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『優しい嘘』 作者:パープル / ショート*2 恋愛小説
全角1367文字
容量2734 bytes
原稿用紙約4.35枚
珍しく落ち着いた日々だ。やっと仕事のめどが付きこの先一周間は休みが確保されている。
久しぶりに出かけようか・・。
だめだな・・。特に行きたいところもないし、一人で出かけたところで面白くはないだろう・・。
こんなことを考えている時が一番危ない。ついつい思い出してしまうあの幸せな日々を


               〜半年前〜

まだ夏の暑さが残る九月、僕はただの平社員で社内でもその他大勢の一人で早く認められようとがむしゃらにがんばっていた。そう僕の今までの暮らしの中で一番輝かしい日々。
そしてこれほどの幸せはこれからももう訪れないであろう日々・・。
一番大切なもの・・あの時から君だって思ってたさ。でも今のほうがその気持ちは大きい
いつでも明るい笑顔を見せてくれた君、その笑顔でどれだけ救われたことか・・。
今になって思うよ・・
本当にありがとう・・
でももう遅い・・
僕は君といるのが好きだった。君の前ではありのままの自分でいれた。
そう仕事や友人関係で仮面をかぶった僕じゃなく本当の僕で・・
そして君も受け入れてくれた、君といる時の僕は信じられないような充実感に包まれていた。
君といる時の僕はストレスから開放され最もリラックスできる時を過ごしていた、でも君にとっては違ってたのかもしれない・・
いつだったかハイキングに行ったとき君は小石に足をひっかけ鈍い音を立てて転んだ。
僕が「大丈夫?」と聞くと君は笑顔で「大丈夫。」と答えて僕を安心させてくれた。
でも僕は気付かなかったんだ、その時君が足をすりむいていたことに・・
そう「大丈夫。」は君の得意の嘘だ。
君は僕を心配させないためにいつも自分を傷付けていたんだ。
その他にも君は僕を安心させるためにたくさんの嘘をついた。
その中でも一番大きかったのがあれだ。皮肉にも君の最大にして最後の嘘・・
後で医者に聞いたんだがもし入院してきちんと治療を受けていたらあと一年は生きられたんだってね、つまり今も君は僕のそばにいるはずだった・・。
君は入院を拒んだ、理由は薬の副作用で髪の毛の抜け落ちた自分を僕に見せたくないから。
でも僕には分かってる君は容姿を気にするような子じゃない、でも綺麗ではあったけど。
そう君が入院を拒んだ理由は僕に心配をかけたくないから。でも僕は心配したかったんだよ君のことを・・
さすがに最期の方になると僕も君の異変に気付いた。
君は明らかにやせ細り声も以前よりだいぶ小さくなっていた。
しかし君はいつも通り「大丈夫。」と言い続けた。おめでたい僕はその度にその言葉を信じた。
結局君が動かなくなるまで僕はその嘘に気付かなかった。
いきなりの死だったので結局死際に会うことさえ出来なかった。
僕が君のアパートに付いた時君はもうそこから旅立っていて、そこにあるのは魂のない君の抜け殻だけだった。
その時。君の両親から君の嘘について聞いたんだよ、僕は涙が止まらなかった。
今までの僕を許してほしいとは言わない、でも見守っててほしい。
あれからがんばって平から課長までになったんだ、すごいだろ!
僕はもう少しがんばって生きるよ。君にふさわしい男になるために。
そしていつか君のところへ行く。それまで待っててほしい。
今度は偽りのない笑顔を見せてほしい。
そして僕にも嘘をつかしてよ。
いつか君のところへ。
2005/11/24(Thu)17:48:36 公開 / パープル
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■作者からのメッセージ
こんにちは、パープルです!!
今回は恋愛小説に挑戦しました。
あまりうまくはないかもしれませんが楽しんでいただけると幸いです。
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