- 『ホラーが見たい!!』 作者:ミノタウロス / 未分類 未分類
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こんにちは! 私は月影玲奈。21歳。都内の某女子大生。
顔はまあまあ。スタイルそこそこ。只今大学2年生の、暇あり、金あり、男ありの3拍子揃った果報者。地方出身者の為、寮生活だけど、リッチな寮で文句なし!
さて、
夏です!! 夏休みです!
夏と言えばホラー。暑くなったらホラー。ホラーと言えば暑くなる……じゃないか。兎に角、ホラーと言ったら夏ですよね?
私は無類のホラー好き。3度の飯よりホラーが好き。もとい。1日の1度の睡眠よりもホラーが好き。と言う訳で、貫徹で、ホラー映画見まくり大会決行です。
寮仲間の舞ちゃん、と恵ちゃんと他、それぞれの彼氏を連れ込んでの、
『オールナイト・ホラームービー上映会』本日決行!!
女子寮なのに男入れるのか? ですって?! もちろん入れます……と言うか、ダメと言われても守る人は居りませんっ。
「玲奈ーー! きったよーー」と二人の声。
「入ってきてぇー」と答えながら、ジュースやコップの用意を始めた私。
「こんちはー、おじゃまっ」次々に聞こえてくる声。健二君と順君がぺこっと私に頭を下げた。彼らは舞ちゃんと恵ちゃんの彼氏です。
「あれー、マーボー来てないの?」―――舞ちゃん、その呼び方止めてね。
マーボーこと、私の彼氏の政人君はまだ来てません。
「おーーい。玲奈!」と玄関で叫ぶ私の彼。「はい、はあーい。」犬のように玄関までお出迎え……。
――――え゛〜〜〜〜!!っどーゆー事よ!! 彼の後ろに暗ーい女発見! 何で一緒に居るのさあああ
「彼女、友達? 今日のイベント呼んであげたの?」
――――違います。
「あー! 玲奈、ごめん、ごめん。言い忘れてた。私が彼女を誘ってあげたの。ダメだった?」
――――ダメに決まってます。……恵みちゃん貴方はとってもいい子です。――――ホントに良い子――――でも、余計な事はしないでよおぉぉ……………。
何だかんだ言いながら、何故かこの根暗女は≪私の政人君≫の隣に座って映画鑑賞は始まった。……最悪です。
テレビに向って一番右端が健二君、その左隣に舞ちゃん、私、政人君、根暗、その隣に恵ちゃん、で、一番左端に順君、の順番で座った。
部屋は蛍光灯の明かりは消して、間接照明のみのムーディーな雰囲気。大画面の液晶TVからは大音量のドロドロした音楽が流れ、それにゾクゾクしながら、この楽しい一時を堪能………出来ないっ!!!!
ちょおっとぉ! 何なのこの女。私の政人君に寄り添い始めやがって、しかも政人君も、あろう事か、まんざらでもないって顔して―――ゆ、許せん……絶対に。
映画は海外の短編オムニバスホラー物。中々当たりの物だった。そして次は邦画『百物語り』と言う、ベタなタイトル。監督、出演者共に聞き覚え無し。
「これ、誰が持ってきたの?」と誰とはなしに聞くと政人君が答えた。
「え、2、3日前からこの部屋にあったと思ったけど?」
え?―――私、知らないよ……。
まあ、細かい事は気にしない性質(タチ)なので、上映開始。
内容は5人の若者が別荘で始めた百物語、何時の間にかその5人中に幽霊が混ざってしまって……。
おおお!最初からドロドロした不気味な映像、これぞジャパニーズホラーの真骨頂。ホラー好きには堪らない、ぐふふ、かなり期待できそうな出だし。
私は身を乗り出して映画に釘付けになっていた。たまに、隣を気にしながら。
――――くうううっ!! 根暗女め、政人君の腕に触れてる―――こいつ、後で殺す……。
ムカついて政人君の腕を引張り気味に自分の腕を絡めた。
「きゃっ」とか言ってみたりして。本当は、『おっしゃー!! 来るぞ、来るぞ、出てくるぞ――!!』と掛け声かけて見てたいぐらいだけど、取り合えず猫かぶり。
と、
「「「ぎゃあああああ!!!!!」」」
絶叫と共に突然映画が止まった。
「え、どうなったの? 今の……」と舞いちゃん。
「これ、本編、110分だから、後残り20分あるはずだぜ」
パッケージを見ながら健二君が言った。
「DVDの裏に傷がついてたんじゃない?」
「早送りとかしてみれば? 動き出す事あるじゃん」と順君の助言。
「あれ? おっかしーなー」
「どうしたの?」リモコンをいじる政人君に私は声をかけた。
「リモコンのボタン、どれも効かないぜ。デッキ壊れたんじゃないの?」
「うっそーっ! この間、買ったばっかしなのにぃぃぃ」
「一度、取り出してみろよ。―――出て来ないかもな」
と言う心配とは裏腹に、すんなりイジェクト。
傷を確かめる為、DVDを光にかざした時、異様に光った気がした。
「どうする? 見たところ傷ないし……もう一度入れてみる?」
「やめよう。何だか腰砕けだし、次のにしよ!」
と言ってから私は彼にぴとっと引っ付いた。
「次は何?」
「えーと『ヘルレイダー<怒りの脱出>』だってさ」
「何それー。ホラーじゃなくてパロディじゃん。今日見る物じゃないからパス」
「まあまあ、パッケージ見てみ! 邦題変だけど内容エグイぜ」
「何? スプラッタ物? 私苦手……」
そんな会話は軽く無視され結局それを見る事になった。
映画は面白そうだった……なのに、何だろう、さっきからずっと引っかかってる事がある。
何だったかな? 何だかとっても大事な事を忘れているような気が………。
頭がボーとしている。どうしたんだろう――――?
はっきりしない、靄がかかったみたい。
「……ねえ、さっきの映画さ―――誰が幽霊だったと思う?」と私の隣の【女の子】が不安そうに囁いた。
誰が?――――誰……だ…れ――――? えーと、あれ、…………この娘、誰だっけ?
突然、異様な雰囲気が流れて、私たちは全員一斉にお互いを見つめた。
ちょと待って! 何で思い出せないの?
この娘の名前は? その右隣にいる男の子は? 私の左隣は? そのまた左隣は? その隣も、そのまた隣も! 一体あなた達の名前は何て言うの!!
――――!!! どうしよう………私、…………私の名前は…………
私の名前――――なんだっけ?
青ざめた私たちは各々立ち上がって声にならない声を出しては口を噤んだ。
と、その時、
「……舞―――」
「あ、そうだ! 健二君だ! 思い出した!」
そうそう、私の隣は舞ちゃん、そしてその隣に健二君。
「順!」「恵!」っと抱き合う二人。はいはい、仲のいいこって。
そして、
「政人君―――」「………洋子―――」
って、え? ちょっと待って。――――私は?―――――私の名前は?!
私の嫌いな女、洋子が政人君に寄り添ってニンマリ笑ってる。
「――――あなた、だあれ?」
いやあああああああああああ
私の体が薄れていった―――――
THE END
監督 ダイタロス
原作 ミノタウロス
映像 イカロス
音楽 ケンタウロス
美術 ケルベロス
「どうだった?」
洋子が言った。
「―――あ、御免、寝てた」
政人が答えた。
「しょうがないなぁ……皆、寝ちゃってるし、お開きにしようか」
そう言って洋子は一人で台所に行った。手には『百物語』のDVDを携えて。
パッケージからソフトを取り出して「さよなら、玲奈さん」と小さく呟くと、洋子はニーっと笑ってそれを二つに折って捨てた。
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2005/08/23(Tue)22:44:47 公開 /
ミノタウロス
■この作品の著作権は
ミノタウロスさんにあります。無断転載は禁止です。
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■作者からのメッセージ
『ミュージック・アワー』がバックに流れてる感じで書きました。テンション高めに書いたんですが伝わりましたかね。
何かお感じになられましたら、一言くださいませ;;;
<2005/08/22>
皆様、ご感想有難う御座います。すみません、おんもうじ様以外、この作品が、ハイテンションホラーと言う事を知らずに読んでしまって、何じゃコリャとお思いになられたご様子。この話はテンション重視。ハイテンションで何処まで書けるかと言うある意味私自身の挑戦でした。設定は怖いけど笑ってしまうと言う新ジャンル(?)の【ハイテンション・ホラー】ですから、『へー、ミノタウロスって馬鹿なんだ(←土田風)』と軽〜く読んで頂きたい。連載の内容が重過ぎて疲れてしまった末に辿り着いた、今回の話。ただ、コメント蘭に落ちを入れたのは大失敗。―――と言うわけで修正いたしました。
<2005/08/23>
微修正です。昨日の修正は大正解ですね。皆様有難う御座います。後ほど、お礼レス致します。