- 『桜の季節に』 作者:りる / リアル・現代 恋愛小説
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全角1312文字
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原稿用紙約3.8枚
私と彼が出会ったのは、私が高校に入学した4月。桜が満開な頃だった。そして、しばらくの別れを告げられたのも、4月――
「絶対また会いに戻ってくる」
私はその言葉を信じて、彼の背中を見送った――
私には2つ年上の彼氏がいた。彼は高校卒業後、アメリカへ留学してしまった。留学した彼は、定期的に手紙を送ってくれた。もちろん、私も返事を出した。手紙がくるのが毎日楽しみで、彼の不器用な文字を見る度に笑みがこぼれる。国を越えて今は遠くにいるし、留学前と違って毎日会えなくても、私は手紙を読むだけで幸せだった。
そんな彼からの手紙が急に途絶えた。月に1度は来ていた手紙が、全く来なくなった。郵便受けを見ても、入っているのはカタログばかり。それでも、私は「彼はただ忙しいんだ」と自分に言い聞かせていた。
そしてあっという間に1年が過ぎた――
彼からの手紙は未だに届かない。流石に心配になってきた私は、彼の両親に聞いてみた。どうやら、両親にも手紙が届いていないらしい。私はますます不安になった。
いつもは彼から来た手紙に返事を書いていたのだが、今度は私から出すことにした。1年もあの不器用な文字を見ていなかったから、聞きたいことは山ほどあった。
何枚にも及ぶ手紙をポストに入れ、それから月日が流れた――
更に一年が経とうとしたが、彼からの手紙は全く来なかった。アメリカで何かあったのだろうか。不安が脳裏をかすめた。
「どうして手紙くれないの…?」
私はただ、寂しさに涙するしかできなかった。
月日が流れ、彼が留学して4年が経った。結局手紙の返事はなく、彼がいるアメリカの現状は、テレビから流れてくる事件の数々だった。もしかしたら、彼は何かの事件に巻き込まれたのかもしれない。いてもたってもいられなくなった私は、彼と出会い、そして別れた桜の木の下に行った。あの頃と同じように、今は桜が満開の春。思い出す彼の笑顔。私の頬を一筋の涙が伝った。その時、遠くから私の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。慌てて振り返った私の目に映ったのは、紛れもなく彼だった――
4年間姿を見ていなかったのに、彼は全く変わっていなかった。私は涙がポロポロとこぼれた。言いたい事は山ほどあった。なぜ手紙をくれなかったのか。どうして連絡一つよこさなかったのか。
「どうして手紙の返事くれなかったの?」
とりあえず、一番気になったことを聞いてみた。彼は困ったような表情で、
「アメリカの方でバイトしてたんだ。留学してバイトまでしたから暇がなくて…別にお前のこと忘れてたわけじゃないんだ」
そう言って、彼はポケットから小さな箱を取り出し、私に渡した。箱を開けると、その中には…
「指輪…?」
(まさか…これのために…?)
「あんまりいい物じゃないけどさ、お前が喜ぶと思って」
彼は照れくさそうに頭をかいた。そんなはにかむような彼を見て、私は嬉しさと悲しさとが同時に込み上げてきた。もうどうしていいのか分からない感情だった。
そんな私を見て、彼は私の頭を撫でた。
「言っただろ? 絶対また会いに戻ってくる、って」
いつまでも泣き止まない私の手を彼は優しく握った。彼の手は大きくて、そして暖かかった。
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2005/08/24(Wed)12:55:54 公開 / りる
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■作者からのメッセージ
こんばんは、初投稿させて頂きました。
初投稿の作品ということもあって、あまり長々としたものだと読むのも大変だと思ったため、短めにまとめたものとなっています。
自分的に、この作品の反省点は、オリジナル性がないところです。内容がありがちになりすぎました;私がこの作品で目標にしたのは、内容ではなく、読み手が心に描写しやすい作品にまとめられているか、ということです。読んだ皆さんに、この作品の内容が分かりやすいと思っていただければ幸いです。
感想を読ませていただいて、「どうして手紙がこなかったのか、というのが気になる」という意見があったため、1シーン加えてみました。どうでしょうか?
もっとこうした方がいいというアドバイスもどんどんお願いします。