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『21世紀のフランケン・シュタイン<修正>』 作者:時貞 / ショート*2 未分類
全角3867文字
容量7734 bytes
原稿用紙約12枚
 ここは富士、樹海――。
 迷い込んだ者を容赦なく呑み込んでしまうと言われる、死の魔境である。
 正確な地図もなく、コンパスも、そしてもちろん携帯電話なども何の役にも立たない暗黒の森の中に、ひっそりと佇む不気味な建物があった。
 造りそのものは、避暑地などで見受けられる高級別荘にも似た洋式建築なのであるが、その外壁はびっしりと苔に覆われ、ところどころに亀裂が走っていた。
 何の目的でこんな場所を選んで建てられたものなのかは不明であるが、驚くべきことにこの建物には住人が居たのである。
 その住人――キリヤマ博士は、かつては世界にその名を知られる偉大な科学者であった。しかし博士は四十代半ばで突如引退を表明したかと思うと、まるで神隠しにでもあったかのようにその姿をくらましてしまったのである。
 しかし、キリヤマ博士の謎の失踪には理由があった。
 彼は、ある恐ろしい研究に全精力を傾注するため、この樹海で人知れず隠遁生活を送っていたのである。
 それは、人体の再生――死んだ人間を再び生き返らせるという、脅威的な研究であった。
 何の理由で、何が契機となってキリヤマ博士が、このような恐ろしい研究に着手しはじめたのかはわからない。自然の摂理に、そして神に逆らうかのような研究――もしかしたらキリヤマ博士は、自分自身が新たなる神となりたかったのかもしれない。

「博士、博士、今日も上玉が手に入りやしたぜ」
 キリヤマ博士の助手、モロボシは玄関に入ってくるなりそう言った。
 ぼさぼさの蓬髪に大きな顔、ぎょろりと睨みつけるような大きな目にこれまた大きなわし鼻、唇も厚く、身体も手足もがっちりといかつい大男である。薄汚れた白衣の袖をまくり上げ、毛布にくるんだ大きな荷物を運び込む。
「ふむ、ご苦労だったな」
 部屋の奥から、キリヤマ博士がゆっくりと声を掛けてきた。こちらは助手のモロボシとは対照的に、線の細い小柄な人物である。真っ白な毛髪は大きく禿げ上がり、もともと広い額を更に際立たせていた。小さく先の尖った鼻に薄い唇、顔のパーツの中で唯一大きな目は、眼鏡の奥で神経質そうにぱちぱちと瞬きを繰り返している。
 モロボシは博士の足元まで荷物を運び入れると、にやにやと薄笑いを浮かべながら包んである毛布を剥いだ。
 ――若い男の死体が転がり出る。
 博士はしゃがみ込み、手を触れながら入念にその死体を検分した。
「うむ、見たところ大きな外傷はないな。死後それほど時間も経っていないようだ。苦しんだ様子もないし、睡眠薬自殺か何かだろう。……まぁ、調べればすぐにわかるが」
 博士はそう独り言を呟くと、モロボシに目配せした。
「研究室へ運んでくれ――」
「へい」
 モロボシは死体の髪の毛をむんずと鷲づかみにすると、力任せにずるずると引き摺りはじめた。キリヤマ博士が慌てて駆け寄る。
「おい、せっかくの上玉なんだ! もっと丁寧に運んでくれ」
「ああ、そうっすね」
 モロボシは返事を返すと、今度は死体の右足首を掴んで引き摺り始める。
「ああ、もう! 床を引き摺らないでもっと丁寧に、抱きかかえて運んでいってくれよ」
 博士の一言に、モロボシは露骨に顔をしかめながら言い返した。
「嫌っすよ、死体を抱きかかえるなんて。若い女の子ならまだしも、男の死体ですぜ」
 キリヤマ博士は、大きなため息とともに言葉を吐いた。
「もういい、私が運ぶよ――」

 十日後――。
「やった、博士! ついに完成しましたね。フランケン・シュタイン9号が!」
 モロボシが歓喜の大声をあげた。あまりの声のボリュームに、博士は両耳を手で押さえながらこたえる。
「う、うむ。前回の8号はとんでもない失敗作だったが、今回はかなり自信があるぞ」
 博士は晴れ晴れとした表情でそう言うと、大きな手術台の上に横になった裸体の男を見下ろした。裸体の男は酸素マスクを付け、全身のいたるところにチューブが差し込まれている。
「よ、よし、さっそく9号を起こしてやろうか」
 博士の声が興奮で震えていた。助手のモロボシも、固唾を飲んで博士と手術台の男とを見比べている。やがて博士は、手術台の側面に取り付けられている複数のスイッチボタンを次々と押した。
 そして、十秒、十五秒、三十秒……博士の喉がごくりと鳴った。
 四十五秒、六十秒、九十秒……手術台に寝かされた男は、依然として何の反応も示さない。
「だ、だめか……」
 博士ががっくりと肩を落とした瞬間であった。
 手術台の男が、むっくりと半身を起こしたのである。
「――おお! は、は、博士!」
「う、うむ」
 博士とモロボシは、固唾を飲んで手術台を見守った。手術台の男は半身を起こしたまましばらく無反応であったが、やがてゆっくりとその目を開いた。
 博士が静かに歩み寄り、囁くような声で蘇生した男に問い掛ける。
「お、おい。君、目が見えるかね?」
「……こ、ここは……どこ?」
 男が口を開いた。そのしっかりとした口調に、博士は心の中で小躍りする。
「こ、ここは私の研究室だ」
「研究室……」
 キリヤマ博士は勢い込んで、矢継ぎ早に質問を投げ掛けた。
「君の名前は?」
「お、おれは……そう、ヤマダ……ヤマダヒロシだ」
「君の出身地は? 住んでいたところは何処だね?」
「……か、神奈川県」
 博士はモロボシと目を見合わせた。成功を実感し、二人とも表情が明るく輝いている。博士はなおも質問を続けた。
「では、君の好きな食べ物は?」
「……牛焼き肉丼の、つゆだく卵のせ」
「では、君のスリーサイズは?」
「いやーん!」
 モロボシが、感極まって博士に抱きついてきた。博士も大きくそれにこたえる。二人は抱き合ったまま、成功の喜びを噛み締めていた。
 蘇生した男がおもむろに口を開く。
「お、おれは何故ここに? ……そうだ、おれは人生の全てが嫌になって、樹海に入って……睡眠薬を飲んで意識が遠のいて」
 博士はモロボシから離れると、蘇生したヤマダヒロシに向かって説明をはじめた。
「そう、君はこの樹海の中で睡眠薬自殺を遂げていた。我々が発見した時には、完全に事切れていたよ。それを科学者である私が、新たな生命を吹き込んだのだ」
「新たな生命……?」
「ああ。君の肉体の死滅した部分に、別の死体の生きている部分――それはこの研究所に私独自の方法で保存していたものだが――それを移植して、君の身体の死滅していた機能を復活させた」
 興奮した博士は一気にそこまで話した。ヤマダヒロシは黙って聞いている。
 博士は更に続けた。
「移植した組織は君の肉体に見事順応している。だから安心したまえ。一部特殊な機械を埋め込ませてもらったが、八十パーセント以上は生身の肉体だ。果汁百パーセントのジュースよりも、果汁八十パーセントのジュースのほうが美味い時だってあるだろう? はっはっはっは!」
 最後に意味不明の言葉を吐くと、博士は高らかに笑い声をあげた。それを聞いて、手術台に半身を起こしていたヤマダヒロシが突然飛び掛ってきた。
「お、おれは、死ぬつもりでこの樹海に来たんだ! そうだ、おれは死にたかったんだよ! それをお前ら、何でわざわざ生き返らすんじゃボケ――ッ!」
 ヤマダヒロシの放った右フックが、キリヤマ博士の顔面に強烈に叩き込まれた。博士は大きく吹っ飛び、背後の壁に後頭部をしたたか打ちつける。
 それと同時に、ヤマダヒロシの全身に繋がれていたチューブが全て外れた。途端にヤマダヒロシの動きがピタリと止まり、その場にバタンと倒れ伏す。そして、それきりまったく動かなくなってしまった。蘇生してから二十四時間のあいだは、チューブから送り込まれる《生命の素》の力が無ければ、全ての機能が活動を停止してしまうのだ。
 モロボシが慌てて博士のもとへと駆け寄る。
「は、博士! 博士! しっかりしてください」
「……うう」
 キリヤマ博士はわずかに目を開いた。
「博士、しっかりしてください! 早く手当てを」
「モ、モロボシ……私はもうだめかもしれん」
 かすかに聞き取れるほどの声で、博士はそう言った。モロボシは博士の身体を揺さぶりながら、懸命に大きな声を掛ける。
「な、なに言ってるんですか! 博士がいなくなったらこの研究はどうなるんです? 誰が《フランケン・シュタイン計画》を継続するんですか!」
 キリヤマ博士はかすかに微笑むと、ゆっくりとモロボシに言い聞かせるように口を開いた。
「……フランケン・シュタイン計画はもう終わりだ」
「そ、そんな!」
「……いや、高望みなんぞしなければ良かったんだ……お前で満足していれば良かったんだよ、私は。……失敗作だなんて言ってすまなかったな、モロボシ……いや、フランケン・シュタイン8号……」
 モロボシは思わず、抱え上げていた博士の身体を床に落とした。
「――あれっ、俺もフランケン・シュタインだったんだっけ? ……そっか、今思い出した。そういえば俺は、フランケン・シュタイン8号だったんだわ」
 ぶつぶつと呟きながら、床の上で事切れているキリヤマ博士を見下ろす。
 そして何を思いついたのか、モロボシことフランケン・シュタイン8号は、大きく「ポン」と手のひらを打った。
「そうだ! 見様見真似で、俺の手で新たなフランケン・シュタインを生み出してやろうじゃねえか! ……ここに絶好の死体が転がってることだし」
 そう言ってフランケン・シュタイン8号は、キリヤマ博士の身体を軽々と抱え上げた。


   了
2005/09/06(Tue)13:48:04 公開 / 時貞
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■作者からのメッセージ
お読みくださりまして誠にありがとうございます!!
さて、キャンプに行って昨夜帰ってきたのですが、帰りに大雨に見舞われずぶ濡れになり、なんだか風邪気味になってしまいました。その風邪菌が影響してこのような内容の話しになってしまったのでしょうか(汗)
前作の《不条理》にご感想をくださった皆様、お返事が遅れてしまって申し訳ございませんでした。
何作かSSを書いてきたのでそろそろ連載にチャレンジしてみたいと思っているのですが、まだまだ構想が固まらず……(汗)

どんな内容でも結構ですので、皆様からのご意見やアドバイスをお待ちしております!!

※皆様からいただいたご指摘をもとに、加筆・修正を行ないました。アドバイスをくださった皆様、本当にありがとうございます!!
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