- 『自殺探偵』 作者:東西南北 / リアル・現代 サスペンス
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全角1944文字
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原稿用紙約5.8枚
「自殺探偵」
あなたは自殺をしたいと、思ったことはありませんか?
そんな時、我が自殺探偵があなたにあった最高の自殺方法をお教えします。
1章「自己破産を受け入れない男」
1
薄暗い部屋の中に、鈴木と男女一名ずつ、計3人の人たちが室内に用意されたソファーに向かい合うように座っている。
三人の真ん中には机があり、その机の上には灰皿が用意されているが、すでに万藩になっていた。
「鈴木 健治さんで、よろしいですね?」
男はそう鈴木に言うと、鈴木はうなずいた。
「鈴木さん。再度確認しますが、本当に自殺を考えているのですね?」
男はそう鈴木に言うと、鈴木はしばらくの間を置き、またうなずいた。
「自殺の動悸は…」
女はそう鈴木に聞く。すると、鈴木は長々としゃべりだした。
「会社をクビになったんです。会社をクビになって、他の仕事をさがしました。しかし、ただでさえこの不景気の時代に、僕みたいな中年男性を雇ってくれる場所なんていない…。そして、生きていくために借金をしました。でも、借りた場所が悪かったんでしょう。毎日のように借金取りが家に来るんです。それが、原因で妻とは離婚。もう、生きて行くのが嫌なんです。嫌なんです…」
鈴木は泣き出した。すると、女はあらかじめ用意した紙にすらすらと書き始めた。
「借金額は?」
女はそう鈴木に聞く。
「3000万円です」
鈴木は泣きながらそう言うと、女はまたスラスラと紙に書き始めた。
男と女は、鈴木に聞えないように、なにやら小さな声で会話をしはじめた。
そして、会話がひと段落着くと、女は机に紙を置き、男は鈴木にこういった。
「自己破産しましょう。自殺なんてしなくても大丈夫です。なんなら、今から僕と一緒に市役所に行きましょうか?」
「え!」
鈴木は驚いたような顔で男の顔を見つめる。
「借金問題は自己破産に限ります。私たちは、その人にあった自殺方法を考えるのが仕事です。しかし、自殺しなくても解決できるような問題は、我が探偵は自殺を勧めません」
男は冷静にそう鈴木に言った。すると、鈴木は暗い表情でこういった。
「自己破産って、家とかもとられるんですよね?だったら生命保険で借金を返済するというのも良いんじゃないでしょうか?」
男は笑いながら鈴木にこう言う。
「それは10年ぐらい前の話ですよ、鈴木さん。最近では、そんなことは無いんです。法律では自己破産の際、家を売る事は禁じられているんです」
すると、鈴木はこ低い声でそう言った。
「自己破産するぐらいなら死にます」
その言葉を聞き、女は再び紙を右手に持ち、鈴木に言った。
「鈴木さん?自殺をする勇気はあるのですか?別に私は止めません。むしろ仕事が増え、内心喜んでいます」
女がそう言うと、男は軽く女の頭を叩く。
「何するんですか!」
と女は怒鳴る。しかし、男は気にせず鈴木にこういった。
「こんな金しか脳が無い女の事はお気になさらないでください。自己破産は悪いことではありませんよ。なぜ、そこまで自己破産をしたくないのですか?」
「…。僕の勤めていた会社は金融会社なんです。CMに出ているほどの大きな会社です。想像つくと思いますが、金融会社の敵は自己破産です。自己破産をしない程度に借金の額を決めていますが、バカな新人がいたんでしょうね。意味も無く、その男に1千万を貸したんです。そして、その男は自己破産しました。一千万という額、大会社にとってたいしたことではありません。しかし、それだけでは無かったんですよ。その新人は、一人ではなく、何人ににも人たちに高額な借金をしていたんです。自己破産した男の存在を知ると、みんな高額な借金をしている人たちもまた、自己破産しました…。
10人、20人と自己破産をし、会社の経営を落としていきます。偶然にもその新人がいたのが、僕のいた支店なんです。責任を取れといわれた支店長は、中年である私をクビにした。つまり、私は自己破産を原因で自殺しようとしているのです。なのに、自己破産で救われようというのは納得がいきません」
鈴木は長々とそう言うと、男は「分かりました」と、暗い表情で鈴木に言った。
「どうやら自殺する勇気はあるみたいですね。私は喜んでその以来を引き受けます」
女はそういう。すると、男もうなずいた。
「今日は、この辺にしておきましょう。明日、また我が探偵事務所へお越しください」
女は笑いながら、そう鈴木に言う。
鈴木は「ありがとうございました」といい、席を立つ。そして、玄関を開け外へと出た。
室内には男と女がいた。女は持ってきたバックの中から、ノートパソコンを取り出し、机の上に置く。
「さあ。お仕事がんばりましょう」
女はそう男に言う。
だが男は納得がいかない表情をし、天井を見上げた。
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2005/12/07(Wed)16:57:53 公開 / 東西南北
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