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『Half&Half』 作者:黎 / 童話 ショート*2
全角6175.5文字
容量12351 bytes
原稿用紙約20枚
Half&Half 
〜girl’s side〜
 ねえなんで?
 なんでみんなはわたしをにくむの?
 わたしがなにをしたの?
 わからない。
 わたしは・・・・
 私はどうしたらいいの?

 人間の住む世界から遠く離れた場所。神界と呼ばれる世界は、確かに存在していた。しかし、その中にも争いはあった。天使と悪魔は、相容れないもので、ずっと戦が続いていた。
その中にいた、天使の一人は、普通とは違っていた。羽根が、灰色だったのだ。

私のこの羽根を何度恨んだことだろう。これのおかげで、友も、仲間も、親でさえもいなくなってしまった。ここには私みたいな「異常」なものを快く思わないものもいたから、何度も追われて、殺されそうになって。いつしかそれが日常になっていた。躊躇いなく手を汚していって、それでも何のためにそれをするのか、理解していなかった。別に、自分の命が大事だとかいう訳ではない。正直、そんなものどうでも良い、と思っていた。それでも私の一部はまだ、生きることを望んでいたし、奴等に殺されるのも癪だった。ただ、それだけ。

 ある日、私は街外れの川の傍に行った。ここに来たのは初めてだったけど、静かで、落ち着ける場所だった。座ってぼんやりとしていたら、誰か、否、悪魔が近づく気配がした。だけど、それ自体には悪意があるようには思えなかったし、力もあまり強くなかったから、私は別に動かなかった。その悪魔が近付いてきて、私に気づいたらしく、すこし緊張するのが背中ごしに分かった。その後彼は動きもしないので、私は口を開く。

「私、何に見える?」
「分からない。俺の知っている限りでは、判断できないな。そんな羽根をもっているものの話は聞いたことがないからな」
 一瞬、彼は驚いたようだけど、すぐに緊張を解いて答えた。何となくだけど、他の悪魔とは違った雰囲気がしていた。
「やっぱりそう?私にもよく分からないの。どちらでもないってことは、分かるんだけど」
 素直な彼の返答は私の考えていることにも似ていて、すこし嬉しかった。振り返って、彼と眼を合わせる。黒い眼、漆黒の髪、悪魔の羽根。私みたいに「不完全」じゃないのはすこし残念だったけど、それでもなんとなく好感がもてた。
 それでも、一つだけ彼には聞いておくことがあった。

「それで?私を殺す気なら、別にかまわないけど」
 彼に武器をむけるのはできれば避けたいことだったけど、本心は隠したまま言い放つ。
 「・・・死にたいのか?」
「別に? 多分負けないだろうし」
 彼にとっては敵のはずの私にそんな言葉をかけるのが不思議で、それにそんなことを言ってくれるのが、嬉しかった。自分でも自然に笑いがこぼれてくるのが分かる。すぐにいつ戦ってもいいように切り替えたけれど。突然増えた私の殺気に一瞬彼は呆気にとられて、その後口を開く。
「俺からは手を出す気はない」
「そう? それなら私もあなたは殺さない」
私にとってもそれは嬉しいことだったから、すぐに警戒をとく。彼ならいきなり攻撃されても大抵はなんとかできる自信もあった。それ以上に、彼はそんなことしないだろうという妙な確信があった。
これで交渉成立だね、と言ったら彼は妙な顔をしていた。私が何か変なことでも言ったんだろうか?その疑問はさておき、とりあえず聞き忘れていた最後のことを尋ねる。
「あ、そうだ。名前なんていうの?」
これは頭を抱えていた彼もすぐに答えられるようで、すこし安心した。怪我をしているわけではないらしい。
「バレル。お前は?」
「私はセフィー。宜しくね?」
私がよくあそこに行くようになったのは、この時からだった。行って、大抵の場合何もせずにじっとしているバレルに、私が話をする。会話をするわけではない。バレルは、大抵ただ聞いて、相槌を打つことくらいしかしないからだ。それでも、こんな時間、私は持ったことがなかったから、ただ聞いてくれる人がいることが、嬉しかった。


 それでも、私が時々血を被ってしまうのは、仕方のないことだった。バレルにも血の臭いは分かるようで、そのたびに顔をしかめていた。そのたびに少しだけ痛む心があって。自分にそんなものが残されていたことが嬉しくて、またそんなことでしか自覚ができないのがつらかった。
 ある日、あそこに向かおうとした私の前に、いつものように何人かの天使が現れた。
 「お前、昨日俺らの仲間殺したんだろ」
 「それがどうかした?あっちが先に私を攻撃してきたのよ?大体、人聞きの悪いこと言わないでよ。少しは生きてるでしょう」
 もう、何も感じない。こんな会話が、私の日常だった。この日までは、これでいいのだと信じていた。その中に、彼女がいるのを見るまでは。
 「リナ…?」
 忌み嫌われていた私の、唯一の友人。その彼女が、彼らと一緒にいた。
 「なんで…」
 「聞きたいのは私のほうよっ。お兄ちゃんを殺してっ…」
 ああ、それではアレは彼女の兄だったのか、と思う。数日前、同じようにして私の前に立ち塞がった者。顔立ちが似ているとは思っていた。もっとも、今となってはこの世の者ではないわけだが。
 「彼は、あなたのお兄さんは、私を殺す気だったんだよ?私は自分を守っただけ」
 いつか彼女も離れていってしまうのは分かっていた。わざと彼女を挑発するのは、自分のため。どうせなら心から憎まれていたほうが私の気も楽だ。
 「それでもっ、セフィは、私のお兄ちゃんを殺したっ」
 「別にあなたのお兄さんだから殺したわけじゃないわ。他の誰でも、自分が危険だと思えば殺す。死にたくないもの」
 その場にいるものが怒りに震えるのが感じられた。
 「いくら私でも、リナを殺すのは心が痛む。できれば、さっさと立ち去ってもらいたいんだけどね?」
 俯いていた彼女が顔を上げたとき、その手にはナイフが握られていた。それをみただけで、希望が潰えたのが分かる。
 「いいえ。あなたはお兄ちゃんの敵よ。死んでもらうっ」
 他の者も次々と武器を呼び出す。私も、自分の愛用も武器、大鎌を取り出した。これは私が「死神」であることの証。他人にそう呼ばれるようになった時初めて手にしたものだ。これを手にしたときに生き残った者はいない。
 彼らは一斉に飛び掛ってくる。だが、攻撃が甘すぎた。私が背後にまわったのすら目で追えないらしい。大鎌の一振りで、一気に数が減る。あっけないほど簡単だった。結局、最後に残ったのはリナだったが、私はそれまでに傷一つ負ってはいなかった。対するリナは、大小の傷が体中についている。考えずとも、結果は明らかだった。
 「もう一度だけ忠告するよ。今逃げれば殺さない。」
 「っ誰がよ!」
 できれば、逃げてくれればいいと思っていた。一時的に生き延びるだけなのだろうが、それでも。だけど彼女が引かない以上、私としても仕方がなかった。
 「バイバイ」
 勝負は一瞬だった。あっけないほど簡単に、リナの体は崩れ落ちる。その体を受け止めて、うずくまる。
 「…ごめんね、リナ」
 私があなたのお兄さんに殺されていたらよかった?それともあなたに殺されれば?
 「逃げてくれれば、良かったのに」
 あなたも、あなたのお兄さんも。
 「…私に関わらなかったら、死ななかったんだよね」
 本当に、「死神」なのかもしれない。失くしたくない物さえ、私の掌から零れ落ちていく。
 「本当に、ごめんなさい」
 泣いてはいけない。視界が悪くなるのは、今の状態を悪化させるだけだ。それでも、心からは血の涙が流れ出す。
 その場を立ち去る時、一度だけたった一人の友人を振り返る。いや、彼女の亡骸を。そして、そうしたのは自分だった。
 そのまま、いつもの場所に行く。思ったよりも遅くなってしまったらしく、バレルはもうそこにいなかった。そのまま膝をかかえて座り込む。今日はどうやっても戻れる気がしなかった。今頃は彼らの死体も見つかっているはずだ。戻るのは危険すぎた。特に今の私にとって。
 夜はただ静かに過ぎていった。

 翌朝、気がついたら私の目の前にはバレルがいた。頬に一本紅い筋がはしっている。どうやら、怪我をしているようだ。
 「あれ?バレル?何やってるの。怪我してるよ?」
 正直な感想には、呆れたような視線が返ってきた。
 「おまえのせいだろう…」
 私が何かやったのだろうか?思わず悩んでしまったが、特に思い当たることはない。
 「とりあえず、大丈夫か?」
 心配しているらしい。それももっともなことだろう。私は血で染まっているのだから。普通なら、怪我でもあるのかと思う。
 「あ、うん。平気平気。昨日から追いまわされていただけだから」
 言いたくないから、隠していた。それだけでは繕えないのは分かっているけど。
 一瞬彼は何か聞きたそうにしたけれど結局、そうか、と言っただけだった。明らかにわざと聞かないでくれたのだ。その心遣いが嬉しかった。だから、私も何も言わなかった。リナを殺してしまったことは、胸の中にしまいこんで。

 それからしばらく経っていたが、リナのことは私の頭から離れなかった。あのあと私を狙う者は一気に増え、今まで以上に戦闘ばかりの日々が続いていた。その中にいても私には躊躇いのようなものがあった。今更、何を考えているのだろう。今まで殺した者の数など数え切れない。それなのに、今になってたった一人を殺したことに負い目を感じている。

 そんな自分が、情けなくて、酷く滑稽だった。

 今まで殺してきたのは、何のため?
 イキルタメ。イキノコルタメ。
 リナを殺したのは何のため?
 イキルタメ。イキノコルタメニ。
 生きてなんの意味があるの?
 ワカラナイ。

 それなのに、生き続けてしまう。
 ねえ、私はいつになったらやめる事ができるの?
 望むことなんて、もとから無い。
 叶うなんて、思っていないから。 
 ただ早く、終わらせたいだけなんだ。
 届かない光なら、見えなくたっていい。
 それでも、光を求めてしまう。
 すべてを終わらせるヒカリを。
 それだから、死にたいんだ。
 だからこそ、消えたいんだ。
 意味の無いものならば、無くたって、良かった。
 それなのに、生き続けてしまう私は、どうしたらいい?
 ねえ、いつになったら私はヒカリを見ることができる?


 そんなある日、また私はあそこに向かった。いつもの場所。唯一つの、居場所に。
 いつかのように座っていると、ふいに頭の中に映像が浮かぶ。
 どうやらいつものやつがやってきたらしい。
 先読みは私の能力の一つ。と言っても、自分ではコントロールができないから、あまり使い道は無い。それでも、時々見る時は必ずその通りのことが起こった。
 自然と湧き上がる映像に身を任せ、できる限り見ようとした。

 夕暮れの空。私。あそこにいる。
 周囲。敵。危険。戦う? 否。
 微笑む。
 嬉しそうに。
 紅い紅い空。
 紅い紅い海。
 血が流れた。
 倒れてる。
 死んでるの? 是
 
 言葉が溢れる。思いも、溢れる。
 モウドウダッテヨカッタンダヨ。
 
 「っは…」
 最悪だ。よりによって自分の死を見るとは思わなかった。
 だが、休む暇もなくもう一組の映像がやってくる。

 昼間。私。彼。
 泣いている、彼。
 その手には紅い紅い血。
 笑っている、私。
 これを望んでいましたか?

 雫。落ちる。
 ココロ。儚く。
 散りゆく花。
 とても、とても。綺麗だった。

 「セフィー、どうした?」
 ふいに、声が聞こえる。彼の声。でもそれはどこか霞がかっていて、私はほとんど気にしていなかった。
 オーケー。どっちに転んでも逃れられないのね?じゃあ、これをどうやって決める?
 「セフィー。おい、大丈夫か?」
 肩を揺すられる。夢から覚めたような気分で、私は目の前のバレルの顔を見た。
 「あー、バレルだ」
 自分でも、下手な笑顔だと思える。とってつけた、借物。
 「本当に、大丈夫か?おかしいぞ」
 彼に決めてもらうのも、いいかもね?
 「…。ねえ、バレルは私を殺してくれるの?」
 予想道理。驚いている。まあ、そんなこと聞かれたら驚くよね。
 「前にも言ったはずだ。俺は殺す気はない」
 「そっかぁ。残念だな」
 そう。失った物ほど大切に思える。今は彼に殺されるほうがましに思えた。
 「本当にどうしたんだ?」
 本当のことなんて、言えるわけない。彼にも影響があったらどうする?
 「ん、あのね。私もうちょっとしたら死ぬと思うの」
 それが、精一杯の、限界の説明。これ以上は言えないし、言わない。
 「…思う、だけじゃないのか?確信があるのか、それとも」
 「多分あたるよ。私の勘、すごくいいからさ。先に死ぬなら、バレルに殺されるのがいいと思って」
 「俺は、殺す気はないと言っているだろう。大体、ただの勘だろう?」
 ただの勘ね。私もそう思えたら嬉しいんだけどな。
 「…。そうだね。ごめんね、変なこと言って」
 他に言える事なんて、なかった。

 本当はさ。
 死を望んでいたんだ、って言ったら君はどうする?
 怒るかな、泣くのかな、それとも同情?
 今は、何も欲しくない。
 否、いつだってそんなの欲しくなかった。
 生に執着することは、いつ死への羨望に変わったんだろう?
 生と死が紙一重であることに気づいてしまったのはいつだった?
 
 ごめんなさい。
 ひょっとすると君まで死に誘い込むかもしれない。
 それでも、きっと君なら大丈夫だって信じてるんだ。
 だって、君はヒカリだから。
 真っ白で、透明なヒカリ。
 どうかそれがいつまでも翳らないように。
 最初で、最後の願い。
 これ一つくらい、叶えてくれてもいいでしょ?神様。

 そして、これが最後の日。
 いつか見た光景のまま、立った私は囲まれていて。
 痛みはほとんど感じなかったが、これで死ぬのは分かった。
 「っおい!大丈夫か!?」
 会えるわけなんてないと思ってたんだけどな。
 「……バレル。…私は…大丈夫……だから…」
 ねえ、来てくれて嬉しいよ。最後に会えたのが、嬉しいんだよ。
 「分かってる。けど今は喋るな!」
 大丈夫なわけないじゃない?分かってるんでしょ?
 そこまでして助けようと思わなくていいんだよ。
 「やっとね……死ねるんだよ…」
 「お前、何言ってるんだ」
 それが、私の望むこと。この世界から、歯車からでる。
 動き続ける運命から逃げ出せたんだもの。
 「でもさ……やっぱり…ちょっとだけ…怖い………」
 だってさ、何があるか分かんないんだよ?先が見えないし。
 ああ、でももうお別れみたい。
 「っおい!セフィーっ!」
 声が段々聞こえなくなってくる。
 そして私はヒカリに手を伸ばした。

 ありがとうっていったら怒るんだろうね。
 それでもさ、嬉しかったよ。
 本当に。心から。
 闇に包まれた私を、君が照らしてくれました。
 ヒカリが照らしてくれました。
 そのヒカリは、とっても優しくて、暖かいヒカリでした。
 願わくば、それが絶対に翳らぬことを。
 消えゆく花は、歌います。
 そして、少女は眠ります。

              〜Looking for the light〜

2005/09/21(Wed)13:37:44 公開 /
http://wind.ap.teacup.com/tukiuta/
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■作者からのメッセージ
こちらに投稿させていただくのは初めてです。今回は、童話的な話で書いてみました。切ない感じが出てればいいなぁ、と思っています。
何か感想いただけたら有難いです。
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