっていい作品をかけるように努力したいと思います!
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