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『ヒーロー』 作者:パープル / リアル・現代 未分類
全角3435.5文字
容量6871 bytes
原稿用紙約11.55枚
単純な毎日に飽き飽きしてたころ、あいつがやってきた。ヒーローとしてみんなを守る。馬鹿馬鹿しいけど本気です。
          第一話   暇



ガメラヤやゴジラが暴れる世界、ウルトラマンや仮面ライダーが活躍する世界。
 誰もが一度は憧れる世界。行ってみたいと願う世界。
 僕も同じだ、別にウルトラマンに会いたいわけじゃないさ、ただ抜け出したいこの退屈な世界から。
 ヒーローになって人知れず悪を倒すのも悪くはないかもしれない。でも面倒くさい。
そんなことを今、退屈な授業中、難しい公式を作った偉人達をうらみながら思ってる。
 眼鏡をかけた女教師が僕を見てる。そんな顔してももう無理だよ。あれこれ想像している間に僕は睡魔という宿敵に襲われていた。
 もうだめだ…眠い…
どうやって眠気に勝とうか?前の女子の裸でも想像すりゃ少しはマシに…
 不意に目の前に長いひげの老人が現れた。「ヒーローになりたいそうだな」いきなり老人が喋りだした。僕の顔は真っ赤になる、この年でヒーローになりたいなんてみんなに知れたら…
 その瞬間僕は周りの異変に気付いた。みんながいない。そして建ち並ぶビル。そして僕の前で微笑む老人。「この町にもうすぐ怪獣ギャドスがやってくる。お前はその怪獣を倒し、この町を救うのだ。」老人の笑みが大きくなる。
 頭おかしいんじゃないか。年のせいでおかしくなったのかな?
老人が僕にキラキラ光る棒のようなものを差し出した。「これを使って変身するんだ。ヒーローにな。」
あっそ、半信半疑のまま僕はその棒に手をかける。「で、怪獣はいつ来んの?」



           第二話  変身    



「で、怪獣はいつ来んの?」当然の質問だった。しかしあの時は怪獣など来るはずがないと思っていた。
 怪獣など想像上の生き物だ。
 老人がにっこりと笑う。「おぬしがワシからホーリーストーンを受け取った時じゃ。」 うそだろ〜。もう遅かった。僕はもうそのホーリーストーンを受け取っている。


 「ギャオグァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」

 怪獣の咆哮が轟いた。


 「ちょっと、どうすりゃいいんだよ!!」思わず叫んだ。もうかっこ悪さもくそもなかった。
 怪獣の頭は僕の隣にある30Mはあるであろうビルの屋上よりも高いところにあった。
 まだ僕は怪獣から20Mほど離れていたがゆうにその尻尾の射程範囲内だった。
 「変身しろ…」老人が呆れた顔でつぶやく。
 「そんなことは分かってるって!!どうやって変身するんだよ!!」
 やばい急がないと死ぬ…
 怪獣が前進してきた。
 老人が微笑む「何じゃそんなことか。思いっきり振ってみろ!!」
 振る…??そんなことでホントに変身できんのか?確信はないが賭けるしかない。この爺さんがぼけてないことに…
 僕はホーリーロッドを思い切り振った。
  

 ・・・体は大きくなってません。

 ・・・何のマスクもかぶってません。

 ・・・強くなった気はしません。

 って何も変わってないじゃないか!!何なんだよ、このジジイ!!
 「何も変わってねえじゃねえか・・」僕は絶望していた…このままじゃ死ぬ。
 老人がにっこりと微笑んだ「さあ、戦って来い!!」
 ・・・は?無理だろこれじゃ…
 「キャアッ」女の子が叫びながら逃げてる。ごめんね、本当は僕が助ける予定だったのに、これじゃあ…
 

 ビュンッ  女の子に巨大な尻尾が襲いかかる。
 
 無意識だった。体が飛び出していた。でも間に合うはずはなかったんだ。
 僕のいる所から彼女のいる所は10Mはあったし、尻尾の速さは尋常じゃなかった。
 

 バシッ  僕の背中に痛みが走る。グッ かなり痛い、でも死ぬほどじゃない。


 女の子は?僕に守られて少女は攻撃を受けなかった。気絶はしているが死んではいない。

間に合ったんだ。僕はあの一瞬で10Mほどの距離を移動し、少女を助け、怪獣の尻尾攻撃を受けたにもかかわらず生きてる。

 生きてる!!強くなってる!!信じれないほどに。

 「お前は変身した。誰よりも強くなれる。」
 そう言い残して老人は消えた。

 「待てよ!!」言ってはみたものの老人を探す余裕などなかった。


 守ってみせる。ヒーローとして。





          第三話  戦闘



僕は女の子を守った。僕が守った黒髪でショートカットの女の子。よく見るとかなりかわいい。
 でも、今この子は気絶して、今自分を抱き上げている男が自分を助けてくれたことなどは知らない。
 それもいいのかもしれない。正体を明かさず戦うヒーロー……うん、かっこいい。


 「グギャオォォォォォォォォォォォォォォッッッ」
 怪獣が吼えた。怪獣?ああ、忘れてたよ。ヒーローになれた喜びに浸ってしまってた。
 僕が怪獣を見上げると怪獣は超高層マンションの破壊に取り掛かっていた。
 もはやこの怪獣も怖いという形容詞をつけるのはふさわしくないように思えた。
 今なら簡単に勝てる気がする。僕は強い。

 「お〜〜〜〜〜〜〜〜〜いっ」僕は怪獣に大声で呼びかけた。
 しかし、怪獣がビルを壊している騒音と周りの悲鳴のせいで、僕の声は怪獣までとどかなっかたようだ。
 怪獣はまだマンションとじゃれている。
 「それならそれでいいさ…」僕は、怪獣が死ぬ前に自分を倒した者の顔を見ておきたいだろうと思ったのだが、声が届かないのなら仕方ない…
 不幸な奴だ。僕に出会わなければ、永遠に破壊を楽しめただろうに…
 さあ、ヒーローの初仕事だ!!
 

 僕は怪獣の顔めがけてジャンプする。やっぱりだ、跳躍力も恐ろしく上がってる。
 僕は拳を振り上げた。今や僕は怪獣よりも高い上空にいる。さすがに怪獣も僕に気付いたようだ。黒いごつごつした顔をこっちに向けた。
  
 バッシーーーーーーーーンッ
 
 僕の拳が怪獣の顔を捕らえた。怪獣は大きく目を開き「グェッ」と小さく声を上げ、そしてすさまじい音をたてながら倒れた。
 怪獣はもう息絶えていた。
 僕は怪獣の上に着地した。そして怪獣の死を確認すると、小さく溜息をついた。
 ホッとした。怖かった。信じてなかった。恐ろしかった。
 でも生きてる。でも守った。女の子を、この町を。
 周りから歓声が起こる。何人かは僕のほうに駆け寄ってくる。
 20歳くらいの男が僕に握手を求めながら言った。
 「君もヒーローなのかい?」
 他の人たちも握手を求めようようと僕に群がる。
 君もヒーローなのかい?君も?この言葉は明らかにおかしいのだがその時はまだ頭が
ボーっとしていたのもあって、その言葉のおかしさに気付かなかった。
 「うん」僕はそう答えた。



           第四話 少女



結局、僕の周りから人の群れが消えるまで5時間はかかった。不思議と長いとは感じなかった。握手を求める人々、テレビや新聞の取材、サインまで求められた。
 そりゃあ、たった今巨大な怪獣を倒したヒーローなんだそれくらい騒がれて当然。
 「怪獣に対して恐怖はありませんでしたか?」きれいな女性キャスターが僕に問う。
 いいえ、最初はめちゃくちゃ怖かったです。それが本音だ。しかし僕は、子供達をがっかりさせてはいけないと勝手な理由を自分に言い聞かせ「はい。特に怖いとは思いませんでした」と答えた。
 「握手して〜〜」「兄ちゃん強いね〜〜」「うちの子供を抱いてもらってもいいですか?」「サインしてください」「ちょっと、マジでかっこいいんだけど」
 そんな言葉が僕を取り巻く。僕はこの町を守った。この人たちを。
やっと僕の周りから人がいなくなった時、僕はふと思った。この子はどうしよう。
 この子とは僕が怪獣から守った女の子のことだ。僕が握手やサインをしている間も僕の隣ですやすや眠っている。
 最初は正体を隠して消えようと思っていたものの、このまま置いて行くわけにもいかない。
 とりあえず体をゆすってみる。
 変化なし。
 肩をたたいてみる。
 変化なし。
 呼びかけてみる。
 変化なし。
 よっぽど怖かったのだろう少女が目を開ける気配はなかった。無理もないあれだけの大きさの怪獣だったから。
 なかなかのかわいさで胸も大きい、黒髪がきれいで眠っている姿はまるで人形のようだった。
 僕はふと白雪姫の話を思い出した。確か白雪姫は王子様のキスで目を覚ましたんじゃなかったけ。
 僕の頭の中で王子様=ヒーロー という無茶苦茶な等式が成り立つ。
 僕のキスで彼女を眠りから解放して、それから…
その時少女が目を覚ました。
2005/12/02(Fri)14:19:27 公開 / パープル
■この作品の著作権はパープルさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
第四話終了です。この回ではヒーローも考えることは普通の中学生と同じだ、という事を表現しようと思いながらかきました。
これからこの少女や、新しい登場する人物を盛り込んで話を膨らませていこうと思います。
ではまた次回まで!!
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