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『ヘドロ』 作者:でんこ / 時代・歴史 アクション
全角1379文字
容量2758 bytes
原稿用紙約4.75枚
時は幕末…長き侍の時代「江戸」を終わり、新しい時代の始まりである。
侍は徐々に姿をなくし、勢力を弱めていったこの時代に…白夜という一つの村があった。
村の名前の由来はその昔、白髪の侍がこの村に災いをよんだことでそう名づけられたそうだ。
戦からもどった白髪の侍は…金銀財宝をどこかに埋めた。その宝を手に入れようと、欲に駆られた者がこの男を死ぬまで拷問したらしい。
「ふふふ、醜いものたちだな…宝はお前らには一本たりともやらん…おれを殺すか、それもよかろう…だが、覚悟するがいい、ならばこの村を呪ってくれる。我が身が滅びようとも、我が種はこの村に生まれるのだ…呪いの子だ。」
それからというもの、村ではよくないことばかりが起こった。
そして、村の者達は呪いを沈めるため、その男を丁重にまつることにした…


辺り一辺に広がる花園、どこまでも永遠と花が見える。
まるで、世界が花でおおわれているような気さえした。
少年は感づいていた…自分は呪われた子で、だからだれも自分とは接触しようとしないのだということにだ。
そんな簡単なことに気づいたのが15歳の時だった。
自分は他の者とは違う…自分だけが髪が白い、自分だけがボロボロの服しか持っていない。
食事はたまに誰かが持ってくる…心配はいらないはずだった。
しかし、さすがに体が細くなっていく事に気づいたのだ。
少年は穴の中に住んでいる…それがおかしかったんだよ。
少年は…生きることをやめようとしていた。

朝から夜までなにも考えずによこになる日々が続いた。
自分の体にまとわりつくアリが死というものを予感させる。
15歳の早すぎる死…いや、もう十分にくるしみ抜いた。
ここが少年の死に場所なのだ。


だが、そんな眠りを犯す悲鳴が聞こえた。
この世のものとは思えない…救いを求める悲鳴。
少年はボロボロの体を起こし、洞窟から村を見下ろした。
どうくつからは村が一望できる。
逃げ惑う人々…それを追う賊服の男達。
一度だけきいたことがある、盗賊というやつらだ。
少年は勢いよく山を下りた。


村にあふれる歓喜と狂気の声、強い者が弱い者を襲う…あたりまえの光景だ。
だが、なんともむごい光景である。
そんな光景を観覧する一人の男がいた。
頭にそりこみを入れた強面の男…胴に鎧をまとっているのは位が高い証拠である。
手下に村人を襲わせ、自分はゆうゆうと酒をたしなむ。
風格のある男だ。
しかし、村人達もだまってはいない…武器を手に取り、男を包囲する。
「ち、しゃーねーな」重い腰を上げた男。
後ろ髪を縛り、刀を抜く…男達は圧倒されてしまった。
その刀、ノコギリのような形式をしていた…斬られれば予想以上に痛いであろう。
「あんたら…運がなかったな」
男の抜いた異形の刀は、目の前の村人の腕を切りつける。
浅い傷にもかかわらず、村人は大声で泣き始めた。
強烈な刺激が腕を襲ったのだ。
確かに、傷口は複雑な切れ方をしていた…いや、切れていたというよりも削られていたというべきだろうか。
浅く見えた傷からはおびただしい血がこぼれる。
「お前ら家畜は…皆殺しだ」
男の狂気の目がむき出しになった。
そして、刀は血をもとめるがごとく…村人達を切り裂いていった。
男の名はザンジ…ただ血を求める者なり。

いつのまにか…村は静まりかえっていた。
さっきまでの悲鳴が嘘のようなしずけさだ。

2006/01/07(Sat)12:44:44 公開 / でんこ
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