オリジナル小説 投稿掲示板『登竜門』へようこそ! ... 創作小説投稿/小説掲示板

 誤動作・不具合に気付いた際には管理板『バグ報告スレッド』へご一報お願い致します。

 システム拡張変更予定(感想書き込みできませんが、作品探したり読むのは早いかと)。
 全作品から原稿枚数順表示や、 評価(ポイント)合計順コメント数順ができます。
 利用者の方々に支えられて開設から10年、これまでで5400件以上の作品。作品の為にもシステムメンテ等して参ります。

 縦書きビューワがNoto Serif JP対応になりました(Androidスマホ対応)。是非「[縦] 」から読んでください。by 運営者:紅堂幹人(@MikitoKudow) Facebook

-20031231 -20040229 -20040430 -20040530 -20040731
-20040930 -20041130 -20050115 -20050315 -20050430
-20050615 -20050731 -20050915 -20051115 -20060120
-20060331 -20060430 -20060630 -20061231 -20070615
-20071031 -20080130 -20080730 -20081130 -20091031
-20100301 -20100831 -20110331 -20120331 -girls_compilation
-completed_01 -completed_02 -completed_03 -completed_04 -incomp_01
-incomp_02 -現行ログ
メニュー
お知らせ・概要など
必読【利用規約】
クッキー環境設定
RSS 1.0 feed
Atom 1.0 feed
リレー小説板β
雑談掲示板
討論・管理掲示板
サポートツール

『残酷な支配者』 作者:早 / リアル・現代 未分類
全角4095文字
容量8190 bytes
原稿用紙約11.4枚
残酷な支配者
 


 私、趣味でこそこそ小説を書いてるんですけど。いや、小説って言えるほど立派なもんじゃないかな。まぁ、それなりに書いてます。普通のサラリーマンです。
 例えば今みたいに、仕事が山積みでしかも締め切りが明日っていう時に限って、なんだかいろいろ考えちゃうんですよね。それは哲学のようなモノだったり、悲観論だったり小説のネタだったりします。
 それでね、今もふと、思い浮かんじゃったんですよ。
 私たち筆者は、言ってみれば物語の支配者ですよね。その物語に出てくる登場人物は、私たちの思うがままに動きます。だから彼らにとって、一番恐ろしい存在は、近所のいじめっ子でもなく、生活指導の先生でもなく、ドラゴンや幽霊なんかでもなく、私たち筆者じゃないのかって。そう思ったんです。
 彼らの運命は完全に私たちの手に握られています。生い立ち、生活環境、仕事、恋愛、対人関係、死に様まで。私たちはストーリーの展開にあわせて、いくらでも変えることが出来る。
 何か、分かりやすい例でも挙げてみましょうか。
 そうですね。じゃあ簡単に、女の子が男の子に恋をする話。王道ですね。
 普通の学生にしてみましょう。女の子は、そうですね。『サキ』という名前にしましょうか。男の子は、『彼』とだけ呼びましょう。
 サキは高校一年生。毎朝、同じ時間に同じ電車の同じ車両に乗る。その車両の、いつも同じドアのところに、彼がいるからです。サキは高校に入ってその電車に乗るようになって、彼に一目惚れするんです。でもサキは話し掛けられない。そりゃ、よく知りもしない他人に話しかけるなんて、簡単にはできませんよね。彼の、かばんの傷や制服を軽く着崩した感じから、明らかに年上のオーラがでていて、その上カッコよかったので、内気なサキは最初見ることもためらったほどでした。
 ここまで考えても、やっぱりよくある話ですね。この後、サキが落とした定期を彼が拾ったりしたら、それこそありがちですから、ちょっと変えてみましょう。
 ここで私は、『彼』がサキにとってとても大切な人にするために、サキをいじめられっ子にします。サキは学校に行っても、友達がいない。みんながサキを無視します。だからサキは本当は学校になんか行きたくないけど、電車で彼に会いたいがために、毎日学校に行きます。こうすればサキにとって彼の価値が、普通の学生をやっているという設定の時より、ずっと上がりますよね。毎日友だちと楽しく過ごしている普通の子なら、彼のことが少し気になっても、学校の誰かといい雰囲気になったりして、彼のことをすぐ忘れてしまうかもしれませんから。
 でもまだ足りないな、と思って私は、サキの家庭を崩壊させます。父は別の女のところに行ったきり帰ってこない。母も男を連れ込んでくる。たまに顔を合わせば、出てくるのはお互いを傷つける言葉ばかり。可哀想なサキちゃん。サキにとって癒されるのは、電車で彼をこっそり見つめている時だけ。
 これでまた、『彼』の価値がサキの中で上がりました。もうサキは、彼のことしか考えられない。彼が生きる希望だと言ってもいいくらいです。
 今までのが、前置きですかね。ここからストーリーを動かしましょうか。さっきも言ったように、サキに定期を落とさせるのもいいですが、やっぱりそれは嫌なので、なにか別のイベントを起こしてみましょう。
 ある日、サキは猛烈にいじめられます。それまで無視するだけの女番長みたいな怖いコに、かなりひどい事をされます。理由は、女番長が好きな男子と、話をしてしまったから。それも、その男子が落としたペンがサキの椅子の下に転がったから、拾ってあげて、「ありがとう」と言われただけ。
「汚ねぇ手でシンヤ君のモノにさわってんじゃねぇよ!」と怒鳴られます。理不尽ですね。今時高校生にもなって、本当にこんなことがあるのかどうかは知りませんが、雰囲気がでればオッケーです。
 次の日、サキはどうしても学校に行きたくなくなりました。でも家には新しい男がいるから学校に行かないと、母親に疎まれます。サキはいつも通り電車に乗り、いつも通り彼を見つけました。サキが降りる駅の方が近いので、サキは彼がどこまで乗るのかは知りませんでした。制服もこのあたりでは見慣れなかったので、全く見当がつかなかったのです。
 サキは、思い切って彼について行ってみよう、と思いました。大きな決断です。お金はありました。この時間帯で、まさか県外の学校ということはないとめぼしをつけて、サキは学校をさぼるという一大決心を下します。
 それからしばらくして、彼が電車を降りました。急いでサキも後を追います。駅には彼と同じ制服を着た人たちがいっぱいで、サキは明らかに浮いていました。その上、乗り越し精算をしている間に彼の姿を見失ってしまいます。
 サキは慌てて後を追いましたが、彼は制服の波にまぎれてしまってどこにいるかわかりません。どうしようかと思案していると、列からひとつそれていく影がありました。それが彼でした。サキは不思議に思いながらも、彼を見つけたという安心感から、彼を追います。気付かれないかと不安に思いながらも、すたすたと歩く彼を追います。
 やがてふたりは、ふるぼけた木の建物の前まで着ました。半ば廃墟と化したその建物に、彼は吸い込まれるように入っていきます。サキはいよいよ不審に思いながら、入口の看板を読もうとしましたが、それすら風化しきっていて全く読めませんでした。
 廃墟の隣に、寺がありました。
 サキはなんとなく、中に入ってみます。小ぢんまりした本堂と、たくさんのお墓がならんでいました。サキはお坊さんに尋ねます。「あの建物は何ですか?」お坊さんは答えます。「あれは、○○高校の旧校舎だよ。もうずっと使われてないんだ」
 なるほど、旧校舎。サキは納得します。でも、じゃあ、彼はなんであんな所に入って行ったんだろう?
 ここで、私はまた考えます。『彼』の正体をどうしようか。皆さんもうお察しかもしれませんが、このままでは『使われていない旧校舎』と『寺』のキーワードから、彼は『幽霊』ということにせざるをえません。いや、何か訳ありの学生だという理由をつければいいかもしれませんが、それはまぁ、置いといて。
 幽霊ということにするにしても、ただの幽霊じゃつまらない。どうして彼は、サキの前に姿を現したんだろう? どうしてサキは、彼を追いかけるほどに心惹かれているんだろう? この問いに、明確な答えが欲しいですね。
 それからたいていの怪談では、幽霊は正体を見られると、それ以来姿を消してしまいますよね。私も、もう彼には登場してもらわないつもりです。では、これからサキはどうすればいいのか。生きる希望を失った彼女は、それこそどん底です。それはあんまりだし、物語のオチとしてもよろしくない。さて、どうしようか。
 私は、さっき考えた家族構成を直します。母親はまだ若く、朝、サキが家を出るのを見届けてから会社に向かいます。そして、父親はずっと昔に『死んでいた』ことにします。そう、母親は高校三年生のときにサキの父親と恋に落ちて、学生という身分でありながら身ごもってしまうのです。ところがある時、突然父親が事故で亡くなって、母親はおろすつもりだった赤ん坊を、父親の忘れ形見として生む事に決めます。女手一つで苦労して育ててくれた母親を前にズル休みなんて、あんまりできることじゃありませんよね。これでなんとか、辻褄があいました。
 そしてサキは、彼の正体を知ります。どうやって知るか。そうですね、和尚さんにでも聞きましょうか。父親は生前たいへん信仰が厚く、和尚さんと顔見知りでした。父の面影を持つサキに和尚さんが気付き、そうしてサキは父親の話を聞く。なんだか多少無理矢理な気もしますが、それでいいでしょう。
 なんと、彼は生前の父の幻だったのです! これを、さっきの問いの答えにしたいと思います。
 サキは旧校舎に向かいます。そしてそこで、父の形見を見つけます。何にしましょう。手紙でいいですかね。渡せなかった、母親への最後の手紙。詳しい内容はまたあとで考えることにしましょう。とにかくそこには、生まれてくるサキへのメッセージなんかもあって、サキは感動して、生きる希望を見つけるわけです。
 これでおしまいにしましょうか。結果的には、まぁ、ハッピーエンドになりましたが、考えてください。サキを救い上げたのは私ですが、どん底へ突き落としたのも私で、最後には父親も死なせてしまいました。
 今の話はまだマシなほうですけど、場合によっては孤児にしてみたり、先天的な障害を持たせてみたり、不治の病だったり。物語を盛り上げるためには、なんでもできます。物語の中でたくさんの人間が苦しんでいるのをみて、私は微笑みます。こうしておけばあとでもっと盛り上がるぞ。
 そうして、私は気付きます。
 一番残酷なのは、他でもない、私だ。
 この考えを、馬鹿げていると思う方、たくさんいるでしょう。私もそう思います。だってサキも『彼』も、ただの登場人物に過ぎない。架空の人物に過ぎないのだからと。彼らに痛みはなく、苦しみはなく、物語の中でだけ生きている。それに、私が考えなければサキも『彼』も、存在することすらなかった。いや、『存在』という言葉さえ違和感を感じる。言ってみれば、ただの文字の羅列だ。『存在』しているのはサキでも『彼』でもなく、文字。『サキ』という文字。それらは一瞬で消す事ができる。存在を消す事ができる。
 そう、私は少しも悪いことはしていない。それは確かだけど、やはり考えれば考えるほど、私は思ってしまうのです。一番残酷なのは誰だ? 運命を弄んでいるのは誰だ? そんな風にね。
 ……おっと、思ったより長くなってしまいました。私はこれから、たまりにたまった仕事を、徹夜してでも終えなければいけません。それでは。



「その男は、壁についた小さなしみに向かって、延々とそう呟いていました」




2005/10/27(Thu)00:48:39 公開 /
■この作品の著作権は早さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 こんにちは。私的には冒険してみました。早です。口調が微妙にえらそうなのが恐れ多いです。
 今回の作品は、感想というよりもみなさんの意見を聞きたいな、と思って書きました。馬鹿げた考えだとはわかっています。でもなんだか、作った人物にある程度の「責任」みたいな、そういったものがいるんじゃないかな、と思いまして。

それから、別にお知らせするほどのことでもないんですが、この作品を境に、しばらく投稿は控えようと思います。理由はまぁつまり、「お受験」なんですが(^_^; 自分にけじめをつけるためにも、ここで言っておきたいな、と思いました。すいません。
感想、ご指摘、意見などありましたらうれしいです。それではこのへんで失礼します。
この作品に対する感想 - 昇順
感想記事の投稿は現在ありません。
名前 E-Mail 文章感想 簡易感想
簡易感想をラジオボタンで選択した場合、コメント欄の本文は無視され、選んだ定型文(0pt)が投稿されます。

この作品の投稿者 及び 運営スタッフ用編集口
スタッフ用:
投稿者用: 編集 削除