- 『tea time!』 作者:緋陽 / 未分類 未分類
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全角6519文字
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原稿用紙約19.05枚
この作品は妖-アヤカシ-の番外編と思ってください。妖-アヤカシ-を読めば面白さ倍増かもしれません?
「ああ!? 紅茶といったらダージリンしかねぇだろ! 深い味わいと、濃厚なコク。全てにおいてパーフェクト! 紅茶の王様と言えばやっぱりダージリンだ! だけど、高いんだよな……」
これは俺――黒岸大悟(くろぎしだいご)の台詞だ。
「どの紅茶が一番だって? 野暮なことを……アールグレイに決まっている。上品な香り、さらりとした口当たり。ミルクティーにするとなお良い。初めての方にお勧めだ!」
これは俺の友達――田渕英信(たぶちひでのぶ)の台詞。
「はぁ? 紅茶? 今の時代は珈琲だぜ! キリマンなどの濃厚なあじぶあっくぁっ!!」
これは桜井一樹(さくらいかずき)の紅茶を馬鹿にした台詞。後で制裁を加えてやった。皆、紅茶好きの前では珈琲だぜ! とか言わないようにね? この馬鹿みたいになるからね!?
「え? 私ィ? 私は……別に興味無いけど……敢えて言うなら、大悟と同じね。あ、これは決して大悟に合わせたんじゃないからね! 絶対違うんだからね! 勘違いしちゃ駄目よ! 解かった? 解かったら返事!」
これは古くからの間柄、渡辺和葉(わたなべかずは)の台詞だ。それにしてもダージリンが好きだったとは……話が合いそうだ。……あん? 何だよその眼。恨みがましい眼で見ないでくれ、いやマジで。
突然だが俺は紅茶が好きだ。大好きだ。そこで俺は皆さんにも紅茶の素晴らしさを知ってもらいたいと考えた。読んでくれれば光栄だ。紅茶を飲んでくれれば幸いだ。てか好きになれ。そこまできたらのめり込め。どっぷりと浸かれ、遠慮はするなむしろ喜べ。我ながら実に訳の解からない文章だ。では幸運を祈る。
ってかただのほのぼのでラブが入ってるかもしれないコメディで時にはシリアスという滅茶苦茶な物語なんですけどねっ!
tea time!〜紅茶好きの大乱闘〜
俺は今、田渕と共にある部屋に向かっている。その部屋とは元生徒会室、今はただの紅茶愛好会の部室となっている訳なのだが。そう、何を隠そう俺達は紅茶愛好会の数少ない部員である。俺と田渕は紅茶を愛するもの……ってか紅茶の奴隷といってもいい。それほど俺と田渕は紅茶が好きなのだ。目指すは北校舎二階に在る部屋だ!
着いた。がらり、とドアを開ける。紅茶の良い匂いが俺の鼻の中をくすぐる。何時来ても此処は心が安らぐなぁ……。
「おっ、来たな! 田渕、黒岸! まぁ、座れ。今俺が紅茶を淹れたところだ。とりあえず飲んで感想を聞かせてくれ。今回の茶葉はこれなんだ」
そう言って俺達を迎え入れたのは沼口先輩だ。数少ない部員(全員で合わせて六人しか居ない)の一人で三年生。この愛好会のただ一人の三年生だ。リーダー的存在でモテる……らしい。がっちりとした体格で身長はかなり高め。成績は良いとは言えないがそのかわり紅茶の淹れかたが滅茶苦茶上手い。見習いたいぐらいだ。それにしても、今回はいつものアッサムとは違うらしい。なんだろう、と思って先輩の手を見てみるとニルギリの茶葉の入った袋が持たれていた。アッサム派の沼口先輩がニルギリを……っ!? 珍しいなぁ、などと思いながら飲む。ごくり。
「ニルギリって……こんなにも美味かったっけか! 俺、改めて先輩を尊敬しますよ! 洗練された淹れかた、蒸らす時間、上等な品質の茶葉! そしてなによりも先輩の腕と眼! ニルギリがこんなに美味いと思ったの俺初めてですよ!!」
感激の味だった。それは田渕にしても同じだったらしい。やべぇ、俺先輩を好きに(作者の都合上省略しますご了承ください)そのぐらい美味かった。やべっ、後で何処で買ったか教えてもらおっと。
「今日は沼口先輩しか居ないんですか?」
田渕が訊く。そういえば少ない気がするけどねぇ……その方がゆったり出来るって、無駄に人数を増やすなって、此処の部屋紅茶グッズで結構狭くなってるから、呼ぶなって。などと心の中で呟いてみる。もちのろんで皆に届くはずも無い。悪いかッ!? ってキレてもしょうがないよな、ごめん。
「ああ、明日は二週間に一度の喫茶店へ行く休日だろ? だから、皆準備してるんだ。二人ぐらいこれないらしいけど……しょうがないよな、都合だから。で、俺特製のアールグレイの紅茶ケーキ持って来てやるから、喰ってくれよな」
田渕の眼がきらーん、と光った。いや気のせいだ。
「俺……明日を楽しみにして待ってますっ! よっしゃぁあ、今から俺もなんか作ってくるぜッ!!」
田渕がマッハの速度で部屋から出て行く。いや気のせいだ。マッハ六ぐらいの速度だ、きっと。アールグレイ大好きっ子の田渕君は沼口先輩のケーキを想像したら居ても立ってもいれなくなったみたいな。確かに沼口先輩の紅茶を使った菓子は絶品だ。それはクラスの女子でさえ認める味、食通の神山(かみやま)先生を唸らせる味だ。もげらっちょ。そう、紅茶の料理や淹れかたに対しては愛好会最強を誇るのが沼口先輩なのだっ! はりはりぽー。
あん? なんか所々に変な言葉が? 気にするな、俺の脳内想像だ。君たちで勝手に想像しとけ、ってか想像しろ。
「んじゃ、俺も何か作りたいんでちょいと失礼します!」
同時に影が消えた……。なわけない。俺は部屋を出て行き時速六十kmで自分の家まで。もう俺を止められるものは居ないッ!! 駆け抜ける俺。先生なんぞなんのその。走り抜ける俺。和葉がそこに居た気がするけど気のせいだ。おーい、大悟っ! と元気に話しかけて気がするけど気のせいだ。通り抜ける俺。
「……なによ……少しぐらい私に構ってくれたっていいじゃないの……」
やべぇ、幻聴まで聞こえてきた。和葉がこんな事言う筈が無い。うん気のせいだ。でもなんだか後ろから凄い目線があるような感じ、滅茶苦茶気になる。だが後ろを振り向いてはいけない……。真の漢とは過去を決して振り返らないからっ! だけど確実に聞こえてるぞ、頑張れ俺!
家のドアを乱暴に開けキッチンに直行。ティーポットなどの紅茶セットを取り出し、結構高かったダージリン(百g四千五百円也、フルリーフ等級)を開封してちょんちょんと淹れる。五、六分くらいかかるから説明しておこうか。
ダージリンとは『紅茶のシャンパン』とも言われるぐらい有名かつ美味しい紅茶だ。爽やかな口当たりのよい味と素晴らしい香りに加えてさらに美しい水色(すいしょく)があり、世界三大銘茶の一つとされる。そのため百g一万円を越す茶葉もあるという非常に高価な紅茶だ。その訳はセカンドフラッシュ(夏摘み)のごく一部に含まれている、非常にフルーティな香りを有する茶葉があるためだ(マスカットフレーバーという)但しこれは全体のダージリンの五%以下しかないという理由でとても希少でとても高価。最高級ダージリンの代名詞と言われるほどだぞ! 崇めろ、崇拝しろ! ははははははははは! っとやばい、ごめんなさい。マジ見境無くしましてすいません。もうしませうわなにす(作者の都合上以下略)
錯乱してしまった。ごめん。兎も角、だ。高価なだけあって偽者も多い。粗悪品多いよ。だから気をつけようね。っと紅茶の方が出来上がる時間だな。オッケー十分抽出できてる。後は……っと。
はい、飲もう飲もう。ごくり。……やっぱり美味い。でも淹れ方が拙かったかな? あー、帯白さんのダージリン飲みてぇ。アレは美味かった。もっかい飲みてぇ。ふぅ……精進あるのみだな。
その後俺は深夜二時まで研究を続けた。そして、俺の望むダージリンが出来上がったんだよこれがまた! ほげらっちょですよ。ってか、嘘なんだけどね。十時までまでやってたんだ本当は。色んな茶葉を試していてまぁ、俺のスイートポテトが出来上がったわけだ。はい、そこ。何故茶葉を試しててスイートポテトが出来るのとか言わない。企業秘密だ。俺は明日のために寝ることにした。集合は朝九時だ……楽しみっ!
「ってちっとも眠れやしねぇよ!」
翌日。
俺は時間より一時間速く紅茶専門の喫茶店へと向かった。此処が待ち合わせ場所だ。リーズナブルな値段で美味い紅茶を淹れてくれる店だ。薄利多売で頑張ってるみたい。サービスいいよ、俺が保障する。俺は外に置いてあるテーブルのところに向かい椅子に座り込む。店員さんを呼んでアッサムのブラック(一番基本的だと思う紅茶の淹れ方、三百六十円也)を頼んだ。はぁ……俺は持ってきていたスイートポテトとは違う菓子(チーズケーキ)をだし、注文が来るのを待つ。きょろきょろ。ん……アレは……。
和葉が紅茶専門店に来てるとは……ふ〜む、行って声を掛けてみようかな。しっかし、アイツが紅茶好きだとはなぁ。まぁ、此処のダージリンは美味いけどね。それでも朝はアッサム派な俺。矛盾してますか? ああ、してますとも悪いかっ!! ってキレても(省略)五、六分したら注文が届いた。んじゃ、移動だ。
「すいません、横、よろしいですか?」
声色変えて驚かしてやろう。ふっふっふ、ひゃーはっはっはっはっ!
「ああ、どうぞ」
声色変えて反応しやがった。はん、営業用の声ってか? 流石バイトやってる奴は違いますね!(僻み) ひがみだよ悪いかっ!? こっちはバイトしたくても出来ねーんだぜ!? 嫉んで何が悪いっ!
「って大悟っ!? え、え、え、あ、あれ? ななななんんでこんなところにっ!?」
よう。ここは紅茶好きのスポットで有名なんだぜ。それでお前こそなななんんでこんなところにっ。真似してみた。ふはん。で、何でそんな焦ってんの? 俺にはそれが解からない。口には出さないけど。ははん、もしかして俺に会いに来たな? ……あ、自分で思ってて虚しくなってきた。和葉が俺に会いに来たわけねーじゃん。きょろきょろ、と辺りを見回す。今回はイケメンの刺瑞(しみず)は居ないみたいだ。じゃあ、純粋に紅茶を楽しみに来たのか。ほぅ、見込みがあるな、紅茶セットを申請しようじゃないか。
「え、わ、私は……その、ちょっと……」
「あん? 何飲むか決めてねぇの? あー、お前初めて? なら、俺がオススメをおごっちゃる。此処のアッサム美味いんだよ。特にロイヤルミルクティ。少々高いが気にするな。紅茶好きの奴には悪い奴は居ない。おごっちゃる」
顔を赤らめる和葉。何が言いたい。熱でもあんのか? と訊くのは流石に不躾である。俺は、和葉に構わず店員さんを呼び寄せ、アッサムのロイヤルミルクティ(六百七十円也)を頼んだ。他の店だと千円越すところあるからな。此処はリーズナブルで美味い。やはり、この店が一番だ。まぁ、取り敢えず俺はチーズケーキを勧めてみた。予備として三個持ってきている。その中の一つをやったのだ。
「あ、あ、ありがとう……」
何やら、いつもの和葉ではない。天真爛漫は何処へやら。お前はそんなに恥ずかしがりやだったのか。言い忘れたが、和葉は私服だ。当たり前だけど俺も私服だ。和葉はいつものようにポニーテールで赤のタンクトップに淡い青の上着を羽織り、ジーンズを穿いていた。俺は黒のTシャツ一枚だ。服の胸らへんにはLET’S BEGIN! と書かれてある。れっつびぎん! 何を始めるのか、俺にはさっぱり謎なのだが。ネックレスをつけてはいるが飾りですよ奥さん。だぼだぼの茶色い長ズボンを穿いている俺。ふみふみとしたい。なにもかもを。
腕時計を見る。八時三十分。後三十分かぁ……。早く沼口先輩のケーキを食いたいな……。そんな俺のことは一切無視か、和葉は黙ってチーズケーキを黙々と食べている。届いた紅茶の方は味わってくれませんのかい? などと思ってみたりみなかったり。とりあえずにコーチング。はいはい、こうやって飲むんだぜ。ありがとう、と反応する和葉。何かが足りない。う〜む、ああ、そか。恥じらいがあり過ぎだ、いつもとは違うんだよお前!
「なぁ……お前今日はどうした? いつもとは違うぞ? 俺の知っている和葉はもっと天真爛漫自由奔放のはずなんだが……きのせいか?」
「え、私、いつもと違うかな……」
ああ、違うよ、全然違う。まぁ、紅茶初心者ならばしょうがないか、美味くて感情が変わるのもしばしばだ。俺もそうだった。取り敢えずこの雰囲気を打破しようと俺は和葉に話しかけてみる。
「……お前、紅茶セットとか持ってたりする?」
「え、も、持ってないけど?」
あ、やっぱり。初心者だもんな。よし、紅茶セットを申請しよう。
「今度俺ん家来い。俺のお古でよければ紅茶セットを申請しよう。なに、気にすんな。俺の好意だ受取っておけ。お茶の淹れかたを書いた紙も渡してやる。茶葉も一式を差し上げよう。これでどうだっ! ってくらいに豪華だぜ? 遠慮はするな、紅茶好きの仲間だろ?」
とそこまで言ったところで通りから声を掛けてくる馬鹿野郎が居た。
「へいへい、お熱いねぇ? 見てるこっちまで熱くなっちまうぜ」
はん、言っておけ。すぐにボコって……いや、此処は神聖なる紅茶専門店。汚すわけには……おっと、良いこと考えたっ! 俺は無言のままでそいつ等をにやにや、と睨み、テーブルを挟んで和葉の頭を掴んでぐい、と俺の顔と近づける。さらさらの髪がゆれ、ポニーテールが踊る。そして顔を赤らめる和葉。よし、良い演技だ。
「え、ちょ、ちょっと……」
和葉の声を無視してさらに俺は顔を近づける。目線は阿呆どもだ。にやり、と笑ってみせるとたじろいだ。和葉は眼を閉じてぷるぷると震えている。色っぽい。このまま押し倒したくなる奴は続出だろう。俺はそんなことはしない。オーケー良い演技だ。そのままよろしく! 俺は和葉の下顎を持ち上げて喉をぺろんと舐める。「あっ……」という色っぽい声がして、より一層色っぽく、ぷるぷると震える和葉。そしてそのままあわよくばキスという所まで来て――。
阿保はすごすごと逃げ出した。はん、この程度で逃げるかよ。テメェらは虚しいねぇ。俺は和葉の頭を離し椅子に座らせる。ふぅ、なんとかボコらずすんだようだ。よっしゃ。有難う白熱の演技。お前のおかげだ。にっかりと笑ってみせる俺。へぶらっ!! 平手打ち。俺の右頬にもろヒット。何でェェェェ!!?
「……馬鹿ッ!!」
……なんか悪いことしたか? 俺。喉元を舐めたのは謝るけどさ……。だってそうしないとあいつ等逃げ出さないと思ったんだもん! 許してよっ! しょうがなかったんだ! 神聖な紅茶専門店を汚したくなかったんだ!
「ごめんなさいっ!」
訳も解からず謝る俺。許せっ! …………。
「……紅茶」
はい?
「紅茶のこと教えてくれたら許してあげるわ。じゃ、今度大悟の家行くからね」
立ち去ろうとする和葉。取り敢えず引き止めた。ってかミルクティ飲め。美味しいのに勿体無い。
「この後さ、紅茶愛好会の集会みたいなんがあるんだよ。お前も一緒にしようぜ? 人数多い方が楽しいしさ。色んなことも教えてもらえる。な? 来いよ!」
暫し流れる沈黙。心なしか、背中を向けて、顔を少しこちらに向けている。和葉の顔が赤く染まってるように思えた。何故に染めるか。紅茶好きとしての当たり前の行為だ。何故にそこで頬を染めるか。解からないねぇ。ってかミルクティ飲め。冷めるだろうが。
「……ありがと……」
だから、紅茶好きとしての当たり前のことをしたまでだと言って(略しますご了承へぶらっ!)
次略したら殺す。解かったか、この作者。ぼんくらの癖にして粋がるな。まだ自由研究も終ってねぇんだろうが。後二日なのにどうするどうするいってたって何も始まらねぇんだよボケ。はっ、だからテメェはぼんくらなんだよああん? 文句あんのかその眼差し殺すぞ。本編の方も進めてねぇくせに偉そぶんな阿保。
見苦しい場面を見せてすいませんでしたマジで。ちょい作者調子乗ってるんでボコってくるから暫くお待ちくださいね。まだまだ続くよ! 読んでくれよなっ!
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2005/08/22(Mon)16:44:32 公開 / 緋陽
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■作者からのメッセージ
作中にも出てきましたよ緋陽です。ほのぼのとした感じに出来上がったコメディ。これって少年の小説だよね? まだこれは純情と言えますよね?! だって、途中で危ない表現が入ってるから心配で……じゃあ、何で投稿したんだよ私。ッてな感じです。
アヤカシの番外編ですはい。アヤカシのネタをより生かそうと作ってみました。こちらは皆さんの日常編でございます。笑ってくれれば幸いです。和葉の気持ちに気付けばなおウレシ。それではアヤカシの本編ともども宜しくです。
もげら。