- 『僕の話を聞いてください』 作者:新先何 / ショート*2 ショート*2
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さて話をしましょう。
聞いてくださらなくても結構です。ただ僕としては皆さんに聞いて欲しいのです。
それが、彼女に対する罪滅ぼしだから。
僕がこの力を理解したのは彼女を殺してしまったときです。そう手遅れでした。
僕はこの力を憎みます。しかし、憎んだところで彼女は生き返りません。
うーん何から話していいか。
では、この力の兆候みたいなものから話しましょうか。
小学校入ってからのこと何ですけど、僕こう見えて汗っかきなんです。ある時授業に集中できないような暑さの日がありました。周りのみんなは「暑い」だとか「怠い」だとか言ってました。それで僕は周りのみんなと「ホント暑いね、ちょっとばかり温度が低かったらやる気がでるのにね」等と会話していました。するとだんだん涼しくなったような気がしました。
あと、今思えばあれもそうだったのかもしれません。中学生になり大人びた意見も言えるようになった頃、テレビを見ていたんです。内容はくだらないもので「生中継!リアクション大会」みたいな物で、数人のリアクション芸人がタライ落としや落とし穴に挑戦していました。そのなかの熱湯風呂のコーナーで大変な事が起こりました。家族に僕は「あの熱湯風呂って本当に暑いのかな? どうせなら沸騰するぐらいの熱湯でやればいいのに」と話していました。テレビの中では一人の芸人が風呂に入ろうとしていました。心なしか風呂の水が沸騰しているようにも見えます。その芸人は後ろから仲間の芸人に突き落とされ熱湯風呂の中に入りました。その瞬間でした、その芸人の口からあまりにもリアルな悲鳴がテレビから流れてきて、画面はCMに切り替わりました。翌日の新聞でその芸人が重度の火傷で入院した事を知りました。
数えればきりがありません。ええ、僕にはなぜだか知りませんが言った言葉を現実にする力があったんです。僕もこの力にもう少し早く気づければよかったのですが。彼女には悪い事をしたと思っています。わかってます、こんな事を言っても意味がない事は。
一段落したところで今度は彼女の事についてお話しいたしましょう。
僕の話に飽きた方、どうぞご退出されてもかまいません、ドアはあちらです。
それでは残った皆様にはもう少しお話を聞いていただきます。
彼女に出会ったのは僕が高校生になったばかりの春でした。
授業は退屈で僕にとって意味がないような物でした。なので、僕はよく学校の近くの図書館で一日を過ごしました。彼女は雪のような白い肌を外から漏れる日差しにちらつかせ、難しそうな表紙の本を読んでいた。いわゆる一目惚れというやつです。僕の目は動かなくなり、それからの毎日は彼女に会いに行くのが僕の楽しみになりました。彼女は僕と同じぐらいの年でいつも図書館の奥まったところにいました。僕はなんとか彼女と知り合いになろうとチャンスをうかがっていたのですが、女の子に惚れるのが初めての事だったのでどうしたらいいかわからず、ただただ彼女見ているだけでした。
日差しが強くなってきた夏の頃、僕と彼女は初めて図書館以外の場所で出会いました。休日、僕は図書館へ向かう道を歩いていまいした。僕の家からは公園を通らなければなりません。その公園に入ると反対側からあの彼女が歩いてきました。突然の出来事にとまどい、はじめて僕は彼女に話しかけてみようと思いました。黒い服をまといながら独特の白い肌を見せながら歩いてきます。そして初めて彼女に声をかけました。彼女はどうやら僕の事を知っていたらしく恥ずかしくなりましたが、彼女と話せたのがうれしくて僕は多少舞い上がっていたのです。そしてこのチャンスを逃したくないと思った僕は、生まれて初めて告白をしました。
「雪のように白いあなた、僕はあなたの事が大好きです。どうか付き合ってください」
今思えば恥ずかしい言葉です。そして、彼女からの返事はありませんでした。自分でも馬鹿な事をしたと思っています。
雪になった彼女は夏の日差しに溶けていき消えていなくなりました。公園に残ったのは彼女の服と蝉の声、それと虚しさ。
これが僕が彼女にした過ちです。だから今僕にしなければいけない事はただ一つです。
皆さんちゃんと聞いていてください。
「今の僕の気持ちは胸が張り裂ける思いです」
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2005/08/18(Thu)13:59:36 公開 / 新先何
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■作者からのメッセージ
皆さんお久しぶりです。
久々の投稿ですが意味不明な物ができあがってしまいました……
自分としては一人話の要領で書いていたのですがなんか不自然な感じですね。
この話は以前書いた物を大幅に加筆した物ですが、これ書いてる途中で「じゃあ言葉の力で彼女を生き返らせばいいのに」とか思ってしまったのがちょっと悔しいです。
ご指摘ご感想いただければ幸いです。
以上、新先でした。