- 『もし男性が妊娠する立場だったら』 作者:lIT / SF ミステリ
-
全角1864文字
容量3728 bytes
原稿用紙約7.2枚
男性が妊娠したら???そんな疑問、ときどき考えませんか。もし男性が妊娠する立場だったら男性のあなたはどうおもいますか?また女性のあなたは彼をどうおもいますか?
-
もし。
もし、あなたが妊娠していたら…
男性のあなたが・・・
―――私はロサンゼルスのニュータウンに暮らすクリス。
三ヶ月前に今の夫、ケヴィンと結婚してこの町に来た。
そろそろ子供も欲しいかな…?
日曜日の朝、私は食事を準備している。
しかし、いつもはケヴィンが朝ごはんを作る。
なぜなら彼は私と結婚してから仕事をやめた。
私は20歳から町から五分のオフィスに勤めている。
「ケヴィン、朝ごはんが出来たわよ」
返事が無い。
「ケヴィン?」
返事が無い。
「ケヴィン!!いないの?」
奥からトイレの水が流れる音がした。
「なんだいクリス・・・」
「ああ、いたのね。さあ食べましょう」
ケヴィンと私は食事を始めた。
なんだか様子がおかしい。ケヴィンにあまり食欲がなさそうだ。
「どうしたの?」
「いや…昨日飲み過ぎただけだよ」
ケヴィンはゆっくりベーコンを口に入れた。
そのときだった。
ケヴィンが急に口をおさえた。そしてバスルームに向かった。
私はそのとき、彼は二日酔いなんだと思った。
ケヴィンがテーブルに戻ってくると私は大丈夫、と聞いた。
「ああ。大丈夫だよ。今日は朝食を抜くよ」
「そう」
ケヴィンはそう言って胸を擦った。
私は散歩に出かけた。
今はオレンジの季節。ニュータウンには沢山オレンジの木が植えられている。
「よおクリス!元気かい?」
スティーヴの家の前で彼から声をかけられた。
スティーヴは会社の同僚だ。
「もちろん元気よ。あらオレンジの収穫?」
「ああ、そうさ。一個やるよ」
彼は上半身裸でオレンジの収穫をしていた。
彼のおなかは大きい。
「ありがとう」
スティーヴはオレンジの皮をナイフで剥ぐと、むしゃりとかぶりついた。
「オレンジは赤ん坊にもいいんだぜ。ほら。今蹴ってるぜ」
妊娠しているスティーヴは左手でお腹を撫でた。
「クリスのところはまだ出来ないのか?」スティーヴがたずねた。
「そうね。運がよければそろそろ気づいてもいいはずなんだけど」
「そうか。まあPHC(産夫会)で待ってるってケヴィンに伝えといてくれ」
産夫会とはPregnant Husband Clubの略でニュータウンの妊夫たちが入る会だ。
妊娠した男たちが裸になって胎教を学んだりするのだ。
ビーチに行っても妊娠した男性が沢山いた。
羨ましいわ。はやくケヴィンのお腹が触りたい。
そして私は家に帰った。
「ただいま」
「クリス。話したいことがあるんだ」
私はピンと来た。
もしかしたら彼、妊娠したんじゃないかしら、と。
「実は昨日の朝から“つわり”があったんだ。胸にも脂肪がついてきて、
少し太ったかと思ったんだ。だからもしかしたら妊娠かも」
ケヴィンは自分のお腹に手を置いた。
「わかったわ。病院にいきましょう」
ケヴィンが運転する車で私たちは近くの私立病院に行った。
産夫人科へ行き、ケヴィンを診てもらった。
医者は彼に妊娠検査薬を渡し、ケヴィンはトイレに向かった。
しばらくすると彼は色が青く変わった検査薬を持ってきた。
「陽性ですね。細かい検査があるので下着一枚になってください」
彼はTシャツを脱いで寝台に横になった。
確かに。昨日の夜も気づいたけど、彼のお腹すこし大きくなっている。
医者は聴診器を彼のお腹に当てた。そして彼のお腹を指で押した。
「ふんふん。はい。はい。ミスターアンドミセスエリス、おめでとう。君達に天使が舞い降りたよ」
私は嬉しくなって彼にキスをした。彼も嬉しそうだ。
その後、彼は妊夫らしくなっていき…
数ヵ月後。
「おぎゃー!おぎゃー!」
ケヴィンは女の子を出産した。
分娩室で彼は汗を流し、息を切らしていた。
「よく頑張ったわ!あなた!」
私は彼にキスをした。
そして彼が抱いている赤ん坊にも。
―――・・・・・・ステファニー、ステファニー!
わたしは目を開けた。
夢だったんだ。
「あら、あなた帰ってきたのね」
わたしの旦那はニューヨークに単身赴任をしていた。
五ヶ月ぶりに彼が帰ってくるなんて。それに前より太ってる。どうしたのかしら?
「わたし変な夢見たわ。男性が妊娠するのよ!不思議だわ。
さて。急に何で帰ってきたの?」
彼は着ていたシャツを脱いだ。
わたしは驚いた。
「聞いてくれ。俺、妊娠した」
彼のお腹はパンと膨らんでいた。
わたしは彼のお腹に手をあてた。赤ん坊が動くのが感じられた。
「来月で9ヶ月なんだ…まさか僕が妊娠するなんて。
恥ずかしくて君にいえなかったんだ。だから単身赴任といって、君から離れていたんだ」
男性が妊娠する立場だったら
私はそのありえなさに驚いて気絶するだろう。
-
2005/11/30(Wed)16:11:49 公開 / lIT
■この作品の著作権はlITさんにあります。無断転載は禁止です。
-
■作者からのメッセージ
書きながら気持ち悪くなってしまいました。
感想、お待ちしております!