オリジナル小説 投稿掲示板『登竜門』へようこそ! ... 創作小説投稿/小説掲示板

 誤動作・不具合に気付いた際には管理板『バグ報告スレッド』へご一報お願い致します。

 システム拡張変更予定(感想書き込みできませんが、作品探したり読むのは早いかと)。
 全作品から原稿枚数順表示や、 評価(ポイント)合計順コメント数順ができます。
 利用者の方々に支えられて開設から10年、これまでで5400件以上の作品。作品の為にもシステムメンテ等して参ります。

 縦書きビューワがNoto Serif JP対応になりました(Androidスマホ対応)。是非「[縦] 」から読んでください。by 運営者:紅堂幹人(@MikitoKudow) Facebook

-20031231 -20040229 -20040430 -20040530 -20040731
-20040930 -20041130 -20050115 -20050315 -20050430
-20050615 -20050731 -20050915 -20051115 -20060120
-20060331 -20060430 -20060630 -20061231 -20070615
-20071031 -20080130 -20080730 -20081130 -20091031
-20100301 -20100831 -20110331 -20120331 -girls_compilation
-completed_01 -completed_02 -completed_03 -completed_04 -incomp_01
-incomp_02 -現行ログ
メニュー
お知らせ・概要など
必読【利用規約】
クッキー環境設定
RSS 1.0 feed
Atom 1.0 feed
リレー小説板β
雑談掲示板
討論・管理掲示板
サポートツール

『弘美が待っている』 作者:aiie yumei / リアル・現代 未分類
全角5504.5文字
容量11009 bytes
原稿用紙約16.05枚
待ち合わせに走って向かう男が、待っている女との思い出を思い出しながら、考える、なぜ弘美は僕を走らせるのか?
昌一は走っている。


弘美とは妙な縁がある。高校で長距離やっているころからだからもう10年来の中だ。でも大学時代に大喧嘩したときはもう終わりかと思ったこともある。原因はあいつが、突然爆発した。あいつの自分勝手さに半分腹立ちながら、からかい気味に彼女の行いを批判したところ、僕の態度がよほど気に食わなかったのかマジ切れ。僕もなぜこんなちっぽけなことでと思いつつ売り言葉に買い言葉。僕も頭の理性とか言う線が切れてしまい、もう二度と会わないと言って、喧嘩別れした。大学2年のことだった。僕は頭に来て、サークルを変えて、彼女とは会わないことにした。そのサークルで新しい彼女と付き合い始めたため、それから、しばらく会わない期間が続いた。弘美に会ったのは、社会に出てからである。僕の勤めた会社が不況のあおりで1年と3ヶ月でつぶれ、友達のつてを使って入った会社だった。弘美は受付をしていた。なにせ、面接したときに、お茶を汲んでいたんだから、お互い声に出して「あっ」と言ってしまった。面影というより、あの当時とほとんど変わってなかった。向こうもそんな印象だったろう。面接官は「この子の友達かね」だなんて言って。「はい、高・大学時代の友達です」とか言ったら、「うーん、この子の友達なら信用できるかな」とか言っちゃって。僕はすんなり入社できた。この面接官が課長の島木。わが社の誇るあほ課長だ。その課長に一目置かれている弘美はたいしたやつだと思っていた。が実際はそうでもなかった。弘美は、なぜか受付の中ではリーダー的存在で、会社の合コン、飲み会はすべて掌握していたからもてない男共は誰も頭が上がらないだけなのであった。そのたくましい姿に僕は彼女の成長を見たりして、ほろりとした。しかしすぐに切れそうになった。もう僕の過去が丸ばれ。しかもあることないこと尾ひれ付。最初のうちは女の子にぜんぜん相手されなかったのだ。やめてくれと、当時は叫びたかった。でも今僕はなぜかまた弘美とつきあっているのが不思議だ。(お付き合いしていただいている、の間違いだろっていわれそう)


信号待ちで、おばあさんが荷物を持っていたので、横断歩道を渡るときに持ってあげた。そんな言い訳でよいだろうか? 信号待ちで昌一はぼんやりと思った。


こんな心配をしなくてはならないのは、やはり弘美のせいである。弘美は僕から見て少し変だ。いつも突然思い立って、電話ですぐに走って来るように、と僕に命令してくるのだ。それも、リックに荷物が入らないだとか、買い物したいから持ってとか、本当につまらない理由でだ。しかも本気で走ってこないと怒る。走ってくる時間も距離から、だいたい把握されていて、早く来ないと機嫌が悪くなる。はぁ、何でそうなんだろうなとは思うが、まあ昔取った杵柄と言うか、走るのは嫌いではないので、そんなに苦にはしていない。が今みたいに街中を走るのは、恥ずかしくて好きではない。もうひとつおかしいと思うところがある。色彩感覚や美的センスの欠落である。特にあいつの色のセンスは最悪だ。僕に言わせれば、もう職人嫌がらせレベルだ。一緒にいてちょっと困ってる。あいつの部屋は目がちかちかするし、もっている服の組み合わせはなぜそうわざわざアンバランスなの〜、もうちょっとバランスとって行こうよ、て感じです。街中では覚悟を決めて、歩いております。今ではある意味慣れたし、どんな服で来るか少し楽しみではあるけど。でもかなり前に誕生日にすごい色のセーターをもらったんだけど、そういうのは着れない。でも悪くて捨てられない。たまに着ています、家のなかで。


昌一は、走りながら時計をちらりと見て、時間を確認した。風が吹いて、街を行く女性のスカートがめくれたので、思わず、昌一は顔をそっちの方へ向けてしまった。


そういえばこんなこともあった。大学時代に彼女のアパートに泊まって、次の日朝出講?しようと駅の方へ向かっていたとき、突然「へたくそ!!!」と言い放って去って言ったことがある。出勤やら学校に行くために駅に向かっていた人々の前出だ。僕は恥ずかしくて、「違う!!あいつなに言ってんだか」とかわけのわからない言い訳を言うしかなかった。弘美よ、一緒に学校へ行くのではなかったのか? なぜ? そんな気分だったが、そんなこと言っても周りの人は顔をしかめたり、くすくす笑ったりしたせいで、一緒に電車に乗ることがはばかれた。僕は電車に乗るのを一本遅らせて授業に遅刻してまで学校へ行ったりした。案の定と言うか僕も悪いのだがその単位は落とした。弘美はその日の午後から授業に出たらしい。今でも理由はわからない。


弘美の社会的責任能力ははっきり行って皆無だ。うちの課長が能無しなことをいいことに、休む日にちを好き勝手に選んでいる。2週連休とかあってそれはもうビックリしたよ。うー、とは言っても、弘美も少し前までは合コン幹事の仕事が山のようにあったらしく、それはもう、学生かおのれらはってほと浮かれていたわが社もわが社。といった気分にさせれれるので、弘美がすべて悪いわけでもないか。でも自分のできなかった仕事を、前の日の僕とのセックスの激しさで疲れたからだと偽って責任をなするのはどうかなと思う。

弘美は、高校時代の彼女は今から考えるとずいぶんと違っていた。長距離の選手としてはまあまあ優秀な選手だった。それほどすごい選手ではなかった。関東大会で10位くらいが最高ではなかったか。それほど練習熱心ってわけではなかったが、まじめでやることを淡々としていた、そしていつも楽しそうに走っていた。僕がみっちり走りこんでいる隣で、楽しそうにのびのびと、軽く軽く飛ぶように走っていたのをよく覚えている。その気軽さが少しだけうらやましかった。


高校時代の僕は、こう見えて意外と優秀な選手だった。全国1位なった事もあったので。いつかオリンピックに出場したいとも本気で思っていた。でも車にひかれそうになっている子供を助けようとして致命的な怪我をしたためやめてしまった。


いやいや、嘘はいけない。自分自身をだますことはできない。


最初は楽しくてしょうがなかった勝利も、次第に才能だけでは勝てなくなってくると努力するのがつらいと感じ始めた。それでも、自分をだましだまし、みんなよりハードな練習をしていった。すると周りが、色々いうようになった。なぜか腹を割って話せる友達が減っていって、僕はどんどん、追い込まれていった。記録は着実に伸びていたが、コーチや両親や回りの人間は決して僕をほめたりはしなかった。僕は自分を信じることができなくなっていた。自分自身の行き詰っていた才能と、努力もしていないくせに、嫉妬心からねたみを言う周りが嫌になっていった。弘美と付き合い始めたのはその頃だった。


「昌一君ってすごいね」
弘美は確かそんな感じで話しかけてきた。2年のインターハイで、僕と弘美は県予選で2人だけうちの学校で勝ち抜き、そして関東大会へ出場した。弘美はその時に初めて僕の事を知ったようだ。県予選の数日後、僕が練習を終えて、帰ろうとするところを弘美が友達と待ち構えていた。僕は早朝に部活の友達と、楽しそうに走っている弘美を何度か見ていたので、なんとなく気にはしていた。僕はいつも用意している答えで少々ぶっきらぼうに返した。
「別に、人より僕ができているとも思わないし、普通にやっているだけだよ」
「でも、凄いじゃない、タイムだって県記録でいってたんでしょ」弘美でない、確か祥子と言う、弘美の友達の子が言った。
「うーん、自分でも出来すぎと思うけど。」
「高校記録とはまだ差が1分近くあるもんね」
二人は、わあ、って感じで顔を見合わせた。
「昌一君、高校記録を目指してるの」弘美が言った。
「やるからにはトップを目指しているんだ」と僕はいった。
「ううん、なんか昌一君って他の人と違って凄いね。私、昌一君ってもっと力を秘めている感じがする、もっと早く走れるよ」と弘美が言った。
はぁ? この女の子は何を根拠にこう言っているのだろう。といった気がして
「うん、がんばるよ。」と少々引き気味に言った
「うん、ね、凄いよね、弘美もがんばれ」
僕はなにか変な女の子らだなと思った。それで今度一緒に練習しようとかテストの話とかテレビの話などをしながら、(突然の話題転換に少々びっくりしながら)3人で家に帰った。それから、弘美は毎日、部活動が終わると一人で残って練習している僕のところに来ては、県大会に出ている二人だからと、一緒に練習をした。そのうちに僕と弘美は付き合うようになった。ごく普通にカップルのように朝一緒に走ったり、テスト勉強したり、一緒に普通に買い物に行ったり、遊園地で遊んだ。


が、付き合うたびに、彼女が普通でない事がわかってきた。彼女は僕の事を、凄い才能の持ち主だと思っていて、彼女が応援していれば、僕が絶対に負ける事はないと思っていた。また、思い込みが激しいから、ちょっとした冗談をすぐに本当に信じてしまったりした。僕は彼女の事が嫌になってきた。


それでも楽しいと思う瞬間はあった。二人で早朝、誰もいない道をただ真剣に走っているときだ。二人並んで走っていると、彼女の息づかいが聞こえてどきどきした。伸びやかに楽しそうに走る彼女は、見ているこちらも楽しくさせた。


女子高生達が、学ランのままふざけて走っていた。あれを見るといつもその弘美を思い出して、以外に彼女の事が好きなんだなとびっくりする。


弘美の思い込みは今でも少し困っているが、確かに弘美と付き合ってから僕は本当に早くなった。弘美は一緒にがんばったのにもかかわらず、関東大会で負けてしまった。彼女は悔しさの欠片も見せずに、昌一君が勝っているからいいの。と言った。お前はさらに僕にプレッシャーをかけるのか。と思った。関東大会は接戦だった。僕は自分でも信じられないほど、タイムが伸びていたが、関東は強豪ぞろいで、結果僕は3位、全国大会にぎりぎりで出場できるようになった。しかし、3年生でトップの坂城 亮太と言う選手は高校記録を更新して、僕とはまだ40秒近くタイムに差があった。弘美とは忙しくて、前ほど長い時間話せなくなっていたが、時間を作っては僕らは会っていた。弘美はこのとき、鼻を高くして、僕はご自慢の彼氏にだったようだ。僕は僕で、コーチと共にベストを尽くそうと、毎日必死にがんばっていた。
結果は全国で8位。初出場にしてはまずまずの結果と言えた。


昌一は、走りながらポストに乗っかっている手袋を見つけた。弘美も僕の為に手袋をくれたんだよな。
とぼんやり思い出した。


僕は3年になって、最後のインターハイに出場した。弘美は県大会予選で敗退。弘美は勉強しないとやばいと塾へ行ったりして大変と言っていたが、ぜんぜん勉強していた様子もなく、変わらず僕と付き合っていた。まあ、たまにホテルとか行ったりした。前年のクリスマスに彼女とやってから、なんか抵抗なくなってたんで。変わった事と言えば、僕が期待の選手だとテレビや新聞の取材が来たりした。


当時一番の記録を持っていたのが、ひとつ上の先輩で、坂条 亮太と言うやつだった。僕は、高校の色々な大会に出場して、記録を伸ばしていったがその記録には勝つことができなかった。この年には、その坂条 亮太は引退していたがやっかいな選手がいたので、楽勝と言うわけには行かなかった。結局そいつは僕の記録を抜いて、今の高校記録ホルダーである。元オリンピック日本代表選手の 坂城 健太、何の因果かその坂城 亮太の二つ下の弟である。


僕は、まるでその手袋が幸運を呼ぶのではないかと思って、大切に手に付けた。
レースの間、僕は無心だった。レースの展開も何回も練習したようになれば勝てると思った。手袋が、弘美が、僕の事を信じてくれていた弘美が僕に勝てるという自信を与えてくれた。45分後にトップを抜いてからは僕は一度も抜かれることなく勝利した。


高校記録だった。


昌一は急に地面が沈んだ用な錯覚を覚えた。すぐに左足に焼きつくような鋭い痛みがはしった。昌一は進学する大学も決まってから、練習を続けていたがそんなある日のことだ。10月18日。


それまでだった。もともと怪我しやすい足をしていて、その上に練習のし過ぎだそうで、僕は医者に元のような走りはもう出来ないだろうと宣告した。長距離選手としては終わってしまった事を、僕は最初理解できなかった。必死にリハビリをした。選手として僕を取ってくれた大学はたくさんあったが、温情で足が直ったら選手として活動してもらうという条件で国文科に取ってくれたある大学へ僕は進学する事にした。弘美も僕について行きたいと言いはり、同じ大学に入った。僕は、すぐに走る事を止めてしまった。確かに前のように走る事は出来なかったから。テニスサークルに入って、遊んだ。その内弘美と別れて、水泳/スキー部とかいうよくわからないサークルに入って、弘美とはそれきり会わなくなった。


僕は高校時代に怪我をした。長距離ランナーとしては致命的なものだ。だから、僕はもう本気で走ることはないだろう。だから彼女は、弘美は僕を走らせるのだろか? それが理由だろうか?


しかしそんなことは、もうどうでもいいことだ。


弘美が待っている。何かの縁で、また出会うことになった僕と彼女はお互い必要としているし、彼女が待っているから、僕も走る、それでいい。


弘美が待っている。
2005/12/08(Thu)22:10:20 公開 / aiie yumei
■この作品の著作権はaiie yumeiさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
皆様はじめまして。相家 有名と言います。どうぞ宜しくお願いします。どうでしたでしょうか?どんな意見・感想でもかまわないのでどしどし書いてください。追 私が普段ネットを使える環境に無いため申し訳ないですが返事が遅れると思います
この作品に対する感想 - 昇順
感想記事の投稿は現在ありません。
名前 E-Mail 文章感想 簡易感想
簡易感想をラジオボタンで選択した場合、コメント欄の本文は無視され、選んだ定型文(0pt)が投稿されます。

この作品の投稿者 及び 運営スタッフ用編集口
スタッフ用:
投稿者用: 編集 削除