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『クリスマスの奇跡』 作者:都斗津 希羽 / リアル・現代 未分類
全角6099.5文字
容量12199 bytes
原稿用紙約22.1枚
――――クリスマスには、奇跡が起こるかもしれない。




 ミニスカ。
 茶髪。
 売春。
 援助交際。
 テレクラ。
 そして、ドラッグ。


 それが、私を取り巻く世界の全て。






 クリスマス。
 誰もが幸せそうに町を歩き、幸福を振りまいている。
 くだらない愛だとか、友情だとか、そんなものに振りまわされながらも、人は大通りを歩く。
 私はそんな人々を横目に、大きなショウウインドウの前で立っていた。
 ショウウインドウに映る私は、いわゆる今時の女子高生。
 薄い色素の長い髪の毛に、耳にはピアスが二つ。
 今時、と言うか、今時の枠を飛び越えて、不良になってしまっている気もする。
 まあ、この薄い茶色の髪の毛は地毛なんだけどね。
 父方の祖母がフランス人だか何かだったらしい。
 学校にもろくに行っていない。
 だけど、親父達に受けるから、制服のブレザーを着ている。
 本当はセーラーの方が良いんだけど、気分でブレザーを着てしまっている。
 まあ、セーラーなんか持っていたら、うちの母親はきっと卒倒するだろうな。
 なんで、こんなもの持ってるの、って。
 言い訳ならいくらでも思いつくけど、面倒くさいから、やっぱりブレザーで良い。
「美咲ー!!」
 通りの向こうから、金髪のウルフヘアに、濃い化粧をした女が走ってくる。
 私の友達の友香だ。
 友達、と言ってもかなりの悪友だ。
 私にいろいろな事を教えてくれた。
「今日の夜も、援交すんの?」
 はたから見たらとんでもない質問を、友香は投げかけてくる。
 私は少し苦笑しながら答えた。
「うーん、どうしよっかな。イブの夜まで親父の相手したくないし」
 美咲の言葉に、そりゃそうだわ、と友香は軽く笑う。
 そんな事を良いながらも、友香はきっと、お金が欲しいから援交をしてしまう。
 私はそれを分かっていながらも、だよねえ、と話を合わせた。
 なんて、くだらないんだろう。
 そう思ったとき、鼻に何かの匂いがよぎった。
 もしかして……。
「ねえ、友香、あんたシンナー臭いよ」
「え!?」
 そう言うと友香は驚いて、自分の服の匂いを嗅ぎ始めた。
「ねえ、ヤバイよ、さすがにシンナーは……」
 私の言葉に耳を傾けようともせずに、友香は必死で自分の服の匂いを嗅いでいた。
「美咲も一回やってみる? 気持ちいいよ」
「いや、私は絶対ドラッグはしない」
 私は友香の誘いをきっぱり断った。
「えー? 皆やってるよぅ」
 え、皆、やってるんだ。
 でも、ダメだ。
 私が黙って首を振りつづけていると、友香は豪を煮やしたのか、いきなり腕を掴んできた。
「美咲もやるのよ!!」
 ねっ、と可愛く言いながら、友香は私を何処かへ連れて行こうとしていた。
 嫌だと思い、手を振り払おうとしても、その手は女の力とは思えないほど、強く食い込んできていた。
「やめっ!!!!」
 大声で叫ぼうとしたとき、その声を遮って新たな声が加わった。
「止めてあげなよ」
 男の腕が友香の腕を掴み、無理矢理引き離す。
 手は後ろから伸びてきたので、まだ顔は見えない。
「何よっ!! 美咲なんかもう、友達じゃないし!!」
 友香はそう叫んで、私の前から走り去っていった。
 一瞬、思考が停止する。
 なんて、なんて脆いんだろう。
 私が固まっていると、後ろから肩をポンポンと、叩かれる。
 ああ、そうだった。
 お礼をまだ言っていない。
 私は振りかえって、助けてくれた男と向き合う。
 そこには、一六歳の私より少し年上に見える、薄い色素を持った男が立っていた。
 なかなか可愛い顔をしている。この言葉を男に使うのはおかしい気もするけれど。
 どこかで見たことがあるような気もする。
 うーん、でも、そんな事を言ったら勘違いされそうなので、声には出さないでおく。
「一応お礼を言っとくわ、ありがとう」
 これで、良し。
 無愛想だけど、お礼は言ったし、さっさと立ち去ろう。
 私がさっさとその場から立ち去ろうとしたとき、いきなり男が私の腕を掴んできた。
「ちょっと、何す……」
「僕、光太って言うんだ」
 え?
 いきなり何言ってるの、この男は。
 私が呆気に取られていると、男、いや光太は更に謎な事を言い出した。
「今日一日だけ、君の時間が欲しいんだ」
「は?」
 何、この人。
 頭おかしいんじゃない?
「お願い。実は僕、病気で、今日一日しか自由に街を歩けないんだ」
「嘘でしょ?」
「嘘じゃない」
 しばらく、私達はこんな問答を繰り返した。
 何分たっただろう。
 ついに私は根を上げた。
「はあ、何で私なのよ?」
 すると、光太はにっこりと笑った。
「君が、天使に見えたから」
 ……なんて、なんて臭いセリフなんだろう。
 それなのに何故か、温もりを感じた。
 気付いたら私は、光太のお願いに、首を縦に振っていた。

 馬鹿だと思う。
 自分でも。
 全く見ず知らずの相手、しかも男についていくなんて。
 まあ、光太の顔が少し良かった、って言うのもあるんだけどね。
 病気とか、どうせ嘘なんだろうし、まあ、一日だけでも付き合ってあげよう。
 どうせ今日は、最初から何の予定もなかった。
 ただ、なんとなく制服を着ていただけだし。
 もしもの時のために。
「ねえ、美咲はどこに行きたい?」
「光太の好きなとこでいいよ、って、何であんた私の名前知ってんの?」
 私の質問に、光太は一瞬固まった。
 怪しい。
「えーと、だって、美咲の事は前から知っていたんだ」
「何、あんたまさか、ストーカー?」
「そんなものかもね、はは」
 冗談で軽く流された。
 一体、こいつは何者なんだろう。
 私がそう思っていると、光太は喫茶店に入っていった。
 うん、なかなかオシャレな感じのお店。
 センスは合格、って事にしといてあげる。
 喫茶店に入ると、光太は見た目に反して、コーヒーをブラックで頼んでいた。
 こうしたら、早く大人になれる気がするんだ、と光太は照れたように笑った。
 なんだろう、光太と話すときに沸きあがってくる、この懐かしさは。
 頼んだものが机に運ばれてきて、コーヒーの湯気が天井へと上がる。
 ちなみに私はビッグパフェを頼んだ。
 恥ずかしくてあまり周りには言ってないけど、甘いものが大好物だった。
 私がバクバク食べていると、光太は幸せそうに私を見ていた。
 その視線がやけに恥ずかしくて、私は食べるのを一時止め、光太の方を見た。
「何よ? 何かおかしい?」
「ううん、おかしくなんかないよ」
 そう言って光太は目を瞑った。
 まるで、何かを思い出すように。
「夢みたいだな、と思って。ずっと、ずっと美咲とこうしたかったんだ」
 すごい殺し文句。
 可愛い顔して、なかなか臭い事を言ってくれる。
 でも、そんな事を思いながらも、顔は真っ赤になっていた。
 それを隠すように、必死にパフェを口に運んだ。
 変なの。
 今日初めて会ったはずなのに、どこかで会った気がする、なんて。
「そう言えばさ、美咲、さっきシンナーとか言ってたよね」
「ああ、うん、まあね。何、光太そっちに興味あったの? それなら私じゃなくてもう一人の方捕まえなきゃ」
 私の言葉に、光太は眉間に皺を寄せた。
「そうじゃない。お願いだから、そう言うの止めて欲しいんだ」
 いきなり、何を言ってるんだろう、こいつは。
 出会ったばかりでそんな事を言ってくるなんて。
「別に、あんたにそんな事を言う権利はないじゃない」
 私はそう言って、椅子から立ちあがった。
 気分が悪い。
 ビッグパフェも完食したことだし、さっさと光太の前から去ろう。
「それじゃあ、ごちそう様」
 私はそう言って、さっさと、店から出ようとする。
「待って! 美咲、お願いだ、絶対しないで、この後は真っ直ぐ家に帰って欲しいんだ」
 後ろから追ってくる声に、振り向きもせずに店を出る。
 やけに乾いたドアのベルが、虚しく鳴り響いた。

 私はもちろん、真っ直ぐ家には帰らなかった。
 家に帰っても、誰もいないし。
 母は仕事で夜遅くにしか帰ってこない。
 父は……私が小さい頃に病気で死んでしまった。
 だから全然父親の事なんて覚えていない。
 ただ、母は時折、父を思い出しているようだった。
 そんなときの母は、とても遠くに見えて、私は父があまり好きじゃなかった。
 でも、母には感謝していた。
 小さな頃から女手一つで育ててくれたんだしね。
 それなのに、こんなにぐれてしまって、親不孝ものだわ。
 どうしてこんなになっちゃったんだっけ?
 確か、最初は……。
 思い出すように空を見上げる。
 上の方では建設中のビルの鉄筋が運ばれている。
 まるで、鉄筋が空を飛んでいるみたいだ。

「あ、美咲ー」
 声がした方を見るとそこには、友香と三人の男が立っていた。
 男の顔には見覚えがない。
 きっと、友香のシンナー仲間なんだろう。
「何、友香?」
 友達じゃないんでしょう、私達?
 そう言う意味も含ませて、刺々しい口調で言った。
「今までせっかく仲良くしてあげたのにさ。援交を教えてあげたのは誰だったっけ?」
 別に、教えて欲しくなんてなかった。
 ただ、友香がやろうって言うから、やっただけ。
 お金なんて、欲しくなかった。
 ただ、私は、友達が欲しかった。
 だから繋ぎとめるので必死だった。
 くだらない友情ごっこの船に、ずっと乗っていたかった。
 ああ、そうだ。
 私はそんな事で、ここまで来てしまってたんだった。
 中学までは、父親がいない事でからかわれ、友達も出来なかった。
 中学に入ると、この薄い色素の髪の毛で、上級生に生意気と言われ、同級生には怖がられた。
 私は、愛想もなかったし。
 だから、高校に入った時、友香に声をかけられて、嬉しかった。
 初めての友達だったから、少し悪くても平気だと思ったんだった。
 たったそれだけの事で、ここまで来てしまったんだ、私。
 なんて馬鹿なんだろう。
 私は自嘲しそうになるのを堪え、友香の目をまっすぐ見つめた。
「うん、そうだね。今までありがとう。じゃあね」
 光太の言うとおりにするのは癪だけど、このまま家に帰ろう。
 もしかしたら、母も今日くらいは早く帰って来るかもしれない。
 私が歩き出すと、友香は追いかけてきた。
「ちょっと、待ちなさいよ! ほら、あんた達、早く捕まえて!!」
 友香の声を合図に、三人の男たちが私に飛びかかってきた。
 護身術なんかもちろん習っていない私は、簡単に捕まえられる。
「ちょっと、離してよ!!」
 男の力になんか適うはずがない。
 友香はそんな私を見て、幸せそうに笑った。
「一緒に、シンナーしようね」
 あんた、狂ってるよ。
 そう言おうとしたとき、上の方で何かが崩れる音が聞こえた。
 そして、人の叫び声。
「危ない!!!」
 友香も、私も空を見上げた。
 そこには、ビルに使われるはずだった鉄筋が、空から舞い降りてきた。
 嘘。
 こんなんで死ぬんだ、私。
 ごめんね、お母さん。
 一人ぼっちだね。
「美咲!!」
 聞き覚えのある声を聞いたと同時に、なぜか横から強い衝撃。
 私はそのまま地面に叩きつけられ、数メートルほど転んだ。
 身体中に擦り傷ができたように、ひりひりする。
 一体何が起こったんだろう。
 私は痛む身体を持ち上げて、起き上がった。
 そこには、鉄筋の下で潰れた友香達と……。
「光太……?」
 信じられない。
 私の代わりに光太が、鉄筋の下敷きになっていた。
 頭からはどんどん血が溢れている。
 何故、どうして?
 そんな感情ばかりが頭を駆け巡る。
 私は這うように、光太に近づいた。
 すると、光太がうっすらと目を開けた。
 良かった、生きてる。
 私がそう思って溜息をついたとき、光太は、天使の様に微笑んだ。
「良か……った。みーちゃん、が、死なずにすん……で」
 みーちゃん?
 私は、そんな呼び方をする人を、一人しか知らない。
 しかもそれは、私の頭の記憶の中ではなく、母に見せられた、ビデオの記憶。
 嘘だ。
 そんな事があるわけない。
「光太……? どうして、どうして、私を……」
 助けたりしたの。
 今日初めて会ったはずなんだよね?
 なのに、どうして。
「ご褒美…なんだ。僕、あっちで頑張ったから、君を助け…たかったから、神様に、我が侭な、お願い聞いてもらったんだ」
 必死に途切れ途切れに話す光太。
 私は何故か、目から涙が溢れ出てきた。
 涙なんて、何年振りだろう。
 温かいものが胸のそこから湧き上がり、私は直感した。
 光太の正体を。
「私、こんな娘でごめんね」
「……みーちゃんは、今も昔も変わってないよ。寂しがり屋の……良い子だ」
 これ以上話さないで、と言ってもきっと意味はない。
 光太は、もう逝ってしまうのだから。
「あーあ、……また死ぬのか。ごめん……ね、お母さんに、よろしくね」
 どうして私に会いに来たの?
 お母さんに会ってあげてよ。
 ずっと会いたがってたんだから。
 そんな言葉の一つも、ろくに話せない。
「どうして、言ってくれなかったの、お父さん」
 言ってくれたら、お母さんにも会いに行った。
 もっといろんな話しをしたかった。
 本当はずっとこうやって会いたかった。
 もっと、もっともっと、温もりを分け合いたかった。
 私は、血だらけの光太の手を、優しく掴んだ。
「……正体は、自分から言っちゃ……駄目だったんだよ」
 光太も私の手を握り返してきた。
 どんどん冷たくなっていく手の温もりを、必死に離さないように掴んだ。
「ははは、嬉しいな、お父さんって、……聞けたや」
 そんな言葉、何回だって言ってあげるよ。
 お父さん、お父さん、ねえ、お父さん。
 目を開けて、もう一度微笑んで、もっと声を聞かせてよ。
 光太は、最期に、笑って小さく何かを呟いた。

「バイバイ、愛しい……子」

 その言葉を聞いたと同時に、光太の身体は光りに包まれ、一瞬で砕け散った。
 舞いあがる光りの粉は、まるで天国に連れて行かれる様に、空へ上っていった。
 私はただ、地面に顔を向け泣きじゃくった。
 遠くで、救急車の音が聞こえた。






 その後、私は一応病院に連れていかれ、検査をされた。
 検査の途中、スーパーの大きな袋を持ったお母さんが、真っ青な顔をして駆け込んで来た。
 そして、私の無事を確かめた瞬間、大泣きをしながら私を抱きしめた。
 今日はクリスマスだから、早く帰って、ご馳走を作って、驚かせるつもりだったらしい。
 そんな事をお母さんは泣きながら言いながら、強く、より強く私の体を抱きしめていた。
 それは、今確かに、私が持っている温もりだった。
「ねえ、お母さん、私、お父さんに会ったよ」
 私の言葉に頷きながら、お母さんは泣いていた。
 きっと、信じてはいないんだろう。
 それでも良かった。
 ただ、言っておきたかった。
 
 私は検査の結果、得に異常もなく、真っ直ぐ家に帰れた。
 そして、母の部屋のアルバムを開く。 
 そこには、変わらない彼の笑顔が、母の隣で微笑んでいた。
2005/11/27(Sun)22:07:47 公開 / 都斗津 希羽
■この作品の著作権は都斗津 希羽さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
皆様多分、初めまして。
まだまだ未熟者ですが、今回勇気を出して投稿させていただきました。
この話しは、できるだけ読みやすい様に書いてみました。
最後まで読んでいただけていると、嬉しいです。

どこか、おかしなところなど、感想・批評などをくださると、とても嬉しいです。得に、一人称などの。
これからも、精進していきたいと思っております。
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この作品の投稿者 及び 運営スタッフ用編集口
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