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『あの日笑っていた少女』 作者:You / 未分類 未分類
全角2408文字
容量4816 bytes
原稿用紙約7.8枚
 俺は神なんてモノの存在は信じない。だがもし、本当にいるとしたら俺は神を恨むだろう。

 7月20日。今日、俺の高校は終業式だ。その式が今終わり、生徒たちはみんなそれぞれの教室に戻る。
「あぢぃ〜〜。」と少年―大藪未來―は自分の机に突っ伏しながら言った。と、そこへ
「未來!一緒に帰ろうぜ。」と彼の親友―須田大輔―が近寄ってきた。未來は「おぅ。」と生返事し、机から立ち上がった。
「どうだった?オマエ欠点あった?」
「いや、無かったよ。須田は?」
「俺もナシ。」など、くだらない話しをしながら未來と須田は帰っていた。
「じゃぁな。」
「おぅ。」と途中二人は別れ、それぞれの帰路についた。
家に帰った未來は特にすることも無かったので、そのまま眠りに落ちた。
 明日から夏休みが始まる。

8月になり、部活やレジャーなどいろいろ予定があると思うが、未來は部活にも入ってないし、これといって予定も無かった。
「須田はサッカー部があるしなぁ。」本でも読むか。と、本をよんでいるとふと思った。「そういえば早百合に小説貸したままだったなぁ。メールしてみよう。」
「俺がこの前貸した小説読んだ?」返事はすぐに返ってきた。
「うん、あの日笑っていた少女でしょ?読んだよ。すごく良かった♪」
「じゃぁ、それ返してくれるか?もう一回読みたいんだ。」
「わかった。いいよ。ついでにTHE DREAMの新曲“夢を掴め”のCDも貸してあげる。」
「ありがとう。じゃぁ、明日の11時に会えるか?」
「うん、大丈夫だよ。どこで会う?私は月影駅がいいな。」
「ああ、いいよ。じゃ、またな。」
「うん、またねー♪♪」

 次の日の11時3分、未來は待ち合わせ場所の月影駅で待っていた。するとそこへ、
「未來〜!待った?」彼女―辻早百合―が来た。
「いや、そんなに待ってないよ。」
「あのねぇ、そういう時は“いや、俺も今来たところだから。”って言うものよ。」
「知るか。少し待ったんだから、それでいいじゃねぇか。それはそうと、持ってきたか?」
「うん、もちろん。…はい!小説と“夢を掴め”のCD。」
「おぅ、ありがとうな。」
「じゃぁ、どっか行く?」
「そうだな。ヒマだし。」
彼らはいわゆる恋人ではない。中学の時からの友人だ。ただ、価値観が似ているせいか、好きな本や音楽が一緒なのだ。だからこうして時々会ったりしてはそれらを貸し合っている。

未來と早百合は外のベンチに腰掛け、涼みながら話しをしていた。
「そういえばオマエ、看護士になることが夢だったよな?」
「うん、そだよ。それが?」
「いや、ちゃんと勉強してんのかなぁって。」
「ちゃんと勉強してるよ。あ、そうだ。ちょっと図書館行きたいんだけど、場所知らないから一緒に来てくれる?」
なんで自分の住んでる町の図書館の場所もしらないんだよ、そう思いつつ「ああ、いいよ。」と未來は答えた。
 ということで7時、駅の近くの図書館に行くことになった。
「早百合、何借りるんだ?」
「ん〜?ちょっとね。看護士に関する本を。」
「ああ、それでか。がんばってんだな。」
「うん。わたし絶対に看護士になるんだ。夢を掴むの。」
「そうか。本当に、がんばれよ。」
「ありがと…。」早百合は頬を赤くしながらそう言った。
「あ、もう帰ってもいいよ。これ以上遅くなるといけないでしょ。未來ん家、門限キツイもんね。」
「ああ、実はもう門限過ぎてんだよな…。じゃぁ、俺帰るわ。またな。」
「うん、またね。ありがとう。バイバ〜イ♪」

ザァーッ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
その日は雨が降っていた。なんだか嫌な予感がした。俺はベッドから起き上がり、リビングに降りた。すると母が喪服に着替えていた。
「どうしたの?葬式?」
「ああ、未來。ええ、そうよ。お葬式よ。未來も早く着替えなさい。」
「え?何?俺の知ってる人?」
「知ってるも何も中学の時からのお友達よ。」
「・・・誰?」
「早百合ちゃんよ。三年間一緒のクラスだった。」
そんな…。「い、いつ!?」
「昨日の夜の7時半頃だって。可哀想に。まだ全然若かったのにねぇ。」
…7時半…?俺とアイツが別れて30分後じゃねぇか…。

早百合の葬式には多くの知人、友人が参列していた。みんな泣いているが、俺は泣けない。たぶんあまりにも唐突だったからだろう。
…須田だ。向こうに須田がいる。俺は須田に近寄って声をかけた。
「須田…。」
「未來ぃぃ〜…。」すごく泣いている。
「なんで辻なんだよぉ〜。未來ぃ〜俺、実は辻のこと好きだったんだよぉ〜。中一の時からずっとぉ…。」
そうか、それで…。

早百合と最後にいたのは俺だ。俺はアイツが死ぬ30分前まで一緒にいた。俺がもうちょっと、あとほんのちょっとだけ一緒にいればアイツは死ぬことはなかったかもしれない。
もう…アイツの、早百合のあの笑顔は見れないのか…?答えをわ知っていながら自問する。
俺は早百合に借りた、もう一生返すことのできないCD、THE DREAMの“夢を掴め”を聴いていた。
「夢を掴め…か。なんだよ。看護士になるのがオマエの夢じゃなかったのかよ!」なのに…なのに…。
 未來の頬を一滴のナミダが伝った。なんでだよ。なんで今更ナミダなんか…。
 …クソッ!もっと早く泣いていればこんなキモチには気づかなかった。俺は…俺は自分でも気づかなかったが、早百合のことが好きだったんだ…。だけどもう…遅ぇよ…。

 一年後、二年生になった未來は校外学習でイタリアと交流の深い美術館に来ていた。ここには有名な絵がいくつかあるらしい。そして未來はずっとある絵を見ていた。タイトルは…“creatore”。神という意味らしい。神か…。きっと早百合は生まれた瞬間からあの日、あの時間に死ぬと決まっていたのだろう。それを決めたのは創造主。つまり神だ。
「クソッ…。神が…。」未來の頬にまた、一滴のナミダが伝った。
2005/11/02(Wed)20:56:41 公開 / You
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初めましてです。初の作品です。また書くかどうかはわかりません。
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