- 『スパイラル U』 作者:椿 / ファンタジー ミステリ
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全角4821.5文字
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原稿用紙約16.6枚
少女の名前は斉藤凛。いつも一人で暮らす、孤独の存在。そんなある日、一人で学校へ登校すると、誰もいないはずの教室に、自分と姿かたち全く同じの存在がいた。そして彼女は、「三日以内にあなたは死ぬ」と宣言する…スパイラル。螺旋のような運命を彼女はたどる。
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死にたくないと思う恐怖こそ、死を招く。
気づくことなく堕ちて行く者に、もはや苦しみなど一分もない。
神は残酷な運命をただ無知な人間に与える。
それこそこの世界の掟であるのだから、何も知らぬ、知ることのない人間は
運命の濁流に飲み込まれていくのだ。
スパイラル 1
休み時間、周りの人たちは何か楽しそうに話していた。
恋愛の話なのか、怖い話なのか、噂話なのか。
そんなことはどうでもいい。私は一人自分の席に座り、本を読んでいた。
クラスの声はかすかに聞こえるから、「コソコソ」「ボソボソ」という効果音のような音で聞こえてくる。
それが自分の悪口とかじゃないのか、少し不安になって、私は本に集中した。
運動神経なんてないから、外に遊びに行く少数の人たちとは遊べない。
勉強も出来ないから、誰にも頼りにされない。
絶対に、必ず私の周りに意味なく傍に居る人なんて誰も居ない。
まるで自分がポツンと取り残されたようで、救おうとする人も居ないようだった。
そんな私がいじめられたりしないのは、きっと相手にしようとも思わないからだろう。
惨め。情けない。努力しようともしない私は、一生このままだ。
だって、これは今始まったことじゃない。転校してから、もう一年。
慣れてるんだから……
今日も一人で下校した。夕暮れに染まる帰り道を、一人で歩き続ける。
友達と下校する人たちの声がぼんやりと聞こえて、私はうつむきながら帰った。
どうして、私はこうなのだろう。どうして、私だけこうなのだろう。
誰かと一緒にいたいと願う気持ちだけしかなくて、声をかける勇気なんてない。
それじゃ意味がないと分かっていても、動かない私の唇。
だけど、いつか一緒に居る人は離れてしまうから。私はそんな理由で傍に居る人の存在がないんだと、私は自分に言い聞かせた。
「ただいま」
返事は返ってこない。一人暮らしの家では当然だ。
私の住むアパートはボロくて、いわゆる私は「貧乏」。
貧乏で、友達もいなくて、身内のいない……
私はため息をついた。
部屋は二部屋。風呂、トイレなどを入れると四部屋。
狭いリビングの小さな机に、学校へ行く前に作っておいたラップのかかった晩ご飯。
そっとラップ越しに手を当てると、ひんやりと冷たかったが、それはもう慣れていた。
でもやっぱり、それは少しだけ悲しくて、帰ってきて出迎える人など誰もいない。
せめて、学校だけでも居たら
そう思うのはやめた。
「……野菜炒めを作るんじゃなくて、今度から素麺作ろうかな……」
私は冷え切った料理の乗った皿を電子レンジに入れた。
朝は少し肌寒かった。秋下旬。少し冬の空気を感じる。
周りは誰も居ない。いつもの時間より、早く出てしまったから…
孤独感は、あまり感じられなかった。
教室のドアを開けても、誰も居ない。
そんな早く来たつもりはなかったのに。そう思いながら、私は鞄を机に下ろした。
鞄を開け、中にある教科書などを取り出す。
「………あ…」
何故あの時、捨てておかなかったのだろう。
こんなもの、もう見たくはなかったのに……
中学時代、前の学校で親友だった子と撮ったプリクラ。
転校したとき、その子と別れて、それがすごく悲しくて…
別れのない出会いなど、ない。
一年が過ぎれば転校すると分かっていても、彼女は友達になってくれた。
私もそれを分かっていたのに、友達になった。
それが間違いだと気づいたのが、別れのとき。
その子を忘れないようにと、撮った一枚のプリクラを大切に鞄に入れた。
後に後悔するんだとも気づかずに。
私はそのプリクラを、握り締め、ゴミ箱に近づいた。
こんなもの……
あっては困るの。思い返せば、つらいから…
「それでいいの?」
誰もいない教室からかかった声。
扉が開いた音なんてしなかったのに?
私は驚き、後ろを振り向いた。
「………!?」
そこにいたのは、紛れもなく私。私そのもの。
「それ、最初で最後の友達じゃない。思い出捨てるわけ?」
「な、何で……」
声も、姿かたちも……
全て私だった。
「何故?だってこれは、神が下した判断なのよ」
神?判断?
私は目の前にいるもう一人の私から目を逸らした。
意味が分からない。頭がパンクしてしまいそうだ。
「全く…それにしても、あんた冴えないよね。勉強はそこそこだけど、見た目は普通。
友達さえも居なく、いつも一人……家族だって一年前死んだ」
「やめて!!!」
耳を塞いだ。今にも崩れ落ちてしまいそうだ。
温かいものが私の頬を伝う。それが涙なんだと分かると、また悲しくなった。
「全て真実じゃない。まぁ、そんな自分を変えようとする努力もせず、あんた死ぬんだけど」
突然、私と姿かたち声もまで同じ人物が現れて、突然私の一番の傷をえぐる。
それから遅く、やっと認識した言葉に疑問を持った。
「死……?」
私が思わずその言葉を口にこぼすと、もう一人の私は得意げに笑った。
私を見下す、楽しそうな表情に怒りを覚える。
「そ。私はあんたの死んだ後の姿…つまり、幽霊ってとこかな」
幽霊。そんなもの信じない私だけど
これは、心霊現象なの?また現れた疑問の答えを探すため、私は恐れを押さえ彼女に近づいた。
彼女は全く動かなくて、私は手を伸ばす。
同じ髪の高さ、同じ制服、同じ顔つき、同じ輪郭…
唾を飲み込んだ。そして、彼女に触れる。
正確には、触れたつもりだった。
「……っ」
透き通る。私の手は、彼女の胸の向こう側にあった。
「これで信じた?私が幽霊だって」
「で、でも…私の死んだ後って……」
怖い。怖いけど、逃げてはいけない。
ここで逃げたら、何か恐ろしいことが待っている気がするから。
だけど、これ以上ここに居たら
わけの分からない気持ちと、彼女に対する何故か生まれた恐れでどうにかなってしまいそうだ。
まず、私は情報を整理しようとした。でもやっぱり、頭が混乱して、考えることが出来ない。
とにかく、これは私自身の霊。未来の、私の霊…
無理だ。そんなこと、信用することなんて出来やしない。
「………あなたは、三日後…いや、三日以内に死ぬ運命」
……死?
死は、二度と再生することなく、ただ闇に葬られる人生の最初で最後の出来事。
突然そんなことを言われて理解する人なんていない。
当然、私も出来ない。これ以上わけの分からないことを言われてしまっては、頭が壊れてしまいそうだ。
「ど…ういう、こと?」
私は震える足を必死で動かし、少し後ろへとあとずさった。
何だろう、この気持ちは。
彼女へ対する、疑いではない気もする。
私は幽霊などは信じることは出来ない。もちろん、今もそうだ。
しかし、彼女…今の私への疑いは
全くなく、私は受け入れている?
「どういうことか……それは、斉藤凛。もう一人の私?あなたの頭がきちんと整理されてから話してあげる」
彼女の声で、私は我に返った。
斉藤凛。私の名……
彼女は、私の頭が今混乱に陥っているということは分かったから、消えた?
彼女の姿はもうなかった。
気が付けば、朝だった。
その後の授業の内容や、どうやって帰ったのか。家に帰ってからベットにつくまで、何をしていたのか。
全く記憶にないが、とりあえず私は学校へと行く準備をした。
歯を磨くため、私は洗面所の鏡へと近づく。
「……ひっ…!」
鏡に映った、私。その自分に私は一瞬怯えた。
四角い、一般的な小さ目な鏡。私はその鏡へ恐る恐る手を伸ばす。
平手がぺたりと鏡にくっつき、それは当たり前にいつも通りの鏡だった。
もう一人の自分なのかと、一瞬疑ってしまったのだ。
自分の顔を見た瞬間、私は全てを思い出してしまった。
昨日、学校で、私は死を宣言され…私はその言葉を、何故か心の奥底で受け入れた気がしたのだ。
何故?答えは簡単には見つかるわけもなく、私は時間になったので、鞄を持ち思いドアを開け、外に出た。
「あなたは三日後…いや、三日以内に死ぬ運命」
頭にその言葉がよみがえる。その時の風景から匂い、声まで全て。
望んでもいないのに、その時私の脳裏に走った心の声までも……
何故、あんなことが起こったのだろう。また私は答えを探していた。
果てのない疑問から、果てのない答えを。
2
信じられない。まさか、こんなものが落ちてくるなんて。
だが、これはたまたまだと思おうとしても、必ずあの言葉が脳裏に走り、振り切れない。
目の前に散らばる、植木鉢の破片。後、五歩くらい前に出ていれば、確実に頭に落ちていただろう。
無残に砕け散り、パンジーと思われる花は、土からほとんど根がむき出されてる状態だった。
また落ちてくるのかもしれないと、私は数歩下がり、上を見上げる。
私の住むアパートの、隣の部屋。そこには丁度ベランダがあり、猫がいた。おそらく、猫がベランダにおいてあった植木鉢を倒してしまい、落ちたのだと思われる。
よほど不安定だったのか、猫の力が強かったのか、おき場所が悪かったのか……
とにかく、不親切な住人もいるものだ。と思えば、その部屋はとても親切で几帳面な人が住んでいたはず。あんなドジを踏むものだろうか。
しかし今はそんなことを気にしていられない。学校に遅刻しては困る。この植木鉢も、きっと誰かが気づき、何とかしてくれるだろう。
私はまた学校へと走り出した。
「今日は、この前言った、転入生を紹介する」
いつものこのクラスの先生の隣にポツンと立っている、一人の少女。
髪は長く、茶色。その髪を後ろで一つに束ね、いかにも静かな雰囲気に取れる少女だった。
「初めまして…東城麻子です。よろしく」
彼女の笑顔は、とても可愛らしかった。そして、先生にさっき言われたのか、彼女、東城さんは私の元へと歩き、空席だった隣の席に座った。
「よろしくね」
「あ……よろしく」
人と接するのは、やっぱり苦手だ。それが例え、挨拶であろうとも。
しかし、私にはどうでもいい。私にとって、彼女はただの人間。別に今までどおり過ごそう。
……ひょっとしたら、私はどうせ三日以内に死んでしまうかもしれないのだから。
そんなことを考えている内に、授業が始まった。
彼女は来たばかりで、教科書などがないらしく、私の教科書を使って授業を進めていった。
それは当然距離が近いということで、こんなことは初めてだと言ってもいい。
「…ふぁ……」
「ん…どうしたの?」
彼女の突然にあくびに、私は問う。
彼女はまた笑顔で、
「ちょっと最近、寝不足気味なんだ」
と言った。勉強を寝る間を惜しんでやっているのだろうか。
まあいい。私は寝る間を惜しんではやっていないけれど、代わりに休み時間などを使いいつも勉強をしている。
…また、私はどうでもいいことを考えていた。
今日は、何事にも集中できないと、テレビの占いでやっていたような気がする。
その通り、私は授業中彼女に色々話しかけられ、集中できなかったのだった。
私にとっては、ただの人間ではなく、迷惑な人間としか思えない。
ずっとそのことを考えていると、授業はいつの間にか終わった。
……しまった。ほとんど半分しか聞いていない。
やっぱり、彼女は迷惑だ。出来れば、この席から離れて欲しい。
だが、私のその願いは通じなかった。
「ねえ、斉藤さん…っていうんだよね」
「え、うん」
「休み時間、ずっと勉強してるって言ってたけど…楽しいの?」
授業中に色々聞かれたこと。こんなことを教えるんじゃなかった、と今さら後悔した。
彼女は、知ったことはどんどん追求していくタイプだ。なんとも迷惑な性格だろう。
結局、休み時間勉強する時間も与えず、彼女は私に色んなことを聞いてきた。
こんなことが明日も、明後日も、明々後日も続いてしまってはたまらない。
私は私立のあの大学志望…一度の勉強を抜くことさえ許されないというのに。
始まったうちに終わらせなければと、私は給食の時間、彼女に言うことにした。
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2005/08/29(Mon)11:10:07 公開 /
椿
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■作者からのメッセージ
申し訳ございません、後に続きを書かせていただきます。
途中時間がなくなったものなので…
改めまして、初めまして。椿 と申します。
小説は初めてで、まだ未熟です。
わけが分からなかったり、表現がおかしかったり…
そんなところがあれば(あると思いますが)教えてくだされば光栄です。
脱字・誤字なども教えてくだされば…
駄目なところばかりですね、私;
主人公がどんなキャラなのかも、次書く予定、というか書かなければ。
それでは、これからもよろしくお願いします。
改造しました。ストーリー自体は変わっていないですよ;
私には、やっぱりまだ主人公の心境を読み取りやすくすることは難しかったようです。
いえ、やる気はあります。完結してみせます。
皆さんによく言われる言葉で、何度やっても学習できないことなんですが…
やはり、文章が淡淡としているようで。
どうすればいいのかいつも考えているんですが、どうも・・
その淡淡としたところを何とか補わなければ、小説として全てが駄目になってしまうような気がして、いつも不安な椿です。