- 『TROUBLE MAKERS』 作者:現在楽識 / アクション ファンタジー
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全角7933文字
容量15866 bytes
原稿用紙約23.45枚
プロローグ
「すみません、ちょっと道を聞いてもいいかな」
7月の暑い夏の日差しのなか、少年は初老の男に呼び止められた。
「え、……すみません、ちょっと今日始めてこの街に来たのであんまり……」
少年と、道を尋ねた初老の男はそれぞれお互いの格好をみた。少年のほうは黒いハーフパンツと黒い半袖のパーカーを羽織っており、動きやすそうな格好だった。ただ、少年の右腕は肩の付け根から指先まで皮膚を隠すように包帯でぐるぐる巻きにされていた。初老の男のほうは黒いスーツの上下で、こんなに暑いのに汗ひとつかかず、平然と立っていた。
「そうか、すまない、このあたりのはずなんだが、手遅れになる前に着けばいいのだがなぁ」
最後のほうでなにやらおかしなことを言いながら初老の男は少年に軽くお辞儀をして去っていった。少年は包帯が巻かれた右手で頭を軽くかきながら、目的の位置が書かれたメモを見た。
「たしか、アイツ今日は午前中は学校だっていってたな」
少年は腕時計を見るとまだ10時過ぎだった。
「どこか本屋にでも寄っていくか」
少年は適当にぶらつき、本屋を見つけて、中に入った。なかなかの品揃えで、少年は2時間ぐらい雑誌を立ち読みして、買いたいものを買った。
「さて、そろそろ行くか」
少年はメモを頼りに進んでいくが、このあたりはまるで迷宮のように複雑な住宅街で、同じようなところがたくさんあり、今自分が何処にいるのかわからなくなるようなところだった。
「おいおい、マジかよ、同じところをぐるぐる回ってる気がするぞ」
実際は、同じようなところを何度も通り過ぎているだけで、けしてぐるぐる回ってはいなかった。少年は何度も何度もメモを見ながら進んでいると、目の前を猛スピードで黒い車が通り過ぎていく、少年は10センチもない車との距離を一切動かずにその車の窓から内部を見た。
(なんだ?大きな袋……それと血か?)
一瞬だったので少年には自信が無かったが、確かに少年は、走り去っていく車の中に日とが一人入れそうなくらい大きな袋と、その周りに付いた血痕を見た。
「……ま、いっか、俺には関係ないだろうし」
少年は、もう一度メモを見ながら、しばらく探し回り、夕方には、目的の場所、少年の友達の家の前へとたどり着いた、
「あーあ、結局夕方になっちまったよ、アイツ怒ってなきゃいいんだけど」
少年は玄関の扉を思い切って開け放った。
「何だよこれ、……一体どういうことだよ」
少年は自分の見たものを信用することが出来なかった。信じることが……そして、認めることが出来なかった。なぜなら、扉を開けたのと同時に、少年の目には、1体の死体と乾いてからしばらく時間がたった血の海が写っていた。少年はその場で動けなくなり、崩れ落ちそうになったが、何とかそれだけは回避しようと必死に思考をめぐらし、その死体の横を死体と血の海に触れないように慎重に移動し、ゆっくりと、リビングへの扉を開けた。
「……何があったんだよ、この家……いや、この空間で」
リビングには別の死体が2体も床に転がっている。そして、また、乾いてしばらく時間がたった血の海、この家の……少年の友達の父親と母親だった、どうやら玄関に転がっているのは友達の兄のようだ、
「……アイツは? 何処に言ったんだ?」
部屋は、荒らされた形跡もなく、もみ合った形跡も無い、つまり、一瞬で、抵抗する間もなく殺されたのだ、と少年は限界ギリギリの脳でそう判断して、わずかな可能性にかけて、階段を上った、1階よりもすこし、ほんの少しだけ血の匂いが薄い気がした。それでも、鼻を刺激する強烈な血の匂いは、少年の限界ギリギリの思考に混乱を招いている。
(くそ、せめて、せめて、アイツと、アイツの弟だけは生きててくれ)
少年は2階の部屋の扉の前に立っていた。調べていないのは部屋だけだった。ゆっくりと、ゆっくりとドアノブ触れようと手を近づけていく、そして、ドアノブに指先が触れた、そして、その扉を一気に開け放った。
そのとき開けた扉は、少年にとって、人生を変える運命の扉だったのだ。その扉の先に広がっていた光景は、少年の心に完全に刻み込まれた。
第1章
7月の初夏の暑さが慣れ始めてくる、もうあと10日で夏休みが始まろうとして、学生たちがうきうきしている企業都市『アマテラス』内部にある5つの高校のうちの1つ、普通科……正確に言うとどんな才能があるか解らない生徒の才能を見つけ出すための教育機関、日本にいる様々な神様のように様々な生徒が集まることから『八百万』の名がつけられた高等学校の7階建ての屋上、そこに一人の少年がいた。
「今日も収穫はナシか……とりあえず、この街にいるのは確かなんだよな……」
少年、黒斬龍(くろきりりゅう)はポケットから黒い箱状のものを取り出し、サイドについているスイッチを入れた。それは、PPDと呼ばれる、小型情報端末で、この都市内において、それを使わないと生活をできないと言っても過言ではないといわれるほど重要なもので、電子マネーシステムや、GPS、携帯電話、赤外線通信システム、人によってはMP3などいろいろカスタマイズすることが出来る、用は、小さなパソコンなのだが、そのパソコン内部には世界最先端の技術力が詰まっている、
「まったく、初めての夏は暇に終わりそうだな」
PPDのMP3を起動させ、音楽を鳴らした。時刻は11時ジャスト、つまりは授業中、さらに言ってしまうと、龍は授業をサボっている。本来生徒がいてはいけない時間に屋上に来て、音楽など鳴らしていたら普通はまずいのだが、龍はそんなことをお構いなしで、音楽を鳴らしている。じつはこの時間、全教員が授業に出ているため、絶対に屋上に人は来ないのだ、
「それにしても、本当にこの学校って隙だらけだよな」
龍はポケットからライターとタバコ(マイルドセブン)を取り出し、口に咥えて火をつけた。こうしていても、絶対に教員たちは来ない、龍は入学して3ヶ月、もっと言えば、この街に越してきて4ヶ月で、この学校のシステムのセキュリティを突破してしまったのだ、何でそんなことをしたのかと言うと、龍にはたった一つ目的があり、その目的のためだけに龍は生きていると言っても過言ではなかった、
「ま、いいや、とりあえず教室もどるか」
半分くらい燃えたいたタバコを一気に吸って、灰皿の中にしまい、龍は屋上の扉のほうへと振り向いた。
「ん?」
屋上の入り口前に、2人組みの男子の姿が見えた、一人は、頭を金色に染めていて、もう片方は茶髪で、ヘアバンドを頭につけている。
「……なに見てんだよ、てめぇ」
「またかよ、お前、学年確認してから喧嘩売れよ」
ガンを飛ばしてくる金髪の男子を茶髪のヘヤバンド男子が軽く止めている。龍はその二人を軽く無視して、その横を通り過ぎようとした。
「……タメか、なら問題は無いよな」
そういうと同時に、金髪の男子は龍の肩をつかんできた。
「なあ、金貸してくれないか?」
(カツ上げかよ)
龍は内心かなりあきれていた。いや、あきれを超えて感心してしまった。
「金ないから無理、むしろ俺が金を貸して欲しいって」
龍がそういうと、茶髪のヘアバンドの男子ほうが思いっきり笑った。金髪の男子と龍はポカーンと唖然としている。
「あの……何を笑ってるんですか?」
「いや、お前の負けだということさ」
勝手に笑い出している茶髪の男子とそれを呆然と見ている金髪の男子を無視して屋上を後にしようとしたが、
「なあ、お前、名前なんて言うんだ?」
茶髪の男子が僕に尋ねてきた。
「……俺にかかわらないほうがいいぜ? 俺は疫病神であり、死神であり、そして、亡霊だからな」
龍の軽い冗談交じりの拒否の発言に対して、金髪の男子と茶髪の男子は無言で互いの顔を見合わせて、なにやら笑い出した。
「たいそうなことを言う人間ってまだこの世にいるんだな、単なる人間の癖に、自分のことを疫病神とか、死神とか言う幻想じみたものが自分だって言うのか?」
龍は、包帯に巻かれた右の拳を思いっきり握り締めた。これ以上言うのなら名前も知らないこの二人組みを思いっきりぶっ飛ばしてやろうと心に決めた。
「でも、俺たちもあんまし変わらないな」
「そうだな、……なあ、あんた、ライター持ってないか?」
急に話の方向性が変わったので龍は少し警戒したが、腰の小物入れからライターを取り出して金髪の男子に投げ渡した。金髪の男子はそれを受け取り、タバコに火をつけた。
「ふーーーー、お前も吸わないか?」
「俺はそんなのを吸わないから……で? あんたは」
茶髪の男子は頭につけたヘアバンドを直しながら龍のほうを見た。龍は無言でポケットからタバコを取り出して、1本口に咥えて、腰の小物入れにタバコをしまった。
「5分か……少しハイペースでいかないと」
龍は時計を見ながら、ライターを返してもらい、火をつけた。
「お前、なんで自分のことをそんな風に言うんだ?」
金髪の男子はふーと煙を吐いてから龍にたずねた。それに対して、龍は時計を見ながら、空に向かって煙を吐く、そして、すぐにタバコを灰皿にしまい、その灰皿を閉まった。その様子を茶髪の男子はジッと見て、何かに気がついたらしく、自分もあたりを少しだけ気にし始めた。
「何でかって? それは簡単だ、どうせすぐにわかるだろうし……じゃあな」
龍はスッと屋上の扉を潜り、階段を駆け下りていく、茶髪の男子もその後に続いた。
「え? ええ? どうしたの?」
金髪の男子は一人屋上に取り残されあせってタバコを消して吸殻を隅っこの茂みに投げ捨てた。
「だれだ? こんな時間に屋上にいるのは」
投げ捨てた吸殻が茂みの中に隠れきった瞬間、大柄の体育系の教師が屋上の扉を潜ってきた。
「うそーーーーーーーーーん」
龍はこのことを知っていたから、さっさと屋上を後にしたのだ、毎日この時間になると必ず先生の一人がここを見回りに来るのだ、そして、金髪の男子は体育系の教師に襟をつかまれ、小動物のように小さくなりながら生徒指導質に連れて行かれた。
「てめぇ、俺に何で教えなかったんだよ、そして岡島、お前もさっさと逃げやがって、おかげでこっちは生徒指導室でこっぴどくしかられたぞ」
「知るか、気づかないお前が悪いんだぞ」
「俺たち友達だろ、酷いよ」
「え? ……ゴメン、聞き間違いか? なにやら迷い言が聞こえたような気がしたけど?」
「あんたそれでも人間ですか? 命を救った友人に向かって言う言葉ですか?」
(何で俺は昼飯を食っている時にこんなくだらない漫才を聞かないといけないんだ?)
龍はぶっちゃけうんざりしていた。4時間目が終わり、購買でのパン購入戦争を難なくトップで終結させて教室で持ってきた弁当と一緒に食べていると、何故か先ほどの二人組みが龍の席に近づいてきて、それぞれが買ったパンを置いて近くのいすを持ってきた。そして、金髪が喋った第一声はそれだった。
「それにしても同じクラスだとは思わなかったな、黒斬龍……で間違ってないな?」
「ああ、俺もビックリしたぞ、だって特徴を言っただけでお前らのことを教えてもらえたよ、岡島英樹……だな?」
龍と茶髪のヘアバンドの男子、岡島英樹は互いの名前を確認して、瓶入りコーヒー牛乳をお互い一気に飲み干した。
「それにしても、もうすぐ一学期も終わるのに今まで顔を合わせたことの無いって言うのはかなりすごい話だよな」
「そうだな、……俺は一応まとも授業出たりしてるんだけど、偶然って恐ろしいな、……えーっとなんて呼べばいい?」
「ん? ああ、どうとでもいいよ、それと、忘れかけていたけど、こいつの名前は須藤涼平、俺の奴隷だ」
「ずいぶんと酷い扱いをしてくれますね」
金髪の男子、須藤涼平は今まで無視されていたことを少し気にしているのか、少しいじけた顔をしている。
「涼平と英樹か、……で? 何のようだ? 俺の昼飯のひと時を邪魔しに来たのなら問答無用でコロスから」
龍は冗談など微塵も感じられない言葉を涼平と英樹にむけた、もちろん殺気も忘れずに、その殺意を感じたのか、二人は少し寒気を感じて引きつった表情をした。
「そんな怖い事いうなよ、俺たちはちょっと面白いことを考えたからあんたもそれに誘おうとしただけだから」
「俺たちってお前が一人でやるんだろ? 俺を巻き込むなよ」
そういいながら涼平はにやりと笑った。そして、龍の耳元でひっそりとささやいた。
「次の時間、1年生のとあるクラスの体育があるんだ、それでな、ちょっと目の保養を……」
龍は問答無用で涼平の顎を包帯で巻かれた右手で思いっきりアッパーカットをぶち込んだ。もちろん手加減無し、しかもしゃべっている途中だったため、舌にもダメージは与えられる。無論、脳は完全に揺れるのでかなりの威力を誇る。
「下らん、俺の昼飯を邪魔するな」
すでに食べ終わった弁当を片付けながら軽くため息をついた。アッパーカットを喰らって5センチほど宙に浮き、どさりっと崩れ落ちかけた涼平は、舌を出しながら、
「何すんですか、危うく自分の歯で舌をギロチンに懸けてしまうとこだったじゃないですか」
「なあ、英樹、コイツの体は何で出来てるんだ?」
絶対に決まったと思っていた攻撃がそんなにダメージを受けていないことに疑問を感じて龍は英樹に尋ねた。
「少なくとも、DG細胞ぐらいで出来てるのでは?」
「以外にマニアックな物で出来てるな、……まあ、そんなことはおいておいて」
龍は先ほど購買で戦争勃発したパンを袋からあけてかじった。
「このバカはいつもこんなアホな事を言っているのか?」
「ああ、寝るときですらそんなことを言っているからこっちの身がもたん」
その時、位置的に言えば、机に普通に座っていた龍の向かい側に座っていた英樹の左側から、100円均一とかで売られているとげとげが付いたゴム製のとげボールが英樹の顔面に目がけて飛んできた。
「危ない」
龍がそういった瞬間、英樹が避ける動作に入る前に涼平がそのボールをキャッチした。もしも涼平がキャッチしなかったら間違いなく、回避が間に合わず英樹の顔面にヒットしていただろう、
「おい、気をつけろよ」
涼平はキャッチしたボールを持ち主のほうへと投げ渡した。
「でもさあ、どうする? 涼平、本当にやるのか?」
「もちろん、男のロマンだし」
間違いなく歪んだロマンだなと思いながら龍はパンを食べ終わり、コーヒー牛乳を飲み干した。
「ま、がんばれ……って、よくよく考えたら次の時間の体育ってうちのクラスだし」
次の時間、確かに龍たちのクラスは体育だった、しかしクラス単体でやるのではなく3,4クラス合同の体育、おまけに体育系のクラスと一緒だった。
「危険を冒した時ほど成功したときの達成感はすさまじいだろ?」
このバカは多分いつか死ぬな、龍はそう判断して体操着が入った袋を持って教室を出た。その後ろを2人も付いてくる。
「何でついて来るんだ?」
「だって俺らも体育受けるし、別にいいだろ? 一緒に行こうぜ」
龍は無言で二人を無視しながら更衣室を目指して歩き出した。龍が歩くだびに二人も同じタイミングで歩き出し、龍が止まると二人も止まった。
(ああ、めんどくさい、俺なんかにかまうなよ)
龍はチラッと後ろを見て、音をまったくたてずに一気に2人を引き離した。別にそんなに早いわけではないが、無動作、モーションなしで一気に走ったため、二人は何があったのか気がついてないようだ。
「え? なに?」
呆然としている2人を無視して階段を駆け下りて、校舎裏にある裏庭と呼ばれている場所まで行くとようやく龍はスピードを落とした。じめじめした空気が全力疾走したはずなのにほとんど汗をかいていない龍の体に絡み付いていく。
「ふう、まったく、何であの2人は俺について来るんだよ」
5時間目の開始まであと30分もある、それまでここで時間をつぶしていこうと思ったのか龍は軽く腰を下ろした。コンクリートの校舎を背もたれにして、足を伸ばした状態になってポケットからタバコを取り出した。この時間、この場所も絶対に誰も来ないのだ。ライターで火をつけて煙を軽く吸って吐き出した。静かな時が訪れた。
(俺みたいな人間にちょっかいを出して何が楽しいんだよ、あの二人もあいつらと同じなのか?)
動くものは空へと登っていく紫煙と、風で若干揺れている植物だけだった。だから、龍は静かな場所で考え事をしていた。
(だけど、俺と同じような人間って言ってたけど……そんなわけ無いよな。俺みたいな人間がそう何人もいないよな)
龍はあの2人のことを考えていることに夢中になっていて、口に咥えていたタバコの灰が左手の甲に落ちたことに気がついていなかった。そんなに熱いわけではないが、やけどのひとつはしてもおかしくは無い、実際、少しだけやけどしていたが、本人はまったく気がついていないのか、平然として考え事に夢中になっていた。
(俺と……同じような人間は……居ちゃいけないんだ、だって、俺の周りに居ると絶対に不幸になるんだ、俺のせいであの子は心が壊れた……俺のせいであいつは……)
龍の思考が意識の深いところに落ちかけたとき、がさがさと葉がすれる音が聞こえる、つまり誰かがいるということなのだ、龍は急いでタバコを灰皿に叩き込み、その灰皿を閉まった。
「ん? 龍か」
草むらから一人の男子生徒が出てきた。頭に白いバンダナを巻いた細めの体、だけどそれは痩せているのではなく、無駄な筋肉を絞ったためであり、弱弱しい感じはしない。
「……村雲か、お前またこんな所に居て、何してたんだ?」
「正宗でいい、お前だってこんなところで何……ってあれか」
村雲正宗(むらくもまさむね)はクンクンと軽く匂いを嗅ぎ、龍が何をしていたのかを予測した。
「いい加減、上の名前で呼ぶのをやめろ、俺はあんまり上の名前で呼ばれるのは好きじゃない」
「友達でもない奴を下の名前で呼ぶのはお断りだな」
「俺ら友達じゃないのか?」
はーっと深いため息を吐き、正宗が頭を抱えた。これで龍にそういわれるのもこれでもう10回を越えている。確かにそんなに深い付き合いではないが少なくても正宗は龍のことを友達と思っている。
「だから、俺は友達とか必要ないから俺にかかわるとろくなこと無いんだし」
「確かにそうだけどさあ、お前寂しくないか? そんな風に言っているのって」
純粋に正宗は龍のことを思ってそういった。龍は常にそうやって他人を寄せ付けずに一人でずっと居るのだ、時折、正宗と軽い冗談交じりの会話をしたりするのだ。
「寂しいのはもう慣れたよ、だから別に平気なんだよ俺の場合は寂しい思いをすることも、悲しむことも、許されないんだ」
龍は右手を空に掲げて、太陽の光を遮りながら包帯に巻かれた右手を見た。
「そういえば、今日初めて須藤と岡島の2人を見たぞ」
「あ? ああ、あのお騒がせコンビか、そういえばお前が居るときはあの2人居ないし、お前が居ないときにあの2人が居るよな、結構面白いなそれ」
正宗は軽く笑い出した。そして二人は立ち上がりそれぞれ自分の体操着を持って、更衣室へと向かおうとした。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
思いっきり女性の悲鳴が聞こえた。
「覗きよ、覗き、変態」
めちゃくちゃ大きな声で叫んでいるのか良く聞こえた。
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2005/09/29(Thu)20:57:09 公開 / 現在楽識
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■作者からのメッセージ
黒斬龍、須藤涼平、岡島英樹、村雲正宗、一応この小説の主人公の4人です。えーっと、確かに平和な学園物になっていますね……