- 『サムライ中学生』 作者:時貞 / ショート*2 お笑い
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全角7542.5文字
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原稿用紙約23.95枚
みつめてごらん、あの男を。
感じてごらん、あの男を。
呼んでごらん、あの男の名前を。
学生服に身を包み、ニキビで火照った顔をテカらせながら、今日もあの男の雄姿が夕暮れの街を行く……そう、あの男は人呼んで――
――サムライ中学生!
*
渋谷の街を巡回してきた新米警察官の佐藤巡査は、額の汗をハンカチで拭いながら上司の鈴木巡査部長に報告を行った。
「午後のパトロール、ただいま終わりました」
デスクに着いた鈴木巡査部長が、書類から目を上げて声を掛ける。
「うむ、ご苦労様。何も変わったことはなかったかね?」
「はい! ……いや、えーと……」
歯切れの悪い佐藤巡査の声。
「どうした、佐藤君? 何かおかしなことでもあったのか?」
「おかしなことと言えばおかしなことなんですが……」
鈴木巡査部長は身を乗り出しながらこうたずねた。
「なんだね。なんでも良いからはっきり言いたまえ」
「は、はぁ。実は、おかしな奴がおりまして……おそらく中学生くらいであろうと思われるのですが」
佐藤巡査は更に吹き出た額の汗を拭いながら、しどろもどろに返答する。
「おかしな中学生? なんだ、ちょっとくらいおかしな中学生なら、この渋谷にはわんさか居るが……挙動が怪しかったのかね? なにか薬物でもやっていそうな感じか?」
「いや、挙動が怪しいと言うよりも、その格好がおかしな奴で」
佐藤巡査が、制帽を取った頭をボリボリかきながらこたえる。鈴木巡査部長は矢継ぎ早に質問した。
「わしらから見れば、今の渋谷の中学生はみんなおかしな格好だろう? で、どんな服装だったんだね?」
「えーと、普通の学生服です」
「へ? じゃああれか、学生服をかなり改造して着込んでるような」
「いえ、思いっきり標準的な学生服です」
鈴木巡査部長は、ほんの少しだけ表情に苛立ちをあらわしながら、辛抱強くこうたずねた。
「じゃあ、どこがおかしかったんだね?」
「その……頭の格好が」
「頭の格好? 何か奇抜な髪型でもしてたのか?」
「ええ、とっても」
鈴木巡査部長は、ついに声を荒げてこう言った。
「おい、わしは君と漫才をしてるわけじゃないんだ! どんな髪型だったかしらんが、はっきりと言いたまえ!」
佐藤巡査はしゃきっと背筋を伸ばして、それにこたえた。
「はいっ! チョンマゲでありました!」
「へ――?」
佐藤巡査は鈴木巡査部長を連れて、そのおかしな中学生が居ると言うゲームセンターへと向かった。週末の渋谷は多くの人々であふれ、また、多くの犯罪の温床ともなっている。二人の警察官がこんな暇なことをしている場合ではないのだが……。
やがて二人の目の前に、こじんまりとしたゲームセンターがあらわれた。
古いドアをぎしぎし軋ませながら、店内へと足を踏み入れる。
「おい、佐藤君。いったいそのチョンマゲ中学生はどこにいるんだね?」
「あっれー? おかしいですね。さっきまではそこにある、乗馬のゲームで遊んでいたのですが」
そうこたえる佐藤巡査を尻目に、鈴木巡査部長は聞き込みをはじめていた。自動販売機の前で、ジュースを買おうとしていた中学生風の女の子に声をかける。
「ヘイ、彼女! おじさんと遊ばなーい? ……じゃなかった! ちょっと聞きたいことがあるんだが」
女の子は自動販売機に硬貨を入れる手を止め、怪訝そうに返事を返した。
「なんですか?」
鈴木巡査部長は、目一杯警察官らしい声音を使って問い掛ける。
「おっほん! 実はある人物を探しているんだがね。さっきまでここに居たはずなんだが」
「いったいどんな奴よ」
「何しろ変わった奴らしくてね。頭がチョンマゲらしいんだ」
女の子の顔が、突然パっと明るく輝いた。
「ああ、あの人を探しているの? あの殿方を」
「知ってるのかね?」
「ええ、この辺じゃ有名よ。……多分いま頃は、カラオケボックスに行ってると思うんだけど」
女の子からカラオケボックスの場所を聞き出した鈴木巡査部長は、プリクラに夢中になっていた佐藤巡査の腕を引っ張りながら店を出た。そのカラオケボックスは、いま出たゲームセンターとは目と鼻の先だったのである。
ほんのニ、三分歩いたところで、目的のカラオケボックスへと到着した。
二人の表情に、サっと緊張の色がみなぎる。
ゆっくりと店のドアを開けた瞬間、二人の耳に大音量で《銭形平次》のテーマ曲がながれてきた。
「む、む、む、む、む! 何やら早くも怪しい予感がしますねぇ」
佐藤巡査が《銭形平次》のリズムに合わせて腰を振りながら、鈴木巡査部長の顔を仰ぎ見た。鈴木巡査部長の表情にも緊張の色がうかがえる。そんな二人の警察官を、カラオケボックスの店員が怪訝そうに見つめていた。
「よし、取りあえずこの曲が聞こえる部屋に飛び込むぞ!」
鈴木巡査部長が、額ににじみ出てくる汗を制服の袖でぬぐいながら声を上げる。佐藤巡査も、強張った表情でうなずいた。
「いくぞ!」
「はい!」
二人は腰から警棒を引き抜くと、ゆっくりと店内を進んでいった。
そのとき――
「こらこら、そこの二人! だめだよ勝手に入っちゃ!」
カウンター越しに店員が声を掛けて、二人の潜入を制した。とつぜん声を掛けられた鈴木巡査部長と佐藤巡査は、思わずとびあがらんばかりに驚いてしまった。
店員がつづける。
「ご入店なら、まずここに記入してよ。それにウチは前払い制だからね」
鈴木巡査部長は「ごほん」と大きく咳払いすると、店員の目の前に高々と警察手帳を掲げて見せた。
「警察だ! われわれは重要人物を捜査中である。ご協力願いたい!」
店員は、その警察手帳をためつすがめつ眺めていたが、やがて裏返った声をあげてこう言った。
「ひゃあ、本物だったんすか! これは失礼しました! どうぞどうぞ」
鈴木巡査部長が手帳を懐中にしまいながら、仏頂面で店員をねめつける。
「わざわざ手帳を見せんでも、我々の格好を見ればすぐに警官だとわかるだろうが?」
「い、いやぁ、てっきりそういった趣味のコスプレ男だと思ったもんで」
「……」
店員に通された二人は、再び緊張の面持ちで潜入をはじめた。徐々に大きく響いてくる《銭形平次》のテーマ曲。二人は全身を汗で濡らしながら、一歩一歩慎重に進んでいった。二人にとって、こんな緊張した状態で銭形平次を聴くのははじめての体験である。
ニ0三号室――。
どうやらこの部屋のようだ。二人は目と目で合図をすると、一気にドアを開け放った。
「警察だ!」
二人は室内になだれ込む。
がしかし、そこに居たのは一人の中年男性であった。よれよれの背広を着込み、七三に分けた髪の毛がやや乱れている。
鈴木巡査部長は、唖然としているその男に向かって声をあげた。
「だ、誰だ貴様はっ!」
「あ、あんたたちこそ何者だっ!」
「我々は渋谷署の警察官だ!」
「へ?」
男は狼狽した様子で二人の顔を見比べていたが、やがておずおずと口を開いた。
「だ、誰だと言われましても……私はこういう者でして」
そう言って男がふところから名刺を差し出す。鈴木巡査部長はそれを素早く受け取ると、声に出して読み始めた。
「……大熊商事、営業第二課、山本利雄……ふーん。で、なんで貴様がこんなところに?」
「い、いやぁ、カラオケをやりに来ただけですが」
「一人でか?」
「は、はい……何か問題でも?」
鈴木巡査部長は佐藤巡査と顔を見合わせていたが、やがて大きくため息をつくと、男に向かってこうたずねた。
「さきほど《銭型平次》を歌っていたようだが、あれは君の趣味かね?」
「は、はぁ……そうですけど」
「ふむ。ひとつ質問なんだが、ここのカラオケボックスでおかしな中学生を見かけなかったかね? 頭がチョンマゲらしいんだが」
「頭がチョンマゲ……ですか? いやぁ、そんな変な奴は見かけておりませんが」
「ふーむ、そうか……困ったな」
大きくため息をつきながら腕組みをする鈴木巡査部長に、佐藤巡査が横からそっと囁いた。
「あ、あのー、店員に聞いてみたほうが早いんじゃありませんか?」
鈴木巡査部長の顔が、途端にパっと明るく輝く。
「そ、そうだね」
二人は受付までとって返すと、店員に向かって質問をはじめた。
「いまここに、怪しい中学生が来ているはずなんだがね。どの部屋に居るかな? 頭がチョンマゲらしいんだが」
それを聞いて、店員が即座にこたえる。
「あー、あー、あのお方をお探しですか! いやぁ、残念ですねぇ。ついさっき帰ってしまいましたよ」
鈴木巡査部長が、唖然とした表情で問い掛ける。
「な、なんだって! そ、それはいつ頃だね?」
「はぁ。お二人がさっき、ニ0三号室に入っている間でしたけど」
「な、なにぃ――っ!」
二人は猛ダッシュで店の外に飛び出した。店員が呆然とした表情で、開け放たれたドアを見つめている。
店外に出た二人は、周囲を隈なく見渡した。
「あ、あそこに!」
佐藤巡査が大声をあげた。鈴木巡査部長は、その指差す方向に素早く目を走らせる。
「――あ! あいつかっ!」
目前数百メートルほど先に、学生服を着た小柄な男の後姿が見える。そして、その男の頭は見事なまでにチョンマゲであった。まさにチョンマゲであった。まごうことなきチョンマゲであった。
「おい、行くぞ!」
「はいっ!」
二人はそのチョンマゲ男を目指して、猛然と駆け出していた。
チョンマゲ男はそんな事も露知らず、右手で何故かVサインをつくりながら、「今夜のおかずは何かしら?」などとのんきな独り言を呟くのであった。
「はぁはぁはぁはぁ……」
二人の警察官は、全速力でチョンマゲ男の後を追った。
「おい、あの角を曲がったぞ!」
鈴木巡査部長が息をきらしながら、喘息患者のような声をあげる。目前百メートルほどの横道に、チョンマゲ男の姿が隠れるところであった。
「は、走れ! 死ぬ気で走れ!」
二人の警察官は必死の形相で走った。周囲を歩いている人々は、何か重大な事件でも起こったのではないかと好奇の目を光らせている。誰もがまさか、ただ単に頭をチョンマゲ・スタイルにしている中学生を、二人の警官が意味も無く追いかけているなどとは思いもしなかった。
角を曲がりきったところで、二人の目がチョンマゲ男の全貌を捉えた。佐藤巡査の口から、思わず感嘆の声が洩れる。
「おお!」
背格好は中肉中背、残暑の厳しい中、紺色の学生服をビシっと着込んでいる。背中に背負った合成皮脂のリュックの先から、明らかにプラスティック製とおぼしき玩具の刀が飛び出していた。そして、やはり見事なまでのチョンマゲを結っている。
「おい、そこのお前! ただちに右側に寄って止まりなさい!」
鈴木巡査部長が大声を張り上げた。
チョンマゲ男は足を止め、くるりと背後を振り返る。ニキビでいっぱいの脂っこい顔に、丸い黒ぶち眼鏡を掛けていた。
二人の警察官が、ようやくチョンマゲ男のもとに駆けつける。二人とも完全に運動不足らしく、完全に呼吸が乱れていた。さすがは日本の警察官である。
「はぁ、何か御用でしょうか?」
チョンマゲ男が口を開く。その声は、透き通るような瑞々しいボーイ・ソプラノであった。鈴木巡査部長は、昨年親子でコンサートに行った《ウィーン少年合唱団》の天使の歌声を思い出した。
「はぁはぁはぁ……ちょっと貴様に聞きたいことがある。悪いが署まで来てもらおうか」
鈴木巡査部長が息を切らしながらそう言うと、チョンマゲ男はさも驚いた様子で聞き返す。
「はぁ? 一体なんで僕が警察署になんか連れていかれるんです?」
もっともな質問であった。奇抜な髪型というだけの理由で、彼が警察に同行を求められるといった馬鹿げた話しはない。
鈴木巡査部長は佐藤巡査に命じると、有無を言わさずチョンマゲ男をしょっぴいて行った。この行為はもはや、警察官というよりも犯罪者のそれである。道行く人々が、みな怪訝そうな表情でこの三人を見つめていた。
「放せ! いったい僕が何をしたって言うんだ」
「うるさい、黙れ! それをこれから署でゆっくり聞こうと言うんじゃないか」
渋谷道玄坂署、取調室――。
「おい、貴様。取調べに入る前に、まずはカツ丼でも食うか?」
鈴木巡査部長が、穏やかな声でチョンマゲ男にたずねる。
「――いりません。それより早く帰してください」
「いらない? そりゃまたどうしてだね?」
「お腹がすいていませんから」
「そんな理屈はとおらんよ。なんせこのシュチュエーションといったら、カツ丼がなきゃはじまらんだろう?」
「……」
黙り込むチョンマゲ男の姿を肯定のしるしと見て取ったのか、鈴木巡査部長は満足そうに何度も頷くと、佐藤巡査に命じて近所のそば屋に出前を頼ませた。
「さて、じゃあそろそろはじめようか」
鈴木巡査部長は凄みをきかせた声でそう言うと、チョンマゲ男の顔をまじまじと見つめた。そして思わず、「ぷっ」と吹き出す。やはり、チョンマゲ頭で真剣な表情をしている男を間近で見ると、どうしても可笑しさがこみあげてくるのだった。
「……おっほん、失礼。では、君の名前から聞こうか。氏名を正直に言いたまえ」
「こんなことしていいんですか? 後で何があろうと知りませんよ」
チョンマゲ男が憮然とした表情で呟く。鈴木巡査部長は、いきなり両手で机を激しく叩いた。振動で空の灰皿がひっくり返る。
「おい、余計な口を叩くんじゃねえ! 言われた事に素直に答えるんだ」
「言いたくありません」
「こ、この――」
チョンマゲ男と鈴木巡査部長のやり取りは、この後延々と続いたのであった。
「お、おい。いい加減に質問に答えてくれよ。わしはもうくたびれた」
鈴木巡査部長は二人分のカツ丼をたいらげた後、何度もチョンマゲ男に質問をぶつけたのだが、彼は断固としてその質問にこたえようとしない。
「たのむ、名前ぐらいしゃべってくれ」
「いえ、しゃべりたくありません」
「……じゃ、じゃあ、この用紙に書いてはくれまいか?」
「え、用紙? ……はい、そういうことなら」
鈴木巡査部長は思わず「がくっ!」という、古典的なコント用語を口走っていた。
チョンマゲ男は、用紙に書かれた質問事項を次々と埋めていった。やがてすべての記入が終わり、用紙を鈴木巡査部長に差し出す。鈴木巡査部長はあくびを噛み殺しながら受け取った。
「ふむふむ、名前は《伊集院清隆》というのか。で、室町中学の二年生。年齢は十四歳ね。母親は主婦で、父親は……け、警察官僚! マジ?」
鈴木巡査部長の顔色が急に青ざめてしまった。おずおずとした声で佐藤巡査を呼ぶと、そっと何かを耳打ちする。そして、愛想笑いを浮かべながらチョンマゲ男にたずねるのであった。
「あ、あのー、ちょっと生徒手帳か何か見せてもらえないかな?」
「はぁ、どうぞ」
そう言って、学生服の内ポケットから生徒手帳を取り出す。鈴木巡査部長がそこに書いてある名前を見て、間違いなく《伊集院清隆》本人であると確認したとき、佐藤巡査が顔色を一変させて取調室に飛び込んできた。
「ぶ、ぶ、部長、た、た、たいへんです! そ、そこのチョンマゲ野郎――もとい! そちらのお坊ちゃまは、伊集院警察庁長官のご子息でございます!」
チョンマゲ男こと伊集院清隆は、机の上に置かれたボールペンをかざしてこう言った。
「ペンは剣よりも強し――」
完全に言葉の使い方を間違えている。
「じゃあ、僕はこれで帰りますから。……あ! 父のことは心配いりませんよ。今日のことは何も話しませんから」
平身低頭で謝罪を続ける二人の警察官を涼しげに見つめながら、伊集院清隆は爽やかなボーイ・ソプラノでそう言った。またもや鈴木巡査部長は、昨年親子でコンサートに行った《ウィーン少年合唱団》の天使の歌声を思い出していた。
「本当に申し訳ございませんでした! ご自宅までお送りいたしましょうか?」
「いえ、歩いて帰れますからけっこうです」
伊集院清隆は颯爽とリュックを背負い、警察署の出口へと歩きはじめた。
思わず佐藤巡査が、その後姿に問い掛ける。
「あ、あのー、お坊ちゃま。ひとつお聞きしてもよろしいでしょうか?」
伊集院はくるりと振り返り、「何でしょう?」と問い返した。
「あ、あのぉ……その髪型なんですが、何故チョンマゲになさってるんです?」
「……ああ、これですか。これは単なるヅラですよ。でも、良く出来てるでしょう? 専門の職人に作ってもらいましたから」
伊集院は自分の頭に手をやりながら、自慢げにこたえる。佐藤巡査はおずおずと質問を続けた。
「いや、そういうことではなくて。何でチョンマゲにしてらっしゃるんですか?」
佐藤巡査が言い終わると、伊集院はふと寂しげな表情を見せた。そして遠くを見るような目つきになって、その理由を語り始めるのであった。
「ハリウッドの映画スターで《サム・ライアン》という俳優がいます。僕の憧れの人物です。僕は……少しでも彼に近づきたかった。しかし、彼はブロンドのアメリカ人で僕はこってこての日本人。容姿はまるっきり違う。それでも僕は、何かしら彼との共通点が欲しかった。……で、サム。ライアン、サム・ライアン、サム・ライアン……ん? サム・ライ? おお、サムライ! サムライでいいじゃん! ……っとまぁ、こういうわけです」
二人の警察官は、あまりの阿呆らしさに言葉を失ってしまっていた。それを勘違いした伊集院は、自嘲ぎみな笑みを浮かべてこう言った。
「笑いたければ笑えばいいさ――」
鈴木巡査部長はハっと我に返り、わざとらしく目頭にハンカチをあてがってみせた。
「うう、いい話しですねえ」
「……あのー」
佐藤巡査がおずおずと口を開く。
「金髪のカツラをかぶって、目にカラーコンタクトを入れるってのも良いんじゃありませんか? 少しはアメリカ人っぽく見えるのでは」
鈴木巡査部長が、目に殺気を込めて佐藤巡査の顔を凝視した。その目は「余計なことを言うな」と、強く語っている。それに対して伊集院清隆は、大きく手のひらを叩くとこう言い放った。
「ああ、それもありだね! そっか、気づかなかった!」
*
みつめてごらん、あの男を。
感じてごらん、あの男を。
呼んでごらん、あの男の名前を。
学生服に身を包み、ニキビで火照った顔をテカらせながら、今日もあの男の雄姿が夕暮れの街を行く……そう、あの男は人呼んで――
――サムライ中学生!
……略して《サム中》……。
了
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2005/09/08(Thu)14:34:02 公開 / 時貞
■この作品の著作権は時貞さんにあります。無断転載は禁止です。
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■作者からのメッセージ
お読みくださり誠にありがとうございます!!
はじめて「お笑いオンリー」のSSを書かせていただきました。今回に関しましては、一箇所でもくすりと笑っていただけたのならそれだけでも満足です(笑)新しい連載小説の方も書き始めてはいるのですが、なかなか先に進まないのでこちらを先に投稿させていただきました(汗)
感想しづらいSSかと思われますが、何か一言でもご意見を伺えればありがたいです!!よろしくお願い致します!!